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勤怠管理で守るべき法律まとめ|2024年最新の労働基準法改正・よくある質問も解説

著者:チームスピリット編集部

「自社の勤怠管理を適切に行えているか」「知らない間に法律違反をしているのではないか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

勤怠管理に関連する法律はたくさんあるため、全てを遵法に運用することは容易ではありません。

しかしながら、主だった法律の内容や罰則をしっかりと把握しておくことはとても重要です。

本記事では、2024年時点で法律で定められている勤怠管理に関する14のルールについて、詳しく解説していきます。

▼チェックリスト(法律を遵守できているかを確認)

客観的な記録による労働時間の把握

労働条件の明示(賃金・労働時間・労働場所など)

賃金支払いの5原則(毎月1回以上・全額払いなど)

法定労働時間(1日8時間・1週40時間)の遵守

※36協定の締結が無い場合

休憩時間の付与義務の遵守(6時間超:45分など)

法定休日の付与義務(週1日または4週間に4日以上)

法定労働時間を超える労働をさせる場合の36協定の締結

時間外及び休日の労働の限度時間(月45時間・年360時間)

時間外・休日及び深夜の割増賃金の支払い

6カ月・8割以上勤務した労働者への年次有給休暇の付与

年次有給休暇の5日取得義務(年10日年休がある労働者)

年少者の時間外労働・休日労働は禁止

年少者の深夜・早朝勤務は禁止

1歳未満の子を育てる女性の育児時間の請求の拒否禁止

本記事では、まず勤怠管理に関する主な法律と罰則を紹介し、「法改正によって新たに対応を求められているポイント」などを解説していきます。

さらに、労働基準法への対応に関するよくある疑問や、法律を遵守して適切に勤怠管理を行う方法もお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

【労働基準法総まとめ】

勤怠管理のマニュアルとしてご活用ください

  • 労働基準法改正のポイントをチェックしたい
  • 2023年、2024年の残業に関する法改正ってなに?
  • 適切な勤怠管理における自社の課題を把握しておきたい

そもそも法改正前後での変更点はどこにあるのか、企業として取るべき対応策をこちらの資料におまとめしております。 労務担当者様の業務に直結する内容が満載ですので、是非お手元のマニュアル資料としてご活用ください。

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そもそも勤怠管理とは何かの全体像を改めて確認したい方はこちらの記事をご覧ください

勤怠管理とは|目的や必要性・企業の義務について解説

法律で定められた勤怠管理に関する14のルール一覧

まずは勤怠管理に関して、2024年時点で、法律で定められた14のルールを一覧表にして紹介します。遵守できているか、1つずつチェックしてみてください。

法律で定められたルール

法律

罰則

☐労働者の労働時間の状況を把握しなければならない

労働安全衛生法第66条の8の3

規定なし

☐労働時間などの労働条件を労働契約の際に示さなければならない

労働基準法第15条

30万円以下の罰金

☐賃金は、法令等で定めるものを除き、通貨で直接労働者に全額を支払わなければならない

労働基準法第24条

30万円以下の罰金

☐1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない

労働基準法第32条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

☐1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならない

労働基準法第34条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

☐1週に少なくとも1日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない

労働基準法第35条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

☐36協定を労働基準監督署に提出することで、法定労働時間を超える労働や休日労働をさせることができる

労働基準法第36条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

☐時間外労働は、1カ月について45時間および1年について360時間を限度としなければならない

労働基準法第36条第3項、第4項

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

☐時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合には政令で定める率以上で計算した割増賃金を支払わなければならない

労働基準法第37条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

☐雇入れの日から6カ月以上継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した労働者には年次有給休暇を与えなければならない

