株式会社LIFULL
ワークログ活用によって個々の成果に繋がる行動が増え、KGI達成組織は1.6倍に。LIFULLの生産性向上PJTの裏側
事例ポイント
課題
- 従業員個人の業務の「時間」だけでなく、業務の「内容」も可視化したかった
- デイリーで個々がパフォーマンス向上のためのPDCAを回せるツールを探していた
決め手
- 200以上の組織、そして様々な職種の膨大な業務を柔軟に登録できるため
- もともと活用していたSalesforceとの親和性が高く、安定稼働が期待できたため
- わかりやすいUI/UXで、従業員に負荷をかけずにワークログの取得ができるため
効果
- 成果に繋がる行動は10%向上、KGI達成組織数は1.6倍にまで増えている
- 経費精算機能によって経理グループの業務工数は24%削減を実現
- データドリブンでのコミュニケーションが増えている
事例概要
機能 | 工数管理, 経費精算 |
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業種 | サービス |
従業員数 | 1000人以上 |
特徴 | データの見える化・分析 |
「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージを掲げ、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」をはじめ、日本最大級の老人ホーム検索サイト「LIFULL 介護」や、空き家の再生を軸に具体的な解決策で日本の地方創生をリードする「LIFULL 地方創生」など、様々な事業を展開する株式会社LIFULL。
同社では全従業員が組織や個人の生産性を上げ、成果を最大化するための業務改善を日々当たり前にできるようにすることを目指し、専門部署である日次採算性向上推進グループを設置。そして成果に繋がる行動を増やすために、チームスピリットの工数管理機能を用いてワークログの取得および活用を行っている。
そこで今回は、同社が取り組む生産性向上のための取り組みの概要から、チームスピリットの導入の決め手や効果、また今後の展望について、グループ経営推進本部 日次採算性向上推進グループ長の高橋氏、同グループメンバーの太田氏、廣瀬氏に伺った。
デイリーでPDCAを回して、組織や個人の生産性を上げ、成果を最大化するために。労働の「質」をいかに可視化するかが課題
常に革新することで、より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創ることを経営理念として掲げるLIFULL。そんな同社では、経営者が利益を最大化することを日々行うのと同じように、全従業員が組織や個人の生産性を上げ、成果を最大化するための業務改善を日々当たり前にできるようになることを目指していた。
もちろん、四半期に一度など、評価のタイミングでどれだけ従業員のパフォーマンスが向上しているかを見ている組織は珍しくはない。しかし、同社が目指していたのは、日々記録して、日々振り返り、日々改善していくということを全従業員ができる状態であった。
そうした中、これまで「労働時間」は勤怠実績として取得できていたが、労働の「内容」を日々どのように取得していくかが課題としてあったという。
チームスピリット導入以前の状況について、高橋氏はこう語る。「LIFULLには200以上の組織が存在しており、以前までは各組織がどれだけ会社に対して貢献しているのか、インパンクトを与えられているかが見えづらい状況でした。そこで各組織や個人がどれだけ成果に対して人的リソースを投下できているかを定量的に可視化できるツールを探していました」
そうした状況に対して、「全社員が」「日々記録し」「日々改善することができる」定量指標としてワークログ(※)データの取得を実現するために導入したのがチームスピリットであった。
(※)「何をした時間か」という勤怠データではなく、「どのような意味を持つ時間か」という観点での "業務ログ" のこと。チームスピリットでは「工数管理」機能の活用をもとにワークログデータの取得が可能。
