赤字プロジェクトの5つの原因|赤字を回避する方法も解説
著者:チームスピリット編集部
赤字プロジェクトは、プロジェクトマネージャーにとって必ず避けたい事態です。
「赤字プロジェクトは何が原因で起こってしまうのだろうか?」「どうすれば赤字プロジェクトの発生を防げるだろうか?」と不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、赤字プロジェクトが起きる5つの原因について解説します。
合わせて、今後赤字プロジェクトを発生させないための対策やツールの有効性についても解説します。
本記事を読むことで、赤字プロジェクトの発生原因や防止対策についての理解が深まるでしょう。
赤字プロジェクトを未然に防止したい方や発生原因を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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赤字プロジェクトが発生する5つの原因
自社のプロジェクトが赤字となる原因にはいろいろな原因があり、大きく分けると以下の「5つの不足」に分類できます。
- 要件定義の検討不足
- 予算や見積もりの不足
- メンバーのスキル不足
- コミュケーション不足
- プロジェクト収支の管理不足
それぞれ詳しく解説していきます。
原因①:要件定義の検討不足
プロジェクトを開始する前の要件定義を十分に検討していないことで、赤字プロジェクトとなる可能性が高まります。
要件定義とは、プロジェクト開始前に、クライアントの要望を実現するためにどのような機能を実装するか、どれくらいの性能にするかといった要件を相談し、製品の内容を決めていく作業です。
要件定義は、プロジェクトが成功するか・失敗するかを左右する重要な工程です。「クライアントが本当に実現したい内容やゴールは何なのか?」を詳細にヒアリングし、要件に落とし込むことが大切です。
正しく要件定義ができていないと、プロジェクト進行中または納品後に、思わぬ機能追加や工程のやり直しが発生します。想定外の費用を支払うことにより、プロジェクトが赤字となるのです。
原因②:予算や見積もりの不足
赤字プロジェクトの発生要因として、事前の予算や見積もり不足も挙げられます。
「とにかく安くしよう」と採算度外視で、プロジェクトを受注した場合を考えてみましょう。この場合、ギリギリの予算しか確保していないため、少しでも想定外の費用が発生すると、すぐ赤字プロジェクトとなってしまいます。
前述のように、要件定義の検討不足により、追加の修正依頼を受ける場合や、工程のやり直しをする場合も同様です。
プロジェクトの予算にバッファを見ていないことも、赤字プロジェクトの原因となります。「バッファ」とは予算の「余裕」です。プロジェクトを進めていると、追加の修正依頼や機能追加といった想定外の事態がよく起こります。ここに対して予算を準備しておくことを「バッファを見る」といいます。
バッファを見ずに予算を組んだ場合は、想定外の事態が起きると予算に余裕がなくなり、赤字プロジェクトとなります。
原因③:メンバーのスキル不足
プロジェクトメンバーのスキル不足も、赤字プロジェクトの原因です。ここでのメンバーとは、現場メンバーだけでなく、現場を管理するプロジェクトマネージャーも含まれます。
メンバーのスキルが足りない場合、当初計画した予定でプロジェクトを完了できなくなり、追加の作業が発生し、労務費の赤字が発生します。
また、プロジェクトにアサインするメンバーを選ぶのはプロジェクトマネージャーです。プロジェクトマネージャーが、メンバーのスキルを把握しないままアサインすることで、上記のような問題が発生します。
つまり、メンバーのスキル不足は、プロジェクトマネージャーのスキル不足でもあります。
さらに、プロジェクトマネージャーがプロジェクトの進捗状況をうまく把握できていないことも、赤字プロジェクトにつながります。作業が遅延していることに気づくのが遅くなり、結果的に労務費が多く発生します。
原因④:コミュニケーション不足
メンバー間やプロジェクトマネージャーとのコミュニケーション不足も、赤字プロジェクト発生の一因です。
コミュニケーションが不足すると、進捗状況を正しく把握できなかったり、認識の齟齬(そご)が発生したりして、結果的にプロジェクトの遅れや追加作業が発生してしまいます。
例えば、少し極端ですが、プロジェクトマネージャーがメンバーとコミュニケーションを一切取らないケースがあったとします。作業の進捗状況をまったく確認していなければ、作業の遅延に気づくのが遅れてしまい、プロジェクトが赤字になってしまうこともあるでしょう。
また、コミュニケーションの重要性を理解していたとしても、メンバーが多くなるとマネージャーがそれぞれのメンバーと十分なコミュニケーションを取る機会を確保できなくなるケースもあります。
そのため「毎朝朝礼で進捗状況を報告する」「定例ミーティングでプロジェクト全体とメンバー同士の進捗状況を報告する」などの進捗確認の仕組み作りができていない場合も、プロジェクトの遅延、ひいては赤字に繋がる可能性があります。
