勤務間インターバル制度を解説!メリットや導入事例、導入時のポイントを解説
著者:チームスピリット編集部
「勤務間インターバル制度」は、一定時間以上のインターバル(休息時間)を勤務終了時刻から始業時刻までの間に設定する制度です。同制度の導入は、従業員の健康の保持や業務の生産性向上など企業にさまざまなメリットをもたらします。一方、制度導入にあたっては事前に押さえておくべきポイントがあります。ポイントを踏まえた上で検討および導入を進めることが大切です。
この記事では勤務間インターバル制度の概要のほか、導入時のポイントやメリット・デメリットなどを解説します。実際に同制度を利用している企業事例も紹介します。
●目次 |
1.勤務間インターバル制度の概要
勤務間インターバル制度とは、「勤務終了時刻から始業時刻まで、一定時間以上のインターバル時間(休息時間)を設ける制度」のことです。
同制度は働き方改革関連法に盛り込まれた「労働時間等設定改善法」の改正により、2018年から導入が企業の努力義務になりました。
勤務間インターバル制度を導入した場合、一定時間のインターバル時間を確保するために、例えば上記のように翌日の始業時刻を繰り下げる働き方が実現します。
同制度の導入により、従業員の睡眠時間の確保や業務の生産性向上などの効果が期待できます。また、勤務間インターバル制度は企業単位だけでなく、部署単位または職種単位でも導入可能です。
なお、休息時間は「最低何時間以上」などの決まりはなく、各企業に委ねられています。
勤務間インターバル制度の利用パターン
勤務間インターバル制度の利用パターンを2つ紹介します。両パターンともに、始業時刻8時、終業時刻17時、インターバル時間が11時間の企業における事例になります。
・例1:インターバル時間と翌日の所定労働時間の重複部分を働いたものとみなすパターン
上記はインターバル時間と翌日の所定労働時間の重複部分を働いたものとみなすパターンを図にしたものです。
上記の例だと、23時まで時間外労働をしているため、翌日は始業時刻の「8時」から、終業時刻23時の11時間後である「10時」までの3時間を勤務したものとみなしています。つまり、翌日、実際に従業員が働く時間帯は10時~17時ですが、通常通り8時~17時まで勤務していたとみなすことになります。
例2:翌日の始業時刻を繰り下げるパターン
インターバル時間の11時間を確保するために、始業時刻を繰り下げるパターンです。上記図の場合、23時まで時間外労働をしているため、翌日の始業開始は11時間後の10時からになります。
さらにこのパターンの場合、翌日の終業時刻をそのまま17時で変更しないケースと、始業時刻が2時間遅れた分、終業時刻も2時間遅らせて19時に繰り下げるケースとに分かれます。上記の図でいうと、上が終業時刻を17時のまま変更しないケース、下が終業時刻を19時に繰り下げるケースです。
2.勤務間インターバル制度導入のメリット
勤務間インターバル制度の導入による具体的なメリットについて解説します。
従業員の健康効果
勤務間インターバル制度導入により、一定時間以上のインターバル時間(休息時間)を確保することで、疲労回復やストレス反応を抑える健康効果が期待されます。これは実際の調査結果にも表れています。
上記左のグラフからは、インターバル時間が長ければ長いほどストレス反応および起床時疲労感が減少する傾向にあることがわかります。また右の看護師を対象にした調査結果からは、11時間未満のインターバル時間の場合、翌月の病気休暇が多い傾向にあることが示されています。
このようにインターバル時間の長さと健康効果には密接な関係があるのです。インターバル制度導入は従業員の心身の健康に寄与すると考えられます。
出典(PDF資料): 厚生労働省|勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル ― 職場の健康確保と生産性向上をめざして―
従業員の定着率向上と人材確保
勤務間インターバル制度導入は、インターバル時間を一定期間以上確保する制度のため、従業員のワーク・ライフ・バランスの充実にも寄与します。その結果、従業員満足度が向上し、定着率の向上にもつながります。
また採用活動においても、同制度導入企業は「一定の休息時間が確保されている会社である」というアピールが可能です。求職者からも「従業員の健康に配慮している会社」だと好印象を持たれるなど、人材確保の面でもプラスに働きます。
業務の生産性向上
インターバル時間を設けることで、仕事とプライベートのオン・オフがより明確になり、従業員はより高い集中力で業務にあたれるようになります。また十分な休息を取ることで、思考もさえた状態で業務にあたれるため、ミスが減り、生産性も向上します。