労働基準法第39条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

☐有給休暇を10日以上付与された労働者について、1年以内に5日は取得させなければならない

労働基準法第39条第7項

30万円以下の罰金

☐満18歳に満たない者については時間外労働、休日労働をさせてはならない

労働基準法第60条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

☐満18歳に満たない者については原則、22:00~5:00の間に労働させてはならない

労働基準法第61条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

☐1歳未満の乳幼児を育てる女性は、休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる

労働基準法第67条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

全ての項目について適切に管理が行われていれば、勤怠管理の基本的なルールは守れていると言えるでしょう。

※36協定とは、労働基準法第36条に基づいた、労働者と使用者(事業主)間で結ぶ約束事の書面のことです。

※就業規則とは、企業が定めた企業のルールブックのことです。

なお勤怠管理については、主に「労働基準法」「労働安全衛生法」が守れているかどうかを確認します。しかしその他にも労働に関する法律はあるので、より詳細を確認したい場合は、厚生労働省が公開している以下のページも参照するとよいでしょう。

14のルールについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

ルール1:客観的な記録による労働時間の把握(労働安全衛生法第66条の8の3)

2019年4月施行の労働安全衛生法で「客観的な記録による労働時間の把握」が義務化されました。

「客観的な記録」とは、タイムカードやICカード、パソコンの使用時刻の記録などをいいます。

つまり、働いた時間を従業員自ら(上司のチェックなしで)エクセルなどに入力する「自己申告制」や、月末に定時勤務時間を全従業員に割り振るような勤怠管理方法は、法律違反にあたる可能性があります。

ただし、やむを得ない理由により、客観的な方法で労働時間を把握しにくい場合には、自己申告制が例外的に認められています。

このルールについての直接的な罰則はありませんが、労働時間を把握していないことが原因で時間外労働の上限などに抵触した場合には罰則が課せられます。

ルール2:労働条件の明示(労働基準法第15条)

企業は、賃金・労働時間・労働場所などの労働条件を労働契約の際に示さなければなりません。

労働条件の明示義務に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられます。

例えば、新たにリモートワーク(テレワーク)を実施する場合には、リモートワーク可能な対象者や就業場所として、リモートワークを行う場所などを従業員に明示する必要があります。そのため、就業規則や労働条件通知書の変更が必要となる点に注意しましょう。

ルール3:賃金の支払(労働基準法第24条)

賃金は、法令等で定めるものを除き、通貨で直接労働者に全額を支払わなければなりません。

賃金支払いの5原則として、以下の5つを守る必要があります。

  • 通貨払いの原則
  • 直接払いの原則
  • 全額払いの原則
  • 毎月1回以上払いの原則
  • 一定期日払いの原則

賃金支払いの5原則に違反した場合には、30万円以下の罰金刑が科されます。

このルールについては、労働時間を適切に算出できていない企業が多いので、注意が必要です。

例えば「労働時間は5分未満を切り捨てて計算している」といった場合は、労働基準法違反になってしまいます。労働時間は必ず1分単位で算出し、それをもとに給与計算を行わなければいけません。

またその他にも、2023年の4月からは中小企業に対して「月60時間を超えて時間外労働を行う場合の割増賃金率」が50%に引き上げられたので、今一度見直しをしておくと良いでしょう。

もし適切に管理できていないと思う場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

給与計算は1分単位で行わなければ違法か?計算方法や罰則を解説

ルール4:法定労働時間(労働基準法第32条)

企業は、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させてはなりません。

法定労働時間を超えて労働させた場合、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。

※ただし、36協定を結ぶことで、法定労働時間を超えた時間外労働が可能になります。

36協定未締結の場合

・1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える残業は不可

36協定の一般条項を締結している場合

・月45時間、年間360時間を上限として残業が可能(法定休日労働を含まない)

36協定の特別条項を締結している場合

・年6回まで、月45時間を超える残業が可能(法定休日労働を含まない)
・月100時間(法定休日労働を含む)、年間720時間(法定休日労働を含まない)を超える残業は不可能
・2~6か月の平均が80時間を超える残業は不可能(法定休日労働を含む)