導入の決め手について、太田氏はこう語る。「200以上の組織、さらに営業から開発、バックオフィス、人事と様々な職種が存在しており、全社員のワークログを日々取得するためには、登録する業務の数も膨大な量になります。しかし、チームスピリットであれば、各組織ごとに業務の種類を柔軟に登録できるということが決め手として大きなポイントでした。
また、もともとSalesforceを利用していた弊社にとって、同じユーザーインターフェースで操作のできるチームスピリットは、ツール活用における従業員の心理的負荷を最小限に抑えられ安定稼働が見込めたこと。そしてスライドバーで入力できるなど、直感的に使えるインプット機能も決め手のひとつでした」
ただ記録するだけでなく、「成果に繋がる業務の時間が増えているかどうか」の観点で振り返り、改善を進めている
ワークログの取得において、あまりに精緻で粒度の細かいアクト(※)を設定してしまうと従業員の登録負担が大きくなり、結果として入力率の低下を招いてしまう。そこで同社がアクト設定の際に重要視しているポイントは「成果へつながる業務かそうでない業務か」という観点であり、各組織のマネージャーが設定の役割を担っている。
同社では約700名を対象にワークログの取得に取り組んでいるが、「生産性を上げ、成果を最大化するため」という本来の目的を捉え、あえてアクトを厳選することが9割を超える入力率の実現に繋がっている。
(※)アクトとは、ワークログを登録する際の"業務単位"のこと(下図を参照)
当然ながら、ワークログを取得するだけでなく、取得したワークログを活用していかなければ、同社が目指す「生産性を上げ、成果を最大化すること」には繋がらない。そこで成果に繋がるアクトは何かということを事前にシナリオとして設定し、そのアクトの行動時間を増やす(または減らす)ことが成果に繋がるという考えのもと、同社では「成果に繋がるアクトの時間が増えている(または減っている)か」という観点で振り返りを実施している。
そうしたワークログの活用について、廣瀬氏はこう語る。「重要なのは、ワークログのデータをいかに活用して改善していくかということ。そこで、振り返りの要点を記載した振り返りシートを対象のマネージャーに配布し、そのシートに基づいて振り返りを行うことを推進しています。
また、日次、週次、月次それぞれのスパンで振返ることができるシートを仕組み化することで、各マネージャーが上長への報告からメンバーへのフィードバックまで多方面で活用できるものにしています。そして改善したいアクトが改善できていなければ対策を変えたり、改善しても成果に繋がっていかなければアクトの見直しをしたりしています。
なお、当社では経営戦略に合わせて年単位で社内の組織編成が大きく変わることが珍しくありません。そこで組織が変わることを前提とし、前述した振返りシートのように汎用的な仕組みの提供を行いつつ、生産性向上の専門部署である私たちのグループが、ワークログ活用の知見を蓄積し、組織や職種の特性に応じたアドバイス等を行うことで、すべての組織と個人が当たり前に使うことができる仕組みとなるよう浸透活動を行っています」
そしてワークログ活用度の物差しとして、同社では「実行RANK」という独自の基準を設けている。ワークログの活用度合いを4段階にランク分けし、月次で振り返りを行い、より生産性高く成果達成に繋げているかを観測している。
なお、実行RANKを設定する以前には、また別の指標を用いていたというが、うまく定着しなかったという。
そうしたワークログ活用の指標設定について、廣瀬氏はこう語る。「以前の指標は複雑すぎて理解されづらいものでした。やはり、わかりづらい指標ですと、誰もその指標を信用せず、指標として機能しなくなってしまいます。そこで、いかにわかりやすい指標にするかということで考えたのが、実行RANKでした。
実行RANKはNON、BRONZE、SILVER、GOLDというシンプルな4段階構成で、実行RANKを開始してからは、全社的にランクを高めていくことが重要であるという認識が芽生え始めています」
ワークログの活用方法を仕組み化して以降、KGIを達成している組織割合はそれ以前と比較して1.6倍と上昇傾向に。
ワークログの活用方法を仕組み化して以降、同社では成果に繋がるアクトの時間が約10%向上しており、さらに実行RANKにおいて以前まではGOLDランク(成果を下げずに業務効率を上げられている)の数はほぼゼロであったのに対して、現在は30%程度まで増えている。
