パーパス経営を実現して企業価値を高めるには。国内外の企業事例を紹介
著者:チームスピリット編集部
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SDGsが注目されるようになった現在、企業にもサステナブルな考え方が求められるようになりました。目まぐるしく変化する社会に対応するには、経営方針も柔軟に変えていく必要があります。 そこで注目されるようになったのがパーパス経営です。 今回は、パーパス経営を成功させている企業の事例を紹介します。
パーパス経営とは企業の存在意義に重きを置いた経営方針
近年、SDGsの目指すサステナブルな考え方が一般的にも浸透してきました。持続可能な社会に対する関心が高まる中で、サステナビリティ経営やESG投資などの持続可能な社会の実現に向けた具体的な活動を重視する企業や投資家が増えています。
そこで、注目されるようになったのがパーパス(purpose)経営です。
パーパスには目的や意図という意味があり、現在は存在意義や志を表す言葉として使われることが多いです。
このことから、パーパス経営は「目的」や「社会的なつながり」を重視し、企業が社会の中で存在する意義を明確にした経営方針といえます。
抽象的な表現になりやすい企業理念と比べ、パーパスはより具体的な内容になるため、社員にもどのように社会貢献すべきか伝わりやすい特徴があります。
サステナビリティ経営やESG投資と同様に、投資家や消費者が企業を選ぶ際の指針にもなっています。存在意義を公表し、共感や関心を得られれば、企業のブランディングにもつながるでしょう。
パーパス経営を成功させている企業の特徴
パーパス経営を成功させるためには、具体的にどのような対策が必要になるのでしょうか。実際に成功している企業の特徴を元に紹介します。
パーパス経営は存在意義や目的を明確にするところから始まりますが、何よりも大切なのは言語化して声明文を公表することです。パーパスは、経営陣だけが理解していても効果を発揮しないため、消費者や社員にも分かりやすい言葉で伝えなければなりません。
より高い支持を得ている企業は、社会問題をどのように解決していくかを具体的に示しています。パーパスで取り上げられている社会問題は、地球温暖化やジェンダーに関するもの、地域格差や雇用などさまざまです。公表した声明内容と企業の行動が一致していると、周囲から信頼を得ることにもつながります。
反対に行動が一致していない場合は、ネガティブな印象を与えてブランドイメージの低下を招きかねません。そのため、実現可能な内容であるかどうかもポイントです。
そして、パーパス経営は企業全体で取り組む必要があります。成功しているケースのほとんどは、社内への浸透に力を入れています。
パーパス経営の成功事例【海外企業3社】
ここからは、パーパス経営の成功事例として海外企業を3社紹介します。
事例1.パタゴニア(アメリカ)
アパレルメーカーのパタゴニア(Patagonia)のパーパスは「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」です。
代表的な活動として、すべての事業で得られた売上の1%を環境保全のために寄付し、地球温暖化や食糧問題の解決に貢献しています。
パタゴニアは、パーパスを掲げる前から地球環境の改善に向けた具体的な企業理念があり、リサイクル素材の製造や商品化の事業を展開していました。
あえて「地球を救う」という漠然とした表現にしたのは、特定の部署やスタッフだけではなく、すべてのスタッフが自ら考えて行動して欲しいという思いがあったからだそうです。
そしてパーパスを実現するため、各部門でさまざまな目標が掲げられました。
・2020年までに、すべてのオフィスや店舗の電力を再生可能エネルギーに変更する
・2025年までに、全事業で排出する二酸化炭素と同じ量を回収してカーボンニュートラルを達成する
・2025年までに、すべての製品に使用する材料を自然素材かリサイクル素材のみにする
上記のように、地球環境に配慮した事業を展開しつづけるパタゴニアは、多数の消費者から支持を得ています。
事例2.ジョンソン・エンド・ジョンソン(イギリス)
ジョンソン・エンド・ジョンソン(johnson & Johnson)は、創業時から「我が信条(Our Credo)」を公表してパーパスを明確にしていました。
その内容は、全社員が顧客や社会に対してなすべきことを具体的に4つの責任としてまとめたものです。
ひとつ目は、製品やサービスについての責任で、すべての顧客のニーズに応えられるよう、質の高いものでなければならないということです。
ふたつ目は、世界中で働く社員に対するもので、一人ひとりを尊重して受け入れられる職場環境を提供しなければならないという責任です。
3つ目に、地域や社会における責任として、充実したヘルスケアを提供することによって、健康を支援するというものです。
そして、最後の4つ目は株主に対するものとして、企業努力を続けて健全な利益を生み続け、事業を発展させて報酬を与えることとしています。
1943年に350語あったパーパスは、現在では「人類のために健康の流れを根本から変える」の文言にまとめられています。
事例3.ユニリーバ(イギリス)
ユニリーバは「サステナブルな暮らしをあたりまえにする」ことをパーパスとしています。
パーパスを持つことで、ブランドや社員が成長し企業が持続できるという信念のもと、「サステナブル・リビング・プラン」に取り組み、実際に大きな成果を上げてきました。
ユニリーバが展開している数多くのブランドのうち、パーパスを実施しているブランドは特に成長が早く、環境や社会問題を解決しながら事業を拡大しています。また、社員の満足度も高く、最も働きたい企業としても選ばれるほど高評価を得ています。
具体的な取り組みとして、プラスチックごみを出さない包装を先駆けて実施しました。
革新的な技術や新たなビジネスモデルを導入し、企業内だけではなく業界全体に良い影響を与えています。
パーパス経営の成功事例【国内企業3社】
次に国内でパーパス経営を成功させている企業の事例を解説します。
事例1.株式会社資生堂
株式会社資生堂は2019年に「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」というパーパスを掲げました。
投資や社会的にも重視されるESG(環境、社会、ガバナンス)に加えて、同社の強みである「Culture(文化)」を含む「ESCG」をサステナビリティ戦略の中心として、「Sustainable Beauty Initiative(サステナブル・ビューティー・イニシアティブ)」を推進しています。
具体的な取り組みとして、生分解性の樹脂を共同開発し、商品化が進められました。プラスチックごみの削減が目的です。
複数の領域で取り組みを進めることによって、国内だけでなく海外からも高く評価されています。
事例2.味の素株式会社
味の素グループは社会価値と経済価値を共創する取り組みである「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」を経営の基本方針として定めています。
従来は利益重視が一般的とされていましたが、先駆的にパーパス経営を実施することで企業を成長させることに成功しました。
パーパスは、40人弱の執行役員が2年間に渡り議論して打ち出したそうです。さらに、2年を費やしてグループビジョンに落とし込み、現在では社員に考え方を浸透させるため表彰制度などを設けています。
今後も、社員一人ひとりが自分ごととして考えられるように、対話を重視してパーパス経営を実施していく予定です。
事例3.三井住友トラスト・ホールディングス株式会社
三井住友トラスト・ホールディングスは「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」というパーパスを掲げています。
気候問題や少子高齢化などの社会変化に対して、信託の力であらゆる課題の解決につながる新たな価値の提供ができるよう、社長から社員へ直接内容が伝えられました。
また、サステナビリティな取り組みとして、事業活動で排出される温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの利用促進などを実施しています。
まとめ
今回は、次世代の経営モデル「パーパス経営」の成功事例を紹介しました。パーパス経営は、企業の存在意義を重視した考え方で、社会の中でどのような役割があるか明確にして実行することが重要です。
パーパス経営を推進することで、企業価値の向上にもつながります。今一度、自社の存在価値について見直してみてはいかがでしょうか。
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