なお、36協定についてはルール7でも解説しています。

ルール5:休憩時間(労働基準法第34条)

1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければなりません。

労働時間

休憩時間

労働時間が6時間以内

なし

労働時間が6時間超8時間以内

45分以上

労働時間が8時間超

60分以上

これに違反した場合、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。

なお、休憩時間については、労働基準法上において3つの原則が定められています。

  • 休憩時間は労働時間の間に与える
  • 休憩時間は一斉に付与する
  • 休憩時間は使用者による制限を受けない

さらに詳しく知りたい方は、「労働基準法における休憩時間とは?休憩の3原則と法違反しないための対策を解説」もぜひご覧ください。

ルール6:法定休日の付与義務(労働基準法第35条)

企業は労働者に、1週に少なくとも1日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。これを「法定休日」といいます。

これに違反した場合、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。

なお、法定休日に労働をさせた場合、労働基準法上の「(法定)休日労働」に該当し、35%以上の割増賃金率を支払う必要があります(割増賃金については、ルール9でも解説しています)。

休日出勤をさらに詳しく知りたい方は、「休日出勤とは?割増賃金の有無や計算方法6パターンを網羅的に解説」の記事をご覧ください。

ルール7:時間外及び休日の労働(労働基準法第36条)

企業は、36(サブロク)協定を労働基準監督署に提出することで、法定労働時間を超える労働や休日労働をさせることができます。

逆に言えば、法定労働時間を超える労働や休日労働をさせる場合には、事前に36協定を締結し届け出なければなりません。

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労使協定を結ばずに時間外労働をさせた場合や、36協定に規定した時間以上に労働させた場合には、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

罰則の対象は、企業(法人)のみならず、実質的な権限を持ち労働者の指揮監督をしていた責任者の両者となる点に注意しましょう。

また、違法な長時間労働が続いており行政の指導がなされても改善されないなど特に悪質な場合には、厚生労働省や労働局のホームページで企業名などが公表されます。

社会的な信用低下にもつながりますので、十分に留意してください。

36協定については、36協定とは?残業に関するルールや法律・企業の義務を簡単に解説の記事も参考にしてください。

ルール8:時間外及び休日の労働の限度時間(労働基準法第36条第3項、第4項)

2019年4月に施行された働き方改革関連法により、残業(時間外労働)の上限規制が導入されました。

これにより、時間外労働は、1カ月について45時間および1年について360時間を限度としなければなりません。

臨時的かつ特別な事情がある場合のみ「月45時間・年360時間」を超えることが可能ですが、特別条項付き36協定の締結が必要となります。

上限規制に違反して残業をさせた場合、罰則として6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

さらに詳しく知りたい方は、「残業時間とは|労働基準法による定義や最新の法改正内容も解説」の記事もご覧ください。

ルール9:時間外・休日及び深夜の割増賃金(労働基準法第37条)

時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合には政令で定める率以上で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

算定基礎賃金に掛けて計算する割増賃金率は以下の通りです。

種類

支払う条件

割増率

時間外
(時間外手当・残業手当)

法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき

25%以上

時間外労働が限度時間(1カ月45時間、年360時間等)を超えたとき

25%以上(※1)

時間外労働が1カ月60時間を超えたとき(※2)

50%以上(※2)

休日
(休日手当)

法定休日(週1日)に勤務させたとき

35%以上

深夜
(深夜手当)

22時から5時までの間に勤務させたとき

25%以上

(※1)25%を超える率とするよう努めることが必要です。
(※2)中小企業についても、2023年4月1日から適用となっています。

時間外や休日・深夜労働に対する割増賃金の未払いがあった場合には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

ルール10:年次有給休暇(労働基準法第39条)

雇入れの日から6カ月以上継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した労働者には、年次有給休暇を与えなければなりません。

