残業管理の適切な方法とは?うまくいかない要因や対策を紹介
著者:チームスピリット編集部
残業管理を適切に行わないと、残業代を正しく払えず法律違反になってしまったり、勤怠ルールを守れず会社の秩序が乱れてしまったりすることがあります。
- 「残業時間の集計や計算をうまくできているか不安」
- 「残業ルールを守れない従業員がいる」
このような場合は、残業管理に適したツールを活用したり、環境を整備したりして、適切に残業管理を行えるようにする必要があります。
そこで本記事では残業管理に課題を抱えている企業向けに、法令を遵守しながら効率的に残業管理を行うための方法を解説していきます。
残業管理をしやすくするための社内ルールの導入方法や具体例なども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
この記事の監修者
1989年北海道むかわ町生まれ。民間企業で総務・IR広報業務に従事したのち経済団体に転職。創業・融資・労務に関する相談を経て人材とITの必要性を強く実感し、ITに強い社労士事務所としてロームテックを2020年に開業。労務やITの情報を発信している。
https://www.ro-mutech.com/なぜ残業管理が必要なのか
残業管理を適切に行うべき理由は、大きく次の2つに分けられます。
- 従業員の健康確保とエンゲージメントの向上
- 法律の遵守
2023年に実施した「残業管理の実態調査」アンケートによると、残業管理の目的について以下の回答結果が出ています。
つまり残業管理を実施する具体的な理由は、以下のリスクを回避するためだと言えます。
- 長時間労働が増えることで、従業員の集中力やモチベーションが低下する
- 長時間労働によって従業員の健康やメンタルが損なわれ、離職率が上がる
- 労働基準法第36条残業時間の上限規制に抵触する
- 法令違反により、罰金や訴訟に発展する
残業管理の方法を見直すべき企業の特徴とは
残業管理の方法や社内の仕組みを見直す緊急度が高いのは、次に当てはまる企業です。
- 従業員の業務実態を考慮せずに業務量を割り振っている
- 労働時間の長さを評価する文化がある
- 生活残業(意図的な残業)を行っている社員がいる
上記に当てはまっている場合、不要不急の残業やサービス残業が起こりやすくなり、長時間労働が発生しやすい環境になっている可能性があります。そのため、残業時間(労働時間)を正確に管理することや、残業に関する社内ルールを整備することによる対策が必要です。
それでは次の章から、具体的な残業管理のポイントや知っておきたい法律、ルール作りの方法について解説していきます。
残業管理で必要なこと
残業管理をする際は、以下の情報を正しく把握・集計する必要があります。
- 従業員ごとの日々の残業時間
- 従業員ごとの月の残業時間の合計
- 残業時間のうち、法定内残業と法定外残業の時間
日々の残業時間やその合計時間を把握していなければ、残業代を正確に計算することができず、未払い残業代の発生など法律を犯してしまう恐れがあります。
また、ただ残業時間を集計するだけではなく、それが法定内残業と法定外残業のどちらにあたるのか、さらには法定外残業なら残業代の割増率が25%なのか50%なのかなどを適切に判断し、計算を行わなければいけません。
残業の定義を改めて確認
残業管理を適切に行うには、残業の定義について把握しておくことが不可欠です。
残業とは、企業の就業規則で定めた所定労働時間(従業員が働くことになっている時間)を超えた労働のことを指し、たった1分の残業であっても給与の対象となります。
法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて行う残業に関しては「法定外残業」とされ、法定外残業分の割増した賃金の支払い、いわゆる残業代の支払いが必要となります。法定労働時間内の残業は「法定内残業」となり、賃金の割増は発生しません。つまり、残業がすべて法定外労働にあたる(賃金の割増が必要になる)わけではありません。
例えば、就業規則によって週30時間の勤務を定められている従業員が、35時間の労働(5時間の残業)を行った場合は、5時間の残業は法定内残業とみなされます。
