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基礎知識

図解でわかる「原価計算」のキホン!種類・計算方法を初心者向けに解説

著者:チームスピリット編集部

  • 「原価計算」とは何だろう?何をどのように計算すれば良いのだろうか
  • 初めて「原価計算」を学ぶ場合に注意すべきポイントはどこだろうか

原価計算の基本からしっかりと理解したい原価計算の担当になったものの、その目的や正しいやり方がわからず、不安に思う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、「なぜ原価計算をする必要があるのか?」という基本的な部分から、目的や種類に応じた6種類の原価計算方法の違い、具体的な計算方法、具体例を使った原価計算ステップの流れまでわかりやすく紹介します。

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初めて原価計算を行う方でも理解しやすい表現やイラストを入れているので、まずはこの記事で概要を掴み、そのうえで具体的な計算方法を確認していくことをおすすめします。

業種ごとの原価割合や、原価計算ができない時の対処法も解説するので、ぜひ参考にしてください。

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原価計算とは

原価計算とは、製品やサービスを提供するまでにかかった「原価(かかった費用)」を計算することをいいます。売上に対して原価がいくらかを計算すると粗利を求めることができるため、売上に対してどのくらい利益ができているかがわかります。

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例えば、売上1,000万円のプロジェクトの原価が500万円の場合、原価率50%・粗利率50%です。一方、原価が300万円なら原価率30%・粗利率70%です。この例では、後者のプロジェクトの方が利益率が高いことがわかります。

何にいくらかかったのかを計算し、目標原価を達成できていたか、どの費目がどれだけ増減したかを分析し、利益率の把握や改善に活用します。

原価計算における「原価」とは、製品を製造する際にかかった費用のことですが、業種により内訳が異なります。

  • 製造業の場合は、原材料や部品を購入し、加工して製品を作成する過程で必要な費用
  • 飲食業では、原材料費や水道光熱費など
  • プロジェクト型のサービスを提供している場合(代理店や制作会社など)は、プロジェクト完了までに必要な人件費など

原価計算の目的は「財務会計」と「管理会計」の2つ

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厳密な原価計算を行うためにはかなりの手間がかかりますが、なぜ原価計算を行う必要があるのでしょうか。

1962年に策定された原価計算基準によると、原価計算は大きく分けて「財務会計」と「管理会計」という2つの目的のために行われます。

財務会計のために行われる原価計算

社外に報告するために行うため、「正確性」が求められる

管理会計のために行われる原価計算

社内での利益確保・コストの見直しなどのために行うため、「リアルタイム性」が求められる

「財務会計」のために行われる原価計算

「財務会計」とは、外部の関係者(株主や債権者など)に向けて経営状況や財務状態を数値化して報告することをいいます。主に「財務諸表」を作成するために原価計算が行われるのですが、ここでは「正確性」がとても重要となります。

財務諸表は、貸借対照表、損益計算書、製造原価明細書からなる、企業の利害関係者に向けて財政状態を公表するための書類です。原価が間違っていると適切な財務諸表を作成できないため、原価を正しく把握する必要があるのです。

財務会計目的の中には、公定価格を決める根拠として原価計算を実施することも含まれます。

「管理会計」のために行われる原価計算

「管理会計」とは、会社が適切な経営をするための判断の材料として行う会計のことです。適切な管理会計を行うことで、適正な原価設定や利益率の改善に活用できます。

例えば、原価計算により目標原価となる「原価標準」を設定したうえで、実際にかかった原価を原価標準と照らし合わせて比較することで、「何にいくらかかっているのか」「原価を削減するためにはどのようなアクションが有効なのか」などを分析し、改善できるようになります。

またそれをもとに、適切な経営戦略を策定したり、各部門の予算を最適化したりすることが可能になります。

原価計算を行う3つのメリット

では、原価計算を行うと具体的にどのようないいことがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットを解説します。