条件を満たす場合には、パートタイマーやアルバイト、契約社員などの非正規社員も対象となります。

年次有給休暇の取得は労働者の権利であり、労働者から請求があれば原則、会社は休暇を与えなければなりません。

拒絶した場合には労働基準法違反となり、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。

有給休暇については、「【社労士監修】有給休暇の管理・運用マニュアル|改正労働基準法対」の記事もご覧ください。

ルール11:年次有給休暇の5日取得義務(労働基準法第39条第7項)

2019年4月の労働基準法改正により、年5日の年次有給休暇の確実な取得が義務付けられました。

有給休暇を10日以上付与された労働者について、付与日から1年以内に5日は取得させなければなりません。

違反した場合は、1人あたり30万円以下の罰金が科されます。

違反者が多いと多額のペナルティとなる可能性があるので、十分気を付けましょう。

有給休暇を確実に取得させるためには、勤怠管理システムを使って有給取得率を可視化する方法がおすすめです。

詳しくは、「有給取得義務化とは?有給消化を促進させ、管理を効率化させる方法を解説」の記事もご覧ください。

ルール12:年少者の労働時間及び休日(労働基準法第60条)

満18歳に満たない者については、時間外労働、休日労働をさせてはなりません。

※年少者とは、満15歳以上満18歳未満の者を指します。

これに違反した場合には、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。

ルール13:年少者の労働時間及び休日(労働基準法第61条)

満18歳に満たない者については原則、22:00~5:00の間に労働させてはなりません。

これに違反した場合には、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。

ルール14:育児時間(労働基準法第67条)

1歳未満の乳幼児を育てる女性は、休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児(せいじ)を育てるための時間を請求することができます。

育児時間の申請があった場合には、企業は拒否できません。

申請を拒否した場合には、労働基準法違反として6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。

対応できていない項目があった場合は速やかに対処を行う

法律で定められた勤怠管理の14のルールで対応できていなかった項目がある場合には、すぐに管理を改めましょう。例えば割増手当を過少に計算していた場合には、正しい割増率で再計算を行い、対象者への説明と支給を速やかに行います。

対応せずにいると後述する罰則が科せられたり、民事訴訟に発展する可能性があります。

また、労働基準法違反をおこなった場合、労働基準監督署から行政指導を受け、企業名が厚生労働省のホームページで公表されてしまうことがあります。

労働基準法違反リストに載ると社会的信用を失う可能性があるため、そうなる前に迅速に対応することをおすすめします。

勤怠管理の法律に違反した場合の罰則

勤怠管理に関する法律に違反した場合、罰則はどのようなものがあるのかをまとめました。

概要

法律

罰則

労働時間の把握

労働安全衛生法第66条の8の3

規定なし

労働条件の明示

労働基準法第15条

30万円以下の罰金

賃金の支払

労働基準法第24条

30万円以下の罰金

法定労働時間

労働基準法第32条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

休憩

労働基準法第34条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

休日

労働基準法第35条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

時間外及び休日の労働

労働基準法第36条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

時間外及び休日の労働の限度時間

労働基準法第36条第3項、第4項

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

時間外、休日及び深夜の割増賃金

労働基準法第37条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

年次有給休暇

労働基準法第39条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

年次有給休暇の5日取得義務

労働基準法第39条第7項

30万円以下の罰金

年少者の労働時間及び休日

労働基準法第60条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

年少者の深夜業

労働基準法第61条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

育児時間

労働基準法第67条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

労働基準法では第13章を罰則として、各法律に違反した場合の罰則を定めています。

参照:労働基準法第13章

違反している事実が管轄行政である労働基準監督署によって発覚したとしても、直ちに罰則が科せられるケースはほとんどありません。まずは、是正するよう指導が行われます。

度々指導が行われても是正されないような悪質な場合には、罰則が適用されるうえ、企業名が厚生労働省や労働局のサイト上で公表されることもあります。企業名がサイトで公開されると、企業のイメージが大きく低下してしまう恐れもあるので注意が必要です。

