株式会社ネオキャリア
3,000名を超える従業員の労働実態を即座に把握。全従業員が自身の労働時間を「セルフマネジメント」できる組織へ。
事例ポイント
課題
- 以前は勤怠打刻を徹底させられず、月間約3,000件の申請不備が発生していた
- データ出力に機能制限があり、就業状況の確認に半日以上かかっていた
- 会社全体として労務意識が低く、人事部にタイムマネジメントの負荷が集中していた
決め手
- 業務開始と同時に打刻ができるシステム制御が可能
- 膨大な従業員の就業状況がシステム内でリアルタイムに確認できる
- 個人、チーム、事業部などセグメントによって必要な情報を可変性高くアウトプットできる
効果
- 打刻率が8割を突破し、月間の申請不備の件数も3分の1にまで大幅に軽減
- 月中の労働時間を逐一確認して速やかな打ち手を講じることができるようになった
- 経営層や管理職はもちろん、一般従業員も自身の働き方に関心を持つようになり全社的な労働意識改革が推進された
事例概要
機能 | 勤怠管理, レポート・ダッシュボード |
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業種 | 人材・派遣 |
従業員数 | 1,000人以上 |
「人と本気で向き合い、未来を切り拓く。」をPURPOSE(ネオキャリアの存在意義)に掲げ、「人材ビジネス」を中心に事業を拡大し続けている株式会社ネオキャリア。
社内で進められているのが「人を大切にする会社」の実現に向けた取り組みだ。労働管理の基盤となる勤怠管理システムにはチームスピリットを採用、毎日使う勤怠管理システムだからこそ簡単に打刻できる工夫を施し打刻率を大幅に向上。従業員の勤務状況をより正確に把握すると共に、「自分の働き方は自分で管理すべき」という働き方に対する社内の意識も高めている。また経営層や管理職にも各種の就業データを様々な粒度で可視化できるダッシュボードを提供、トップダウンでの意識変革も並行して進められている。
今後は「1人あたりの売上を時間換算して可視化する」ことを目指し、PCログとも連動したより正確な勤務時間管理を実現していく予定。このような取り組みの基盤として、チームスピリットは重要な役割を果たしているという。
2030年までに実現する「7 GOALS」と「7 VALUES」を明確化
2000年の創業以来、一貫して「人材ビジネス」を中心に事業を拡大し続けている株式会社ネオキャリア。創業当初は人材ビジネスの経験がまったくない状態でスタートし、顧客の成長につながるサービスを提供することにこだわり続けながら、必死に顧客の声に耳を傾け続けてきたと、同社ホームページの代表メッセージには記載されている。その結果、現在では計19社/3,887名(2024年2月)のグループ企業へと成長。「人と本気で向き合い、未来を切り拓く。」をPURPOSEに掲げ、採用支援、就労支援、業務支援という3つの事業を展開、誰もが主体的にいきいきと働ける社会の実現を目指している。
「このようなPURPOSEを明確に掲げるようになったのは、2022年からです」と語るのは、人事部で部長を務める平本 智也 氏。ネオキャリアはこの時点で「安定・拡大期」に入っており、これに前後する形でグループ全体の再編も進められていったと説明する。「それまでは人材関連以外のビジネスも本体で行っていましたが、これらを全て分社化し、本体は人材ビジネスに特化する形へとシフトしました。さらに、PURPOSEをより具体化した『7 GOALS』と、それらを実現するための『7 VALUES』も明確化されています」。
人事部 部長 平本氏
平本氏が言及する「7 GOALS」は以下に示すとおり。これらを2030年までに実現することが目指されている。
また「7 VALUES」の内容は以下のとおりだ。
「人を大切にする会社」を目指し新たな人事方針も策定
同社の「7 GOALS」「7 VALUES」からは、人を中心に据えた価値観のもとで、より良い社会を作っていこうという強い意志が感じ取れる。そしてこれらのビジョンの明確化は、人事のあり方を見直す上でも、大きなチャンスになったと平本氏は言う。「このような価値観を徹底していくには、私たち自身が人を大切にする会社になる必要があるからです」。
このチャンスを最大限に活かすため、ネオキャリアの人事部は新たな人事方針の立案に着手。まずはその雛形を作成し、経営層と共に議論を進めていった。その結果、以下のような人事方針と長期的な数値指標が、経営層の総意として明確化されていったのである。
■人事方針
