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給与計算は1分単位で行わなければ違法か?計算方法や罰則を解説

著者:チームスピリット編集部

  • 「アルバイト・パート社員の給与計算の際、15分などの単位で労働時間を切り捨てている」
  • 「残業時間は一律、30分単位で切り捨てて計算している」

このような場合、労働基準法に違反しているとして罰則が科せられる可能性があるため注意が必要です。

なぜなら労働基準法では「労働時間の算出は、原則として1分単位で行うもの」とされているからです。トラブルを未然に防ぐために、給与計算の正式なルールをしっかりと把握して法令を遵守しましょう。

本記事では、労働時間を1分単位で正確に算出しなければならない理由を、根拠となる法律を用いながら解説していきます。

また1分単位で正しく給与を計算する方法についても、具体的な例をあげながら説明します。

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原則として、1分単位で給与計算をしないと違法になる

労働基準法には「賃金全額払いの原則」があり、たった1分の労働でも労働した分の対価は給与として全額支払われるべきとされています。

労働基準法に違反せずに給与計算をするためには、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。

正しく給与計算するための4つのポイント

  1. 1分単位の労働に対しても、賃金を支払う必要がある
  2. 労働時間を一律で切り捨てるなど、労働者にとって不利な計算をしてはいけない
  3. 労働者にとって有利になる条件なら、労働時間を切り上げて計算してもよい
  4. 法定外残業の時間など、一部の端数処理は例外的に認められているケースがある

これらのポイントの根拠となるのは、労働基準法に記載された条文です。

労働基準法第24条には「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定められています。

この「その全額を支払わなければならない」という部分が、「1分であっても労働していれば全額賃金として支払われるべき」と解釈されているのです。

※参考:労働条件・職場環境に関するルール|厚生労働省

1分単位で給与計算が必要とされることから、労働時間を切り捨てて処理することは原則として認められていません。

ただし給与計算の実務を行いやすくするために、残業代などの計算に対しては例外的に労働時間の端数切り捨てが認められるケースもあります。詳細は後の章「給与計算で労働時間の切り捨て処理が認められるケース」で解説します。

給与計算で労働基準法に違反した場合の罰則について

雇用者が労働時間を不当に切り捨てて給与計算していた場合、労働基準法第24条や第37条の違反に該当する可能性があります。

違反した際の罰則は以下のとおりです。

労働基準法第24条

30万円以下の罰金

労働基準法第37条

6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

なお従業員や労働組合、労働基準監督署から給与計算の法令違反を指摘されたからといって、すぐに上記の罰則が科せられるわけではありません。まずは労働基準監督署による実態調査が行われ、是正勧告を受けたのち、問題が是正されず違反だと認められれば、司法処分が下されます。

給与計算で労働時間の切り捨て処理が認められるケース

原則として「労働時間を切り捨てて給与計算することはできない」と説明しましたが、便宜的に認められている例外があります。

それは「1カ月の間の時間外労働・休日労働・深夜労働それぞれの合計に1時間未満の端数が出た場合のみ、端数処理を認める」というものです。

このルールのポイントを以下にまとめます。

  • 対象となるのは「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」
  • 端数処理が認められるのは、上記それぞれの労働時間の1カ月の合計に端数が出た場合
  • 端数処理の仕方は、「30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げ」

※この特例は、昭和63年に厚生労働省労働基準局が出した通達に基づいています。

▼端数処理が認められる例

  • 1カ月の時間外労働の合計時間が10時間15分だった場合に、端数を切り捨てて、10時間として計算する
  • 1カ月の休日労働の合計時間が2時間15分、深夜労働の合計時間が2時間45分だった場合に、それぞれを2時間、3時間として計算する

▼端数処理が認められない例

  • 1カ月の時間外労働の合計時間が10時間35分だった場合に、端数を切り捨てて10時間として計算する
  • 時給で働くパート従業員の1カ月の法定内労働の合計時間が100時間10分だった場合に、端数を切り捨てて100時間として計算する

30分以上の端数は切り上げになるため、前者は11時間として計算する必要があります。

後者はそもそも、1カ月の給与計算で端数処理が認められるのは「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」のみなので、時給社員の法定内労働時間の端数を切り捨てることはできません。100時間10分として計算するか、労働者の不利にならないように切り上げて計算を行う必要があります。

アルバイト・パート・派遣などの時給で働く労働者の給与計算についても、法定労働時間内であれば端数処理はできません。遅刻や早退分の給与を控除する場合も、原則1分単位での計算が必要なため、注意が必要です。