罰則規定が無いものについても、労務トラブルが発展して民事訴訟となる可能性があります。法律違反に気づいた際は、仮にまだトラブルに発展していなくとも、直ちに是正することが重要です。

2023年・2024年施行の勤怠管理に関する法改正

勤怠管理に関する法律は度々改正が行われます。2019年には厚生労働省が「働き方改革」と称して、労働基準法をはじめ多くの法律を改正しました。本章では、2023年に行われた法改正の内容や、2024年に行われる法改正への対応のポイントを説明します。

2023年に行われた法改正と、企業に求められる対応

2023年4月の主な改正内容は次の通りです。()書きのものは勤怠管理に関するものではありませんが、改正された事項です。

  • 中小企業の60時間超時間外労働の割増率引き上げ
  • (給与デジタル払い解禁)
  • (男性の育児休業取得状況の公表義務化)

中小企業において、時間外労働が60時間を超えた場合には、60時間を超えた時間分の割増率が25%から50%へと引き上げられました(大企業はもともと50%です)。

例えば、80時間の時間外労働を行った場合には次のように計算しなければなりません。

残業手当=(時給×60時間×125%)+(時給×20時間×150%)

就業規則がある企業は、就業規則の割増手当の記載が最新の割増率になっているかどうかも併せて確認しましょう。

なお、従業員の同意が得られた場合には、60時間超時間外労働の引き上げられた割増率25%分を支払う代わりに、時間外労働を行った翌月の1日から2カ月間以内に有給の休暇を付与する対応も認められています。

2024年に行われる法改正と、企業に求められる対応

2024年4月からは建設業・運送業・医療業など、これまで時間外労働の上限規制が適用されていなかった業種についても、同様の対応が求められます。

▼2024年4月から時間外労働の上限規制が適用される業種

  • 工作物の建設の事業
  • 自動車運転の業務
  • 医業に従事する医師
  • 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業

事業・業務

事業・業務 猶予期間の取り扱い

(2024年3月31日まで)

猶予期間の取り扱い

(2024年4月1日以降)

建設事業

上限規制は適用されません。

●災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がすべて適用されます。

●災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について、

・月100時間未満

・2~6カ月平均80時間以内

とする規制は適用されません。

自動車運転の業務

上限規制は適用されません。

●特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。

●時間外労働と休日労働の合計について、

・月100時間未満

・2~6か月平均80時間以内

とする規制は適用されません。

●時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月までとする規制は適用されません。

医師

上限規制は適用されません。

●医療機関の水準により上限が異なります。

●時間外労働と休日労働の合計について、

・A水準...月100時間未満(例外あり)・年960時間

・B水準・C水準...月100時間未満(例外あり)・年1860時間

鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業

時間外労働と休日労働の合計について、

・月100時間未満

・2~6カ月平均80時間以内

とする規制は適用されません。

上限規制がすべて適用されます。

※参考:時間外労働の上限規制わかりやすい解説|厚生労働省

※参考:診療に従事する勤務医の時間外・休日労働の特例的な上限水準|日本医師会

これらの業種は、その業務性から長時間労働者を拘束しがちです。これらの業種の経営者や勤怠管理担当の方は、労働時間を適正なものにできるよう、早めに勤怠状況を可視化して問題点を把握し、対策しておくことが求められます。

これは法律違反?勤怠管理の法律に関するよくある疑問

本章では、勤怠管理を行ううえで疑問に思われる方が多い事項について解説します。

  1. 着替え時間は労働時間に含まれるのか?
  2. 「5分未満は切り捨て」のような、労働時間の丸め処理は違法か?
  3. 「アルバイト・パートだから有休無し」は違法か?
  4. 「アルバイト・パートだから残業手当無し」は違法か?
  5. 「1日の労働時間が8時間1分」だった場合、この1分も残業手当が必要なのか?

よくある疑問1.着替え時間は労働時間に含まれるのか?

