労働基準法第108条では、各従業員の労働時間や時間外労働時間、休日出勤時間などを管理して正確に賃金計算を行うことを義務づけられています。そのため、多くの企業では勤怠管理のためにタイムカードが利用されていました。機械に専用のカードを通して出退勤の時刻を打刻し、従業員の労働時間を把握するスタイルです。
しかし、労働時間の管理にタイムカードを使うことには、多くの課題が散見されるようになってきました。働き方が多様化している今の社会では、タイムカードでは適切な労働管理が難しくなってきているからです。
ではタイムカードや出勤表に変わるツールはあるのでしょうか。現在、その役割を担うと注目されているのが勤怠管理システムです。
出退勤の時刻を容易に記録できるのはもちろん、その後の給与計算などの効率化の実現も期待できます。今回は多様化する働き方に対応するための勤怠打刻について検証します。
これまでの勤怠打刻とそのデメリット
これまで一般的な勤怠管理に使われてきたのは出勤簿かタイムカードなどのアナログな方法です。出勤簿とは、社員が出退勤する際に指定の用紙に時刻や欠勤、早退、遅刻などを手書きして管理する用紙。記載はそれぞれの社員によって行われるため、自己申告によるデータ記入となります。自己申告による労働時間の管理は不確定要素が多分にあるため、厚生労働省のガイドラインでは例外的な位置づけとして捉えられています。
一方でタイムカードは打刻機に専用のタイムカードを挿入するだけで、自動で日時が記録されるツールです。日時の記入ミスが防げるため、出勤簿に比べれば不正しづらいのが特徴。タイムカードや出勤簿に記載したデータは、月末にエクセルに転記し上長を介して管理部門にわたります。労務担当者は、2019年4月から順次施行されている働き方改革関連法案に基づいて勤怠状況をチェック。法令内の労働だとしても時間外労働が多かったり、有休取得状況が芳しくなかったりする従業員がいた場合は、部署に注意勧告を行います。
提出された書類はチェックされて役割を終えるわけではなく、労働基準法109条によって、労働に関する重要な書類は3年間保存されます。エクセルの管理表を印刷した紙や出勤簿にタイムカードといった莫大な紙資料の保存が必要なため、管理コストや場所の確保は多くの企業が頭を悩ませている課題です。では出勤簿とタイムカードを利用する場合には、具体的にどんなデメリットがあるのでしょうか。
出勤簿への手入力のデメリット
出勤簿を利用する最大のデメリットは、毎月の集計手続きが非常に煩雑なことです。集計に時間がかかるだけでなく、集計時の転記ミスのリスクも高くなります。もし間違いが発覚した場合は、企業によっては訂正に複雑な承認フローがあるなど面倒な手続きが必要なことも珍しくありません。
導入コストが抑えられる反面、出勤簿を月末に回収して確認、承認、集計するなど煩雑な作業を人件費のほか、回収した出勤簿を保管するコストを考えれば、マイナス計上になるリスクも大きいでしょう。また、記入される時刻は自己申告なため、正確な勤怠管理がしづらいとも言えます。
タイムカードのデメリット
タイムカードの場合、打刻するにはタイムレコーダーが必要なため、直行直帰やテレワークなど、多様化する働き方に対応できない点が大きなデメリットです。会社の特定の場所でしか打刻できないというスタイルは、従業員の仕事における行動範囲を狭めるリスクも生じます。
また、タイムカードは、一度に1人ずつしか利用できません。同じ時刻に出退勤する人が重なれば、タイムカードリーダーの前に行列ができ、たくさんのタイムカードがある中から自分のカードを探すのもひと手間です。タイムカードを探して列に並んでいる間に、出社時間がすぎて遅刻扱いになっては従業員が不満に感じるのも無理はありません。さらに、タイムレコーダーは現在の時刻しか打刻できないため、もし打刻し忘れた場合には承認を得て手書きしなければならないなど、無駄な業務も増えてしまいます。
これからの働き方に即した勤怠打刻の必要性
前項で紹介したさまざまなデメリットのあるアナログな勤怠管理も、従来の働き方であれば問題なく運用することができました。しかし、働き方が大きく変わろうとしている現在では、勤怠管理においても変革が迫られている状況です。では従来の勤怠打刻ではどんな課題があり、これからの働き方においてはどんな方法を取り入れることが必要なのでしょうか。
テレワークなど会社以外でも打刻が求められる時代
1つ目の変化として挙げられるのは、テレワークなど会社以外でも働く人が増えたことです。テクノロジーの発展やインターネット環境の整備により自宅やコワーキングスペースなどオフィス以外でも働くことも一般的になってきており、出社しない人の勤怠管理の方法が議論の的となっています。育児や介護などで、家庭と仕事の両立を求める人も増えているため、企業は多様な生き方・働き方に対応できる環境を作る必要があります。そのため、会社に出社しなくても打刻ができるシステムが求められているのです。
1人ひとりの従業員ごとに異なる勤務形態
勤務形態の多様化も新しい勤怠管理が求められる理由の1つです。これまでは、全員が始業時間に出勤し、定時以降に退勤するのが一般的でした。しかし、現在はワークライフバランスへの関心が高まり、短時間勤務やフレックス制度を導入する企業も珍しくありません。1人ひとりの出退勤の時間や労働時間も異なるため、労務管理はより複雑になっています。それらの業務を人力で精査することは困難を極めるため、テクノロジーを駆使した勤怠管理システムの導入が求められているのです。
勤怠管理システムで可能になった勤怠打刻
上記のような社会の変化に合わせて、さまざまな勤怠打刻の手法が登場しています。勤怠管理システムを活用すれば、打刻が便利になるだけでなく、月末の集計業務も効率化してくれます。最新の勤怠管理システムではアナログとは異なり、どんな方法で打刻を管理できるのでしょうか。
IC カード、入館証