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株式会社久米設計

勤怠管理と工数管理をチームスピリットで一体化。従業員の勤怠・工数への意識が高まり、長時間労働是正へ

事例ポイント

課題

  • 従業員の長時間労働が常態化していた
  • 現場の労務管理の意識が低く、日次で勤怠や工数の登録がされず正確性も欠けていた
  • 勤怠データと工数データの整合性がとれず、精緻なプロジェクト原価算出ができていなかった

決め手

  • 勤怠管理と工数管理が一つのシステムで一元管理できることで整合性がとれる
  • 会社の外からスマートフォンで打刻や登録が可能になることで、日々申請を怠らないようにさせることができる。
  • 従業員の労働時間を可視化し、自身の働き方を簡単に分析できる

効果

  • 勤怠や工数の日次登録が定着し、勤怠締め作業等の効率が高まった
  • 労働時間の可視化ができるようになり、現場の労務意識が向上し労働時間の削減が進んでいる
  • 勤怠と工数の整合性が担保され、精緻なプロジェクト原価の算出ができるようになった

事例概要

機能 勤怠管理,工数管理, レポート・ダッシュボード
業種 建設・不動産・インフラ
従業員数 500〜999人
特徴 自動化による作業時間の削減、プロジェクト原価管理の効率化、最新法令への対応, データの見える化・分析

近年は新宿歌舞伎町タワー、虎ノ門ヒルズステーションタワー、ワーナーブラザーススタジオツアー東京-メイキング・オブ・ハリー・ポッター。過去には恵比寿ガーデンプレイス、赤坂サカス、吹田市千里山団地。これらの大規模な建造物や施設の設計を手がける、日本有数の組織建築事務所、株式会社久米設計。

同社は、以前から「長時間労働の常態化」に課題を抱えていた。その改善策として勤怠管理システムと工数管理システムの刷新を検討。数あるシステムのなかからチームスピリットに刷新。2022年11月に導入し、1年半で導入の成果が出始めている。

同社コーポレート本部コーポレート室総務部上席主管の須藤幸詞氏と、コーポレート本部コーポレート室情報システム部上席主査の若林茂氏に、導入から現在までのお話を伺った。

従業員の長時間労働が常態化

街の顔となるような大規模な建造物や施設の設計を多数手がける同社。従業員の半分以上を占める一級建築士がその屋台骨を担っている。

建築物のコンセプトやデザインを手がける意匠設計、構造計算をして建物の強度を高める構造設計、空調・配管・音響などの設備を決める設備設計、とそれぞれの分野にプロフェッショナルがおり、プロジェクトごとにチームを組んで、大規模な設計プロジェクトを手がけている。

その仕事ぶりを国内外から高く評価されている同社だが、働き方の面では設計に携わる現場従業員の長時間労働が常態化していた。

このような状態は同社に限らず、業界を通して問題となっている。設計業務は、日中クライアントとの打ち合わせや現場視察を行い夕方から夜にかけてデスクワーク等の実務業務を行う傾向がある。また就業ルールは、裁量労働制を採用している。仕事へのモチベーションが高いメンバーが集まる同社では、かえってそれらの環境が長時間労働の原因となってしまっていた。

仕事へのモチベーションが高い理由の一つとして、設計に対するプロ意識の高さがあげられる。「自ら手がけた大規模な建造物が"作品"として数十年も街に残り続けるのだから、妥協したものは絶対に作りたくない」と毎晩遅くまで仕事に取り組む従業員は少なくないという。

当時の状況について、コーポレート本部コーポレート室総務部上席主管の須藤氏は次のように振り返る。
「10年ほど前までは二徹、三徹は当たり前。今はさすがにそれはありませんが、『時間をかけるほど良いものができる』という考えは根強く、労働時間が長いことは変わりません」

長時間労働は次のようなさまざまな弊害をもたらす。
・従業員の心身に与える健康リスクの増加。
・人件費の増加に伴うプロジェクト利益の低下。
・労働基準法等のコンプライアンスリスクの増加。
また、上記以外にも企業イメージを損ない採用力の低下にもつながる可能性がある。売り手市場の今、建築事務所を敬遠する学生もいるとのこと。

「建築士志望の学生が選ぶ就職先といえば、建築事務所かゼネコンが定番でしたが、近年は、デベロッパーやIT企業、コンサルティング会社もその選択肢に加わりました。競争が激化するなか、優れた人材を獲得していく為に建築事務所も働き方や賃金の見直しをしていかなければいけない」と須藤氏は危機感を露わにした。

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コーポレート本部コーポレート室総務部上席主管 須藤氏

長時間労働が改善されない原因とは?

同社ではチームスピリットを導入する前に、2019年の労基法改正に対応すべく、別の勤怠管理システムを導入していた。

「しかし、旧来の勤怠・工数の管理システムは、法を遵守する上で最低限の運用しか出来ておらず、労働時間を削減する為の根本的解決には至っていなかった」と須藤氏は語る。

労働時間の削減を進める第一歩として、"どんな業務にどのくらいの時間を費やしているのか"を可視化することに着手した。
それができれば、時間がかかっている作業を特定し効率化をするなど改善に向けた取り組みを進められると考えたからだ。

たとえば「作業単価が高く多忙な一級建築士が、比較的簡単な作業をしている」などが見えてくる。それを「業務を仕分けし、簡単な作業は手が空いている派遣社員に任せる」などの改善をすれば、会社全体の残業の削減につながり、生産性も向上する。