結論としては、状況により個別に判断されます。

2017年に厚生労働省が発表した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、「労働時間として扱わなければいけない時間」について、次の記載があります。

使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

※引用:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインp.2|厚生労働省

つまり、企業が制服への着替えを就業規則等で明示しているときなどは、着替え時間も労働時間と判断される可能性が高いと言えます。

よくある疑問2.「5分未満は切り捨て」のような、労働時間の丸め処理は違法か?

労働時間は1分単位で計算して賃金を支払うのが原則です。「労働時間は5分単位で数えるので5分未満は切り捨てている」という企業もあるかもしれませんが、このような処理は労働基準法第24条の違反になります。

ただし、1カ月単位での時間外労働・休日労働・深夜労働の集計時間については、事務簡便化のため次のような端数処理が認められています。

一か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に一時間未満の端数がある場合に、三十分未満の端数を切り捨て、それ以上を一時間に切り上げること

※引用:昭和63年3月14日付通達 基発第150号p.220|労働省労働基準局長

例えば以下のような処理は認められています。

  • 1カ月間の時間外労働が10時間25分だった→25分は30分未満なので、切り捨てて時間外労働10時間で計算して割増手当を支払う
  • 1カ月間の時間外労働が10時間30分だった→30分は30分以上なので、1時間に切り上げて時間外労働11時間で計算して割増手当を支払う

どちらのケースも認められている端数処理なので問題ありません。

さらに詳しく知りたい方は、「給与計算は1分単位で行わなければ違法か?計算方法や罰則を解説」の記事もご参照ください。

よくある疑問3.「アルバイト・パートだから有給無し」は違法か?

たとえアルバイトやパートであったとしても(1週間の勤務回数が少なかったとしても)、以下に当てはまる場合は有給休暇を与えなければいけません。

  • 雇入れた(入社した)日から6カ月以上継続して勤務している
  • 出勤率が8割以上ある

「継続して勤務する」とは、労働契約の存続期間のことを指します。仮にシフト制の労働者が自己の都合により1カ月間勤務しなかったとしても、労働契約は働かなかった期間も続いているので継続期間に含めます。

そして出勤率とは、全労働日のうち出勤日に当たる日の割合を表したものです。

出勤率=出勤日数÷全労働日
  • 出勤日数:出勤した日数
  • 全労働日:所定休日や業務上の休業日などを除いた全ての日数(シフト制の労働者の場合は、雇入れ時に交わした労働条件通知書や雇用契約書に記載の週所定労働日数を参照する)

例えば、2023年4月1日から週3日勤務で雇用契約を結び、2023年10月1日までに65日勤務していた場合は、出勤率は次のように計算されます。

  • 出勤日数:65日
  • 全労働日:3日×26週=78日
  • 出勤率:65÷78≒83%

この場合は出勤率要件(8割以上)をクリアしているため、有給休暇を与える必要があります。

与えなければならない有給休暇の日数は、継続勤務年数に応じて異なります。詳細は以下の画像を参考にしてください。

※引用(PDF資料):【リーフレットシリーズ労基法39条】|厚生労働省

上記の例では、勤務期間が半年で週所定労働日数が3日なので、2023年10月1日に5日間の有給休暇が付与されます。1年後も勤務しており出勤率8割以上であれば、6日の有給休暇が付与されます。

よくある疑問4.「アルバイト・パートだから残業手当無し」は違法か?

雇用形態の名称に関わらず、法定労働時間を超えた場合には残業手当(割増手当)が必要です。そのためアルバイトだからといって1日10時間労働をさせて割増手当を支払わないのは違法となります。

1日8時間、1週40時間を超えた労働時間については割増手当の支払いが必要ですので、アルバイトも社員と同様の勤怠管理が求められます。

よくある疑問5.「1日の労働時間が8時間1分」だった場合、この1分も残業手当が必要なのか?