法律上の残業や法定内残業・法定外残業についてより詳しく知りたい方は「残業時間とは|労働基準法による定義や直近の改正ルールも解説」もご覧ください。
適切に残業管理をする上で知っておきたい法令
本章では、残業管理に関する法令の詳細や違反した場合の罰則について解説します。労働基準法の中で、残業管理との関連性が高い条項は以下のとおりです。
概要 | 法律 | 内容 | 違反した場合の罰則 |
---|---|---|---|
法定労働時間について | 労働基準法第32条 | 1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない | 6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
時間外及び休日の労働について | 労働基準法第36条 | 36協定を労働基準監督署に提出することで、法定労働時間を超える労働(残業)や休日労働をさせることができる | |
時間外労働(法定外残業)の上限時間について | 労働基準法第36条第3項、第4項 | 時間外労働は、1カ月について45時間および1年について360時間を限度としなければならない | |
時間外労働(法定外残業)の賃金計算について | 労働基準法第37条 | 時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合には政令で定める率以上で計算した割増賃金を支払わなければならない |
次に下記3つの詳細を解説します。
- 時間外及び休日の労働について
- 時間外労働(法定外残業)の上限時間について
- 時間外労働(法定外残業)の賃金計算について
時間外及び休日の労働について
そもそも残業を従業員に行わせるには「36協定(サブロク協定)」と呼ばれる労使協定を締結し、管轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。
36協定を締結していない状態で残業や休日労働をさせたり、36協定の有効期間を過ぎているにも関わらず残業・休日労働をさせたりすると法律違反となります。
36協定の詳細は以下の記事も参考にしてください。
36協定とは?残業のルールや上限規制・義務をわかりやすく解説 | 基礎知識
時間外労働(法定外残業)の上限時間について
2019年4月の法改正によって、時間外労働は月45時間、年360時間※を限度とすることが定められました。
繁忙期などの臨時的な事情がある場合は、上記の定めを超えることが認められるケースもあります。ただしいかなる場合でも、以下の条件を超えることは禁止されています。
- 時間外労働の合計が年720時間以内※
- 複数月(2~6カ月)の平均時間外労働が80時間以内(休日労働を含む)
- 月100時間未満(休日労働を含む)
- 時間外労働が月45時間を超えた月が、年間6カ月(6回)以内※
※「年360時間」および「年720時間」および「時間外労働が月45時間を超えた月が年間6カ月(6回)以内」の起算日は、36協定に記載した起算日が基準になります。
(例:36協定に記載の起算日が4月1日の場合、その年の4月1日から翌年の3月31日までの1年間の時間外労働をカウントします。)
上限ルールは以下のイメージの通りです。違反した場合は、企業へ罰則が科されるおそれがあるため注意が必要です。
ルール①(原則)は、通常の36協定を締結している場合のルールで、②~④は特別条項付きの36協定を締結している場合のルールです。
残業管理をうまく行えず、従業員が自由に残業をする環境になると、気づかないうちに上限を超えて法律を犯したり、労働環境の悪化や会計上の問題を招いたりしてしまう可能性があります。
そのため残業管理では、日々の残業時間やその合計時間を、できる限りリアルタイムで可視化することが求められます。
時間外労働(法定外残業)の賃金計算について
時間外労働は割増賃金の対象となり、従業員に対して以下の条件で割増賃金を支払う必要があります。
▼時間外労働の賃金計算
条件 | 割増率 | 計算式 |
---|---|---|
月の時間外労働の合計が60時間以内 | 25% | 時間外労働時間×1時間あたりの賃金×1.25 |
