【図解あり】産後パパ育休とは?制度の詳細や注意点、推進方法を解説
著者:チームスピリット編集部
「産後パパ育休制度の導入を検討しているものの、制度詳細や自社での運用方法はよくわからない」といった課題を抱える企業も多いのではないでしょうか。
産後パパ育休制度を活用することで、男性社員が育児に参加しやすくなります。社員に働きやすい環境を提供することで、自社へのエンゲージメントが向上し長期定着が見込めるとともに、求職者にとっても魅力的な要素となるでしょう。
本記事では、産後パパ育休制度の概要や他の育休制度との違い、企業として円滑に制度を導入・運用するためのポイントなどについて詳しく解説します。
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産後パパ育休とは
産後パパ育休は、男性の育児休業取得の促進を目的とした、子どもの生後8週間以内に最大4週間まで父親が育児休暇を取得できる仕組みです。産後パパ育休には、以下の特徴があります。
- 2回に分割して取得できる
- 通常の育休とあわせると、最大4回育休を取得できる
- 産後パパ育休の対象者は出生後8週間以内の子を養育する、産後休業していない労働者
※2022年10月1日の法改正により、育休対象者の要件のひとつとされていた「勤続1年以上の従業員」という内容は、条件付きで撤廃されました。
なお「産後パパ育休」は法改正で2022年10月1日から施行された制度で、正式名称は「出生(しゅっしょう)時育児休業制度」です。
※1 職場環境の整備などについては、今回の改正で義務付けられる内容を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1カ月とすることができます。
※2 具体的な流れは以下①~③のとおりです。
①労働者が就業しても良い場合は事業主にその上限を申し出
②事業主は、労働者が申し出た場合に事業主にその条件を申出
③労働者が同意した範囲で就業
※3 1歳を超えた子どもに対する育児休業中、他の子どもの産前産後休業、産後パパ育休、あるいは家族の介護休業、または新たな育児休業の開始により、当初の育児休業が終了した場合があります。このような状況下で、休業の対象となっていた子どもや家族が死亡等の事由により休業の必要がなくなった場合、元の子どもについて育児休業を再度取得することが認められています。
次からは、産後パパ育休ならではの大きな特徴を2点紹介します。
産後パパ育休の特徴1.2回の分割取得が可能!育休と合わせると4回の分割も
産後パパ育休を取得することを初回に申請する際「分割して取得する」ことを申し出ておけば、最大2回の分割取得ができるようになります。また、2回の分割期間にそれぞれ何日休むかは、取得者が自由に調整することが可能です。
また、法改正によって通常の育児休業制度でも分割取得が認められるようになったため、通常の育児休業と産後パパ育休を併用することで最大4回の分割取得が可能になりました。
夫婦で交代で育児休業を取得して仕事と育児の負担を減らすなど、各家庭に応じた柔軟な使い方ができるようになっています。
産後パパ育休の特徴2.出産予定日から取得可能
出産日や出産予定日にかかわらず、柔軟に取得期間を設定できるのが産後パパ育休制度の特徴で、同制度の取得イメージは下記の通りです。
※引用:育児休業制度について|厚生労働省
例えば、出産が予定日より早まった場合でも、実際の出生日から8週間以内であれば取得可能です。また、出産が予定通りだった場合は、出産予定日の翌日から8週間以内に取得できます。
より視覚的に制度概要を確認したい場合は、厚生労働省による以下の動画もご参考にしてください。
産後パパ育休に関連する社会保険料の取り扱い
産後パパ育休中は要件を満たすと社会保険料が免除になり、育児休業中の経済的な不安を軽減することができます。
各社会保険料の取り扱いについて、以下の表にまとめました。
社会保険料 | 取り扱い |
---|---|
健康保険料・厚生年金保険料 | 申出により保険料の支払いが免除される |
雇用保険料 | 休業中に勤務先から給与の支給がない場合は、保険料の負担はない |
産後パパ育休を含む育児休業期間中は、上記の各種社会保険料の支払いが被保険者本人と会社負担分ともに免除されます。ただし給与分の社会保険料を免除するには、2つの条件のいずれかを満たす必要があります。
