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基礎知識

残業代の計算方法|時間外労働の集計・割増率・法律を初心者向けに解説

著者:チームスピリット編集部

残業代を計算するためには、まず残業の定義や割増率の違いなどを正確に把握した上で、計算ミスがないよう慎重におこなわなければなりません。

本記事では、用語を理解できていない超初心者でも、記事の通りに進めていけば残業代を計算できるよう、計算方法を分かりやすく説明していきます。

▼残業代の基本の計算式

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▼残業代を計算する4ステップ

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ステップごとに用語や法律の知識を補って説明していくので、誰でも一通りの計算ができるはずです。

計算方法だけでなく、残業代計算の基本ルール、具体例、注意点なども合わせて解説しています。残業代の計算方法を知りたい方は、本記事を読んで理解を深めてください。

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  • 残業管理のルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
  • 時間外・休日・深夜労働における割増賃金の計算方法がわからない
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時間外労働などの基礎や複雑な法令の解説など人事労務担当者なら知っておきたいキホンを分かりやすくまとめております。適切な残業管理を運用するために、ぜひ本資料をお役立てください。

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残業代の計算方法|簡単に計算できる4ステップ

早速、残業代の計算方法を4ステップで解説していきます。ステップごとに補足を入れ、初心者でも読み進めることができるようにしているので安心してください。

難しい残業代の計算ですが、以下の計算式とステップを覚えて、その通りに行えば初心者でもスムーズに算出できます。

残業代を計算するために使う一般的な計算式は、以下です。

❶1時間あたりの基礎賃金 × ❷残業時間 × ❸割増率

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割増率とは、時間外労働や休日労働、深夜労働などをさせたときに企業が上乗せして支払う賃金の割合をいい、最低ラインが以下のように法律で定められています。

対象条件

割増率

残業時間の計算方法

時間外労働
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき

25%以上

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.25

時間外労働
時間外労働が限度時間(1カ月45時間・1年360時間等)を超えたとき

25%以上
(※1)

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.25

月60時間超の時間外労働
時間外労働が1カ月60時間を超えたとき

50%以上
(※2)

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.5

休日労働
法定休日(週1日)に勤務させたとき

35%以上

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.35

深夜労働
深夜(22時から5時までの間)に勤務させたとき

25%以上

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.25

※1:25%を超える率とするよう努めることが必要です。

※2:中小企業についての猶予措置がありましたが、2023年4月1日からは中小企業にも適用となりました。

出典:東京労働局(PDF)|しっかりマスター労働基準法 ー割増賃金編ー

残業代を計算する場合には、上記の区分ごとに分けた上で、それぞれの「❶1時間あたりの基礎賃金 × ❷残業時間 × ❸割増率」を計算して、最後に合算する必要があります。

例えば、1カ月の労働時間が休日出勤8時間、深夜残業6時間、残業55時間だった場合は以下のように区分ごとに計算し、最後に合算します。

休日出勤(割増率35%)

1時間あたりの基礎賃金×8時間×1.35

深夜残業(割増率50%)

1時間あたりの基礎賃金×6時間×1.5

月60時間超えとなる残業(割増率50%)

1時間あたりの基礎賃金×1時間×1.5

(深夜残業+残業=60時間を1時間超える)

時間外労働(割増率25%)

1時間あたりの基礎賃金×54時間×1.25

ここからは早速、残業代を以下の4ステップで計算する流れを解説していきます。

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※変形労働・フレックス・裁量労働制の場合には、残業代の計算方法が異なります。詳しくは、後述する「変形労働・フレックス・裁量労働制の残業代の計算方法」をご覧ください。

STEP1:【❶1時間あたりの基礎賃金】の計算

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まずは、残業代の計算式「1時間あたりの基礎賃金× 残業時間× 割増率」の最初の「1時間あたりの基礎賃金」を求めていきます。