個が尊重され、誰もが挑戦し続けることができる会社の実現
・社内環境整備方針:柔軟な働き方を通じて心身の健康と多様性の尊重を推進し、生産性の高い組織を実現する。
・人材育成方針:挑戦機会の提供と適切な評価を通じて、個人の可能性を引き出し、最大限に活かす。
■全社で追いかける目標(KGI)
・エンゲージメント
・離職率
・生産性
・新規事業数
・女性管理職比率
さらに、上記KGIに影響を及ぼす「組織の状態を示す指標」も、以下のように明確化されている。
・労働時間の適切な管理
・有給取得率
・育休取得率
・健康診断受診率
・障がい者雇用率
もちろんこれらのKGI/指標を高めていくには、労働の実態を正確に把握する必要がある。実態がわからなければ課題が見えず、課題が見えなければその解決のための施策立案も不可能だからだ。しかし「以前はこれが可能な状況ではありませんでした」と、人事部 給与グループでグループマネージャーを務める髙橋 由郎 氏は振り返る。
人事部 給与グループ グループマネージャー 髙橋氏
3つの特徴を評価し、勤怠管理システムにチームピリットを採用
「2023年の時点で、ネオキャリア本体の従業員数は2,000名を超え、国内グループ全体では約3,000名に達していました」と髙橋氏。しかし従業員には「ベンチャー企業で働いている」という意識が強く、勤怠管理に対する意識は高くなかったと指摘する。
展開している事業(サービス)が多岐に渡り、全国に数多くの支店を展開しているため、事業部門や支店毎に働き方が多様であることも、勤務状況の把握を難しくしていたという。「基本は9時半~18時半の勤務ですが、支店によっては三交代シフト制を採用しているケースや、お客様先で夜勤を行なっている従業員もいます。事務職の方も、繁忙期には通常とは異なる勤務形態を求められることは少なくありません」。
勤務体系の複雑さも去ることながら、システム面にも課題を抱えていたという。「以前利用していたクラウド型の勤怠管理システムは、ユーザビリティーの観点で勤怠打刻を徹底させることが難しく、従業員に打刻を意識付けさせることができていませんでした」と髙橋氏。
データ集計・出力機能にも制約があり、全従業員のデータ出力に最低でも半日はかかってしまうため、リアルタイムで打刻状況や労働時間を確認し、速やかに打ち手を講じることができていませんでした。
また、従業員マスタのメンテナンスに時間がかかることも課題だった。従業員数が多かったため、従業員の所属や承認者の変更を行う際は、都度サービスベンダーに依頼する必要があり、設定の変更が完了するまでに2日程度かかっていたという。
これらの課題を解決するため、2021年に勤怠管理システムの刷新に向けた検討をスタート。「7 GOALS」「7 VALUES」が明確に打ち出された2022年末には、新システムの要件が明確化されている。つまり前述の人事方針の明確化と並行して、システム面の刷新も進められていたのだ。
その結果、最終的に採用されることになったのが、チームスピリットである。採用の決め手について髙橋氏は次のように説明する。
「他にも数社のソリューションを検討した上で、大きく2つのポイントに着目して採用を決めました。それは、『現在の勤務状況を即座に把握できること』それを『従業員自身が閲覧し、自分ごととして認識できること』です。
チームスピリットには労働に関する様々なデータが一目で確認できるレポート機能や好きな粒度で可視化分析できるダッシュボード機能が標準搭載されており、多種多様な視点で勤怠状況をリアルタイムで把握することができます。また人事異動などに伴う設定変更を自分たちで簡単に行えることも、大きな魅力でした」。
システムによる制御で打刻率は8割を突破!締め作業の業務負荷も大幅に軽減
2023年8月にチームスピリットを導入した同社では、打刻率改善に向けた取り組みを行なった。 チームスピリットはシングルサインオン(SSO)に対応しているため、従業員がパソコンにログインすると自動的にチームスピリットが起動する。従業員は自然な流れで業務開始と同時に打刻ができるようになり、結果的に打刻率は8割まで改善し、従来と比較すれば大幅な向上になった。
以前は、打刻エラーが月間3,000件程度あったが、現在は3分の1程度にまで減少。打刻エラーに伴い締め日を過ぎてから処理を行う従業員の数も、現在では100名以下に減っている。これによって、以前は3名で2日かかっていた締め処理が、2名✕1日で終わるようになり管理部門の負荷も大幅に減少したという。
