1. Home
  2. チムスピコラム
  3. 基礎知識
  4. 【働き方の未来2035】2035年の働き方や社会はどう変化するのか?
基礎知識

【働き方の未来2035】2035年の働き方や社会はどう変化するのか?

著者:チームスピリット編集部

この記事は約7分で読み終わります。

働き方改革の施行や新型コロナウイルス感染症の影響を受け、労働環境はここ数年で急激に変化しています。リモートワークやテレワークが当たり前になったり、ITツールを駆使した業務生産性の改善が試行錯誤されたりと、身近で起きた変革も多いのではないでしょうか。 優秀な従業員を確保するためには、今後の労働市場に沿った、具体的な施策が必要です。今回は、厚生労働省がまとめた「働き方の未来2035」について解説します。

厚生労働省がまとめた「働き方の未来2035」

「働き方の未来2035」とは、厚生労働省の有識者懇談会「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」をまとめた報告書です。

出典:厚生労働省「働き方の未来 2035~一人ひとりが輝くために~」

2016年に公開され、2035年の労働市場を予測したレポートとして知られています。社会情勢・経済状況・労働法の改正・技術改革などさまざまな視点で分析されているので、気になる方は目を通しておきましょう。

少子高齢化による労働人口の減少が進むこと、それに伴ってAIやITツールなど少ない人員でも業務を効率良く回せるツールが浸透することなどが記載されています。

従来の終身雇用制が事実上崩壊していること、フリーランスや副業など自由な働き方をする人が増えること、海外への人材流出リスクがあることにも触れています。

働き方の未来2035における社会のあり方

ここでは、「働き方の未来2035」において想定されている2035年の社会について掘り下げて解説します。

どのようなリスクが考えられるか、どのような社会になっているのか見通しを立てたいときは、下記を参考にしてみてください。

少子高齢化

日本の少子高齢化問題は加速の一途を辿っており、2016年には1.27億人いた総人口が1.12億人に減少すると予想されています。高齢化率は25.7%から33.4%になり、全人口のうち3人に1人が高齢者となる時代が到来することも特徴です。

少子高齢化に伴う労働人口の減少を受け、人手不足を解消するため高齢者・女性・外国人を積極的に登用する企業が増えてきました。

ほかにもAIやITツールのニーズが拡大していることから、情報通信産業に労働人口が集中する予測も立てられています。同じく高齢者を支えるために必要な医療・介護・福祉業界に就職する人も増え、特定の業界に人が集まる可能性が高くなります。

技術革新

労働人口の不足が進む中でも市場ニーズは多角化しており、少ない人員で効率良く業務を回すためにAI・ITツールの活用が望まれています。

すでに通信技術・センサー・VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・移動技術・AI(人工知能)などの技術革新が進んでおり、導入実績が増えています。なかでも、AIが社会に与える影響は大きく、ある程度ルールに沿った業務やスピードが重視される業務では、その技術が積極投入される可能性が高いです。

一方、人間性に基づく価値評価が必要な仕事や、流動的なコミュニケーションが要される仕事はAIが代替することはできません。AIはあくまでも意思決定の支援をするのみであり、経営・企画・サービス提供などはこれまでどおり人が行うことが想定されています。

働き方の未来2035で注目されている5つの論点

次に、「働き方の未来2035」で注目されている5つの論点を解説します。

やみくもに今後の社会変動を見据えるだけでなく、企業・国・個人がどのように動く必要があるかまでイメージして動くことが重要です。論点ごとに細分化しながら、レポートの内容を確認してみましょう。

1.働き方

異なる空間にいてもインターネットを通してコミュニケーションが取れる昨今において、リモートワークやモバイルワークの実現可能性が高まっています。

例えば、オンラインワークスペースを介して、海外居住の従業員と同時並行で作業を進めることも可能です。都心に住む医師が地方の患者をオンライン環境で診察するなど、さまざまなシーンで導入されています。