原因⑤:プロジェクト収支の管理不足
プロジェクト収支を管理できていないことも、赤字プロジェクトとなる原因です。
プロジェクト収支とは、プロジェクトごとの原価を適切なタイミングで把握することをいいます。例えば、メンバー一人ひとりの時間単価を前もって設定しておき、工数をリアルタイムで管理できていれば、現時点で赤字が発生しているのかを常に確認することができます。
エクセル(Excel)や自社ツールではリアルタイムで工数を可視化できず、気づいた時には既に赤字が膨らんでしまうことがあります。
プロジェクト内で、担当部門ごとに異なるシートやツールで管理している場合も同様です。プロジェクト内での一元管理ができていないため、部門費を正確に計上できず、気づいたらプロジェクトが赤字となっていることがあります。
加えて、リアルタイムで入力データの不備に気づけないツールを導入していることも、管理不足の一因です。具体的には、勤怠と工数の整合性が取れていないデータの入力が許されるツールや、工数管理の未入力に対するアラートが出ないツールなどが挙げられます。
赤字プロジェクトを発生させないための対策
前章では赤字プロジェクトの5つの発生原因を解説しましたが、ここからは、それらを発生させないための対策を5つ紹介します。
- 要件定義のやり方を見直す
- 見積もりは過去のデータを参照して作成する
- プロジェクトを工数内で完了できるようメンバーを選定する
- 業務内容を細分化した上で進捗状況報告のコミュニケーションを密にする
- 進捗状況や予算と実績が可視化できるツールを導入する
対策①:要件定義のやり方を見直す
赤字プロジェクトを発生させない最初の対策は、プロジェクトの土台となる要件定義のやり方を見直すことです。
要件定義の甘さは赤字プロジェクトに直結する原因となります。以下の点を参考にして、現在の要件定義のやり方を見直しましょう。
- 綿密にヒアリングを行い、プロジェクトの目的やゴールを明確にする
- あいまいな部分は残さず、できるだけ具体化する
- クライアントと密にコミュニケーションを取る
- 要件定義の業務を標準化して、誰が行ってもなるべく抜け漏れが出ないようにする
要件定義は、プロジェクトの成否を決める重要な工程です。クライアントの要望をそのまま鵜呑みにするだけではなく、「本当にクライアントが実現したいこと」を明確にしていきましょう。
正しい要件定義やゴール設定を行うことで、修正や追加工程の発生が減り、プロジェクトの収支が赤字になってしまうことを防げるでしょう。
対策②:予算の見積もりは過去プロジェクトの実績を参考にする
赤字プロジェクトを発生させないためには、過去のプロジェクト実績を参考にして予算を見積もることが大切です。過去のプロジェクトでのデータを参考にすることで、予算をできるだけ正確に計上することができます。
実績を参考にせず「大体このくらいかな」と感覚で見積もってしまうと、その直感が外れて大幅に作業が遅れる危険性があります。
同時に、過去プロジェクトでどれだけ追加作業が発生したかを確認し、新規プロジェクトで想定される追加作業分をバッファとして見ておくことも重要です。
それに加えて、メンバーごとにかかる工数の違いやコストの違いも正しく認識しておきましょう。
新人と熟練メンバーではスキルに差があり、同じ作業でも工数が変わります。プロジェクト内に新人や経験の浅いメンバーがいる場合は、できる限りそこに工数を多く見積もることが大切です。
メンバーごとのスキルや経験を加味した上での工数設定には、工数管理や標準賃率の策定が重要となります。
工数管理や標準賃率の策定については、「プロジェクト原価管理とは?管理の流れや計算方法を解説」も合わせてお読みください。
対策③:メンバーのスキルの差を加味して適切に配置する
メンバーのスキル不足による工数超過=赤字プロジェクトを未然に防ぐためには、メンバーのスキルの差を加味した上で、想定工数内で作業が完了できるよう適切に配置することが大切です。
例えば、熟練メンバーなら1人日で完了する作業も、新人メンバーだと1.5人日かかるというケースがあります。そうしたメンバーごとに必要なスキルの差を加味した上で、適切に把握することが大切です。
なお、適切な人材配置には、タレントマネジメントシステムの活用が便利です。タレントマネジメントシステムは、各社員の実績やスキルを可視化し、データベースとして一元管理できます。こうしたシステムを活用しながら、各メンバーが持つスキルの凹凸を加味しつつ、プロジェクトを効率的により正確に完遂する工程を作っていきましょう。
また、対策②でも解説した通り、工数を見積もる際にはメンバーごとのスキルの違いを加味して、「Aさんは慣れているから1人日で」「Bさんはこの作業が初めてだから2人日取っておこう」という判断が必要です。
想定工数の算出は、工数管理ツールを活用して、メンバーのスキル差に気を付けながら行いましょう。
工数管理ツールを使うことで、過去のプロジェクトで実際にかかった工数のデータが蓄積できます。過去のプロジェクトを参考に工数を予測し、想定工数内でプロジェクトを完了できるようメンバーを選定します。自社の社員のスキルが足りない場合には、外注を検討してもいいでしょう。