1カ月間の残業時間を合計した時間が30分未満であれば残業手当を支払わなくとも問題ありません。

1カ月における時間外労働、休日労働および深夜労働の各々の時間数の合計については端数処理が認められているためです。

ただし注意したいのは「よくある疑問2」で説明した通り、残業ではない通常の労働時間については、1分単位で賃金支払いが必要という点です。

残業手当すなわち割増手当分については端数処理が認められていますが、通常の労働時間については原則どおり1分単位で賃金を支払わなければなりません。

例えば、時給1,100円の従業員の月の労働時間合計が60時間15分で、その内15分が時間外労働だった場合を考えてみましょう。15分の割増手当69円(1,100円×25%×0.25h)は、事務簡便化のため切り捨てることが可能です。しかし通常の賃金については切り捨てせず、66,275円(1,100円×60.25h)を支払う必要があります。

アルバイト・パートの勤怠管理における法律の注意点

アルバイトやパートであっても正社員同様、法律に遵守する形で勤怠管理を行う必要があります。以下に、法律上で特に注意すべき点を挙げてみました。

  • アルバイト・パートであっても入社日から6カ月以上継続して勤務しており、出勤率が8割以上ある場合は有給休暇を与える必要がある
  • 1日8時間、1週40時間を超えた労働時間については、アルバイトなどであっても割増手当(残業手当)が必要になる
  • 法定休日に出勤させた場合、アルバイト・パートであっても正社員同様に休日手当(法定休日の割増賃金)を支払う必要がある
  • 労働時間は1分単位で計算して賃金計算を行わないと、法律違反となる可能性がある

パートタイム労働者だからといって、労働基準法の対象外になったり制限が緩和されたりすることはありません

法律の正しい理解や遵守を徹底し、正社員同様に管理していきましょう。

アルバイトやパートの勤怠管理に関しては、「アルバイト・パートの勤怠管理を効率化するシステム|シフト機能付き5選 で詳しく解説しています。アルバイトやパートを雇用している企業は、こちらの記事も参考にしてみてください。

派遣社員の勤怠管理と遵守すべき法律について

派遣社員における勤怠管理は、企業が直接雇用している従業員の勤怠管理とはいくつかの違いがあるため注意が必要です。

派遣社員を受け入れる企業は、勤怠管理の義務や責任について正しく確認しておかなければいけません。

派遣元・派遣先どちらにも勤怠管理を適切に行う責任がある

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派遣社員が雇用契約を結ぶ相手は「派遣元企業(派遣会社)」であり、賃金も派遣元企業から支払われます。

しかし実際に働く職場は「派遣先企業」なので、労働時間や時間外労働などの管理などは派遣先企業が行う必要があります。

派遣元企業が管理すべき項目

派遣先企業が管理すべき項目

賃金の支払い

年次有給休暇の付与

災害補償

産前産後休業

育児介護休業

労働時間(※)

時間外労働・休日出勤

休暇の取得申請

※派遣就業時以外の労働時間は派遣元企業が管理

「日々の労働時間や休暇状況の管理」という狭い意味での勤怠管理は、原則、派遣先企業に責任が発生します。つまり、法律に抵触するような働かせ方をすれば、派遣先企業が法律違反になり罰せられるということです。

派遣先企業は、直接雇用している従業員と同じように派遣社員も管理する必要があるため、派遣社員も派遣先の勤怠管理ルールに準じて管理することになるのが通常です。

「派遣社員だから休日手当・残業手当は不要」ということはなく、通常の従業員と同様に、労働基準法を遵守した運用が必要となります。

ただし、派遣社員に時間外労働と休日労働を行わせる場合には、「派遣元企業(派遣会社など)」の36協定に合わせる必要があるため注意が必要です。

36協定の基礎知識については、以下の別記事もぜひ参考にしてください。

36協定とは?残業に関するルールや法律・企業の義務を簡単に解説

派遣元は36協定が適用

派遣先企業は、「派遣元企業の36協定で定めた範囲内」でのみ、派遣社員に時間外労働と休日労働を行わせることができます。

仮に、派遣先企業が36協定により「1カ月45時間までの時間外労働」が可能だとしても、派遣元企業が「1カ月40時間まで」となっている場合には、1カ月40時間までしか時間外労働させることはできません。