1時間あたりの基礎賃金は、「1カ月の基礎賃金」を「1カ月の所定労働時間」で割って求めます。

1時間あたりの基礎賃金(月給制・日給制)=
1カ月の基礎賃金÷1カ月の所定労働時間

※年俸制の場合は、「1時間あたりの基礎賃金=年俸額÷12月÷1カ月の平均所定労働時間」で求めます。

※時給制の場合は、時給額がそのまま1時間あたりの基礎賃金となります。

STEP1-1.「1カ月の基礎賃金」を求める

月給制や日給制の場合の「1カ月の基礎賃金」は「基本給+各種手当(一部手当は除外)」で求めます。

例えば、以下の正社員Aさんの残業代を計算するケースを求めていきましょう。

  • 基本給 月235,000円
  • 通勤手当 15,000円
  • 家族手当 20,000円
  • 皆勤手当 8,000円
  • 1日の所定労働時間 8時間
  • 勤務時間 9:00~18:00(休憩1時間)
  • 年間所定休日 122日

このケースの場合、「1カ月の基礎賃金」に含まれるのは基本給と皆勤手当で、235,000円+8,000円=243,000円となります。

月の基礎賃金に含める手当と除外する手当を確認する

月の基礎賃金に含める手当と除外する手当は、「一律支給かどうか」がポイントです。

月の基礎賃金に含める手当

一律に支給される手当(例:精皆勤手当)

月の基礎賃金に含めない手当

家族構成や住んでいる場所などに比例して支給額が変わる手当(例:通勤手当、家族手当など)


下記に記載する手当は1カ月の基礎賃金の計算式「基本給+各種手当」の各種手当には含みません。

<基礎賃金の除外対象となる手当>

  • 家族手当・扶養手当・子女教育手当
  • 通勤手当
  • 別居手当・単身赴任手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時の手当(結婚手当、出産手当、大入り袋など)

参考:東京労働局|しっかりマスター労働基準法 ー割増賃金編ー

上記に該当する手当を支払っていたとしても、1カ月の基礎賃金からは除外して残業代を算出しましょう。

STEP1-2.1カ月の平均所定労働時間を計算する

次に、1カ月の平均所定労働時間を以下の計算式で算出します。

<1カ月の平均所定労働時間>

1年間の所定労働日数(365日-1年間の休日数)×1日の所定労働時間÷12カ月

例えば、先ほどの正社員Aさんのケースで、1日の所定労働時間が8時間、年間休日数が122日の場合を考えてみましょう。このとき、1年間の所定労働日数は243日(365日-122日)です。

これらの数字を上記の計算式に当てはめると、243日×8時間÷12カ月=162時間が1カ月の平均所定労働時間になります。

STEP1-3.計算式に当てはめて「1時間あたりの基礎賃金」を計算する

最後に、1カ月の基礎賃金÷1カ月の所定労働時間を計算すれば、1時間あたりの賃金を算出できます。

<正社員Aさんの場合>

  • 基本給 月235,000円
  • 通勤手当 15,000円
  • 家族手当 20,000円
  • 皆勤手当 8,000円
  • 1日の所定労働時間 8時間
  • 勤務時間 9:00~18:00(休憩1時間)
  • 年間所定休日 122日

この例の場合は以下のようになります。

  • 1カ月の基礎賃金:235,000円+8,000円=243,000円※
  • 1カ月の平均所定労働時間:1年間の所定労働日数(365-122日)×1日の所定労働時間(8時間)÷12カ月=162時間
  • 1時間あたりの基礎賃金:243,000円÷162時間=1,500円

※家族手当・通勤手当は1カ月の基礎賃金には含めない

正社員Aさんの場合、1,500円に残業時間と割増率を掛けた数字が残業代ということになります。

STEP2:【❷残業時間】を区分ごとに集計

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次に、残業代を求める計算式の2番目「残業時間」を区分ごとに集計します。

残業代を正しく計算するには、勤怠を集計して、残業時間を区分ごとに集計する必要があります。

なぜならば、通常の残業(割増率25%)なのか深夜残業(割増率50%)なのか、月60時間を超える残業なのか(割増率50%)によって割増率が異なってくるからです。

具体的には、以下の区分ごとの合計時間をそれぞれ出す必要があります。

  • 法定内残業:割増率は0%
  • 法定外残業(時間外労働):割増率は25%以上
  • 深夜労働:割増率は25%以上
  • 休日出勤:割増率は35%以上
  • 月60時間超の時間外労働:割増率は50%以上