月の時間外労働の合計が60時間を超える | 50% | 月合計60時間を超えた時間外労働時間×1時間あたりの賃金×1.5 |
※いずれも1分単位の残業時間で賃金計算を行う必要があります。
残業の状況により、従業員に支払うべき賃金が変わります。例えば「月の残業時間の合計が60時間を超えるのか/60時間以内なのか」「通常の残業なのか/深夜残業なのか」などによって賃金の割増率が異なるのです。
残業代の計算方法や割増率の詳細については「残業代の計算方法|時間外労働の集計・割増率・法律を初心者向けに解説 | 基礎知識」も併せてご覧ください。
【2024年施行】医療・建設業・運送業の残業に関する法改正について
2024年度からは、「医療・建設業・運送業」3つの業種について残業の法改正が決定しました。これらの業種についても残業の上限規制が導入されます。残業管理を適切に行うために、以下の内容を把握しておきましょう。
業種 | 法改正の内容 |
---|---|
医療 | ●医療機関の水準により上限が異なります ●時間外労働と休日労働の合計について ・A水準...月100時間未満(例外あり)・年960時間 ・B水準・C水準...月100時間未満(例外あり)・年1860時間 |
建設業 | ●災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がすべて適用されます ●災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について、 ・月100時間未満 ・2~6カ月平均80時間以内とする規制は適用されません |
運送業 | ●特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります ●時間外労働と休日労働の合計について、 ・月100時間未満 ・2~6か月平均80時間以内 とする規制は適用されません ●時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月までとする規制は適用されません |
これら3業種の上限ルールについて詳しく知りたい方は、「残業時間とは|労働基準法による定義や最新の法改正内容も解説」もご覧ください。
残業管理がうまくいかないときの主な原因と対策
- 残業管理(勤怠管理)を行っているにもかかわらず、正確な残業時間を把握できていない
- 残業時間の集計は行っているが、従業員の残業をコントロールできていない
- 割増率を正しく適用できていない
以上にあてはまる場合は、労働時間管理のやり方自体に課題を抱えている可能性があります。主な原因として、次の3点が考えられます。
- タイムカードでの打刻が適切に運用されていない
- 残業時間の確認・集計をリアルタイムで行えていない
- 残業することへのハードルが低い
それぞれ確認していきましょう。
タイムカードでの打刻が適切に運用されていない
タイムカードを使っていて、打刻忘れや打刻の修正・後から手書きで労働時間を書き込むケースなどが多い場合は、正確な労働時間を把握できていないおそれがあります。
以下のような工夫をすることで、タイムカードでの打刻を適切に運用するよう心がけましょう。
- オフィス・店舗の入口やデスクの近くなど、目に入りやすい場所に打刻機を配置する
- 打刻の際にできる行列への対策として、打刻機を複数台設置する
- 打刻を忘れないように注意喚起するメールを送ったり、ポスターを貼ったりする
- 就業規則や打刻ルールを従業員に改めて周知する
なお直行直帰や在宅勤務をする従業員が多い場合は、タイムカードでの労働時間管理に限界がある可能性もあります。必要に応じて、Web上で打刻を行える勤怠管理システムの導入を検討するとよいでしょう。
残業時間の確認・集計をリアルタイムで行えていない
残業時間の集計を週1回、月1回などのペースで行っていると「集計したときにはすでに所定の残業時間をオーバーしていた」という事態に陥る可能性があります。
エクセルで残業管理を行っている場合は、集計のタイミングを月末よりも前倒しにすることで、月の残業時間をオーバーさせないようにしましょう。また上限時間を超えた残業が頻繁に発生している場合は、集計頻度を高くして残業状況をモニタリングする必要があります。
