【導入費用の最大2/3を補助】2021年の「IT導入補助金」を徹底解説
著者:チームスピリット編集部
さまざまな業界において DX(デジタルトランスフォーメーション)推進が加速する現代では、業務効率化や生産性向上においてITツールの導入が不可欠になりつつあります。しかし、中小企業を筆頭に、本格的なDX推進を実施できていない企業がまだまだ多いのが現状です。長きにわたりアナログ対応に慣れ親しんでいる企業にとって、業務効率化、生産性向上に向けて IT ツールを導入するのには多少なりと抵抗があるのかもしれません。
日本は世界各国に比べてDX推進がスムーズでないと言われているだけに、現状打破のために日本政府が本腰を入れる中小企業の IT 化を支援する動きが「IT導入補助金」の制度です。2021(令和 3)年度においても公募が開始されているだけに、中小企業にとっては国の支援による 自社のDX 推進を行えるチャンスが到来していると言えるでしょう。
中小企業のDX推進をサポートする「IT導入補助金」とは
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者の生産性向上を目的に、ITツールの導入にかかる経費の一部が補償される制度です。中小企業庁が実施する「中小企業生産性革命推進事業」の一環として位置づけられています。国をあげて支援に踏み切った理由としては、ITツールの導入の遅れ等により、未だに作業効率の低いアナログな対応をしている中小企業の割合が多いことが挙げられます。
一方でITツールを導入し活用することで、生産性がアップするのはもちろん、人件費の削減も期待できます。煩雑で正確性が求められる定型業務をITツールに移行することで、人的リソースの最適化が図れるでしょう。国としてもITツールの導入を促進することで日本企業の国際競争力を高め、国力を向上させることが狙いとなります。
「IT導入補助金」の対象企業とは?
中小企業が対象になるIT導入補助金ですが、業界によって国が定める範囲は異なります。大枠の業種ごとの条件については下記の表を参照しましょう。資本金または従業員数の条件をクリアすれば対象企業と見なされます。
資本金・従業員規模の一方が、 右記以下の場合対象(個人事業を含む) |
業種 |
資本金 (資本の額又は出資の総額) |
従業員 (常勤) |
製造業、建設業、運輸業 |
3億円 |
300人 |
|
卸売業 |
1億円 |
100人 |
|
広告業、コンサルティング業、士業、BPOなどのサービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
5,000万円 |
100人 |
|
小売業 |
5,000万円 |
50人 |
|
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) |
3億円 |
900人 |
|
ソフトウェア業または情報処理サービス業 |
3億円 |
300人 |
|
旅館業 |
5,000万円 |
200人 |
|
その他の業種(上記以外) |
3億円 |
300人 |
|
その他の法人 |
医療法人、社会福祉法人、学校法人 |
- |
300人 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 |
- |
100人 |
|
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 |
- |
主たる業種に記載の従業員規模 |
|
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 |
- |
主たる業種に記載の従業員規模 |
|
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) |
- |
主たる業種に記載の従業員規模 |
|
特定非営利活動法人 |
- |
主たる業種に記載の従業員規模 |
IT導入補助金の種類
IT導入補助金にはいくつか種類があります。以前はA類型とB類型の2種類だけでしたが、コロナ禍で混乱を極めた2020年に「特別枠(C類型)」が新設。コロナ禍での企業の社会的対応に備え、テレワークや非対面型ビジネスモデルへの転換などに必要なITツールの導入が対象となりました。
さらに2021年には2020年の特別枠を改編した新特別枠の「低感染リスク型ビジネス枠」が新設。C類型とD類型の2種類が追加されました。それぞれの補助金の申請額や補助率について、下記の表にまとめています。
通常枠 |
低感染リスクビジネス枠 |
|||||
種類 |
A類型 |
B類型 |
C類型-1 |
C類型-2 |
D類型 |
|
補助金申請額 | 30万~150万円未満 | 150万~450万円以下 | 30万~300万円未満 | 300万~450万円以下 | 30万~150万円以下 | |
補助率 | 1/2以内 | 2/3以内 | ||||
プロセス数 | 1以上 | 4以上 | 2以上 | |||
賃上げ目標 | 加点 | 必須 | 加点 | 必須 | 加点 | |
補助対象 |
ソフトウェア費 導入関連費 |
○ |
○ |
|||
ハードウェア レンタル費用 |
× | ○ |
通常枠(A・B 類型)とは
通常枠であるA類型とB類型の違いとしてまず挙げられるのは補助金申請額です。A類型は下記の7つの業務プロセスの内、1つ以上の業務を担うソフトウェアを導入する場合、30万~150万円未満(補助率1/2以内)の金額が補助対象となります。B類型は4つ以上の業務を担うソフトウェアを導入し、150万~450万円以下(補助率1/2以内)の金額が補助対象となります。また、事業実施効果報告の必要があり、2023年から2025年までの3回実施する必要があります。
【ソフトウェアに必要な業務プロセス】
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収管理
- 調達・供給・在庫・物流
- 会計・財務・経営
- 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス
- 業種固有
- 汎用・自動化・分析ツール
低感染リスクビジネス枠(C・D 類型)とは