3.勤務間インターバル制度導入のデメリット
勤務間インターバル制度導入にはデメリットもあります。以下で解説するデメリットもしっかり押さえたうえで制度導入を検討しましょう。
制度導入のための従業員に向けた説明
勤務間インターバル制度の導入は従業員の働き方に大きな影響を及ぼします。そのため、従業員に理解を得られるような十分な説明が必要です。従業員によっては、「勤務間インターバル制度の導入により、顧客の要望に応えられなくなるかもしれない」「繁忙期はインターバル時間を取るのは無理だ」など制度導入に対してネガティブな反応を示す可能性があります。
制度導入時には導入に対してネガティブな印象を抱く従業員へも、制度の必要性を説明し、従業員の疑問・不安に応える必要があります。
インターバル時間を守れない従業員も出てくる
繁忙期や急ぎの業務が発生した時など、どうしてもインターバル時間を守れない従業員が出てくる可能性があります。インターバル時間を守れない従業員が多いと、制度の形骸化につながります。形骸化を防ぎ、従業員の健康を守るためにも、例えばインターバル時間を確保できなかった翌日は、該当者の仕事量を減らし、勤務時間を調整といった工夫・対応が重要になります。
インターバル時間の管理が煩雑になる
勤務間インターバル制度を運用するには、従業員一人ひとりの就業時刻と始業時刻を日々確認し、インターバル時間を算出する必要があるため、管理が複雑になります。そのため、リアルタイムに正確な勤務時間を把握するには勤怠管理システムをはじめとする、ツールやシステムを有効に活用すること重要です。
勤務間インターバル制度に対応した勤怠管理システムを導入することで、勤務体系が異なる部署・従業員のインターバル時間を自動計算して算出することができるようになります。また、システムによってはインターバル時間不足の部署・従業員を一覧化・可視化する機能もあり、制度が有効に運用されているかを常にチェックすることが可能です。
4.勤務間インターバル制度導入時のポイント
勤務間インターバル制度を導入するにあたり、押さえておきたいポイントを解説します。
【ポイント①】制度導入の検討
最初に勤務間インターバル制度を導入するかどうか、現実的に導入できるかどうかを検討します。検討にあたっては、以下の項目を精査する必要があります。
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労働時間の把握および導入実現性を確認
制度の導入検討にあたっては、労働時間に関する現状を把握することが重要です。厚生労働省では「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル」において、同制度導入前に把握すべき労働時間等に関する現状、課題を、以下のとおり示しています。
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導入目的の設定
導入検討時には勤務間インターバル制度導入の目的を設定することが重要です。適切な目的を定めないと、導入自体が目的化されかねないためです。
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目的が勤務間インターバル制度導入により達成される見込みがあるのか、この時点でよく検討することが大切です。
導入に向けた経営層のコミットメント強化
勤務間インターバル制度の導入に向けた、経営層のコミットメント強化も大切です。具体的な方法としては、従業員に向けた経営層の、「勤務間インターバル制度の導入および定着により、従業員の健康を守っていく」という姿勢をメッセージとして発信するなどが考えられます。実際に制度を導入し、浸透させていくには経営層の理解と後押しが極めて重要です。
【ポイント②】制度設計
勤務間インターバル制度の導入の決定後は具体的な制度設計を行います。制度設計にあたっては、以下の項目を検討しましょう。
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参考(PDF資料): 厚生労働省|勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル ― 職場の健康確保と生産性向上をめざして―
上記検討項目は労働時間の把握および導入実現性を確認で紹介した、「制度導入前に把握すべき労働時間等に関する現状、課題」を踏まえながら、社内で疑問点を洗い出したうえで十分に話し合いましょう。
就業規則の改訂や労働協約などの締結