労働者にとって有利な給与計算であれば認められる

上記で紹介したケースに当てはまっていない場合でも、労働者にとって有利な給与計算であれば、基本的に法令違反を問われることはありません。

▼端数処理が認められる例

18時終業ルールの企業で、17時50分に早退した従業員の終業時間を18時に切り上げて給与計算した(労働者にとって有利な切り上げなので、適法とみなされる)

▼端数処理が認められない例

9時始業ルールの企業で、25分の遅刻をした従業員の始業時刻を9時30分に切り上げて給与計算した(労働者にとって不利になるように労働時間を切り上げて計算すると、違法とみなされる可能性が高い)

後者の例では、始業時刻を9時25分として給与計算する必要があります。ただし法令に則って一定の減給制裁を加えることはできます。

労働時間を端数処理したことで起こりうるトラブル

労働基準法では、従業員は以下の年数までさかのぼって未払い賃金や残業代を請求できることになっています。

2020年4月1日以降に支払われた賃金

3年(段階的に5年まで延長)

2020年4月1日より前に支払われた賃金

2年

そのため雇用者が労働時間を不当に切り捨てていた場合、従業員から切り捨てた労働時間に対する未払い賃金を請求される可能性があります。

従業員が賃金未払いの請求をする際は、まず示談交渉が行われるケースが多いです。示談では解決しない場合や、従業員が示談交渉を望まない場合は、労働基準監督署や弁護士などを介して未払金が請求されます。

訴訟に発展した場合、企業側が悪質だと認められると未払金に加えて「付加金」の支払いを命じられることもあります。

なお2022年には、5分未満の労働時間を切り捨てていた大手飲食チェーンが、1分単位での計算に改めることをきっかけに、従業員に対して16億円以上の未払金を支払うことになった事例もあります。

全国でファミリーレストラン「ガスト」などを展開する「すかいらーくホールディングス(HD)」(東京)は8日、従業員の労働時間を5分単位で計算し、5分未満は端数を切り捨てる運用を改め、7月から1分単位で計算すると明らかにした。全国のパートやアルバイト約9万人を対象に、これまで切り捨てていた労働時間分の賃金を再計算し、過去2年分支払う。支払額は計16億~17億円を見込んでいる。

引用:すかいらーく 5分未満の切り捨て賃金を支払いへ 未払い分は9万人対象 、16〜17億円に|東京新聞

同社は法律違反により未払金を請求されたわけではありませんが、この問題を巡って、同社系列の店舗で働くアルバイトの男性が加入する全国一般東京東部労働組合が、是正を求め団体交渉を行っていたようです。

時給を1分単位で計算する方法を解説

パートやアルバイトなどの時給社員の給与を1分単位で計算する方法を解説します。

法定内労働時間については端数処理ができないため、労働時間を「◯.◯時間」に変換したうえで給与を算出します。

たとえば時給1,000円の従業員が、法定労働時間内で7時間50分働いた場合、以下の手順で日給を求めます。

手順

労働時間の7時間50分を「分」に換算する

7×60+50=470分

470分を「時間」に換算する

470÷60=7.8333時間

②で求めた労働時間を時給と掛け算し、日給を算出する

7.8333×1,000=7,833.3円

1円以下の賃金については、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げする

7,833.3→7,833円

労働時間の考え方や残業・深夜労働の給与計算については、以下の記事をご覧ください。

勤怠計算を正確に行うには?労働時間や残業時間の集計方法も解説

エクセルを使って1分単位の給与計算を行う方法

エクセルを使って1分単位の給与を計算するには、労働時間を「時間:分」で入力し、それを「時間」に変換する関数式を組み込む必要があります。

先ほどと同様「時給1,000円の従業員が法定労働時間内で7時間50分働いた場合」を例にして、エクセルで1分単位の給与を計算してみましょう。

①「労働時間」のセル(A2)に、「時間:分」の形式で、給与計算したい期間の合計労働時間を入力する(上記の例では7時間50分なので「7:50」と入力)

②「時給」のセル(B2)に、時給の金額を入力する(上記の例では時給1,000円なので「1,000」と入力)

③「給与」のセル(C2)に、以下の関数を組み込む

関数式

=ROUND(A2*24*B2,0)