実現可能性の高まりを受け、オフィスに縛られず働く時間と場所を選べる時代が到来するかもしれません。評価の指標が「時間」ではなく「実績・成果」に移り変わり、不必要な残業・休日出勤をなくす動きも取られています。

これらの変化により、個人のキャリア形成にも大きな影響が出ると考えられます。

2.社会への影響

柔軟な働き方が社会全体に与える影響は大きく、正社員にこだわらない人が増えています。

これまでは「安定した働き方」の代表例として、公務員もしくは大企業の正社員として就職する道が示されてきました。しかし近年は、あえて契約社員・派遣社員を選択してワークライフバランスを重視する人が増えているのです。

また、フリーランスとして独立し、プロジェクトごとに企業を渡り歩いたり、正社員をしながら副業したりできるようになっています。

働き方の多様化により、「企業に所属すること」ではなく「自分の好きなように働くこと」に価値を見出す人が増えると予想されています。減少している労働力を確実に確保するためにも、働きやすい環境や実力主義での人事評価制度を充実させる企業が増えそうです。

3.制度

「働き方の未来2035」では、厚生年金や雇用保険の制度変革にも触れているのが特徴です。働き方が柔軟になっていることを受け、直接雇用以外の働き方にも対応できる保障・保険が求められるようになっています。

狭義での雇用関係にとらわれず、幅広い人材を対象とした制度ができれば、万が一のリスクにも対応しやすくなります。労働者のみにメリットのある取り組みではなく、労働審判やコンプライアンスの対策に悩む企業にとっても有意義な取り組みです。

4.教育

終身雇用制の崩壊によって「会社が個人を育ててくれる」という時代が終わり、人材教育の考え方も変わりつつあります。

自らのキャリアを確立するために会社や社会を上手く利用する人が増え、自発的なスキルアップが欠かせなくなりました。ほかにも、キャリアチェンジに積極的になったり、学生のうちから起業する人が増えたりと、これまでにない多彩なキャリア形成を実現できるようになっています。

同時に、自らスキルアップするのが欠かせない時代だからこそ、実績や経歴に役立つプロジェクトを手掛ける企業の人気が高まっています。「この会社の一員として働くことは自分にとってプラスになるはず」という評価をされる企業が、労働市場における価値を上げていく時代が到来しているのです。

5.政策

技術革新は労働市場を発展させる大きなチャンスですが、それをサポートするような政策がないと機会損失も増えてしまいます。そのため「働き方の未来2035」では、政策の見直しや技術革新の促進をテーマとした議論が行われました。

実際に取り組みが始まった事例として、経済産業省と厚生労働省が合同で始めた「第四次産業革命スキル習得講座」の受講生に対する「教育訓練給付金」が挙げられます。

AI・IoT・データサイエンス・クラウド開発・高度なセキュリティやネットワークの構築など、専門性の高いITスキル習得を目指す人材を金銭的に支援する取り組みです。IT技術の重要性が注目され、利用者が拡大しています。

新たなIT人材の輩出に国が積極的な姿勢を示しており、今後に対する期待も高まっています。

【2035年】日本国内の働き方はどのように変化するか

結論として、2035年における日本では下記のような働き方が増えると予想されています。

・時間や場所にとらわれない自由かつ柔軟な働き方
・正社員に限定しない多様な雇用形態の拡充
・高齢者、主婦、外国人労働者などの労働市場参入
・成果や実績を重んじる人事評価制度の浸透
・個人のキャリア形成を重視した自発的なスキルアップ

上記のような労働市場の変革に対応するために、企業が自社の採用、育成計画を見直す良いタイミングかもしれません。

まとめ

「働き方の未来2035」は、厚生労働省の有識者懇談会「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」をまとめた報告書です。リモートワークなど柔軟な働き方が浸透している背景には、少子高齢化による労働人口の減少や人材の流動性が影響していることを知っておきましょう。

今回の内容をもとに今後10年の人材計画を見つめ直し、改善するべきポイントがないかチェックしてみることをおすすめします。