従業員が多く、エクセルでこまめに集計するのが難しいと感じる場合は、勤怠管理システムの「アラート機能」「レポート・ダッシュボード機能」に頼るのがおすすめです。
勤怠管理システムを使えばリアルタイムでの集計結果がダッシュボードに表示されるため、部署/個人ごとの残業時間や、残業時間の上限を超えそうな従業員などが一目でわかります。製品によっては、設定した残業時間の上限を超える前にアラートで通知できるものもあります。
例えば勤怠管理システム「チムスピ勤怠」なら、月の残業時間の上限だけでなく、3段階の警告を設定できます。その他に残業時間の超過回数によって通知を出すことも可能です。
残業することへのハードルが低い
残業が日常的になっている部署や職場環境だと、定時で業務を切り上げにくい風潮がありついつい必要性のない残業をしてしまうケースがあります。残業のハードルが低くなると、残業時間が嵩み残業代が多く付くようになり、残業しないといつもより給与が少なくなるため再び残業をするといった負のループに陥りがちです。
これを防ぐには、「残業管理がやりやすくなる社内ルール「残業申請制」とは」で紹介する残業申請制を取り入れたり、残業抑制を人事評価の際の加点要素にしたりすることが有効です。これらの措置を管理職が率先して取り組むことでより効果が期待できます。
残業管理は誰の仕事か?担当部署や業務の流れについて
残業管理は、労務管理する部署が行うのが一般的です。企業によっては人事部や総務部、経理が担うこともあるでしょう。
残業管理の実務は以下の流れで実施します。
- 残業に関する社内ルールを定める
- システムやタイムカード等で従業員の労働時間(残業時間)を把握する
- 従業員の残業時間をモニタリングし、上限時間を越えないように管理する
- 集計した残業時間を給与計算に反映させ、給与として支払う
正しく残業管理をするには、「誰が、どのような働き方で、いつ、どのくらい残業をしたのか」を正しく記録しておくことが求められます。
残業管理を行う担当者は、法律違反となる未払い残業代や上限超えの残業が発生しないよう細心の注意を払い、勤怠管理の修正・確認や自社の雇用形態の種類や働き方の制度把握など常に緊張感を持って業務に従事しています。
そういった悩みや作業時間を削減するには、社内の残業ルールを見直したり勤怠管理システムを導入したりすることが有効です。
それでは次の章からは、従業員の残業時間を把握する具体的な方法について解説していきます。
残業時間を適切に管理・分析する方法
残業時間を正確に把握しつつ一覧管理するには、できる限りリアルタイムで残業時間を集計できる仕組みを作ることがおすすめです。事前に月末時点での合計残業時間をある程度予測でき、より正確な残業管理を行えるからです。
そのためには「従業員一人ひとりの残業時間を可視化できるツール」を使いましょう。
おすすめの方法は次の2つです。
- 勤怠管理システムを使う
- エクセルの表を使って、こまめにタイムカードの内容を集計する
どちらにもメリットとデメリットがあり、企業の規模や就業規則の内容によって合う方法は異なります。次章からそれぞれの違いや、具体的な管理方法を解説していきます。
おすすめの方法1.勤怠管理システムを使う
勤怠管理システムとは、従業員が打刻した内容を自動で記録し、勤怠情報の集計やグラフ化などを容易に行えるシステムのことです。
残業管理を行う労務担当者の大きな悩みとして「打刻漏れや修正などで、集計前の修正作業が多い」「働き方が多様になり、エクセルやタイムカードの勤怠管理に無理が生じている」という点が挙げられるでしょう。自社に合った勤怠管理システムを導入できれば、残業管理に関するこれらの悩みを軽減することが可能になります。
例えば勤怠管理システムを使うと、搭載されている機能にもよりますが、次のようなことが行えます。
- 打刻機能により、1分単位で正確な残業時間(労働時間)を把握する
- 複雑な就業規則であっても、残業時間を正確に集計する
- リアルタイムで集計した残業時間を、部署別や残業時間が多い順などでレポート表示する
- 1日の残業時間を超過したとき、月の合計残業時間が上限に近づきそうなときなどにアラート通知を行う
- 法改正が行われた際、最新法令の内容を自動的にシステムに反映させる