  1. 経費削減につながる
  2. 適正価格を設定できる
  3. 経営改善の指標にできる

メリット1.経費削減につながる

原価計算を正確に行うことで、かかっている費用を可視化し、経費削減につなげることができます。

企業が利益を増やすには、経費を抑えてなるべく利益率を最適化した状態で、商品やサービスを提供することがポイントです。

しかし、いくら経費を減らしたいからといって、やみくもにコストカットを行えばよいわけではありません。品質を担保できる範囲で実施することが重要です。

そのため原価計算をすることで、どこにいくらの費用がかかっているのかを把握し、それをもとに適切なコスト削減の方針を考えることが望ましいでしょう。

メリット2.適正価格を設定できる

原価計算を正確に行うことで、原価に応じた適正価格を設定することが可能です。

完成した製品を販売する際、過度に値下げするとその分の利益が減少します。値下げを続けると原価割れを起こしてしまい、場合によっては利益がゼロとなるかもしれません。反対に、利益を出したいからと必要以上に値上げすることも、マーケティング戦略上避けたほうがよいでしょう。

企業が経済活動をする際は、高過ぎず安過ぎず、適正な利益を出すことが大切です。

そのためには、製品やサービスの提供に必要な「原価」や「原価率」を正しく管理することが重要です。原価計算を適切に行い、目標値や実績を管理することが重要なのです。

メリット3.経営改善の指標にできる

原価計算を適切に行うことで、経営改善の指標としても活用できます。製品やプロジェクトごとに原価計算を行い、どの製品やプロジェクトが利益を出しやすいか分析できるからです。

原価計算により

  • どこでどう原価を抑えると利益が出るのか
  • いくらまでなら費用を増やしても大丈夫か
  • 各部門の予算配分をどのようにするべきか

など個別の商品やサービスごとに状況が見えてくるので、計算結果を経営改善の指標とすることもできるでしょう。

原価の構成要素(材料費・労務費・経費)

原価は、大きく「材料費」「労務費」「経費」の3種類の費用に分けられます。

構成要素1.材料費

材料費とは、製品を作るために消費される原料や部品などの費用です。

材料費の費目例

費目

該当する費用の例

原材料費、素材費

製品の材料

(買入)部品費

外部から購入して製品に組み入れた部品

(工場)消耗品費

工場の設備に対して使われる消耗品

消耗工具(器具)備品費

固定資産として扱わず減価償却不要となる10万円以下の工具や備品

構成要素2.労務費

労務費には、製造に関わった従業員の賃金や社会保険料が含まれます。

▼労務費の費目例

費目

該当する費用の例

賃金、給与、雑給

従業員に支払う給与


※賃金=現場従業員

※給与=現場外の従業員

※雑給=パート・アルバイト

賞与手当

ボーナス、夏季・冬季手当、報奨金、通勤手当など各種手当

退職金、退職給与引当金、退職給与引当金繰入

支払った退職金、退職金として積み立てている費用

福利厚生費、法定福利費

社会保険料、健康診断費用、社宅、食事代など

企業によっては、労務費の一部を「販売費及び一般管理費」とする場合もあります。企業のルールに従って分類しましょう。

労務費については「労務費とは?定義や人件費との違い・内訳・計算方法【具体例あり】」記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

構成要素3.経費

経費とは、製品製造のために支払った「材料費、労務費以外の費用」です。

▼経費の費目例

費目

該当する費用の例

外注加工費

製造工程を外部の会社に委託する際に、外部会社に支払う費用

通信費

インターネットや郵便、電話料など、各種通信にかかった費用

減価償却費

固定資産の取得価額を減少させ、費用化するための勘定

租税公課

各種税金、会費、組合費など

旅費交通費

役員や従業員が会社の業務のために出張・外出した際にかかった出張旅費や交通費

保管料

製品の保管を倉庫業者に委託した際に、倉庫業者に支払う費用

「材料費と労務費以外は経費に当たる」と覚えておくとよいでしょう。

それぞれの原価は「直接費」と「間接費」に分けられる

ここまで紹介した3つの原価は、さらに「直接費」と「間接費」に分けられます。つまり、それぞれの費用について「特定の製品に直接関係した費用」と「間接的に関係した費用」に分けて計算するのです。