勤怠管理システムを利用している場合は、事前に設定を行うことで自動で区分ごとに集計されることが一般的です。

▼区分ごとに残業時間が集計されるイメージ

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▼残業60時間を超過した(もしくは超過しそうな)従業員を一覧で確認するイメージ

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エクセルで勤怠管理の計算をしている場合には、給与計算用に上記の合計時間を計算して表示する欄を作成しておきましょう。

なお、エクセルでの管理はミスが起きやすく属人的になりやすい(前任者がいなくなると分からなくなりやすい)ため、誰でも簡単に管理したいという場合には、勤怠管理システムや給与計算システムの利用をおすすめします。

STEP3:【❸割増率】を区分ごとに計算

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あとは、ステップ2で集計した区分ごとに割増率(割増賃金率)を掛けて計算していきます。

割増率とは?

企業が従業員に時間外労働・深夜労働・休日労働をさせた場合には、法律で定められた割増率以上の賃金を上乗せして支払う義務があります。

割増率の「最低ライン」をまとめたものが以下の表です。

対象条件

割増率

残業時間の計算方法

法定内残業
企業が決めた「所定労働時間」を超えているが「法定労働時間」は超えない残業のこと

0%

時間外労働
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき

25%以上

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.25

時間外労働
時間外労働が限度時間(1カ月45時間・1年360時間等)を超えたとき

25%以上
(※1)

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.25

月60時間超の時間外労働
時間外労働が1カ月60時間を超えたとき

50%以上
(※2)

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.5

休日労働
法定休日(週1日)に勤務させたとき

35%以上

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.35

深夜労働
深夜(22時から5時までの間)に勤務させたとき

25%以上

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.25

※1:25%を超える率とするよう努めることが必要です。
※2:中小企業についての猶予措置がありましたが、2023年4月1日からは中小企業にも適用となりました。

出典(PDF):東京労働局|しっかりマスター労働基準法 ー割増賃金編ー

ちなみに、時間外労働と深夜労働が重なる場合には、時間外労働の割増率25%と深夜労働の割増率25%を合わせて50%になります。合計割増率は以下を参考にしてください。

対象条件

割増率

残業時間の計算方法

時間外労働+深夜労働

50%以上

(25%+25%)

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.5

休日労働+深夜労働

60%以上

(35%+25%)

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.6

月60時間超の時間外労働+深夜労働

75%以上

(50%+25%)

1時間あたりの基礎賃金 × 時間 × 1.75

なお、法定休日に働いた分の労働時間は、労働時間を1週40時間までとする法定労働時間の計算には含みません。したがって、仮に月曜日から金曜日の出勤日に40時間、法定休日の日曜日に5時間働かせた場合であっても、法定労働時間は超過していないと判断します。

「法定内残業」は割増賃金の対象にならない

残業といっても「法定外残業」と「法定内残業」の2種類があり、その違いに注意する必要があります。

法定外残業

(法定時間外労働)

1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えて行われた残業

➡時間外労働に該当する(割増賃金の対象となる)

法定内残業

(所定時間外労働)

法定労働時間の範囲内ではあるが、各企業が定める「所定労働時間」を超えて行われた残業

➡時間外労働には該当しない(割増賃金の対象にならない)

「法定内残業」は労働基準法で定める残業(時間外労働)には該当しないため、割増賃金の対象にはなりません。

例えば、1日の所定労働時間が7時間(9時出勤~17時退勤)の会社があった場合で、17時~18時に残業をした場合、「法定内残業(所定時間外労働)」となります。

法定労働時間(1日8時間)を超えてはいないため、「法定外残業(=時間外労働)」には該当しません。

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退勤時間が18時を過ぎると、法定労働時間(1日8時間)を超えるため、時間外労働に該当し、割増賃金の対象になります。

割増率の計算例:3つのケースでわかりやすく解説

ここでは3つのケースについて、割増率の計算例を紹介します。1時間あたりの基礎賃金は1,500円とします。

【通常残業】Aさんが平日(勤務日)に1日2時間残業した場合の残業代

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Aさんが平日に2時間残業した場合の残業代を求めてみましょう。通常の残業なので割増率は25%です。