派遣元企業の36協定で定めている内容を超えて労働させた場合、派遣先企業が法律違反となり、「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科される可能性があります。

そのため、派遣契約を結ぶ前に、派遣元企業の36協定の内容がどうなっているかをしっかり把握しておくことが大切です。

派遣社員の勤怠管理に関する内容は、「派遣社員の勤怠管理方法|派遣先と派遣元の義務や責任の違いとは? 」で詳しく解説しています。派遣社員と雇用契約を結ぶ際の参考にしてみてください。

法令を遵守して勤怠管理を行うための方法

勤怠管理を適切に行い、度々行われる法改正にも対応するには、勤怠管理システムの利用がおすすめです。

勤怠管理システムとは、従業員の勤怠状況などを管理できるシステムで

す。出退勤の打刻をすると正確な勤怠情報が記録され、労働時間の集計もシステムによって自動かつリアルタイムに行うことができます。

勤怠管理を手作業で行うと、「有休を5日取得できていない社員がいた」「時間外労働の限度時間を超えていた」など、意図せず法律違反の状態になってしまうことがあります。

特にタイムカードのみでの勤怠管理業務では、労働時間の集計をリアルタイムで行えなかったり、有給休暇の管理ができなかったりと、適切な勤怠管理を行うのが難しいでしょう。

一方で勤怠管理システムは、労働時間の集計をリアルタイムで行い、時間外労働の限度時間アラートを出したり、有給休暇の取得日数を管理したりできるので、正しく運用をしていれば、知らない間に法律違反をしてしまうリスクも抑えられます。また、集計業務にかかるコストや時間を大幅に削減することもできるでしょう。

ただし、勤怠管理システムでも法改正への対応を手動で行わなければならないものや、自社の就業ルールに合わないものもあるので、導入の際には事前に複数のシステムを比較し、不明点や確認事項をベンダー(システム提供会社)に必ず確認してから進めましょう。

勤怠管理システムについて詳細を確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください。

勤怠管理システムとは?メリットや解決できる課題・必要性を解説

まとめ|法律を正しく理解し、適切な勤怠管理を行おう

勤怠管理に関する法律にはさまざまなものがあり、法改正によって都度内容が変更になることもあります。「知らないうちに法律違反をしていた」という事態を防ぐためにも、守るべき法律と自社の働き方について正しく理解する必要があります。

特に「労働時間を適切に算出できているか」「2023年以降の法改正に対応できているか」などの点は、改めてよく確認しておくことをおすすめします。

法律を守って適切に労働時間を集計したり、勤怠管理や給与計算を行ったりすることが難しいと感じる企業は、勤怠管理システムを利用することがおすすめです。

勤怠管理システムを導入すると、以下のようなことができるようになります。

  • 残業時間の超過や有給休暇の未取得などに関して、アラートを出せる
  • 異なる働き方をする複数の従業員に関して、労働時間を正しく算出し、集計できる
  • 適切な勤怠管理にかかるコストや時間を削減できる

ぜひこの機会に検討してみてください。

【労働基準法総まとめ】

勤怠管理のマニュアルとしてご活用ください

  • 労働基準法改正のポイントをチェックしたい
  • 2023年、2024年の残業に関する法改正ってなに?
  • 適切な勤怠管理における自社の課題を把握しておきたい

そもそも法改正前後での変更点はどこにあるのか、企業として取るべき対応策をこちらの資料におまとめしております。 労務担当者様の業務に直結する内容が満載ですので、是非お手元のマニュアル資料としてご活用ください。

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