直接費

・製品製造やプロジェクト開発・販売そのものに関わる費用

・一つの製品やプロジェクトに紐づいている

間接費

・製品製造やプロジェクト開発・販売に直接は関わらないが、間接的に必要となる費用

・複数の製品やプロジェクトにまたがって発生することがある

なお、これまで紹介した原価は、それぞれ以下のように「直接費」「間接費」に分類されます。

材料費

直接材料費

材料費、買入部品費など

間接材料費

補助材料費、(工場)消耗品費、消耗工具(器具)備品費など

労務費

直接労務費

直接的に製造に関与した労働者への賃金など

間接労務費

間接的な作業に対する賃金、給料、退職給与引当金、福利厚生費、法定福利費など

経費

直接経費

外注加工費など

間接経費

光熱費、通信費、租税公課、旅費交通費など

間接費は、製造原価として各製品に割り振らなければいけません。各製品に割り振る処理を「配賦(はいふ)」と呼びます。

例えば、製品A、製品B、製品Cを開発している事業所の光熱費1万円を時間で配賦する場合、以下の表のようになります。

製造にかかった時間

配賦率

配賦額

製品A

80時間

50%

5,000円

製品B

48時間

30%

3,000円

製品C

32時間

20%

2,000円

このように、直接費なのか間接費なのかによって原価計算の方法が異なるため注意が必要です。

それぞれの原価は「変動費」と「固定費」にも分けられる

原価計算では、製造原価を「変動費」と「固定費」に分ける考え方もあり、後に行う原価計算の方法に影響を及ぼします。

  • 変動費:売上や生産量などに応じて増減する費用(材料費など)
  • 固定費:常に一定額発生する費用(設備の維持費など)

後述する原価計算の方法では「固定費を原価に含めるかどうか」によって手順が異なるケースもあるので、理解しておきましょう。

なお、製造原価を変動費と固定費に分けることで、黒字と赤字の境となる損益分岐点が求められます。損益分岐点を確認することで、どの程度の売上を達成すれば(コストをどの程度まで抑えれば)いくらの収益が出るかを見極められます。

▼損益分岐点の図解

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【図解】原価計算のやり方|6種類の原価計算方法と計算式

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ここからは原価計算の方法と計算式を解説していきます。

原価計算の方法には6つの種類があり、会社の規模や業種、製品の生産方法などを総合的に判断して、適切な計算方法を選択します。

下記の3つの区分の中から、それぞれ適切なものを選択して計算することになります。

  1. 総合原価計算と個別原価計算(製品の生産方法の違い)
  2. 全部原価計算と直接原価計算(原価の集計範囲の違い)
  3. 標準原価計算と実際原価計算(原価の計算方法の違い)

※原価計算の方法の選択で判断に迷う場合には、専門家の意見を参照することがおすすめです。

それぞれについて見ていきましょう。

総合原価計算と個別原価計算(製品の生産方法の違い)

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製品の生産方法の違いによって「①総合原価計算」と「②個別原価計算」のどちらかを選択することがあります。

①総合原価計算:原価の合計額を生産数で割る計算方法

総合原価計算では、一定期間に発生した製造原価を生産量で割って製品1個あたりの製造原価を求めます。

製品1個あたりの製造原価=総製造原価÷生産数

多くの企業では、製造原価の会計期間は1ヵ月となります。従って、1ヵ月ごとに会計を締め切り、製造原価を計算します。

総合原価計算の最大のメリットは、生産数に左右されず、効率的に原価計算ができることです。また、直接費と間接費を区別しないため、シンプルに原価が計算できます。

主に、食品・飲料製造業、電気製品製造業など、大量生産する場合に採用されている方法です。

②個別原価計算:プロジェクト・製品単位で個別に原価を計算する方法

個別原価計算は、プロジェクトや製品単位で原価を集計し算出する方法です。直接費と間接費を別々にしてから、プロジェクトや製品1個あたりの原価を計算します。

▼導入例

  • 建設業、広告代理店
  • システム開発やコンサルティング、プロジェクトによりサービスが変わる場合
  • 特注された機械のような個別に製造される受注生産の場合

1つのプロジェクトにどの程度の原価がかかっているのかを明確にし、利益率を把握するとともに、別案件の見積もり作成に活用することもできます。

個別原価計算のやり方については「個別原価計算とは?総合原価計算との違いや計算方法・仕訳例をわかりやすく解説」記事で詳しく解説しています。

全部原価計算と直接原価計算(原価の集計範囲の違い)

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原価に固定費と変動費の両方(全て)を含めるのか、それとも変動費のみを計上するのかで、「①全部原価計算」と「②直接原価計算」に分類されます。

①全部原価計算:全ての原価を計上する

全部原価計算は、「固定費+変動費」で計算する、つまり製造に使われた全ての原価を集計して原価として計上する方法です。

固定費は売上によって変動しない費用なので「売上に紐づく原価」は見えづらいというデメリットがあります。しかし長期的に見ると、製造のために必要になった全ての費用を含めた原価を算出できるため、正確な利益率を計算できるというメリットがあります。