ログイン後のトップページには今月の打刻率や総労働時間、残業時間、遅刻・早退回数、36協定の残業時間など様々な勤怠データが一目で確認できるダッシュボードを配置した。
これにより、組織管理者は、未打刻の従業員に対して素早い注意喚起が行えるようになったと続ける。
タイムマネジメントの文化は管理者から従業員個人に伝播しており、従業員一人ひとりの働き方に対する意識改革が進んでいる。「自分の労働時間は自分で管理する」というセルフマネジメントが徹底されつつあるいま、根本的な労働環境の改善に向け着実に歩みを進めている。
「以前は打刻を適切に行わなかった従業員から、給与明細が出た時点で『勤務時間の算定がおかしい』と指摘され、調整のための手戻り作業が発生することも少なくありませんでした。しかし今では自分のダッシュボード画面で労働時間を確認でき、その算定に問題があれば自分で修正を行い上司の承認を受けた上で、申告することが可能です。そのためこのような手戻り処理もなくなりつつあります」と髙橋氏は続けた。
各種データの可視化で経営層・管理職の意識も向上
その一方で、管理職の意識向上に向けた取り組みも進められている。以前は管理職向けにチーム単位のダッシュボードが提供され、自チームの勤務状況や未承認の申請一覧が表示されるようになっていた。これに加えて2024年3月には、本部長向けのダッシュボードの提供も開始。チームをまたいだ事業部単位の状況も可視化できるようになった。
「このようなダッシュボードを提供することにしたのは、本部長クラスにより積極的に動いていただくためです」と平本氏は語る。上層部が勤怠データに興味を持ち、その重要性を認識することで、「未打刻を減らしましょう」「残業を減らしましょう」といったことを、トップダウンで指示するようになる。その結果、組織全体の意識変革も進みやすくなるのだという。
「チームスピリットは素晴らしいシステムですが、システムを変えただけで働き方は変わりません。これを経営とどうつないでいくのか、システムに蓄積された勤怠データを経営層にどう興味を持ってもらうのかが重要です。新たな人事方針でKGIを掲げたのもそのためですが、経営層や管理職にデータを出し続け、そこで起きている問題を指摘し続けることが、働き方を変えるための新しい施策につながっていくのだと考えています」と続けた。
実際にこのような取り組みによって、本部長以上の意識は急速に変化しつつある。今では社長を含めた経営層が、「未打刻や長時間残業、36協定への違反も、人事評価に組み入れてはどうか」といったような発言も増えてきているという。
次のステップは「1人あたりの売上を時間換算して可視化」
次のステップとして考えているのは、「1人あたりの売上を時間換算して可視化」することだと平本氏は語る。適正な労働時間で何件の業務を遂行し、それがどれだけの売上につながるのか。これを計測することで、その事業の目標値が適切なのかどうかがわかり、生産性も評価しやすくなるはずだという。
「ここで重視しているのは、経営層が『長時間労働でも成果を挙げればいい』という考え方から脱却し、『短い時間で成果を出すことこそが正しい』という意識に変わることです。これは当社の目標にも合致します。その一方で、上司に言われたからやるのではなく、自分で考える文化を会社全体に定着させることも欠かせません。この2つを同時に進めていくことが、これからの重要課題なのだと考えています」と平本氏は語る。
もちろんそのためには、従業員の労働時間をより正確に把握することが必要になる。これを実現するため、従業員が使うPCのログを取得し、打刻との乖離を可視化するという取り組みも進められている。今後はPCのログデータをチームスピリットと連動させ、内部統制を強化することも考えているという。
「働き方に対する意識を高めていくには、従業員や管理職、経営層が見ることができるデータの幅を広げると共に、可視化の精度も高めていく必要があります」と平本氏は語る。これによって労働時間の適切な管理が可能になれば、有給取得率や育休取得率、エンゲージメントが向上し、離職率の低下や生産性向上につながっていくはずだという。「勤怠管理システムはそのための土台です。柔軟な働き方や従業員の健康、多様性の尊重、生産性の向上を実現していくには、適切なシステムを選択することも重要なのです」。
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株式会社ネオキャリア
- 設立
- 2000年11月
- 事業内容
- 人材サービス業
- URL
- https://www.neo-career.co.jp/
- 取材年月
- 2024年8月