- (工数管理機能がある場合)どの業務にどれくらいの時間を取られているのか把握する
※システムによってはできない場合があります
これらの機能を活用すると、残業管理の目的である「残業代を正確に計算すること」「残業時間の上限を超えないように管理すること」「会社として残業の実態を把握すること」などを実現しやすくなります。
多くの製品ではシステム自体が法律に準拠した設計になっているので、最初に必要な設定を済ませてしまえば、あとは日々システムから打刻するだけで残業管理を行えます。また、システム側がエラーを自動で検知してくれるため、入力漏れやミスが起こりにくくなるのも大きな利点です。
また、ダッシュボード機能を使えば残業時間の分析が楽になります。例えば、以下のような方法で残業時間の分析が行なえます。
- 36協定の上限に近い人のみを抽出し、残業の多い従業員の傾向を把握する
- 残業量を、月ごと、部署ごとなどでソートして、残業の傾向を把握する
- (工数管理機能がある場合)残業時間に各社員がどんな業務を行っていたのかをチェックする
▼ダッシュボード一覧表示するイメージ
▼区分ごとに残業時間が集計されるイメージ
▼残業60時間を超過した(もしくは超過しそうな)従業員を一覧で確認するイメージ
以下に当てはまる企業は、勤怠管理システムを使った残業管理がおすすめです。
- 夜勤がある
- 部署によって勤務時間が異なる
- 変形労働時間制(シフト勤務など)を採用している
- フレックスタイム制を採用している
- 直行直帰や在宅勤務の従業員が多い
- 休憩を複数回とれる
- 自社独自の就業規則を採用している
- タイムカードの集計などに多くの工数を割いている
勤怠管理システムを使った残業管理の事例
勤怠管理システムを導入したことで、残業管理の課題解決につながった企業の事例を2つ紹介します。
事例1:労働時間の見える化で、長時間労働改善へ
業種 |
製造・メーカー |
---|---|
システム導入前の課題 |
・長時間労働を是正したかった ・タイムカードによる管理では月締め時まで残業時間を把握できていなかった |
システム導入後の成果 |
・リアルタイムで残業時間が可視化された ・自動アラート通知によって、長時間労働の改善につながった ・働き方改革関連法にもスムーズに対応できた |
製造業ならではの長時間労働に悩んでいた大創株式会社は、若手社員の離職を食い止め、社員の心身の健康を保つために勤怠管理システムを導入しました。
システム導入前はタイムカードによって勤怠管理を行っていた同社は、月末の締め作業をするまで残業時間を確認することができない状況にあったと言います。
しかし勤怠管理システムを導入することで労働時間を「見える化」でき、さらにアラート通知機能を活用したことで長時間労働の改善に至りました。
製造業による長時間労働削減チャレンジが職場に起こしたプラスのスパイラル
事例2:働き方の「見える化」を実現し、健康経営を推進
業種 |
IT・システム開発業 |
---|---|
システム導入前の課題 |
・エクセルを使って勤怠管理をしていたため残業時間のリアルタイムな把握ができず、過重労働発生のリスクがあった ・月またぎの週の時間外労働時間の管理が難しかった ・メールで残業申請を送っており、個人や組織の働き方の傾向をつかむことができていなかった |
システム導入後の成果 |
・労働時間をリアルタイムでレポート化することができるようになり、個人の働き方を可視化できるようになった ・残業時間が特定の時間を超過した社員へは自動でアラートメールを通知するなど、効果的な労働時間対策ができるようになった |
ソフトウェア開発を手掛ける株式会社ジェイエスピーは、以前までエクセルの勤務表で出退勤の時間、工数等を管理していました。
エクセルでの勤怠管理にはミスが多かったこと、また労働時間をリアルタイムで把握できない点が課題でした。
しかし働き方関連法への対応が必要となったことをきっかけに、勤怠管理システムを導入。システムの導入後は、レポート機能やダッシュボード機能を活用することで社員の働き方を可視化できるようになり、健康経営のための取り組みを進めることができるようになったといいます。