会計制度では全部原価計算が原則とされているため、財務諸表作成の際には全部原価計算が採用されることが一般的です。

②直接原価計算(部分原価計算):変動費のみ計上する

直接原価計算は、製品の原価を固定費と変動費に分類し、変動費のみで費用を計算します。

固定費は含めないことから「部分原価計算」とも呼ばれる方法です。先述した損益分岐点の算出にも用いられます。

固定費は売上によって変わるわけではありません。この方法では変動費のみを原価にするため「売上に対して原価がどれだけかかったのか」を正確に把握できるというメリットがあります。

ただし、制度会計上、直接原価計算での財務諸表作成は認められていません。直接原価計算を行った場合は固定費を調整する必要があることから、実務ではあまり採用されていないのが現状です。

標準原価計算と実際原価計算(原価の計算方法の違い)

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事前に予測値として出す「①標準原価計算」と、実際にかかった原価を計算する「②実際原価計算」により、その原価が目標に対してどれだけの差額が出たのか、適切なコスト管理ができているかを分析することができます。

①標準原価計算:事前に目標とする原価を決めておく

標準原価計算では、商品を生産する際に目標とすべき「標準原価(=原価標準)」を定めます。この計算を行っておくことで、目安となる原価を定め、原価割れが発生していないか、製造やプロジェクトの進行は想定通りに行われているかといったことを判断できます。

例えば、1つの製品を作るのに以下の原価がかかるとします。

直接材料費

単価(1kgあたり)150円の材料が2,000kg必要

→150円×2,000kg=300,000円

直接労務費

・従業員の時給が1,500円

・労働時間が合計100時間必要

→1,500円×100時間=150,000円

製造間接費

・電気代が1時間500円

・機械の維持費が1時間300円

・管理費が1時間200円

・かかる時間が100時間

→(500円+300円+200円)×100時間=100,000円

合計

550,000円

この場合の標準原価は550,000円となります。

②実際原価計算:実際にかかった原価を計算する方法

実際原価計算は、標準原価計算で求めた目標値に対して、実際にかかった原価を計算する方法です。

例えば、標準原価計算で求めた「標準原価」が55万円だった場合に、実際原価が以下の通り54万円だったとします。

前項で説明した実際原価(実際にかかった原価)が、この550,000円と比べてどのような費用になるのかを確認することで、目標原価が達成できたかどうかや、目標原価を達成するためにどの部分を修正したらよいかを考えられます。

実際にかかった原価

標準原価

直接材料費

材料の価格の変動などで320,000円かかった

300,000円

直接労務費

通常よりも早く製品が完成し、140,000円しかかからなかった

150,000円

製造間接費

通常よりも早く製品が完成し、80,000円しかかからなかった

100,000円

合計

540,000円

550,000円

この場合、実際原価が標準原価よりも安く済んでいるため、原価による赤字は免れていると判断することができます。

このとき、実際原価が標準原価を上回ってしまった場合は、何がどれだけ増加したのかを分析することで、改善点を見つけることができます。

原価計算の流れを具体例を交えて解説(財務会計目的・管理会計目的)

ここからは、原価計算のやり方や流れを解説していきます。

原価計算にもさまざまなものがあるので、今回はプロジェクト型ビジネス(代理店や制作会社など、労務費が原価の大部分を占めるビジネス)における「②個別原価計算」を例に挙げて解説します。

※あくまで一例です。事業内容や状況によって異なるケースもあります。

プロジェクト型ビジネスでは原価の大部分が従業員の人件費(工数)となります。つまり、「工数×稼働単価」をプロジェクト全体で出したものが原価となるイメージです。

そのため、まずは「どのくらい工数がかかったか」を正確に出して、その後原価計算を行う必要があります。

  • 財務会計が目的の場合は、「正確性」が重要となる
  • 管理会計が目的の場合は、「リアルタイム性」が重要となる

いずれの場合も、工数を正しく集計・管理できる工数管理ツールの導入がおすすめです。

財務会計目的と管理会計目的、それぞれの場合の原価計算の流れを、具体例を交えて解説していきます。

財務会計目的の原価計算例

Webページの制作プロジェクトを行うとして、プロジェクト全体でかかった費用が、以下の通りだとします。

勘定科目

値段

使用目的や内訳

支払方法

外注費用

10,000,000円

本プロジェクト専用

普通預金

労務費

2,000,000円

60%:本プロジェクト専用

40%:会社全体での使用分のうち一部

普通預金

経費

500,000円

50%:本プロジェクト専用

50%:会社全体での使用分のうち一部

現金

※プロジェクト内で作成されるのは、ライティング(文章)とデザイン。それぞれにかかった費用は、60%と40%で按分する。
※実務では、これらの情報は「製造指図書(せいぞうさしずしょ)」により指示される。

