勤怠管理で必須な4項目|記録方法まで具体例付きで解説
著者:チームスピリット編集部
本記事をご覧いただいている方の中には、勤怠管理の必要性を知りながらも、必要な項目や、自社のケースでの記載方法が分からないというケースが多いのではないでしょうか。
勤怠管理は、従業員の労働時間等の勤務状況を把握し適正な労働時間となるよう管理することです。勤怠管理の基本は労働時間を記録することなので、この記録すべき項目を正しく理解することからはじめましょう。
本記事では、勤怠管理の書類である出勤簿に記載すべき4つの項目について具体例を交えて解説いたします。勤怠管理の不安や疑問が解消されれば幸いです。
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目次
勤怠管理で記録しなければならない4つの必須項目
勤怠管理とは、従業員の労働時間を把握し適正な労働時間となるよう管理することです。
出勤簿は、勤怠管理において重要な書類であり、労働者名簿、賃金台帳とあわせて法定3帳簿と呼ばれ、保存(労働基準法第109条)が義務付けられています。
記載するべき事項は、労働基準法108条や労働安全衛生法66条の8、ガイドラインなどよって、次のように定められています。
- 労働時間数
- 労働日ごとの始業時刻・終業時刻
- 日別の時間外労働(残業)時間数
- 日別の休日労働時間数
- 日別の深夜労働時間数
出勤簿の様式・書式は任意ですので、これらの項目が記載されていれば問題ありません。下図は出勤簿の一例です。
出勤簿は、給与締め日の翌日から次の給与締め日までの1カ月間をカレンダー形式にしたものがほとんどです。上図は給与締め日が月末日の場合ですが、20日締めの場合には21日から始まるカレンダー形式となります。
また、正社員・パート・アルバイト等の雇用形態の名称によって、記載すべき項目が変わることはありません。アルバイトでも時間外労働、深夜労働、休日労働を行った日については記載が必要ですし、もちろんその分の割増手当も支払わなければなりません。
正しく記載するために、各々の項目について解説します。
必須項目1〜2.労働時間数、労働日ごとの始業時刻・終業時刻
出勤簿に労働時間を記載する場合、「3月1日:出勤・8時間労働」という記載のみでは不十分です。始業時刻・終業時刻の両方をきちんと記載する必要があります。
「3月1日:9:00から8時間労働」という記載でも、休憩時間の長さによって終業時刻が特定できないので不十分です。
休憩の開始時刻と終了時刻も記録し、「休憩時間の合計(上記G列)」「労働時間の合計(上記H列)」が一目で分かるようにしておくと良いでしょう。
なお、労働時間は原則1分単位で把握しなければなりません。「15分未満の労働時間は切り捨てる」といった処理は法律違反になる可能性があるため注意が必要です。詳細は、以下の記事をご覧ください。
給与計算は1分単位で行わなければ違法か?計算方法や罰則を解説
まとめると以下の通りです。記載の参考としてください。
良い記載例 |
悪い記載例 |
---|---|
〇月×日:9:00~18:00(休憩12:00~13:00) 〇月×日:9:00~18:00(うち休憩1:00) |
〇月×日:8時間労働 〇月×日:9:00勤務開始8時間労働 |
必須項目2.日別の時間外労働(残業)時間数
1日の法定労働時間である8時間を超えた分の労働時間を時間外労働(残業)といいます。時間外労働があった日については、何時間の残業が発生したかを記載することが必要です。
法定労働時間とは別に、会社が定めた標準の労働時間のことを「所定労働時間」といいますが、もし所定労働時間が1日7時間だったとして、9時間労働した場合は残業時間はどのように把握すれば良いのでしょうか。以下をご確認ください。
所定労働時間を超えても法定労働時間内であれば「法定内残業」となり、この分についての割増賃金は必要ありません(就業規則等に別の定めがある場合はそれに従います)。法定労働時間8時間を超えた1時間分は「法定外残業」となり、割増賃金の対象になります。
法定労働時間は1日単位のほか1週40時間とも定められており、これを超えた時間分も残業扱いとなります。週の起算日については、特段の定めがない場合は日曜となります。
日曜から労働時間を集計し、40時間を超えた日に残業をしたということになります。具体例を見てみましょう。
週の法定労働時間は40時間と定められていますが、上記のケースのように週の総労働時間が40時間を超えてしまった場合、超えた部分の5時間全てが残業時間となるのでしょうか。この場合、次の計算式に当てはめて考えます。
(週の総労働時間)45時間 -(週の法定労働時間)40時間 -(1日の残業時間)2時間=3時間
まずは、週の総労働時間から法定労働時間である40時間を引きます。この時、残りの5時間が全て残業になりそうですが、上記の例では火曜日に1日の法定労働時間8時間を超える2時間分が既に残業時間とされています。そのため、この2時間を差し引き、残りの3時間が週の法定労働時間を超えた部分の残業時間となります。
※残業時間の計算方法や管理のコツについては「適切な残業管理の方法|残業時間を把握し記録する方法・ルール作りのコツ」の記事も参考にしてみてください。
フレックスタイム制・1カ月単位の変形労働時間制の場合
フレックスタイム制や1カ月単位の変形労働時間制の場合には、残業を1カ月の総枠時間でも判定します。この総枠時間は次のように計算されます。
総枠時間=1週間の法定労働時間40時間×(暦日数÷7日)
※特例事業の場合は、法定労働時間を44時間で計算します。商業、映画・演劇業、保健衛生業、娯楽接客業で常時10人未満の労働者を使用する事業場です。月の暦日数による総枠時間は、下表のようになります。
(単位:時間)
暦日数 週法定労働時間 |
28日 | 29日 | 30日 | 31日 |
---|---|---|---|---|
40時間 | 160.0 | 165.7 | 171.4 | 177.1 |
44時間 | 176.0 | 182.2 | 188.5 | 194.8 |
月の総枠時間で判定された残業時間は、次のように計算します。