「健康経営」を掲げ、勤怠管理業務の効率化と働き方の「見える化」を実現。時間単位の年次有給休暇や新たな特別休暇などの新制度も無理なく導入。
勤怠管理システムの注意点
フレックスタイム制や変形労働時間制などを採用している場合は、多様な働き方に対応した勤怠管理システムを選ぶ必要があります。自社の就業規則に応じた設定ができるかどうか、導入前にしっかりと確認しておきましょう。
勤怠管理システムの選び方については、以下の記事をご覧ください。
おすすめの方法2.エクセルの表でタイムカードの内容を集計する
勤怠管理のエクセルファイルを作成し、残業時間を管理する方法です。タイムカードに印字された時刻をエクセルファイルに入力することで、残業時間を集計・管理します。
上記のエクセルファイルでは、出勤/退勤時刻と休憩開始/終了時刻を入力すると、自動的に残業時間を算出・集計できるように関数式が組まれています。I列に日々の残業時間が記録され、その月の残業時間の合計がK1セルに表示されるのです。
そのためタイムカードからの転記を日課にすれば、常に最新の残業の合計時間を把握できます。
以下に当てはまる企業は、エクセルの表を使った残業管理がおすすめです。
- 1日8時間労働・週5日勤務など、就業規則がシンプル
- 現在タイムカードを使って勤怠管理を行っている
- 法定休日が日曜日、もしくは休日労働が発生しない
- 夜勤がない
- 直行直帰の業務やリモートワーク(テレワーク)が少ない
エクセルの注意点
エクセルは誰でも簡単に編集できてしまうことから、勝手に表の数値や関数を書き換えられないように管理する必要があります。間違えて関数式を変更してしまったり、転記の際に誤った数値を入力してしまったりと、ミスが起こりやすい点にも注意しましょう。
また複雑な就業ルールを定めている企業では、エクセルでは管理しきれないケースが多いです。今後労働基準法の改正があった際や会社の就業規則を変える際にも、新しいルールに沿って関数や各項目の名称などを自社で書き換えなくてはいけません。
このように手動管理ゆえの難しさがあるため、従業員が多い場合や、法令違反をより確実に防ぎたい場合は勤怠管理システムを使うことをおすすめします。
エクセルでの残業管理については、以下の記事をご覧ください。関数がすでに入力された、勤怠管理表のテンプレートもダウンロードできます。
法令違反リスクを回避する「残業ルール」の作り方
残業時間を正確に管理することとあわせて実施したいのが、残業に関する社内ルールを作ることです。法律や各企業で定められた残業時間の上限を超えないようにコントロールするには、一人ひとりの従業員への残業に関する意識改革も必要になります。
まずは、自社ではどのような残業ルールを導入できるか考えてみましょう。企業で採用されることが多い残業ルールの例を紹介します。
- 月1回の「ノー残業デー」を作る
- 残業をする際は事前に管理者に申請し、承認を必要とする(残業申請制)
- 21時以降の業務を原則禁止にする
- 残業抑制を人事評価項目にする
ただし残業ルールは、無理のない範囲で取り入れられるものにする必要があります。最初は実現可能な範囲でルールを設定し、徐々に基準を上げていくことが成功のためのポイントです。
ルールを導入する際は、以下の点に注意しましょう。
- 必要に応じて、残業時間や労働時間に関する就業規則を修正すること
- 残業ルールの内容と導入する目的を従業員全員に確実に周知すること
- 形骸化しないよう、会社一丸となって取り組むこと
- 従業員や部署毎の業務実態を把握して、適切な業務配分をすること
なお、従業員に対して適切な業務配分を行うには、日頃から工数を管理して従業員の業務内容を把握しておく必要があります。工数を削減して業務量を適正にするためのポイントについては、以下の記事も合わせて参照してください。
次章では、比較的導入しやすく残業管理にも効果的な残業ルールである「残業申請制」について解説します。メリットや始め方、導入のポイントについて確認してみましょう。
残業管理がやりやすくなる社内ルール「残業申請制」とは
残業申請制とは、残業する場合に上司への申請・承認を必要とする社内ルールのことです。
従業員は残業する日に、事前に見込まれる残業時間や業務内容を管理者に申請します。その申請内容を管理者が承認することで、残業が許可されるという流れです。