個別原価計算では、製品ごとにかかった原価の内訳を原価計算表に記入しながら、仕訳を行います。原価計算表とは、製品ごとにどの費用がどれだけかかっているかを記録する表です。

▼原価計算表(例)

ライティング

デザイン

外注費用

直接労務費

直接経費

間接労務費

間接経費

製造原価

原価計算表に製品ごとの製造原価内訳を記入しながら、費目別→部門別→プロジェクト別に原価計算を行います。

ステップ1.費目別原価計算

最初に、部門ごとに発生した外注費用・労務費・経費を、直接費と間接費に振り分けます。

1.外注費用・労務費・経費を支払った金額を仕訳する

勘定科目

借方

勘定科目

貸方

外注費用

10,000,000

普通預金

10,000,000

労務費

2,000,000

普通預金

2,000,000

経費

500,000

現金

500,000

2.直接費、間接費に分ける

仕訳をした後、労務費と経費を直接費と間接費に分けましょう。プロジェクトに直接関係している費用は直接費です。プロジェクトと直接リンクさせづらい費用は間接費になります。

今回は、以下のように分類されます。

外注費用

全て本プロジェクト用なので直接費

労務費

60%(1,200,000円)が本プロジェクト専用=直接費

残り40%(800,000円)は会社全体での使用分のうち一部=間接費

経費

50%(250,000円)が本プロジェクト専用=直接費

残り50%(250,000円)は会社全体での使用分のうち一部=間接費

その後はまず、直接費を按分しましょう。原価計算表の按分比率を基準にして、ライティングとデザインそれぞれに按分します。

ライティング部門

デザイン部門

外注費用

6,000,000

4,000,000

直接労務費

720,000

480,000

直接経費

150,000

100,000

間接労務費

間接経費

製造原価

次に、振り分けた直接費の仕訳をしましょう。仕訳では、製品に振り分けた直接費は全部「仕掛品(しかかりひん)」勘定とします。

「仕掛品」は、製造途中の製品を指す勘定科目です。仕訳上は製造途中でかかった費用を全部仕掛品勘定にまとめ、最後に製品ごとの製造原価として振り分けます。

そして、間接費の仕訳です。間接費は「製造間接費」勘定へ振り替え、直接費と別であることががわかるよう仕訳をします。

勘定科目

借方

勘定科目

貸方

仕掛品

10,000,000

外注費用

10,000,000

仕掛品

製造間接費

1,200,000

800,000

労務費

2,000,000

仕掛品

製造間接費

250,000

250,000

経費

500,000

振り分けた製造間接費は、次の部門別原価計算で製品それぞれに配賦します。

ステップ2.部門別原価計算

部門別原価計算は、ステップ1で仕訳した間接費を部門ごとに配賦する工程です。製造間接費として仕訳した間接労務費と間接経費を、ライティング分(60%)とデザイン分(40%)にそれぞれ按分して原価計算表に記入します。

ここでライティングとデザインそれぞれの製造原価合計を出せるので、合計を計算し記入しましょう。

ライティング部門

デザイン部門

外注費用

6,000,000

4,000,000

直接労務費

720,000

480,000

直接経費

150,000

100,000

間接労務費

480,000

320,000

間接経費

150,000

100,000

製造原価

7,500,000

5,000,000

原価計算表では製品ごとに製造間接費を振り分けましたが、仕訳では、製造間接費は一度仕掛品にまとめます。仕掛品の金額が確定した段階でまとめて製品に分配するので、問題ありません。