- 月末時点で育児休業を取得していること
- 同じ月内で育児休業が開始・終了する場合は14日以上の育児休業をしていること
一方、賞与に対する社会保険料の免除には、より厳しい条件が設定されています。免除されるためには、賞与の支給月末時点で休業中であることに加えて、1カ月を超える期間の休業を取得していることが必要です。
※参考:育児休業、産後パパ育休や 経済的に支援します|厚生労働省
例えば、6月1日から6月30日まで育児休業を取得する給与の社会保険料は免除されますが1カ月を超えないため賞与の社会保険料は免除されません。しかし、1日増やして7月1日まで取得すると、6月に支給された賞与についても社会保険料が免除されることとなります。
例:給与支給日が毎月20日、賞与支給日が6月10日だった場合
育児休業取得期間 | 6月給与の社会保険料免除 | 賞与の社会保険料免除 |
---|---|---|
6月1日から6月30日まで | あり | 無 |
6月1日から7月1日まで | あり | あり |
【社会保険料免除】人事担当者が知っておきたいポイント
産後パパ育休を取得する従業員の申請を受け、申請が受理されたら、人事担当者は社会保険料の免除要件の確認および、社会保険料免除の手続きを行わなくてはなりません。社会保険料の免除申請は、従業員が育児休業に入る際に行います。
また、社会保険料の免除要件が2022年の法改正によって変更になった点にも注意が必要です。
以前は月の前半に14日間の育児休業を取得した場合は、給与の社会保険料の免除要件に該当しませんでした。しかし法改正によって、月末をまたがなくても同じ月内に14日以上の休業をしていれば給与については免除要件を満たすことになります。
【社会保険料免除】育休取得者が知っておきたいポイント
育児休業に伴う社会保険料の免除を受けたい場合、休業を取るタイミングが重要になります。なぜなら先程紹介した通り、給与や賞与に対する社会保険料の免除を受けるには「月末時点で休業中であること」などが条件になっているからです。
例えば、その月の1日に産後パパ育休を取得し10日で復帰した場合、「月末時点で育児休業を取得していること」「同じ月内に14日以上の休業をしていること」の要件を満たさないため社会保険料の免除は受けられません。
産後パパ育休の取得で支給される「出生時育児休業給付金」
産後パパ育休を取得すると、一定条件の元「出生時育児休業給付金」を受け取ることができます。
出生時育児休業給付金の支給内容と主な支給要件は以下のとおりです。
支給内容 | 休業開始時賃金日額の67% |
---|---|
支給要件 |
|
なお、出生時育児休業給付金は非課税扱いとなり、給付金分の所得税・復興特別所得税はかかりません。
また住民税の対象にもなりませんので、次年度の住民税算定時に給付金分は非算入の扱いとなります。
支給要件に関する注意点
給付金の対象となるのは、産後パパ育休期間中の、就業日数が決められた範囲内の場合です。
例えば、産後パパ育休を28日間(最大取得可能日数)取得する場合、就業は10日以内(または80時間以内)に収める必要があります。育休期間が短くなれば、それに応じて就業可能な日数や時間も比例して減ります。
仮に産後パパ育休の取得日数が14日間であった場合は、就業は5日に収める必要があり、5日を超える場合の就業時間は40時間に収める必要があります。
そして、産後パパ育休中に仕事をして得た給与と出生時育児休業給付金の合計額が、休業前の1日当たりの賃金に休業日数を掛けた金額の80%を上回る場合、その超過分が給付金から差し引かれます。
このような給付金の条件をしっかりと確認し、従業員と齟齬が生まれないように注意しましょう。
【出生時育児休業給付金】人事担当者が知っておきたいポイント
人事担当者は、対象者から育休取得申請があった場合に、事業所の所在地を管轄するハローワークに、所定の書類を提出することで給付金の申請を行います。給付金は対象者の口座に直接振り込まれます。
従業員が産後パパ育休を分割して取得した場合も、出生時育児休業給付金の申請は1度にまとめて行う必要があります。
【出生時育児休業給付金】育休取得者が知っておきたいポイント