式の意味

ROUND(数値,0)→数値を小数点第一位で四捨五入する

A2*24→A2に入力された「時間:分」の数値に24をかけて「時間」に変換する

A2*24*B2→「時間」に変換した労働時間に、時給をかける

なお、エクセルを使った勤怠管理については、以下の記事を参考にしてください。労働時間を記録・集計する勤怠表もダウンロードできます。

勤怠管理表をエクセルで作成!関数入力済みのテンプレートを紹介

勤怠管理システムを活用して1分単位の給与計算を行う方法

勤怠管理システムを使えば、以下の方法で簡単に給与計算を行えます。

  1. 勤怠管理システムの機能で、勤怠記録を自動で集計する
  2. 集計した勤怠情報を、給与計算システムにインポートする

システムによって仕様は異なりますが、一般的には勤怠管理システムを使うと、自動的に1分単位で労働時間を記録できます。

打刻した時間帯に応じてシステムが自動で労働時間の種類(法定時間外労働か、深夜労働かなど)を識別してくれるため、手作業で集計を行う必要はほとんどありません。

勤怠情報と給与計算を連携する方法については、以下の記事をご覧ください。

勤怠管理と給与計算を連携する方法|システム6選と選び方を解説

1分単位で労働時間を把握するために、出退勤の記録を正確に取得する工夫が必要

「1分単位で給与計算を行う」という法令の原則を守るためには、従業員に正確に打刻をしてもらい、労働時間を厳密に算出して給与計算を行う必要があります。

従業員に正確に打刻してもらうために実施したいポイントは、次の3点です。

実施したいポイント3つ

  1. タイムカードの押し忘れがないように工夫をする
  2. 打刻のルールや就業時間のルールを従業員に周知する
  3. 勤怠管理システムを導入する

それぞれ確認していきましょう。

タイムカードの押し忘れがないように工夫をする

打刻機の設置場所や設置数を工夫することで、タイムカードの押し忘れや実際の労働時間との乖離が生じることを防止できます。

具体的には以下のような方法が考えられます。

  • 業務を行うデスクの脇や店舗の入り口など、従業員全員の目に留まりやすい場所に打刻機を設置する
  • 打刻機を複数台設置して、打刻のための行列ができないようにする
  • 声掛けやポスターなどで、定期的に注意喚起を行う など

タイムカードの打刻時間と実際の始業/終業時刻に差が出すぎると、正確な労働時間の把握が難しくなってしまいます。従業員が業務を行う場所と打刻場所は可能な限り近くすることで、正確な労働時間を算出できるようになります。

打刻のルールや就業時間のルールを従業員に周知する

始業/終業時刻や休憩時間のルール、打刻に関する取り決めなどを従業員に周知する場を作りましょう。従業員が就業規則を覚えていなかったり理解していなかったりすると、従業員と企業との間で労働時間の解釈にズレが生じる可能性が高くなってしまいます。

「打刻漏れが発生したときには、再発防止のために就業ルールを確認するミーティングを開く」「月に1回は、労働時間に関する勉強会を開く」など、定期的に労働時間の認識を合わせる機会を設けると効果的です。

勤怠管理システムを導入する

勤怠管理システムを導入するとさまざまな種類の打刻方法を利用できるので、自社に適した方法を選んで打刻しやすい環境を作ることができます。

例えば「PCブラウザからの打刻」を採用すると、業務に使うパソコンを立ち上げてシステムから打刻する流れになるので、実際の始業/終業時刻と打刻時間の乖離が起こりづらくなります。

「スマートフォンアプリからの打刻」を使えば、在宅勤務や外回りの従業員が多い場合でも正確に労働時間を管理できるでしよう。

またアラート機能が搭載されているシステムなら、打刻していない従業員やその管理者に対してメールなどでの通知ができるように設定可能です。加えてレポート機能があれば、打刻していない従業員の一覧を確認できます。

勤怠管理システムを導入すると、こういった便利な機能の活用により、打刻漏れをより簡単かつ効果的に防げるようになるでしょう。

まとめ|1分単位の正確な給与計算をして法令を守ろう

労働基準法には「賃金全額払いの原則」があるため、1分単位の労働時間で給与を計算しないと違法とみなされる可能性があります。

ただし時間外労働や深夜労働などには端数処理できるとする例外もあるため、法令の内容を把握して適切に給与を計算することが大切です。

本記事で紹介した通り、手動での計算やエクセルの関数式でも1分単位の給与計算はできます。しかし多数の従業員を抱えている場合、計算ミスや転記ミスなどが多くなる可能性もあるでしょう。

正確に、かつ効率的に給与計算を行いたい場合は、勤怠管理システムの導入を検討してみるのもおすすめです。

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