対策④:業務内容を細分化した上で進捗状況報告のコミュニケーションを密にする
プロジェクトメンバーとプロジェクトマネージャーとの間で、進捗状況に関するコミュニケーションを密にすることでも、工数超過や赤字プロジェクトの発生は回避可能です。
コミュニケーション不足による赤字プロジェクトの発生は、業務内容の細分化ができていないことに起因します。ここでの「コミュニケーション」とは、進捗状況の報告です。
進捗の報告は、本人の感覚ベースで行ってはいけません。業務内容を細分化してタスクの形にしておき、「このタスクまで終わった」「20個あるタスクのうち13個完了」と、誰もが進捗を認識できる形で報告することが大切です。進捗報告のコミュニケーションを密にすることで、工数超過による赤字プロジェクトの発生を防ぐことができるでしょう。
誰が見ても業務の進捗を認識できるようにするには、ガントチャートの活用やタスクの進捗率の表示などで可視化することがおすすめです。エクセルや工数管理ツールを活用すると、タスクを可視化しやすくなります。
対策⑤:プロジェクトの収支が可視化できるツールを導入する
赤字プロジェクトを発生させないためには、プロジェクトの収支を可視化し、かつ複数プロジェクトの収支を同時に管理できる収支管理ツールの導入がおすすめです。
収支管理ツールは、以下のようなデータを可視化できます。
- プロジェクトごとの収支
- プロジェクトの進捗状況
- かかった工数や労務費の状況(予算と実績)
さらに、収支管理ツールを使うと、リアルタイムでプロジェクトの収支と予算との乖離を可視化できるようになります。現時点でプロジェクト内の労務費が予算から超過していた場合、工数やその他経費の削減を図るといった対策を取ることが可能です。
プロジェクト型ビジネス(ITソフト制作業や広告業など)では、収支管理ツールの活用が、会社全体の赤字削減にもつながります。
プロジェクト型ビジネスでは、同時に複数のプロジェクトが稼働中です。プロジェクトごとにエクセルや自社ツールで収支を管理している場合、企業全体での一元管理が難しくなります。各プロジェクトで管理が完結し、横断的に収支を確認できないからです。プロジェクト単体でしか収支を見られないと、会社全体で複数の赤字プロジェクトが発生していたとしても気づけません。
収支管理ツールを導入すると、プロジェクト単体はもちろん、横断的にプロジェクトの収支管理ができるようになります。結果的に会社全体での収支管理ができ、赤字も未然に防ぐことができるのです。
プロジェクトの収支管理と必要なツールについては、「プロジェクト収支管理とは?ツールの選び方やエクセル管理のコツを解説」の記事も合わせてご覧ください。
まとめ|赤字プロジェクト発生を防ぐには収支管理ツールの導入が効果的
赤字プロジェクトが発生する原因は、プロジェクト開始前と進行中それぞれにあり、大きく分けて5つに大別できます。
- 要件定義の検討不足
- 予算や見積もりの不足
- メンバーのスキル不足
- メンバー間のコミュニケーション不足
- プロジェクト収支の管理不足
赤字プロジェクトを発生させないためには、適切な予算・工数設定と、業務内容や進捗状況の可視化によるプロジェクトの収支管理が大切です。この2点をうまく行うには、適切な要件定義はもちろん、予算と実績の可視化による進捗状況の把握が必要となります。
とはいえ、予算や実績の可視化を行うために自社ツールを開発、改良するには相当の時間が必要です。現在進行中のプロジェクトを抱えながらツールを開発するには、予算や人員が足りないことも想定されるでしょう。
収支管理ツールは、そのような手間をかけずに導入が可能です。ツールを導入することで、予算と実績の管理にかける工数が格段に減ります。さらに、工数管理ツールと連携することで、リアルタイムにかつ正確にプロジェクトの収支の確認が可能です。赤字が発生した時点で都度対策を打つことにより、最終的な赤字プロジェクト発生率が格段に下がるでしょう。
赤字プロジェクトの発生防止には、適切な予算や工数の設定を行いつつ収支管理ツールを導入することが効果的です。自社に合った収支管理ツールを導入し、赤字プロジェクトの発生を未然に防止しましょう。
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工数管理ツールを検討する際のポイントとは?
- 毎日の工数管理が従業員の負荷を高めて習慣化しない
- アナログな管理方法で精緻な原価管理の可視化ができていない
- リアルタイムにプロジェクトの予実管理ができず利益率が下がっている
アンケート対象の約7割がツールによる工数管理をしていると回答した中で、その満足は8割越えと驚異の数値となりました。
他社事例をもとにツール導入による利便性や具体的な運用方法までご紹介しておりますので、導入検討中のご担当者様は是非ご一読くださいませ。
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