産後パパ育休取得中に仕事をすると、出生時育児休業給付金が賃金と調整されることがあります。また、そもそも休業中の就業日数が一定の基準を超えてしまうと、給付金そのものが支給されなくなる可能性があるため、産後パパ育休取得中に就労する場合は注意が必要です。
なお現在の制度では、産後パパ育休の給付金は賃金日額の67%となっていますが、給付額の上昇に向けて法改正が進められており、2025年4月1日から施行される予定です。
この変更によって出生時育児休業給付金の支給率が引き上げられ、さらに社会保険料が免除されることも考慮すると、手取りでは実質的に10割、つまりほぼ給与全額に相当する金額が支給されるようになります。
※参考:子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要|厚生労働省
産後パパ育休と育休(通常の育児休業制度)との違い
産後パパ育休と通常の育児休業制度を比較してみましょう。
▼産後パパ育休と育休との違いまとめ
産後パパ育休 | 育児休業制度 | |
---|---|---|
対象期間取得可能日数 | 子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能 | 子が1歳(最長2歳)まで取得可能 |
申出期限 | 休業の2週間前までに申し出が必要 | 1カ月前までに申し出が必要 |
分割取得 | 分割して2回取得可能 | 分割して2回取得可能 |
休業中の就業 | 労使協定を締結している場合のみ、労働者が合意した範囲で休業中に就業可能 | 原則就業不可 |
1歳以降の延長 | なし | 育休開始日を柔軟化 |
1歳以降の再取得 | なし | 特別な事情がある場合のみ再取得可能 |
対象となる給付金 | 出生時育児休業給付金 | 育児休業給付金 |
産後パパ育休と従来の育児休業制度は、別個の制度として設けられています。両制度には、以下のような相違点があります。
産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に取得することが可能です。これに対し、育児休業制度は原則として子が1歳に達するまで(最長で2歳まで)取得できる制度となっています。
申請期限についても違いがあり、産後パパ育休は休業開始予定日の2週間前までに申し出ればよいのに対し、育児休業は1カ月前までに申請する必要があります。
休業中の就業に関しても異なる規定が設けられています。産後パパ育休では労使協定の締結を条件に就業が認められますが、育児休業中は原則として就業が禁止されています。
なお、両制度の共通点は「2回に分けての取得が可能」だという点です。
類似制度の「パパママ育休プラス」とは
パパ・ママ育休プラスは、両親が協力して育児休業を取得する際に利用できる制度です。この制度では、両親がともに育児休業を取得することを条件に、子が1歳になるまでの育児休業期間を、子が1歳2ヶ月に達するまで延長できます。
詳細については、厚生労働省が提供する以下の資料をご参照ください。
産後パパ育休が企業に与える影響
産後パパ育休が企業に与える影響を、企業側・従業員側2つの観点からまとめました。それぞれの立場からのメリット・デメリットを解説します。
企業側のメリット
メリットとしては、産後パパ育休制度の推進をすることで、ワークライフバランスを重視し、従業員とその家族を大切にする企業として認知され、企業イメージが向上します。それにより、新たな人材の確保や離職率の低下が期待できるでしょう。
また、くるみんマークの取得により、子育てサポート企業としての社会的評価も高まり、名刺などにその認定を表示できる点も利点です。さらに、両立支援助成金など、国や都道府県が提供する助成金を受給できる可能性もあります。
加えて、男女の雇用や待遇差の是正、多様な人材の雇用促進など、職場の多様性向上にもつながるでしょう。
くるみんマークや両立支援助成金についての詳細は、厚生労働省のホームページをあわせてご参考になさってください。
参考:子ども・子育てくるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて|厚生労働省
企業側のデメリット