また、NONランク(時間の観点でPDCAを回していない)の数も大幅に減少しており、多くの組織でワークログを活用した成果向上や生産性向上を実現しているという。
「ワークログを活用方法を仕組み化して以降、KGIを達成している組織数はそれ以前と比較して1.6倍に増えています。当然、KGIの達成は時間以外に多くの要因によって左右されますが、成果に繋がるアクトの時間が改善されることによって、KGIを達成できている組織の増加に少なからず影響はあると考えています。
もちろん、そのときの組織の状況や人員の変化によって、時間観点での活動の重要度や優先順位が下がり、その結果実行RANKが下がるケースもあります。そのため、今後は組織のモニタリング指標としてワークログを取得して活用することを、意識せずとも全従業員が当たり前にできている状態にまで高めていくことが重要だと考えています」と廣瀬氏は語る。
なお、営業組織であれば数字を意識して行動することは当たり前だろう。一方でバックオフィス等がKGIを設定してそれに対するPDCAを定量的に回したり、社内の業務効率化や改善提案を定量的な根拠をもとに進めていくということは意識的に取り組まなければ難しいというケースは珍しくない。
しかし、ワークログ活用以降、同社では少しずつデータドリブンなコミュニケーションが増えているという。高橋氏はこう語る。「実感として、感覚ベースでの会話が減り、データを用いた会話が増えているように感じています。たとえば、自身の業務を改善したい場合も、 "ワークログの実績からこれだけ事務作業に時間を要しているが、○○%の削減で生産性の高い業務に○○時間を充てられる" という説得力のある提案ができる従業員が増えているなと。
またワークログを取得して可視化してみると、実際のメンバーの業務内容構成が感覚値と違ったという感想をよく聞きます。感覚的な認識と実態に乖離があることを身をもって経験しているからこそ、よりデータを用いて正しい意思決定をするべきだという認識が醸成されていると感じています」
さらに同社では、ワークログ活用だけでなく、経費精算においてもチームスピリットを活用。経理グループでの経費精算にかかっていた業務工数は24%削減、さらに利便性が高くなったことで従業員の経費精算に関する満足度も向上しているという。
「交通費精算も申請経路の選択ミスがなくなったり、過去の履歴をコピーして利用できたりと非常に使い勝手がよく、私自身、経費精算が簡単になったと感じています」と高橋氏は語る。
組織や個人の生産性を上げ、成果を最大化することを目的に導入したチームスピリット。成果に繋がるアクトの時間は着実に増えている一方、まだまだ課題もある。たとえば各組織が掲げるKGIに対して、組織によってはワークログの実行RANKは高いのに、KGI達成に繋がっていないというケースもあるという。
KGIとワークログがリンクしやすい組織、しづらい組織が存在しているため、同社では引き続き試行錯誤を繰り返しながら、再現性の高い成果達成及び生産性向上の仕組み構築に取り組んでいく。
最後に、今後の展望について教えてください。
今後の展望について、廣瀬氏はこう語った。
「私たちが目指していきたいのは、ワークログを使って生産性を高め成果を最大化していくことで、会社を構成する従業員のウェルビーイングを高め、会社の持続的な成長を支えていく。そしてその結果、会社の経営理念実現に繋がっていくこと。その繋がりが業態や組織や個人の特性に関わらずすべてで実現するようにしていきたいと考えています。
そのためには、属人化した仕事の仕方ではなく、再現性のある形を目指していくべきで、事業や組織や人が変わっても、その仕組みを活用することで、究極その日から成果を最大化することができるというのが目指しているところであり、理想の形です。
壮大なビジョンではありますが、その第一歩として引き続きワークログの活用を進めていきます」
勤怠・工数・経費精算などをクラウドで一元化
株式会社LIFULL
- 設立
- 1997年3月
- URL
- https://lifull.com/
- 資本金
- 9,716百万円(2022年12月31日現在)
- 取材年月
- 2023年7月