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株式会社モバイルファクトリー

優秀な人材に選ばれる「ベストプラクティス企業」が行なったIT投資~離職率は大幅低下、営業利益7倍に成長したモバイルファクトリーの「働き方改革」~

事例ポイント

課題

  • 長時間労働を是正したかった
  • 上場を目指す上で、正確な勤怠・工数管理を実現する必要があった

決め手

  • 1つのシステム内で、勤怠と工数が管理できる

効果

  • 勤務時間と整合のとれた工数を簡単・正確に管理できるようになった
  • 打刻や残業、有休消化状況等を可視化できたことが働き方改革に役立った
  • 直感的に利用できるUIであり、スムーズに移行ができた

事例概要

機能 勤怠管理, 工数管理, 電子稟議, 社内SNS, レポート・ダッシュボード
業種 IT・インターネット, システム開発
従業員数 100~499人
特徴 テレワークなど多様な働き方の推進, IPO前後の内部統制強化, データの見える化・分析, プロジェクト原価管理の効率化

昨今、中小企業では「採用難」が続いている。この背景に、生産年齢人口の減少が挙げられるのは周知の通りだ。
さらに、就業者と完全失業者を足し合わせた労働力人口の年齢構成において、44歳以下が占める割合が総じて減少傾向にある、との指摘もある。(参考:深刻化する人手不足と 中小企業の生産性革命 - 中小企業庁)

技術が日々変化し、それを受け入れて新たにしていくことで進化し続けているIT業界において、このことが及ぼす影響は小さくないだろう。
経済産業省が平成28年に発表した「IT 人材の最新動向と将来推計に関する調査」でも示されている通り、IT需要が今後も拡大の一途を辿ると見通される一方で、IT 人材の需要と供給のギャップは2030年には、最大で約79万人に拡大するとの試算もあるほどだ。
業界ではすでに、「エンジニア争奪戦」が起こっている、とも聞かれる。

しかし、こんな状況においてもコンスタントな採用を続け、離職率を大きく改善した企業がある。
それが、株式会社モバイルファクトリーだ。
「IT企業の離職率は30%超」と言われて久しいなか、なぜこのようなことが可能なのか?
そして、同社において「TeamSpirit」はどのように活用されているのか?
ヒューマンリレーションズ部の部長である小出浩子氏と、天野徹氏に話を聞いた。

※ご担当者様・ご所属は2020年3月インタビュー当時のものです

人材不足と定着率向上のために始まった「働き方改革」

株式会社モバイルファクトリーは、2001年に有限会社としてスタートしたIT企業だ。
2003年には株式会社化し、 着信メロディ公式サイトや位置ゲームなど、ガラケー時代から「わたしたちが創造するモノを通じて世界の人々をハッピーにすること」というビジョンを実現すべく成長。2015年にはマザーズに上場し、2017年には東証一部への市場変更も果たしている。

2020年3月現在、正社員・契約社員合わせて約89名の人材を抱え、新たなフィールドにも挑戦し始めている同社だが、「2012年までは、『優秀な人材の確保が難しい、社員定着率が低い、残業が恒常化して長時間労働が続いている、先輩社員に余裕がないから人材育成も十分ではない』など、多くの中小規模のIT企業と同じ問題を抱えていた」という。

同社は、「この状況を解決しなければ、エンジニアやディレクターはどんどん疲弊し、生産性は下がる一方になってしまう」と危惧。
2012年から代表取締役である宮嶌裕二氏を筆頭に「働き方改革」に取り組む決断をしたとのことだ。

「2012年の取り組みでは、『労働時間削減』を掲げ、過重労働状態の社員と社長が直接面談する機会をもうけたり、早朝インセンティブ制度やノー残業デーの推進、22時以降の深夜残業の禁止をしました」と、小出氏。

しかし、「社員の気持ちや『競争激化でリリース日を死守しなければならない』という現場の声を汲み取れておらず、結局はこの取り組みは成功しませんでした」と、当時を振り返った。