フレックスタイム制(清算期間1カ月)
(月の総労働時間)ー(当該月の総枠時間)=(残業時間)
1カ月単位の変形労働時間制
(月の総労働時間)ー(当該月の総枠時間)ー(1日単位の残業時間※1)ー(1週単位の残業時間※2)=(残業時間)
※1.1日については、8時間を超える労働時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
※2.1週間については、40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超える労働時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えて労働した時間(1日単位の残業時間を除く)
それでは月の総枠時間によって残業がどのように判定されるか、例を3つ見てみましょう。
1)フレックスタイム制労働者が月の総枠時間を超えて労働した場合
条件 |
|
---|---|
勤務状況 |
月間175時間 |
残業時間 |
残業時間 3時間36分 |
2)1カ月単位の変形労働時間制労働者が月の総枠時間を超えて労働した場合
条件 |
|
---|---|
勤務状況 |
月間175時間 |
残業時間 |
残業時間 3時間36分 |
3)2と同じ勤務状況でも月が異なるため総枠時間を超えない場合
条件 |
|
---|---|
勤務状況 |
月間175時間 |
残業時間 |
なし |
必須項目3.日別の休日労働時間
法定休日に勤務した時間を休日労働時間として記載します。法定休日は、就業規則等に定めがない場合、週1回です。土日休みの会社ですと、週の起算日から数えて後の休日を指します。
休日労働がある場合とない場合の例をそれぞれ見てみましょう。
上記では土曜日に勤務していますが、日曜日で週1回の休日が確保されているため、土曜日の勤務は休日労働にあたりません。
2つ目の例は週の総労働時間が45時間である点は1つ目の例と同じですが、週1回の休日が確保できず、2時間の休日労働が発生します。
必須項目4.日別の深夜労働時間
22:00から翌5:00までの時間帯に勤務した時間を深夜労働時間として記載します。よくある疑問は、日をまたぐ場合どこで1労働日として区切るか、です。
この場合は、「日をまたぐ場合でも1労働日として取り扱う」が正解となります。
日をまたいだ2暦日のうちどちらかが法定休日だと、法定休日の0:00~24:00に労働した部分は休日労働となります。
勤怠管理で記録した4つの項目をもとに、給与計算を行う
ここまでの内容をもとに、日々の労働時間・残業時間・休日労働時間・深夜労働時間を適切に記録することで、給与計算を正しく行うことができます。
例えば、
- 始業時刻が8:00
- 終業時刻が17:00
- 休憩時間が1時間
- 時給が1,000円
このような場合は、労働時間が8時間なので、発生する賃金は1,000円×8時間=8,000円です。後述するエクセルや勤怠管理システムを活用することで、1か月の総労働時間から給与を計算することができます。
ただし、そのためには残業や休日労働などを行った時間を適切に記録・集計しておく必要があります。これらによって割増賃金が発生するため、計算方法を誤ると、労働関連の法律に違反してしまう可能性もあるので注意が必要です。
さらに、変形労働時間制・事業場外みなし労働時間制・フレックスタイム制などによって勤怠の計算方法が異なるため、各社で適切に管理を行い、勤怠の集計や給与計算を行わなければいけません。
詳細は以下の記事をご確認ください。
勤怠計算を正確に行うには?労働時間や残業時間の集計方法も解説
勤怠管理について、作成と保存が義務付けられている書類
ここまででご説明した出勤簿の他にも、作成と保存が義務付けられている勤怠管理の書類があります。
- 残業申請書
- 年次有給休暇管理簿
それぞれどのような記載を行うのか、記載イメージや便利なエクセルファイルを紹介します。
残業申請書
残業を行う日ごとに労働者が記載し、上司や管理者に申請する書類です。下図のように、1枚に複数の日付が記載できるようになっていることが多いです。
引用:厚生労働省|「労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう」(PDF資料)この書類を作成することにより、上司や管理監督者が残業状況を把握し、長時間労働を行っている労働者に対して業務量を調整したり、面談を行ったりといった適正な労働時間にするための対応を行うことができます。
ちなみに勤怠管理システムは、残業や休日労働の申請から承認まで一連の機能が備わっているものがほとんどです。
年次有給休暇管理簿
年次有給休暇管理簿には、次の事項を記載します。
- 時期:年次有給休暇を取得した日
- 基準日:年次有給休暇を付与した日
- 日数:年次有給休暇の付与日数
勤怠管理システムによっては、有給休暇管理簿の機能が備わっているものもあります。また、福井労働局が便利な年次有給休暇取得管理台帳のエクセルを公開しているので、システムを利用しておらず、管理簿の作成が不安な方はこれを活用するのも良いでしょう。
まとめ|労働時間トラブルを防ぐためにも適切な勤怠管理は有効
勤怠管理は、出勤簿が他の法定3帳簿と異なり法律で明記されていないことから、自社の方法が正しいか不安に思われる方も多いです。
社労士に確認できる環境があればタイムカードとエクセルの組み合わせによる勤怠管理の運用も安心して進められますが、不安であれば勤怠管理システムを導入して付属のサポートを活用するのも良いでしょう。
最近ではテレワーク・在宅勤務対応のために勤怠管理システムを導入される企業も多くあります。
出勤簿をはじめとした勤怠管理の書類は、雇用関係の助成金申請時や管轄行政の調査時などに提出を求められます。労働時間関係のトラブルを未然に防ぐためにも、勤怠管理の項目を理解して、適切な勤怠管理を行いましょう。
また勤怠管理の方法やルールの概要・注意点などを確認したい場合は、以下の記事もあわせて参照してください。
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