勘定科目

借方

勘定科目

貸方

仕掛品

800,000

製造間接費

※間接労務費

800,000

仕掛品

250,000

製造間接費

※間接経費

250,000

※(借方)仕掛品1,050,000/(貸方)製造間接費 1,050,000のように製造間接費をまとめても可

ステップ3.プロジェクト別原価計算

最後に、プロジェクト別の原価計算を行います。

1.仕掛品勘定の合計を按分比率(60%:40%)に沿って、各部門ごとの製造原価に按分する

勘定科目

借方

勘定科目

貸方

ライティング部門

デザイン部門

7,500,000

5,000,000

仕掛品

11,450,000

2.各製品の原価と原価計算表の製造原価合計が合致することを確認する

ここで合計が一致しない場合は、仕訳や計算が間違っています。仕訳や計算から不一致の原因を見つけ、最終仕訳と原価計算表の製造原価合計を必ず一致させましょう。

管理会計目的の原価計算例

管理会計を目的として原価計算したい場合には、従業員が入力した工数データから、「どのプロジェクトにどの程度原価がかかっているのか」を可視化できるシステムを活用するのがおすすめです。

システムを使えば、リアルタイムでデータを確認できるため、担当者が計算することなく、プロジェクト型ビジネスの原価計算が行えます。

▼システムを使った原価計算のイメージ

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上記の画面では、システムによって集計した「工数」と、あらかじめ設定した従業員の「稼働単価」などを掛け合わせています。各プロジェクトで、原価がどれくらいかかっているかが一目で分析できるのです。

原価計算は、製造原価から利益を算出して終わりではありません。原価計算で算出した利益や費用が予算と比べてどうだったのかまで分析する必要があります。

  1. 正しい工数入力により正確な労務費や各種費用を算出する
  2. 算出した費用を用いて、原価を算出する
  3. 原価や各種費用、売上から利益を算出する
  4. 算出した原価、費用、利益が予算と比べてどうだったかを分析する
  5. 必要に応じて、プロジェクトの軌道修正や、次回以降の新規プロジェクトに今回のデータを活かす

予実管理を行うことで、売上・工数・原価・外注費・経費・利益(粗利)を定量的に管理することが可能です。

さらに、予実管理に特化したシステムを使えば、プロジェクト終了後の実績だけではなくプロジェクト進行中の進捗もリアルタイムで確認が可能です。

リアルタイムで状況把握することにより、最終的に赤字とならないよう即時に対応し、軌道修正できる利点があります。
プロジェクト型ビジネスにおける予実管理については、「プロジェクトの予実管理とは?手順4ステップと活用ツールを紹介」記事も合わせてお読みください。

業種による原価率の違い

原価計算は「利益を上げるため」に行います。適正に利益を上げるためには、正確な原価の算出だけでなく適正な「原価率」を知っておくことも欠かせません。

原価率とは、売上高における原価の割合です。売上原価を売上高で割って算出されます。

売上原価÷売上高×100

原価率は適正な原価を設定するために使用され、業種により異なります。以下の表は、経済産業省が2022年に発表した「企業活動基本調査確報(2021年度実績)」を参考にした、業種ごとの平均的な原価率です。

適正な原価率は、業種ごとに変わります。自社製品の原価率は平均に近いかどうか、下の表を使って一度確認してみましょう。下表より原価率が高い場合は、製造原価を下げられるポイントはないか、財務諸表を見て分析してみることをおすすめします。

業種名

原価率(単位:%)

※%の小数第2位四捨五入

製造業

79.4

情報通信業

70.0

ソフトウェア業

72.0

情報処理・提供サービス業

70.3

インターネット附随サービス業

39.0

卸売業

87.0

小売業

70.0

物品賃貸業

83.8

デザイン業

67.7

エンジニアリング業

86.0

広告業

81.4

飲食業

51.7

サービス業

72.7

※売上原価=売上高ー売上総利益で算出
※参考:企業活動基本調査確報(2021年度実績)|経済産業省

原価計算が難しいと感じたときに取るべき2つの対処法

ここまで内容をご覧になり「原価計算は難しい」「理解しづらい」と感じた方もいらっしゃるでしょう。

原価計算が自分でできない場合、2つの対処法が考えられます。原価計算ができるシステムを導入することと、税理士に依頼することです。

対処法①:自社の業種に対応した原価計算システムを導入する

原価計算が自動でできるシステムも存在します。各種費用を入力するだけで原価計算ができるシステムを導入すると、原価計算が容易になるでしょう。

例えば、プロジェクト型ビジネス(広告代理店や制作会社・コンサルティング業など)向けに提供されている原価管理システム「チムスピ工数」を利用すれば、どの作業にどのくらいの人数と時間を費やしたのか(=工数)という情報を取得・分析し、原価の把握や利益率の改善に役立てることができます。

