【人事労務担当者必見】時短勤務の取得期限や対象者は?給与の扱いについても解説
著者:チームスピリット編集部
時短勤務は、育児・介護を行う従業員が従来よりも短い時間で勤務する制度です。育児・介護休業法の法整備後、制度を導入する企業は増え続けています。この記事では、従業員の柔軟な働き方を応援する時短勤務について、その対象者と条件、時短勤務が可能な期間、またその他の代替措置やよくある疑問について解説しています。
●目次 |
1. そもそも時短勤務(短時間勤務)とは?
短時間勤務(時短勤務)は、定められた1日の労働時間を短縮して勤務する働き方です。厚生労働省が策定した短時間勤務制度は、原則として1日の所定労働時間を6時間とします。
時短勤務制度の目的
時短勤務制度は、2009年の育児・介護休業法改正によって制度が開始されました。労働者が勤務しやすい環境を整え、育児や家族の介護を理由に退職する人を減らすことで労働人口を確保するのが目的です。法改正により、各事業者は時短勤務制度を導入することが義務付けられています。
時短勤務制度の現在の導入状況
厚生労働省の「事業所結果概要」(PDF資料)によると、2018年時点では育児を目的とした時短勤務制度を導入している企業は65.1%でした。その後の2020年は68.0%に上昇しており、導入企業は年々少しずつ増加しています。
時短勤務の対象者
時短勤務は、育児または介護を行う従業員を対象としています。さらにそれぞれ以下の条件があります。
・3歳未満の子供を養育する男女従業員 |
・要介護状態にある家族を持つ男女従業員 |
ここで言う要介護認定の定義は「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」を指します。
2.時短勤務は法律上いつまでとれる?
時短勤務は育児・介護休業法に基づき定められている制度で、休業期間も決められています。
育児の場合:子供が3歳に達する日まで
子供が3歳未満の場合、養育している従業員は申し出た期間の時短勤務が可能です。時短勤務制度の整備は法律で義務付けられていますが、その制度内容は企業によって異なる内容にすることが可能です。雇用主は自社における時短勤務制度の内容を検討し、就業規則の中で細かく定める必要があります。
子供が3歳以降の場合
子供が3歳以降の場合、時短勤務制度は義務ではありません。ただし企業には、3歳以降から小学校入学前までは、所定外労働の制限に関する制度や所定労働時間の短縮措置またはフレックスタイム制などの措置が努力義務として求められています。育児中の従業員の支援を継続するためには、自社で独自の制度を検討し整備する必要があります。
介護の場合:利用開始日から連続する3年以上の期間
要介護認定の家族を持つ全ての従業員が時短勤務できるよう、法律で義務付けられています。その取得可能期間は、利用開始日から連続する3年以上です。また、時短勤務はこの期間に2回以上利用できます。取得期間については法律で定められていないため、具体的な期間は雇用主と従業員との話し合いで決定します。
また、介護休業と併せた取得も可能です。例えば、以下の(例1)の図のように2020年10月1日から3年間を介護のための時短勤務とし(①)、その日から1年半後の2021年4月までを時短勤務、介護対象の家族の状態や他の家族の状況に合わせて30日間は介護休業、2021年5月に職場復帰し2023年9月末まで時短勤務をする(②)、といった働き方です。
時短勤務は2回以上の取得が可能ですが、(例2)のように従業員の希望によって、3年間続けて時短勤務を行うこともできます。
3. 時短勤務の適用外となった従業員への代替措置
法律による時短勤務制度の対象とならなかった従業員がいる場合でも、企業は通常の時短勤務とは異なる代替措置を講じる必要があります。
フレックスタイム制度の適用
フレックスタイム制度は、従業員の自由裁量で出社と退社の時刻を決められる制度です。必ず勤務していなければならない時間(コアタイム)がある場合、従業員はその時間を含めて勤務時間を決定します。
時差出勤の制度の適用
時差出勤制度とは、本来の勤務時間帯から少しずらして勤務できる制度です。例えば9時から18時の勤務を1時間ずらし、10時から19時に変更して勤務します。勤務時間の長さは同じですが、子供の保育園の送迎や学校の登下校などの時間に合わせた勤務が可能になります。
保育施設の設置運営
事業所内に託児所を設け、従業員の負担を減らすことも代替措置として認められます。保育施設を設置・運営するほか、従業員がベビーシッターを雇った費用を負担する、合意を得て時短勤務ができる部署に一時的に配置替えするといった措置もあります。
4. 時短勤務中の給与はどうなる?
