株式会社GOOD PLACE
チームスピリットで勤務状況を可視化し働き方改革を加速、有給休暇取得率/男性育児休業取得率の向上と36協定遵守にも積極的に挑戦
事例ポイント
課題
- 事業の多角化と働き方の多様化が進み、従来の勤怠システムでは労働状況の可視化が困難になった
- 勤務状況をタイムリーに確認できる情報基盤が必要だった
決め手
- 勤務状況が一目でわかる洗練されたダッシュボード
- 多岐に渡る就業規則や頻繁に起こる組織変更も負荷なく運用ができる
- 打刻から各種申請まで勤怠にまつわる大体の業務が一つの画面で完結できる
効果
- 勤務状況の可視化で働き方改革への取り組みが加速
- 会社全体の労務意識が高まり、現場主導で労働時間に対するマネジメントが行われるようになった
- 有給休暇取得率は76.8%、男性育児休業取得率は100%に
事例概要
機能 | 勤怠管理, 工数管理,レポート・ダッシュボード |
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業種 | 建設・不動産・インフラ |
従業員数 | 100〜400人 |
働く場を作る「オフィス構築事業」や、建物のリノベーションなどを行う「建築事業」、企業のバックオフィス業務を受託する「総務アウトソーシング事業」などを展開する株式会社GOOD PLACE。ここでは自社の働き方改革も積極的に推進、数多くのユニークな施策を次々に打ち出している。
2015年に行われたチームスピリットの導入は、このような取り組みを加速する手助けとなった。勤務状況を可視化しやすくなり、働き方改革に向けた施策を立案・実施しやすくなったのである。
2022年には有給休暇取得率と男性育児休業取得率の向上に向けた施策もスタート。翌年には、有給休暇取得率は76.8%、男性育児休業取得率は100%となった。
その後も、チームスピリットのカスタマイズ機能を活用し、労務コンプライアンスの遵守をより堅固なものにするため複数のダッシュボードを活用し、長時間労働の解消に取り組む。
社会を豊かにする「GOOD PLACE」を顧客とともに創造
リクルートグループのリフォーム事業を手がける企業として、1990年に事業活動をスタートした株式会社GOOD PLACE(当時の社名は株式会社コスモスモア)。働く場を作る「オフィス構築事業」や、建物のリノベーションなどを行う「建築事業」などを展開している。
これまでに手がけた建築案件は、日本で最も歴史と権威があるデザインアワードの一つである「グッドデザイン賞」や、働き方の観点からオフィスを評価する「日経ニューオフィス賞」、世界三大デザイン賞のひとつに数えられるドイツの「iF DESIGN AWARD」、創造性と革新性のある作品を称える世界的なアワード「Architecture Master Prize」などを受賞。国内はもちろんのこと国外でも、高い評価を受けている。
2013年6月には親会社の株式会社コスモスイニシアが大和ハウス工業株式会社と資本業務提携契約を締結したことで、同社も大和ハウスグループの1社となっている。
働く環境を構築する知見を活かし、企業の総務をはじめとしたバックオフィス業務を受託するアウトソーシング事業にもビジネス領域を拡大。2023年には「Make a GOOD PLACE」をブランドコンセプトに掲げ、課題解決プロセスを顧客と伴走しながら進めていく「ソリューションPM」や、コンセプトとユーザー体験を軸に空間設計を提案する「シーンデザイン」などによって、クライアントの事業発展に寄与するソリューションを提供している。
そして2024年1月には、商号を「株式会社GOOD PLACE」へと変更。絶えず変化し続ける社会を見つめながら、これからの社会を豊かにする「GOOD PLACE」を、顧客とともに創造し続けている。
多様な働き方をチームスピリットの導入で可視化
同社の活動で注目したいのは、社内の働き方に関してもアグレッシブな取り組みを、数多く展開していることだ。
「2015年に大きな契機があり、大規模な人事制度の改定や組織変更を行い、新規に総務アウトソーシング事業もスタートしました」と振り返るのは、当時の状況に詳しい、管理部 総務課 君島 文枝 氏だ。
総務アウトソーシング事業では顧客企業に常駐する社員が多くなり、シフト勤務への対応も必要になる。またこの事業の開始に伴い女性の採用も増えたため、育児休業や短時間勤務への対応も重要課題になっていたという。
しかし当時の勤怠システムは、紙のタイムカードと同様の機能をシステム化した簡単なものであり、給与計算のための集計機能までしかカバーしていなかった。そのため、従業員の残業時間を、タイムリーに把握することが難しかったのである。そこで2015年1月には、新たな勤怠システムの導入に向けた検討に着手。複数のソリューションの中から、2015年2月にチームスピリット(チムスピ勤怠/チムスピ工数)の採用を決定する。