1,500円(1時間あたりの基礎賃金)×2時間×1.25=3,750円

このケースのAさんの残業代は3,750円になります。

【通常残業+深夜残業】Aさんが平日(勤務日)に深夜2時まで残業した場合の残業代

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次は、Aさんが平日に深夜2時まで残業した場合の残業代を算出します。

4時間の残業時間のうち、18時~22時の2時間は通常の残業のため割増率は25%、22時~2時の2時間は通常の残業の割増率に深夜労働の割増率を加えた割増率50%が適用されます。

1,500円(1時間あたりの基礎賃金)×2時間×1.25+
1,500円(1時間あたりの基礎賃金)×2時間×1.5
=8,250円

このケースのAさんの残業代は8,250円になります。

【休日労働+深夜労働】Aさんが休日に深夜0時まで残業した場合

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最後は、休日労働と深夜労働が組み合わさったケースの計算例です。

法定休日に残業した場合、別途で残業代を支払う必要はありません。そのため、休日労働と深夜労働の割増率を計算します。

Aさんが休日に深夜0時まで残業した場合、9時~22時の12時間は休日労働の割増率35%、22時~0時の2時間は休日労働の割増率に深夜労働の割増率を加えた割増率60%が適用されます。

1,500円(1時間あたりの基礎賃金)×12時間×1.35+
1,500円(1時間あたりの基礎賃金)×2時間×1.6
=29,100円

このケースのAさんの残業代は29,100円です。

実際には、月単位でそれぞれの合計時間を集計した後にそれぞれに割増率を掛けていくのですが、上記の計算例を見て、計算のイメージを掴んでいただければ幸いです。

STEP4:最後に合算する

STEP1からSTEP3までが終わったら、最後に全てを合算することで、残業代を算出できます。

例えば、1時間あたりの基礎賃金が1,500円、休日出勤8時間、深夜残業6時間、残業55時間だった場合は以下のように区分ごとに計算し、最後に合算します。

休日出勤(割増率35%)

1,500円(1時間あたりの基礎賃金)×8時間×1.35=16,200円

深夜残業(割増率50%)

1,500円(1時間あたりの基礎賃金)×6時間×1.5=13,500円

月60時間超えとなる残業(割増率50%)

1,500円(1時間あたりの基礎賃金)×1時間×1.5=2,250円

時間外労働(割増率25%)

1,500円(1時間あたりの基礎賃金)×54時間×1.25=101,250円

残業代合計

16,200円+13,500円+2,250円+101,250円=133,200円

変形労働・フレックス・裁量労働制の残業の考え方

ここからは、時給制・変形労働・フレックス・裁量労働制の残業代の計算方法を解説します。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は従業員が始業・終業時刻を自由に決めることができる制度です。

フレックスタイム制の場合、清算期間と呼ばれる期間を定めその期間に応じた法定労働時間の総枠を実労働時間が超えると残業代が発生します。

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※引用:フレックスタイム制 のわかりやすい解説 & 導入の手引き|厚生労働省

例えば、2月の実労働時間が190時間の場合、企業は30時間分の残業代を支払う必要があります。

変形労働時間制

変形労働時間制とは1週・1カ月・1年単位で従業員の労働時間を調整できる制度です。

月・年単位での労働時間の週平均が40時間を超えない範囲で、1日8時間、週40時間を超える所定労働時間を定めることが可能です。

例えば、業務が落ち着いている時期の労働時間を7時間に減らして、忙しい月末の1日の労働時間を9時間にすることができます。

変形労働時間制の残業代は、1週・1カ月・1年ごとに労使協定で定めた所定労働時間を超えると発生します。 例えば、1週の所定労働時間が40時間で、実際の労働時間が50時間の場合、企業は10時間分の残業代を支払います。

裁量労働制

裁量労働制とは、あらかじめ定められた時間を働いたとみなす制度です。この働いたとみなす時間を「みなし労働時間」といいます。

裁量労働制における残業代は、みなし労働時間を8時間以下と定めた場合は、実際の労働時間に関わらず残業代は発生しませんが、1日のみなし労働時間が8時間を超える場合には残業代の支払いが必要です。

