バックオフィス業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)の可能性
著者:チームスピリット編集部
近年、AIやIoT、ICTなどのデジタル技術の進歩により、多くの企業が自社の事業に対して「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、つまり"デジタル変革"に目を向け始めています。そうした動きは製品やサービスだけに留まらず、バックオフィス業務の効率化にも広がっています。Sansanが実施した「企業のデジタルトランスフォーメーションに関する実態調査2019年度版」では、63.5%が 「『バックオフィス系システム』をデジタルトランスフォーメーション推進に活用・検討している」という集計結果が出ているのです。
つまり、多くの企業が「デジタル技術によってバックオフィス業務に変革をもたらしたい」と考えており、そうした流れは今後さらに加速していくことが予想されます。バックオフィス業務の新時代到来が予想される中で、企業としてはどんな視点を持ち、さらには取り組みを行っていくべきでしょうか。今回はバックオフィス業務のデジタルトランスフォーメーション化(DX化)による働き方の変化や見据えるべき視点、さらには導入をおすすめするツールについて紹介します。
整理しておきたい「バックオフィス業務」について
社内業務は大きく「フロントオフィス業務」と「バックオフィス業務」の2つに分けられます。これらは主に金融機関やコールセンター機能のある企業で使われるビジネス用語です。それぞれの業務内容にはどんな特徴があり、デジタルトランスフォーメーションによってどんな変化が期待されるのでしょうか。
その1:フロントオフィス業務
正面や最前線を意味する「フロント」の名がつくフロントオフィス業務は、顧客と直接やりとりをするなど外部との接点を持つ仕事が中心です。具体的には顧客からの問い合わせに対応するコールセンターや銀行窓口、顧客へ自社サービスを売り込む営業などが該当します。顧客と直接コミュニケーションを取ることから、柔軟かつ適切な顧客対応が求められます。「コミュニケーション能力」「プレゼンテーション能力」はもちろん、いかにその場に合わせた臨機応変な対応ができるかが求められる業務だと言えるでしょう。
フロントオフィス業務におけるデジタルトランスフォーメーションとしては、「MA(Marketing Automation/マーケティングオートメーション)」「SFA(Sales Force Automation/営業支援)」「CMS(Contents Management System/顧客情報管理)におけるツールが開発・発展してきました。いずれも拡販や顧客満足度向上などを目的としています。
その2:バックオフィス業務
フロントオフィス業務に対して、顧客とのやり取りをメインとしない社内業務全般のことをバックオフィス業務と言います。ただ、一口にバックオフィス業務と言ってもその領域は幅広く、人事や経理をはじめ、システム開発や生産管理などのさまざまな部門が該当します。いずれも売上アップや契約締結という直接的な営業活動は行いません。しかし、バックオフィス業務は人材や商品、情報といった企業の根幹を支えるうえで欠かせない資産を管理する業務であり、事業を営むうえでなくてはならない仕事だと言えるでしょう。
バックオフィス業務においてもデジタルトランスフォーメーションの波は押し寄せてきており、業務をサポートする便利ツールが数多く存在しています。「RPA(Robotic Process Automation/業務自動化)」「AI(Artificial Intelligence/人工知能)」などのデジタル技術を駆使することで、生産性向上やコスト削減、働き方の多様化、従業員満足度の向上を実現できる可能性が高まるでしょう。ツールの活用によってバックオフィス業務の形態を見直すべきタイミングに来ていると言えます。
その3:フロントオフィス業務とバックオフィス業務の関係性
フロントオフィス業務とは異なり、バックオフィス業務は直接的な利益を生まない仕事です。また、コストセンターにもなるので、効率化をいかに実現してコストを削減するかが重要になります。営業が獲得した契約の書類管理をはじめ、営業スタッフの労働管理や予算振り分け、紛糾対応などは経理や人事、総務といったバックオフィススタッフが担当します。つまり、バックオフィスが効率的に機能するほどフロントオフィス業務もより仕事がやりやすくなるのです。フロントオフィス業務とバックオフィス業務は「相互扶助の関係性」であることを忘れてはなりません。
効率化が期待されるバックオフィス業務の職種
会社によって呼称や役割範囲が異なるケースもありますが、基本となるバックオフィス業務はどの会社でも大きくは変わりません。特に以下で紹介する「労務」「経理」「人事」「総務」「法務」の仕事は、企業経営においても重要な役割を担っているので、デジタルトランスフォーメーションによる業務効率化が期待されるところです。
職種1:労務
従業員が安心して働ける職場環境を整えることをミッションとしているのが、労務の仕事です。具体的には勤怠管理や給与計算、社会保険や入社・退職の手続きなど、従業員と密接に関わった業務を担当しています。従業員の労働環境を守る意味でも労働基準法を筆頭に専門的な知識が必要であり、労働トラブルがあった場合は労使の立場を踏まえたうえでの対応が必要など、知的かつ繊細な振る舞いが求められます。
職種2:経理
経理の主な仕事は、企業経営に欠かせない利益や資産に関わるお金の管理です。具体的には、仕入れや売上に関する債権・債務の管理をはじめ、現金や預貯金・会社資産の管理や、給与・社会保険原資の管理、税金計算などが挙げられます。経理業務は非常に複雑なため、ヒューマンエラーが起こりやすい業務でもあります。1日・1カ月・1年という一定期間のサイクルで業務が行われていることも多いため、システム導入などで効率化しやすい業務とも言えるでしょう。