「チームスピリットで最も高く評価したのは、勤務状況が一目でわかる洗練されたダッシュボードの存在です。このダッシュボードを従業員本人と上司が見ることで、現在の労働時間や残業時間を簡単に把握できるのです。また勤務場所によって異なる就業時間やシフト勤務、組織変更などにも簡単に対応でき、打刻から各種申請まで勤怠にまつわる大体の業務が一つの画面で完結できることもメリットだと感じました」と君島氏は語る。
管理部 総務課 君島氏
採用を決定してすぐ導入に着手し、そのわずか1ヶ月半後に運用を開始。これによって、多様な働き方を行う従業員の労働時間をタイムリーに可視化でき、働き方の変化にも柔軟かつスピーディに対応できる基盤を確立したのである。
情報基盤の整備で加速された「感度の高い」働き方改革
「働き方改革への取り組みは、この頃から一気に加速しています」と語るのは、管理部 総務課 課長の松井 伸城 氏。同社はオフィス事業を軸にビジネスを展開していることもあり、自社の働き方改革も「感度高く」取り組むべきという強い意識を持っているが、働き方を可視化できる情報基盤が整ったことで、具体的な施策に落とし込みやすくなったのだという。
管理部 総務課課長 松井氏
その一つが2016年に行われた、オフィスリニューアルだ。その中でフリーアドレス化を行った。GOOD PLACEでは総務アウトソーシングのために客先常駐する従業員だけではなく、工事の現場に出向くためオフィスにいない従業員も多い。フリーアドレスであれば固定席よりもオフィス空間を効率的に活用でき、自由な発想も生み出しやすくなると判断されたのだ。
テレワーク自体は2013年から導入しているが、2017年には誰でもいつでもテレワークで働ける状態を目指し、取り組みの強化を行った。これに合わせてペーパーレス化も積極的に推進。出勤・退勤の打刻は、チームスピリットの機能を活用しスマートフォンで実施し、打刻時に従業員の位置情報も確認できるようにしている。さらに2020年にはシェアオフィス事業者2社と契約し、サテライトオフィスでの勤務も可能にした。
そして2022年には、働き方改革への取り組みがさらに大きく前進することになる。有給休暇取得率と男性育児休業取得率の向上に向け、様々な施策が打ち出されていくのだ。
ユニークな施策で年次有給休暇取得率が向上
「この取り組みのきっかけとなったのは、2022年4月の育児・介護休業法の改正です。休業法の改正に伴った育児休業関連と有給休暇・残業時間に関する目標を、厚生労働省が従業員101人以上の企業に対し義務付けている『一般事業主行動計画』に掲げることにしました」と松井氏は語る。
これは、従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組む上で、具体的にどのような目標をいつまでに達成するのかを、事業主が明記して届け出るという制度だ。「当社では、(1)年次有給休暇取得率70%以上、(2)男性の育児休業取得率50%以上、(3)年間総労働時間2,605時間を1人も超えない、と宣言しました。これはかなり高いハードルだと思います」。
それでは具体的に、目標達成のためにどのような施策を打ち出したのか。まず「年次有給休暇取得率70%以上」に関しては、以前から制定されていた「メモリアル休暇」「有休取得促進日」「MOREホリデー」に加えて、新たに「いつでも休暇」を追加したと松井氏は説明する。
「メモリアル休暇は自身の誕生月に有給休暇を取得することで1万円の手当を支給する制度であり、有休取得促進日は年間で設定された日に有給休暇を取得することで1万円の手当を支給、MOREホリデーは3日連続して有給休暇を取得することで3万円の手当を支給する、というものです。これらの施策によって、2022年度には有給休暇取得率が6割を超えていましたが、70%を超えるには各従業員があと2日、有給休暇を取得しなければなりません。そこで、任意の日に有給休暇を取得することで年間2日間まで1日あたり1万円の手当を支給する『いつでも休暇』を追加したのです」。
これによって2023年度には、有給休暇取得率が76.8%にまで上昇。建設業全体の有給休暇取得率は53.2%だと言われているため、同業他社に比べて大きく前進していることがわかる。なおこれらの制度を全て活用すると、年間7万円の手当がもらえることになる。有給休暇取得で給与以外の追加手当がもらえるというのは、かなりユニークな制度だと言えるだろう。
職場の意識変革が可能にした男性育児休業取得率100%