残業申請制には、以下のようなメリットがあります。
- 「どの従業員がどのような理由で残業しているのか」「残業が発生しやすい業務は何か」といった、数値だけではわかりにくい情報を得られる
- 従業員が時間を意識して残業に取り組めるようになる
- 残業理由を報告する必要があるため、不要な残業の抑制につながる
残業申請には、以下のような「残業申請書」などの紙帳票で行う方法と、残業申請に対応した勤怠管理システムなどを使ってシステム上で行う方法があります。
引用:厚生労働省|「労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう」(PDF資料)
在宅勤務など、管理者と勤務場所が異なる従業員がいる場合は、パソコン上で申請できる環境を整えましょう。
残業申請制を導入するときのポイント
導入の際は、以下のルールを明確に定めておきましょう。
- 誰が承認するか、承認者が不在の場合は誰に承認権限を移譲するか
- 承認・不承認をどのような基準で行うか
- 申請を忘れた場合はどのように対応するか
- どのような基準で申請を行うか(例:終業時刻が19時を超える場合、残業時間が30分を超える場合、所定労働時間を1分でも超える場合 など)
定めたルールは社内マニュアルや規程内に明記し、従業員に周知しましょう。特に管理職には申請に関してのルール説明を丁寧に行い、形骸化させないように運用することが大切です。
残業申請書の様式
システムなどを使わずに残業申請制を運用する場合は、社内で使用する「残業申請書」を準備しましょう。残業申請書の様式はビジネス文書のテンプレートサイトなどから無料でダウンロードできますが、ワード(Word)やエクセルなどを使って自社で作成することもできます。
残業申請書を作成する場合は、以下の項目を組み込みましょう。
- 申請書のタイトル(「残業申請書」「残業届」「時間外勤務申請書」など)
- 記入日
- 所属部課
- 申請者氏名
- 残業予定日・時間
- 業務内容・申請理由
- 管理者の承認・不承認欄
勤怠管理システムで残業申請する方法
残業申請制を導入する際には、勤怠管理システムを活用する方法もおすすめです。残業申請機能が搭載されているシステムであれば、残業の申請から承認までをシステム上で完結させられます。紙と比較して申請に時間がかからず承認もスムーズになるため、ルールとして定着させやすくなります。
▼残業申請のイメージ
申請が必要な条件を細かく設定できるシステムを使えば、自社のルールに合わせた運用が可能です。申請の回数を集計する機能などもあれば、残業の多い部署や従業員を割り出し、注意を促すこともできます。
まとめ|残業管理を簡単かつ正確に行うには、勤怠管理システムがおすすめ
残業管理をより効率的に、かつ正確に行うには、勤怠管理システムを使うことがおすすめです。
システムを使って従業員一人ひとりの労働時間を可視化すれば、残業時間を正確に把握することができます。リアルタイムで労働状況を「見える化」できるダッシュボード機能や、所定の残業時間を超過しそうな場合に通知を出すアラート機能などを活用すると、法律に違反する前になんらかの手を打てるでしょう。
また残業時間の把握に加えて、残業を管理するためのルールを設定し従業員の残業状況をコントロールできれば、法令違反のリスクを低減させることが可能です。
2024年以降も働き方改革に関連した法改正が予定されており、各企業には労働基準法への迅速な対応が求められるでしょう。アナログ管理での法改正対応に難しさを感じる企業は、法改正に対応した勤怠管理システムの導入も検討してみましょう。
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- 就業規則の変更や法改正に都度対応できるシステムを利用したい
- 自社に合わせたシステム運用を提案・サポートしてもらいたい
このような企業には、100以上の勤務パターンへの対応実績があり、会社独自の細かいルールや法改正にも柔軟に対応できる勤怠管理システム「チムスピ勤怠」が最適かもしれません。
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