職種3:人事
採用、教育、評価など従業員と直接かかわる仕事を通して、組織を活性化させるのが人事の役割です。主な業務としては採用活動や社員教育、研修、評価などの実施が挙げられ、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる組織編成に努めています。社員1人ひとりと深く関わることも多く、異動や昇給を判断することもあるため、従業員の人生に大きな影響を与える業務だと言えるでしょう。それ故、会社のビジョンや方向性について高い理解が求められ、知識よりも実践的な経験値が重視される傾向にあります。
職種4:総務
企業で使用されるありとあらゆる「物」を管理するのが総務の仕事です。会社組織全体を円滑に動かすためにさまざまな業務を一手に請け負うため、「誰がやるべきか判断できない業務」や「誰もやりたがらない煩雑な業務」も担当するケースが少なくありません。総務がいることで他の部署は本来の業務に集中でき、円滑な企業運営を行えるなど、縁の下の力持ち的な存在です。また、企業規模が小さい場合は、人事や労務が存在せず、総務がすべての業務を兼任していることもあります。
職種5:法務
企業活動に伴う法律関係の対応を行うのが法務の役割です。具体的には契約・取引法務や組織法務、コンプライアンス法務、紛争対応法務などがあり、幅広い法律知識や業界特性、トレンドの理解が求められます。企業は事業運営においてコンプライアンス(法令遵守)を重視することが求められるため、ビジネス推進においても重宝されることが多い職種です。
バックオフィス業務に期待される「BOTech」の導入
上記のように「労務」「経理」「人事」「総務」「法務」などのバックオフィス業務は、企業や従業員にとって重要な役割を果たしています。しかし、その業務内容は複雑であったり、手間がかかったりすることが多い傾向にあります。そのため、今後はバックオフィス業務を効率化するソリューション「BOTech(ビーオーテック)」の考えがより重視されるでしょう。
BOTechとは、「Back Office(バックオフィス業務)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語です。これまで担当者の努力でなんとか回していた非効率的なバックオフィス業務も根本から見直し、テクノロジーの導入によるデジタルトランスフォーメーショの実現によって大幅な業務改善が期待できる時代が訪れていると言えます。
職種や業務別で最適なツールを選ぶためのコツ
BOTechを駆使し、バックオフィス業務を効率化するうえで欠かせないのがツールの選定です。世の中にはバックオフィス業務を効率化するさまざまなツールが存在しますが、それぞれの特徴が異なるため、職種や業務内容に適したツールを選ぶことが不可欠になります。ここでは、ツール選びにおけるコツを紹介します。
選定のコツ1:業務内容や工数の明確化
まずは現状の業務内容とそれに要している工数を把握しましょう。その際は、業務全体を把握するためにもエクセルなどでフォーマットを作成し、タスクを細かく棚卸しすることをおすすめします。タスク内容が明確になったら、その工数と作業の発生頻度を入力。細かい部分まで可視化し、業務内容を分析できるようにしましょう。
選定のコツ2:効率化するべきポイントの特定
業務の工数と発生頻度から、効率化すべき業務を特定しましょう。ただし、工数が多くかかっているタスクでも発生頻度が少ない場合は、ツールの導入に適さない恐れもあります。そのため、「従業員の作業負担が大きく、かつアウトソーシングも難しい」業務に対してツール導入を検討することをおすすめします。
選定のコツ3:組織体制やルールの理解
システム導入に関して、自社の要件やルールを把握することは非常に大切です。個人情報の取り扱いに関しては法務と、お金に関わる場合は経理と、勤怠管理に関しては労務となど各部門の担当者と連携しつつ慎重にツールを選定する必要があるでしょう。また、組織の規模や業種、業態、現在使用しているツールなどとの相性もあるので、複合的な検討をしたうえでツール選定を行うのが理想的です。
選定のコツ4:労務リスクへの対応の可否
企業経営においては会社法をはじめ、特定商取引法や労働基準法など、守るべき法律が多々あります。そのため、ちょっとした不手際により業務改善命令を発令されてしまう企業も少なくありません。特に企業にとって懸念材料となるのが「残業代・給与未払い」「解雇・リストラ」「ハラスメント」といった労務リスクです。労務リスクへのリスクマネジメントができるツールであれば、従業員にとってより安心して働ける環境が整備しやすいでしょう。
「チムスピシリーズ」 の導入で実現する、バックオフィス業務のDX化
チムスピシリーズの「チムスピ勤怠」「チムスピ工数」「チムスピ経費」を導入することで、さまざまなバックオフィス業務の効率化が期待できます。
その1:労務管理の自動化
「チムスピ勤怠」では、WebブラウザやICカード、モバイルなどから出退社の打刻ができ、多様な働き方に合わせた勤怠管理を可能にします。さらに、「チムスピ勤怠」は「チムスピ工数」と連動しており、1日の勤務時間における各作業の割合を登録すれば、工数も自動で計算されます。複雑な残業計算も自動集計できるため、労務管理の自動化を幅広くサポートします。
その2:経理業務の自動化
「チムスピ経費」では、経費精算の自動化も推進します。交通系ICカードの利用履歴をもとに精算ができるので、勤怠打刻と兼用することで清算処理を効率化することも可能。また、領収書もスマートフォンのカメラで撮影すればOCRで読み取ってくれるため、わざわざ入力する手間が省けます。クラウド・モバイルを活用することでセルフサービスの交通費・経費精算を実現します。
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