次に「男性の育児休業取得率50%以上」だが、当時は女性の取得率100%に対し、男性の取得率は30%に過ぎなかった。これを大幅に高めるため、2022年10月から3つの施策を開始している。
第一は「子育て休業応援手当の創設」。これは、育児休業取得に伴い業務を引き継ぐ従業員に対して、最大10万円/月の応援手当を支給するというもの。その目的は「育児休業を取得すると周りに迷惑をかけてしまうのでは」という、育児休業取得者の心理的負担を軽減することだ。
第二は「配偶者出産時の特別有給休暇を1ヶ月に拡大」したこと。以前は慶弔のための2日間の特別休暇が割り当てられていたが、これを大幅に拡充した。
そして第三が「育休に関するeラーニング研修の実施」だ。これによって職場全体の意識を変革し、男性が育児休業を取得しやすい社内カルチャーを作り上げたのである。
これらの取り組みによって、男性の育児休業取得に対する社内の意識は大きく変化。育児休業を「取得するかしないか」ではなく、「いつ取得するのか」という考え方にシフトしている。その結果、2023年度における男性の育児休業取得率は100%を達成。
複数のダッシュボードを活用し、労務コンプライアンスの遵守を強化
「年間総労働時間2,605時間を1人も超えない」に対する取り組みも本格化している。2023年8月に「タイムマネジメント改善プロジェクト」を開始し、その一環として2024年1月から「タイムマネジメント勉強会」をスタート。「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)」をなぜ守る必要があるのか、そのためにどの数字を確認すべきなのか、といった啓蒙活動が行われているのだ。
ここでハードルになったのが、既存のダッシュボードでは、上司が部下全員の超過労働時間を一目で把握することや、前月の状況を確認することが難しいということだった。上司が36協定に違反しそうな部下を見つけるには、一人ひとりのレコードをチェックする必要があり、前月のデータもダッシュボードに表示されない仕様だったからだ。
この問題を解決するため、松井氏および労務メンバー全員で2023年9月に開催された大型展示会で情報収集を実施。各展示ブースの製品画面を一つ一つ確認していったという。
「実はこのとき、他にいいものがあればチームスピリットからの移行も視野に入れていたのですが、なかなかいいものがありませんでした。しかし最後にチームスピリットの展示ブースに足を運んだところ、まさに欲しいと思っていた画面がそこにあったのです。ブースの担当者にお話を伺うと、カスタマイズ機能で簡単に実現できることがわかりました。すでにチームスピリットを使い始めてから8年が経過していたのですが、必要な機能がデフォルト状態で網羅されており、法改正にもしっかり対応してくれていたため、カスタマイズ機能を意識したことがなかったのです」と君島氏は当時を振り返る。
翌週にはチームスピリットのサポートを受けながら、ダッシュボードのカスタマイズに着手。合計5時間程度の作業でカスタマイズが完了した。
「ITシステムのカスタマイズは初めての経験でしたが、意外と簡単にできました」と君島氏は続けた。前月の「36協定残業時間」「法定休日出勤日数」、今月の「36協定抵触注意者一覧」「法定休日出勤日数」「当年度超過回数」「未打刻日数」などの画面を、前述のわずか5時間で実装したという。
長時間労働の解消に向け、これからもチームスピリットを活用
「これらのマネジメントダッシュボードを各上司へ提供したことにより、チームのリアルタイムな労働状況が一目で把握できるようになりました」と松井氏は語る。また、上司を飛び越え従業員一人ひとりが自身の労働時間をセルフマネジメントできるようになりつつある現状に対し、松井氏は次のように続ける。「ダッシュボードのどこの数字を見ればいいのかも明確に示しているため、確認漏れが原因となる36協定の抵触リスクはほぼなくなりました」。
この取り組みは始まったばかりであり、年間総労働時間2,605時間を1人も超えないことの実現はまだこれから。長時間労働の解消は、現在も重要な課題の一つになっている。
「チームスピリットに対しては8年間特に不満はありませんでしたが、今回カスタマイズを行ったことで、さらに活用の可能性が広がりました。これからもチームスピリットを活用しながら、働き方の可視化や超過労働へのアラートなどを通じて、長時間労働をなくしていく取り組みを進めていきたいと考えています」。
勤怠・工数・経費精算などをクラウドで一元化
株式会社GOOD PLACE
- 設立
- 1990年1月
- 事業内容
- 建物の企画・設計・施工、オフィス構築、総務アウトソーシング
- URL
- https://www.goodplace.co.jp/
- 取材年月
- 2024年8月