時短勤務期間は所定の勤務時間よりも働く時間が短いため、通常の勤務時よりも短くなった勤務時間の分だけ給与は減ります。給与が減るのは従業員の生活にとって大きな負担になるため、時短勤務に踏み出せない場合もあります。
雇用主は従業員に対して、時短勤務による給与面での変化について具体的に説明する責任があります。そのため、時短勤務中の給与の計算方法についても改めて整理し、正しく理解しておくとよいでしょう。
時短勤務中の給与の計算方法
時短勤務期間の給与は、以下の方法で計算します。
基本給(給与月額)×実労働時間÷所定労働時間 |
実労働時間は、「1日の勤務時間×1カ月の出勤日数」で、所定労働時間は「8時間×1カ月の所定労働日数」で算出されます。
例えば基本給が25万円、実労働時間が6時間、所定労働時間が8時間の場合は、
25万円×6時間÷8時間=18万7,500円 |
となり、18万7,500円が時短勤務期間の給与です。
諸手当が減額される場合も
時短勤務期間は、役職手当や時間外手当などの諸手当も、給与と同様に減額される場合があります。通勤手当や食事手当など実際の労働日数に応じて与えられる手当は、労働日数や時間によって支給額が変わりますが、住宅手当や扶養手当等の家庭関連の手当てについては時短勤務であっても支給額を変えるのは適切ではないとされています。
手当の支給ルールは企業によって取り扱いが異なるため、就業規則で明確に定めておく必要があります。なお、時短勤務期間には原則として残業が制限されており、深夜勤務などで得られていた割増賃金分の給与は減ると考えておきましょう。
5.時短勤務に関するよくある疑問
法改正により制度化された時短勤務について、現場からよくあがる疑問点とその答えを紹介します。
正社員のまま時短勤務できますか?
時短になった分の給与は減額となりますが、正社員のまま時短勤務が可能です。正社員が時短勤務を申し込んだことを理由に解雇や退職を強要するのは労働基準法の不利益取り扱いに該当し、禁止されています。また、時短勤務は正社員でなくても前項「時短勤務制度の対象者」の条件を満たすことで利用可能です。
参照(PDF資料):厚生労働省|(ケース7)育休後は短時間勤務を!
時短勤務のメリット、デメリットを知りたいです
時短勤務のメリットは、育児や介護と仕事を両立しやすくなり、従業員が家庭の事情で退職するのを防止できる点にあります。長期間のキャリア形成にもつながり、ワークライフバランスが改善することで、仕事の生産性の向上も期待できます。また個人の状況に合わせた柔軟な働き方ができる企業としてイメージアップやブランディングにつながり、人材を確保しやすくなります。
デメリットとしては職場で時短勤務が浸透していないと、時短勤務の従業員と従来の勤務の従業員との間で溝が生まれ、コミュニケーションに問題が生じる場合があります。さらに時短勤務の従業員の人員配置や業務量の配分には通常よりも気を配る必要があります。
時短勤務中の従業員に残業させても法違反になりませんか?
時短勤務は、残業をしないことを前提としています。企業が従業員に残業をさせても違法にはなりませんが、3歳未満の子供を持つ時短勤務中の従業員は残業を拒否する申し出が可能です。また3歳以上で小学校に入学前の子供を養育している、あるいは要介護状態の家族を介護している従業員の場合は、残業時間が1カ月24時間・1年150時間までに制限されます。
時短勤務を行うために就業規則で何を定めればよいのですか?
就業規則では、時短勤務を利用できる期間、時短勤務の申請期限について定めます。
1.時短勤務の期間
時短勤務の期間は育児と介護で異なるため、それぞれの期間を明記します。時短勤務中は労働時間や給与が変更されるため、労働組合または労働者代表の意見書と労働基準監督署への届け出も必要です。
2.時短勤務の申請期限
申請期限は、一般的に1カ月前後です。勤務時間が短くなることにより他の従業員に業務の引き継ぎが必要になるため、申請期限を設けて従業員全体の負担を減らします。
時短勤務制度導入の際は、就業規則を定めると同時に、従業員全体への周知を行います。マタニティハラスメント・パタニティハラスメントなどのハラスメントや従業員同士の不和を防ぐためにも、従業員の認知の徹底が必要です。新人研修や社員研修で時短勤務制度を周知し理解を得る、利用を促進するといった対応を行います。
6.まとめ
時短勤務は、育児・介護休業法に基づき、育児や介護と仕事を両立するための制度です。利用することで、従業員の働きやすさを向上させ、家庭の状況による退職を防ぐ効果が期待されます。育児の場合は子供が3歳になるまで、介護の場合は3年以上の時短勤務が法律で義務付けられています。
また子供が3歳以上の場合や時短勤務の適用外となった場合でも、企業は代替措置を講じることが努力義務とされています。時短勤務について正しい知識を得て従業員に周知し、さまざまな立場の従業員が働きやすい職場環境を整備することが重要です。
7.時短勤務の従業員の勤怠管理を正確かつ効率的に行うには
法改正により、今後時短勤務を選択する従業員が増えることが予想されます。時短勤務だけでなく、固定労働制やフレックスタイム制など、複数の雇用契約や勤務体系ごとに労働時間や残業時間を正確かつ効率的に管理するのは手間がかかります。
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