こうなれば、多くの場合「働き方改革」は頓挫してしまうことだろう。だが、宮嶌氏は、自身の経験から「社員が疲弊すれば生産性が下がり、組織が崩壊してしまう」と理解していたため、アプローチの仕方を変更。強い意志を持って「働き方改革 第2弾」にチャレンジしたとのことだ。

2013年に行われた取り組みのキーワードは「業務改善」だ。会議ルールの変更やオフィスファシリティ導入、業務効率化ツールの導入がその主な内容だったという。これについて、小出氏は次のように解説してくれた。

「特に、IT業界は競合企業がたくさんあり、エンジニアの争奪戦となっています。やはり大手の企業に優秀な人材が流れていくのですが、そこを何とか変えられるよう、宮嶌がエンジニアたちに直接話を聞き、『どうすればモバイルファクトリーで働き続けたいと感じるか』を吸い上げて、それを『働き方改革 第2弾』に反映しました。

たとえば、PCは全台フルスペックMac、キーボードとマウスはそれぞれが好きなものを揃えられるようにし、デュアルディスプレイも標準装備として支給するようになりました」。

このような充実した環境整備とIT投資は、「開発力が重要な経営資源」という同社の意志の現れとも言える。

「TeamSpirit」なら、勤怠管理と工数管理が同時にできる

前述の2013年「働き方改革第2弾」は、ちょうど同社がマザーズ上場の準備に入っていた時期とも重なる。監査法人から、「正確な勤怠管理と工数管理を」との指摘が入ったことが、社内の勤怠管理システムを刷新するきっかけになった、と小出氏。

上場を目指す上で、『正しい勤怠・工数管理』ができる環境を整えるにはどうすればいいか? と考えて、この2つが同時にできる『TeamSpirit』の導入を決めました」と、経緯を教えてくれた。

工数登録画面イメージ。勤怠管理との連動によって、勤務時間と整合のとれた工数を簡単・正確に管理し、プロジェクトの原価管理や業務プロセスの改善を実現することができます。

導入前の「TeamSpirit」の設定は、それぞれの企業によって異なるロール(役職・権限)を設定するなどの準備が必要だ。

同氏は、「設定の際には、不明点もたびたびありましたが、サポートサービスをお願いしていたので、分からないことがあればすぐに質問し、2015年に全社で一斉に導入することができました」と、振り返った。

管理職のマネジメントや毎月の締め作業がカンタンに

導入後は、「確かに、日々出社・退社の記録をつけるのは手間かもしれません。しかし、人件費の管理は経営の指標を決めるうえで必要不可欠なことなので、必ず行なってもらわなければならないことです。そうしたことから、以前のシステムを利用していた時から全社的に勤怠打刻は必ず行なうよう徹底してもらっていました。切り替えの際も、『TeamSpirit』が直感的なUIであることもあり、スムーズに移行できました」と、天野氏。

加えて、「TeamSpirit導入後は、管理職が『誰が打刻していて、誰がしていないか』をリアルタイムで把握できるようになったので、マネジメント層が行なう日次承認がしやすくなったと思います」とのこと。

また、同社には月最大4回まではリモートワークができる制度があるが、この制度を円滑に運用するうえでもマネジメントの役に立っている、と教えてくれた。

今後、介護や子育て、妊娠中や傷病によって通勤が難しくなる場合だけでなく、大規模な台風や大雨などが原因で自宅待機が必要なケースが増えてきたとしても、安全な環境でリモートワークができるだろう、と、両氏は期待を寄せる。

一方、そうした利点は実感しつつ、同社ではリモートワークによる「隠れ長時間労働」への警戒も怠っていないそうだ。異なる場所で働くため、管理職の目が行き届かず、打刻した時間と実際の業務時間が異なっていても把握し辛くなる、という問題は、今後、広く議論されることになるだろう。