例えば、1日のみなし労働時間を9時間とした場合、実際の労働時間の長短に関わらず、企業は1時間分の残業代を支払います。

なお、裁量労働制の適用の有無に関わらず、休日と深夜(22時~翌5時)の時間帯における労働には、企業は労働時間数に応じた残業代を支払う義務があります。

残業代を計算する上での注意点

残業代を計算する際に押さえておきたい注意点を3つ解説します。

残業代を計算する上での注意点

  • 法定外残業をさせる場合には「36協定」の締結が必要
  • 残業代は1分単位で計算しなければならない
  • 未払い残業代がある場合の消滅時効は3年間

時間外労働をさせる場合には「36協定」の締結が必要

法定労働時間を超えた労働や休日労働を従業員にさせる場合には、企業と従業員の間で「36協定」を締結し、所轄の労働基準監督署に届出をしなければなりません。

労働者1人であっても、残業や休日労働が発生する場合には届出が必要です。もし、「36協定届」を労働基準監督署に届け出ずに労働者に時間外労働をさせた場合、労働基準法違反となります。

残業や休日労働の可能性が1%でもあるならば、労働基準監督署へ届出を済ませておきましょう。厚生労働省の公式サイトにある「36協定届の作成支援ツール」もぜひ活用しましょう。

残業代は1分単位で計算しなければならない

残業代は1分単位で計算して支払うのが原則です。これは労働基準法の第24条において、「賃金の全額を支払わなければならない。」と明記されているためです。

出典:e-Gov|労働基準法

賃金の全額を支払わなければならない以上、1分でも切り捨てて残業代を算出してしまうと、上記第24条に反してしまいます。また、時間外・休日・深夜労働の割増賃金支払い義務を規定した、労働基準法第37条にも違反します。

ただし、残業代算出に係る事務作業の簡略化を目的とし、1カ月単位で残業代を計算する場合には、残業時間の端数30分未満は切り捨てまたは残業時間の端数30分以上は切り上げも可能です。

<残業時間の端数30分未満または30分以上の切り上げ例>

  • 1カ月の残業時間が34時間15分の場合、15分を切り捨てて、残業時間を34時間として残業代を計算する
  • 1カ月の残業時間が34時間50分の場合、50分を切り上げて、残業時間を35時間として残業代を計算する

しかし、これはあくまで例外的な措置であり、基本的には1分単位で残業代を支払うものと認識しましょう。

さらに詳しく知りたい方は、「給与計算は1分単位で行わなければ違法か?計算方法や罰則を解説」の記事も参考にしてください。

未払い残業代がある場合の消滅時効は3年間

従業員には未払い分の残業代を遡って請求できる権利、残業代請求権があります。この残業代請求権の時効が2020年4月より、2年から「3年」に変更されました。

3年の時効期間が適用されるのは、2020年4月より後に発生する賃金に対してです。つまり、企業は2023年4月以降の未払い残業代に関して従業員から請求があった場合には、3年分の残業代を計算して支払う必要がある、ということです。企業にとってはこれまでよりも1年分多く未払い分の残業代を支払う必要あり、事務作業や未払いの場合請求される額が増えるなどの影響があります。

もし未払い残業代の請求があった場合には、3年分の残業記録に基づき適切な対応を取りましょう。

残業代や残業時間を計算できるツール

ここまで手計算で残業代を計算する方法を解説しました。

残業代を正しく計算するためには、以下の2つが重要になります。

  • 深夜残業を含む労働時間を正しく記録・集計する
  • ルールに従って正しく給与計算を行う

ただし、これらの業務を人が行うとなると、3〜5営業日もかかることもあります。そのため基本的には、勤怠管理システムや給与計算システムなどテクノロジーの活用により、さらなる効率化や正確性の向上を検討することをおすすめします。お手頃なものでは、従業員一人あたり300円~400円から使い始められるものもあるので、リサーチをして自社に合ったサービスを探してみるのも良いでしょう。

一方で、中には「企業規模が小さい」「個人的に残業代を計算したい」など、何らかの理由で勤怠管理システムの利用が適さない方もいるでしょう。そこでここからは、システムだけではなく、残業代計算に使える簡易ツールやエクセルシートについても紹介していきます。