低感染リスクビジネス枠は、新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えながら経済の持ち直しを図るために設置されました。ポストコロナに対応したビジネスモデルの転換に向けて(オフラインからオンラインへの切り替えなど)、生産性の向上と接触機会を低減する非対面化の業務へ取り組む企業を支援することが新設の趣旨です。
C・D類型は、業務プロセスの要件に加え、下記3点(アイウ)に関しても加点または必須要件となります。C類型は業務プロセスのうち2項目以上に加え、下記の「ウ」を満たし、異なるプロセス(機能)間で情報共有や連携できることが条件です。D類型に関しては同じく業務プロセスのうち2項目以上と下記の「イ」「ウ」を満たす必要があります。
(ア)会計や債権関連のソフトウェアで、インボイス制度に対応 |
令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。制度開始に先駆けて、ITツールがインボイス制度に対応しているITツールが該当。(加点項目) |
(イ)国が推進するソフトウェアの「クラウド化」に資する |
提供事業者が用意するクラウドサーバーでソフトウェアのプログラムが稼働するもの (いわゆる SaaS)や、自社で用意したプライベートクラウド等で稼働するITツールが 該当。(A・B・C類型において加点、D類型において必須項目) |
(ウ)対人接触の機会を低減し、業務の非対面化を実現する |
新型コロナウイルス感染症の流⾏が継続している中で感染拡大を抑えながら経済の持ち 直しを図り、中小企業のポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環を実現させるため、感染リスクに繋がる業務上での対人接触の機会を低減するような業務の非対面化を 実現するITツールが該当。(C・D 類型において必須項目) |
通常枠よりも補助率が高いことに加えて、ハードウェア(PC、スマホ、ディスプレイ、プリンターなど)のレンタル費用も補助対象です(ハードウェアのみを導入する形での交付申請は認められません)。
申請方法(流れ)と注意点
ITツール導入のために、国から多くの支援を受けられることがお分かりいただけたでしょう。では実際にIT導入補助金を申請する際には、どんな手順を踏めば良いのでしょうか。申請の際の注意点と併せて紹介します。
申請準備〜交付決定後までの流れ
STEP1:IT導入補助金の内容把握 |
IT導入補助金について把握するためにも、交付規程や公募要領に目を通しましょう。細かい条件が定められているので、抜け漏れがないチェックが不可欠です。 |
▼
STEP2:IT導入支援事業者・ITツールの選択 |
補助金について理解をしたら、自社の業種や事業規模、経営課題に沿ってIT導入支援事業者と導入したいITツールを選定します。 |
▼
STEP3:「gBizIDプライム」アカウントの取得と「SECURITY ACTION」の実施 |
「gBizID」とは、1つのID・パスワードでさまざまな行政サービスにログインできるアカウントサービスです。プライムとエントリーの2種類のアカウントがあり、必要なのはプライムのアカウントになります。プライムアカウントを作成するのに書類提出が求められ、印鑑証明書や代表者印も必要になります。登録完了するまで2週間(状況によっては3週間以上)かかるので余裕をもって申請しましょう。 「SECURITY ACTION」とは、IPA(情報処理推進機構)が創設した「中小企業自らが情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度」です。あくまで自己宣言なので、IPAが認証を与えるわけではありません。取組み内容に応じて「一つ星」「二つ星」の2段階に分かれており、いずれかを宣言することを要件としています。取得できる「SECURITY ACTION自己宣言済アカウントID」をIT導入補助金の交付申請の際に入力します。 |
▼
STEP4:交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出) |
IT導入支援事業者と商談を進め、交付申請の事業計画を策定します。その後、IT導入支援事業者から『申請マイページ』の招待を受け、必要情報の入力や書類の添付後、IT導入支援事業者にて導入するITツール情報や事業計画値を入力します。その後、『申請マイページ』上で入力内容の最終確認し、申請に対する宣誓を行い事務局へ提出します。 |
▼
STEP5:ITツールの発注・契約・支払い |
交付申請を完了して、事務局から「交付決定」を受けた後は、ITツールの発注・契約・支払いなどが可能になります。 |
▼
STEP6:事業実績報告 |
補助事業が完了したら、実際にITツールを発注・契約・納品・支払いなどの有無が分かる証憑を提出してください。中小企業・小規模事業者様等の方が『申請マイページ』から事業実績報告に必要な情報および証憑の添付を行い、事業実績報告を作成後、IT導入支援事業者が内容の確認および必要情報の入力を行います。最終確認が済んだら、中小企業・小規模事業者様等の方が事務局に事業実績報告を提出して完了です。 |
▼
STEP7:補助金交付手続き |
補助金額が確定すると、申請マイページで補助額を確認できます。確認後に補助金が交付されます。 |
▼
STEP8:事業実施効果報告 |
定められた期限内に事業実施効果報告を『申請マイページ』から必要な情報を入力し、IT導入支援事業者が『IT事業ポータル』から代理提出します。 |
【申請の注意点】
主な注意点は3つです。
注意点1:どの企業でも申請できるわけではないこと。業界ごとの要件に合致している必要があります。
注意点2:自社がIT導入支援事業者である場合は補助の対象外になること
注意点3:事業実施効果の報告が必要であること。補助金を受け取っておきながらITツールを導入していなかったなど、虚偽・不正が発覚した場合にはペナルティの対象になるので注意が必要です。計画が未達成の場合はペナルティになることはありませんが、計画を達成できるよう事業を進めましょう。
IT導入補助金の対象「チームスピリット」の導入でバックオフィス業務の効率化を
「チームスピリット」は「IT導入支援事業」の認定ITツールとして採択されており、対象となる中小企業・小規模事業者様は年額費用の最大2/3の補助を受けられる可能性があります。
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