小出氏も、「現状、リモートワークを実施する際はチャットで始業を知らせると同時にその日のTO DOを共有し、勤務時間内も細かくコミュニケーションを取って、終業時にその日の業務内容を伝えて退勤をメンバー全員に知らせる、という方法で、できる限りスタッフの動きを把握するように努めています。また、チャットツールのタイムスタンプと『TeamSpirit』の打刻データを突き合わせて、差異がないか注意し、『隠れ長時間労働』を見つけて対処することも考えているところです。こうした努力も合わせて、リモートワークをしたとしてもきちんと勤怠管理ができている状態を保っていきたいと考えています」と、対策について聞かせてくれた。

打刻画面と社内SNSのイメージ。標準搭載の社内SNSを利用し、出退勤打刻時にその日の予定や業務内容を共有することや 業務中のコミュニケーションをとることができます。

働き方改革は「好循環」の輪を広げていく

現在、同社の「働き方改革」は第3弾に突入しているという。

「生産性向上の加速と効率化」を組織文化として定着させていくべく、リモートワークやフレックスタイム制度の導入、有給推奨日、IT投資の加速、オフィスファシリティの充実が進んでいる、とのことだ。こうした環境と制度の充実を通して生産性を上げやすくし、エンジニアやディレクターの能力を最大限に引き出すことにつながるだろう。

結果として、2019年の営業利益は2013年から約7倍に、有給休暇の取得率は39%から86.1%に。加えて、残業時間は全国平均の1/2に保たれている。

こうした残業時間削減や有給休暇取得の実績、生産性向上施策が評価され、同社は2019年11月に東京労働局主催の「ベストプラクティス企業」にも選定されている。
これらの取り組みが功を奏してか、取り組み後の従業員の離職率は、取り組み以前に比べ10%〜20%のレベルで大幅に低下した状態を維持しているようだ。

こうした働く人にとって魅力的な環境は、優秀な人材や新卒の採用にもつながっており、「IT業界で就職・転職先として比較されるのはビッグネームの企業ばかり。エンジニアもディレクターも、コンスタントに10名くらい採用できるようになりました。

業界内のつながりでいい人材がいい人材を呼んでいて、『先輩が社員だから』あるいは、『ゼミの紹介で』といった新卒も少なくありません」と、小出氏は「働き方改革」の成果を示してくれた。

子どもたちの未来に残すビジネスをするために
〜育休が新たなチャレンジのきっかけに〜

モバイルファクトリーでは、男性の育児休暇の取得率について「2016年〜2019年度育児休暇取得率(休暇取得含む カフェ休暇等)57%」「2019年度 子の看護休暇利用率(有給)75%」と発表している。※女性社員育児休暇取得率は100%

代表の宮嶌氏も、2013年と2017年の2回取得したとのことだが、その際、「子どもたちの未来に残す、後世に残すためのビジネスを」と考え、復帰後、「ブロックチェーンを活用した事業」を新たに立ち上げた。こうした新たな発想が得られたのは、育休の"成果"と言えるのかもしれない。また、これに興味を持つ人材が同社にさらに集まるようになってもいるとのこと。2012年から始まった同社の働き方改革は、いまでは好循環を生み出す装置になっている、というわけだ。

そんな変化に富んだ職場において、今後TeamSpiritはどのように活用されていくのだろうか?

天野氏は、「今後は社員と会社とのエンゲージメントの把握に活用できたら、と考えています。
また、いまは有給休暇の残日数を確認するレポートなど、すでにテンプレートとして共有されているものを活用していますが、今後はより自社の人材育成の方針を反映したレポートを作れるよう、活用していきたいと考えています」と、見通しを示してくれた。

株式会社モバイルファクトリー

設立
2001年10月「有限会社モバイルファクトリー」設立。2003年から「株式会社モバイルファクトリー」へ
事業内容
モバイルサービス事業
子会社に「ステーションメモリーズ!」「駅奪取」を運営する株式会社ジーワンダッシュ、ブロックチェーンサービス事業を行う株式会社ビットファクトリーがある
URL
https://www.mobilefactory.jp/
取材年月
2020年3月