その為には勤怠時間の入力だけではなく、作業ごとの工数時間も合わせて管理していく必要があった。さまざまなクラウドサービスを検討し、勤怠管理と工数管理の双方が一元的に管理できるチームスピリットの導入を決断したという。

また勤怠、工数の一元化にはもう一つの目的があったと、コーポレート本部コーポレート室情報システム部上席主査の若林氏は当時の状況を振り返る。
「当時は勤怠、工数の日次登録が徹底されておらず、1カ月分の勤怠をまとめて月末に登録する従業員が大半でした。中には2~3カ月登録していない従業員もいて、勤怠を出さない理由を尋ねたところ『裁量労働で残業代が出ないんだから、勤怠を出す意義がありません』と言われたこともあります」

工数に至ってはプロジェクト終了後に一括登録する人もいたという。数カ月遡って当時の作業時間を思い出すのは不可能に等しく、推測的な値がほとんどで正確性の欠如につながっていたという。

つまり勤怠も工数もリアルタイムかつ正確な管理ができていなかった。
勤怠が後手にまわるということは、労働状況に応じたタイムマネジメントができず、締め作業や給与計算業務の負荷も高まってしまう。
工数の登録が遅くなれば、進行中のプロジェクトの収益管理が正確に把握できず、赤字なのか黒字なのかがわからないままプロジェクトを進めてしまうリスクが高まる。

「当時は、勤怠と工数管理のシステムがそれぞれ独立しており、入力の手間が多いため登録作業を後回しにする従業員が多かったのかなと思います。また、勤怠システムへのアクセスは社内のパソコンに限定されており、外出や在宅勤務の際はわざわざ出社して入力しなければならなかった」と若林氏は語る。

システム刷新における最優先事項は、勤怠・工数を毎日正確に登録してもらえるものであること。そのためには、誰でも使える操作性の高さと時間・場所を選ばないシステムであることが不可欠だったという。

入力しやすく、可視化の重要性を現場に浸透できるシステム

チームスピリット検討時の様子を須藤氏は次のように振り返る。
「『これは外せない』という条件が複数あったのですが、それをすべてクリアしていた唯一のサービスがチームスピリットでした。他社さんは、私たちの疑問に対する説明が不十分で、『まずは1〜2カ月使ってほしい』と言われたのですが、一方でチームスピリット担当者は私たちの疑問に細かく答えてくれたので、懸念事項を事前に解消できました」

具体的な選定条件で印象に残っているものとして、須藤氏は続ける。
「他社のシステムは『勤怠のデータを入力した後、翌日にならないと工数を入力できない』というような何らかの使いにくさがありましたが、チームスピリットはそうしたストレスがありませんでした。スマートフォンで操作できるので、どこで働いていてもその場で入力ができるのもポイントでした」

従業員一人ひとりが労務意識を高くもち、自身の働き方をセルフマネジメントしていくことの重要性を若林氏は次のように語る。
「生産性向上のためには自分たちの働き方を可視化して、見直すことが重要という考えを、現場にも浸透させる必要がありました。現場の働き方を人事や総務が取り締まるだけでは、長時間労働の是正は難しい。現場で働く設計士が自分たちの働き方を見直して、改善していくことが重要です。そこに気づいてもらうためには、現場も気軽に働き方のデータを見られることが必須だと考えました。」

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コーポレート本部コーポレート室情報システム部上席主査 若林氏

ランニングコストも低く、短期間で導入完了

「チームスピリットはクラウドサービスなので、目まぐるしく変わる働き方関連法にもすぐ対応できる。それでいてイニシャルコストやランニングコストも低く抑えられた」と須藤氏は語る。
「実はコーポレート本部以外の経営陣は『コストをかけて、また形骸化するのではないか』と新たなシステムの導入に消極的でした。しかし、新システムの導入コストはかかるが、数年使えば新システムのほうが低コストで運用できることを数字で説明することで、ご納得いただきました」と若林氏は続けた。

導入も順調にプロセス進捗させわずか3か月で本稼働に至った。前回のシステム導入と比較すると5カ月の短縮に成功したという。

「チームスピリットは標準機能やダッシュボードをフル活用すれば、個社のカスタマイズをしなくても十分である点もスムーズな導入に繋がったのだと思います」と若林氏は語る。

勤怠・工数の入力意識が向上。自らワークログを分析する設計士も

もちろんシステムを導入するだけでは、従業員の意識は変わらない。形骸化しないよう、啓蒙活動を地道におこなった。アウトソーシング会社を活用して、勤怠の入力をしていない人にメールで連絡。何度連絡しても改善されない場合は、須藤氏や労務担当者が直接話をするという二段重ねの体制にした。

その結果、導入から1年半で、成果が出始めている。まずは勤怠や工数の日次登録が徹底され始めているという。
「チームスピリットは、勤怠を登録する時は同時に工数も登録しなければならないので、工数入力も遅れなくなりました。これもチームスピリットにして良かった点ですね」と若林氏と語る。

現在は、勤怠や工数データをダッシュボードで可視化できている上、人事・総務だけでなく現場の管理職や従業員も自由に見ることができるため自身の働き方に関心をもち分析する従業員もでてきたという。

▼実際のダッシュボード画面
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勤怠・工数の入力意識が高まったことで、勤務時間と一致した正確な工数情報も着実に集まりつつある。今後は、これらのデータを使って働き方を分析し、生産性向上を図っていく意向だ。「まだまだ基盤をつくっている段階です」と須藤氏は言うが、会社は明らかに変わりつつある。

株式会社久米設計

設立
1932年
事業内容
建築設計監理業
URL
https://www.kumesekkei.co.jp/
取材年月
2024年4月