勤務間インターバル制度を浸透させ、十分に機能させるためには、制度の明文化が重要です。就業規則の改訂や、労働組合がある企業は労働協約の締結などを実行し、勤務間インターバル制度を社内制度として明文化しましょう。
【ポイント③】社内外への周知および開始
勤務間インターバル制度の導入時には、改めて制度導入の意義や目的、仕事の進め方に関する留意点などを社内外へ周知することが大切です。社内だけでなく、引き続き円滑に業務を遂行するためにも、取引先や顧客など、制度導入による影響を受ける社外の関係者にもしっかり周知を行います。
社内向けには以下の方法で周知を行いましょう。
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社内外への周知は導入時だけでなく、制度を機能・浸透させるためにも継続的に実施します。周知の際は、従業員の声を聞き、必要に応じて運用方法の見直しも行いましょう。
5.勤務間インターバル制度導入事例
厚生労働省がまとめた、勤務間インターバル制度の導入事例集(2018年度版)をもとに、勤務間インターバル制度を導入している企業事例を3社紹介します。
株式会社スリーハイ
工業用・産業用のヒーターを製造している株式会社スリーハイでは、2018年3月に、インターバル時間9時間の勤務間インターバル制度を導入しました。同社は、従業員の満足度およびモチベーションの向上が製品の質向上にもつながるという考えの下、制度の検討・導入を実施しました。
導入前は残業については野放し状態であった同社ですが、同制度導入後は従業員の意識変革もあり、残業は少なくなりました。さらに制度導入後、同社は各従業員がどれくらいの業務・仕事を担当しているかを可視化しました。この取り組みにより業務の「見える化」も進みました。
参考(PDF資料): 厚生労働省|導入事例 株式会社スリーハイ
株式会社山陽新聞社
山陽新聞社では2017年4月、試験的に勤務間インターバル制度を導入しました。同社は長時間労働の改善を目的に、全組合員を対象に原則11時間を目処とするインターバル時間を設定します。
「制度の導入により残業が○○時間減らせた」という目に見えるような成果は出ていないものの、企業全体の時間外労働時間は減少しました。また同社では、特に就活生の女子学生から「魅力的な取り組みですね」という声も多く聞くようになり、ワーク・ライフ・バランスに取り組む企業としてのイメージアップの効果も感じられたようです。
参考(PDF資料): 厚生労働省|導入事例 株式会社山陽新聞社
株式会社三井金属ユアソフト
システム開発・ITサービスを手掛ける株式会社三井金属ユアソフトは、従業員全員を対象にインターバル時間11時間の勤務間インターバル制度を導入しました。同社は2013年11月に「はつらつ職場づくり宣言」を策定したり、2014年9月からフレックスタイム制度を導入したりと、働き方改革を進めてきました。こうした働き方改革の新たな取り組みとして、勤務間インターバル制度の導入を決定したという経緯があります。
同社は制度導入による一番の効果は、従業員の健康管理・安全衛生面であると明言しました。特に精神面での健康を保つためには睡眠時間の確保が重要であり、同社は勤務間インターバル制度の取り組みを続けていくことがより大きな効果につながると考えています。
参考(PDF資料): 厚生労働省|導入事例 株式会社ユアソフト
6.まとめ
勤務間インターバル制度は勤務終了時刻から始業時刻まで、インターバル時間を一定時間設ける制度です。制度の導入にあたっては現実的に導入可能かどうか、よく検討することが重要です。
制度の導入により、従業員の健康効果や人材獲得力の向上などさまざまな効果が期待できます。導入が可能と判断した企業は、ぜひ勤務間インターバル制度の導入を検討してみてください。
7.勤務間インターバルをカンタンに把握するには
勤務間インターバル制度の運用においては、従業員の労働時間・インターバル時間をリアルタイムかつ正確に把握することが重要です。
クラウド勤怠・工数管理ソフト「チームスピリット」を利用することで、部署や従業員ごとに勤務体系が異なる場合にも、インターバル時間を自動で計算・一覧化することができます。また、インターバル時間の不足回数を従業員ごとに一覧化することもできるので、インターバル時間を遵守できていないケースが多い部署や従業員に改善を促すことができます。また、その月の状況だけでなく、複数月にわたって運用の改善がなされているかを画面上でチェックすることも可能です。
実際に勤務間インターバル制度の導入・運用に向けて準備されている企業は、ぜひ資料請求やお問い合わせください。
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