基本的には勤怠管理システムと給与計算システムを利用することがおすすめ

さまざまな働き方のスタッフが混在している企業では、労働時間の集計や残業代の計算が煩雑になり、手作業ではミスが起こりやすくなります。

特に、勤怠管理も給与計算も手作業で行っている場合には、手作業ではミスをゼロにすることはかなり難しいでしょう。

システムを使わない勤怠管理や給与計算でミスが起こりやすい理由

  • 月末に作業が集中するため、注意力が低下しがち
  • タイムカードの締め作業での集計でミスが起こりやすい
  • 集計した後の転記ミスも起こりやすい
  • そもそもの打刻漏れや不正打刻も起こりやすい
  • 複雑な給与計算ルールを理解するのが難しいため属人的になりやすい
  • 法改正が合った場合に知識をアップデートできていないことがある

残業代の計算を正確に行うためには、勤怠管理と給与計算をシステム化するとともに、両者を連携して活用するのがおすすめです。

勤怠管理システムと給与計算システムを連携するメリット

  • 勤怠情報の手入力(または転記)が不要になる
  • 勤怠情報をそのまま給与計算で用いることができるので、ズレやミスが発生しにくくなる
  • 勤怠情報の集計や給与計算にかかる人・時間のコストが削減できる
  • タイムカードなどの勤怠書類の現物保管・管理が不要になる(データ化できる)
  • 誰でも簡単に操作できるため、属人的な業務でなくなる
  • クラウド型のシステムなら法改正にもいち早く対応できる

システムを活用すれば、複雑な残業代の計算は、システムを導入して連携することで大部分を自動化することが可能です。勤怠管理から給与計算までを効率化したい方は、ぜひ検討してみてください。

詳しくは、「勤怠管理と給与計算を連携するには?メリット・費用・選び方を解説」の記事もぜひ参考にしてください。

システムが適さない場合はエクセルを活用する

システムを導入するほど規模が大きくない企業や、一般的な月給制で働いている社員しかいない(多様な働き方が無い)場合には、エクセル(Excel)を活用する方法もあります。

まずエクセルシートを使って勤怠管理を行い、残業時間や深夜労働の時間が自動集計されるよう関数を組んで集計します。それを給与計算システムにインポートして、給与を計算する方法です。

インターネットを探すと、残業代の計算に対応したエクセルテンプレートが、無料や低価格で配布されているサイトを見つけることができます。

こうしたテンプレートを使えば、業務ソフトを購入しなくても残業代の計算をすることは可能です。

しかしながら、最新の法改正に対応していなかったり、ミスやバグがあっても対応がされなかったりするため、使用する際には注意が必要です。

間違いなく残業代の計算を行いたい場合には、法改正があるごとにバージョンアップし、さまざまな働き方に対応した計算ができるシステムの導入をおすすめします。

エクセルで勤怠管理をする場合のやり方や関数、注意点を知りたい方は、テンプレート付!エクセルで勤怠管理を自動計算する方法・関数を解説の記事もぜひ参考にしてください。

個人的な利用や残業代を試算するだけであれば、計算サイトを活用する

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※出典:残業代の計算|keisan

例えばCASIOが運営する高精度計算サイト「keisan」では、1時間の賃金や、時間外・時間外(深夜)・法定休日・法定休日(深夜)の時間を入力することで、残業代を計算できます。

1時間単位での計算しかできませんが、「この場合の残業代はいくらぐらいになるかな?」のように簡易的に残業代を知りたいケースで活用してみてください。

※使用する際は、最新の法改正に対応しているかを確認した上で、自己の責任において使用をお願いいたします。

まとめ|法改正にも注意して残業代の計算を行おう

残業代を正確に計算するためには、ステップごとにミスをしないこと、そして法律の正しい理解が必要となります。

また、働き方改革が始まって以来、残業に関する法改正が多く行われているため、今後も法改正に注視して知識のアップデートが必要となります。

本記事は2023年10月時点の法律に基づいて執筆をおこなっていますが、法改正によってルールが変わった場合には、その都度、法改正に対応したルールに変更する必要があるのです。

ルール変更を伴う煩雑な残業代に関する業務をできる限り効率化するため、残業代の管理を効率化する勤怠管理システムや給与計算システムの導入・入れ替えを検討してみてはいかがでしょうか。

執筆:バックオフィスナビ編集部・@人事共同執筆

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