▼工数入力のイメージ

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▼入力された工数をもとに原価が自動で算出されるイメージ

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システムを活用することで、例えば以下のようなことが行えます。

  • メンバーごとの作業時間、作業内容を入力することで、工数を管理する
  • 勤怠との連携で、労働時間と工数を一致させる
  • 工数の入力漏れや数値の不整合・プロジェクトの赤字化を察知してアラートを出す
  • プロジェクトやタスクをランクごとに単価を設定する(アドオンが必要)
  • 作業メンバーごとに単価を設定し、プロジェクトの原価を計算する(アドオンが必要)

原価計算システムはたくさんあり、システムごとに得意な業種や扱う計算方法が存在します。

原価計算システムを導入する際は、自社ではどんな項目が必要か、自社の環境に合っているか、既存システムとの連携ができるといった観点で、自社に合ったシステムを選ぶことが大切です。

対処法②:原価計算の仕訳や計算が得意な税理士に相談する

原価計算に関する業務を得意とする税理士もいます。税理士に依頼することで、専門的な知識が必要な場合でも正確に原価計算を行えるでしょう。

社内で原価計算を適切に行えない、もしくは不安がある場合は検討したい方法です。

ただし税理士に依頼すると、顧問料だけでなく代行記帳料金や決算料が必要な場合があります。原価計算システムの導入より高くなってしまうかもしれない点に注意が必要です。

原価計算の効率化には工数管理ツールの活用がおすすめ

ここまで原価計算の計算式や計算方法、流れについて詳しく解説してきました。しかしながら「自社内でこれをミスなく計算するのは難しそうだ」と感じた方も多いのではないでしょうか。

原価計算を手作業やエクセルなどで行おうとしても、計算が複雑なので、どうしても計算ミスが起こりがちです。

ここからは、原価計算で計算の間違いが起こりやすい原因と、計算ミスを防ぎ原価計算を効率化するために工数管理ツールをおすすめする理由を解説します。

原価計算において間違いが起こりやすい原因

原価計算における計算間違いには、単純な計算ミス以外にも次のような原因が考えられます。

  • メンバー個々における時間単価の設定ミス
    (例:Aさんの時間単価5,000円なのに、4,000円で計算してしまった)
  • 正確な工数が把握できていない
    (例:AさんはXプロジェクトに10時間費やしたのに9.5時間で計算してしまった)

原価計算に間違いがあると、正しい原価管理が行えず、利益確保やコスト削減の支障となります。

このような間違いが起こらないようにするためには、ミスを回避できるシステム(=工数管理ツール)を導入するのがおすすめです。

原価計算において工数管理ツールの活用を推奨する理由

先述した原価計算の流れにおいて、正確な労務費の算出は欠かせません。手間をかけずに労務費を正確に算出するには、工数管理ツールを活用することがおすすめです。

工数管理ツールでは、メンバー個々の時間単価だけでなく個別のプロジェクト別工数も管理が可能です。入力した工数が自動的に反映されるので、リアルタイムで工数や労務費を可視化できます。

また、プロジェクト収支や原価計算機能を持つ工数管理ツールなら、労務費を基準にして原価や利益を算出する原価計算(財務会計目的)だけでなく、予実管理や予算策定で工数データを活用する管理会計目的でも活用可能です。

※工数管理ツールによって機能は異なります。

▼チームスピリットシリーズでの「工数管理」と「原価計算」のイメージ

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自社でどの工数管理ツールを選ぶべきかについては「工数管理ツールのおすすめ10選を一覧で比較|機能・費用・選び方も解説」にて詳しく解説しています。

まとめ|原価計算のやり方は業種や事業内容によって異なる

原価計算は、何にいくらかかったのかを計算し、目標原価を達成できていたか、どの費目がどれだけ増減したかを把握するために重要です。利益率の改善や経営判断に活用します。

原価計算を正しく行うには、そもそも何が原価になるのかや、それぞれの分類(直接費と間接費、固定費と変動費など)を理解しておかなくてはいけません。

またそれらによって、計算方法が異なる点にも注意が必要です。

原価計算が難しいと感じた場合は、原価管理システムを導入したり、専門家に相談したりすることもおすすめです。

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