デメリットとしては、休業後の復帰の支援や人材確保といった社内体制の整備対応に手間がかかる点が挙げられます。また、男性従業員が育休を取得しやすい雇用環境を整備するためにも相応の時間や対応が必要になります。社会保険料免除や給付金の申請など、とにかく手続きが多い点もデメリットでしょう。
加えて、職場で休業を取得する従業員がいると、往々にしてそれ以外の従業員にその分の業務負担がかかる場合もあるため、業務量増加への不満をカバーするための対策を別途講じる必要が出てきます。
従業員側のメリット
産後パパ育休を取得する従業員側にとっての最大のメリットは、育児に専念できる点です。休業期間中に夫婦で協力して育児をすることにより、育児の困難さやノウハウなどを共有することができ、家族関係も良好になるでしょう。産後の女性をサポートして育児に関わることで、産休・育休後にも、育児がスムーズに進められる効果も期待できます。
育児だけでなく、産後の妻の負担を軽減できる面も利点です。メンタルヘルスや体調のサポートが行えることで、妻の職場復帰が遅れるリスクを減らすことにつながります。
このほかにも、後述する育児休業給付金を得られる点も大きなメリットです。
従業員側のデメリット
一方で従業員側のデメリットとしては、休業後に仕事にスムーズに復帰できるか、人事評価が下がらないかといった不安や、産休取得中に収入が減るリスクが生じることが挙げられます。
産休取得を理由に会社が解雇や退職強要、不利益な取り扱いなどを行うことは禁止されていますが、評価が下がり昇進が遠のくことや職場復帰の際のハラスメントに不安を持つ人は多いようです。
企業での育休取得状況はどうなっているのか
企業での育休取得状況は、近年大きな変化を見せています。厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によると、2022年度の男性全体の育児休業取得率は17.13%となっています。細分化すると、企業規模や業種によって取得率には大きな開きがあり、金融業界などでは比較的高い取得率を示している一方、小売業やサービス業では低い傾向にあるようです。
▼産業別の男性の取得率
- 金融業・保険業:37.28%
- 医療・福祉:25.99%
- 生活関連サービス・娯楽業: 25.53%
- 卸売業・小売業:8.42%
- 宿泊業・飲食サービス業:9.06%
この数字だけを見ると低く感じるかもしれませんが、過去10年の推移を見ると、取得率は約10倍に増加しており、取得率には大きな進展が見られます。
さらに、従業員数1000名以上の大企業を対象とした「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」では、取得率が46.2%と高い数値を示しています。このことから、大企業ほど制度の整備や取得しやすい環境づくりが進んでいることが読み取れるでしょう。
国も男性の育児休業取得を重視しており、民間企業における目標として、令和7年(2025年)までに50%の取得率を掲げています。この目標に向けて、様々な施策や支援が行われている状況です。
参考:男性職員の育児休業の取得促進に向けた取組の一層の推進について|総務省
育休取得が進んでいない原因
前述の通り、大企業を中心に日本における男性の育休取得率は大きく増加しており、今後も取得率増加の流れは続くと見込まれます。
しかしそのような中でも、育休取得が進んでいない企業もあります。育休取得が進んでいない主な原因は以下の通りです。
- 収入減少への懸念
- 取得しづらい職場の雰囲気
- 上司の理解不足
- 業務の繁忙や残業の多さ
- 「自分しかできない仕事がある」という認識
- パパ育休など新制度の認知度の低さ
育休中は給与の一部しか支給されないため、家計への影響を心配する声が聞かれます。職場の雰囲気も育休取得を妨げる要因で、上司からの理解が得られないなど、男性の育休取得に対する理解が不足している環境では、取得を躊躇する傾向が強くなるようです。
業務の繁忙さも育休取得を躊躇させる要因の一つです。残業が多く、自分が抜けることで同僚に負担がかかることを懸念する声も少なくありません。また、「自分しかできない仕事がある」という認識も育休取得を妨げています。
さらに、そもそもパパ育休などの新しい制度の認知度が低いことも問題です。利用可能な制度を知らないために、取得の機会を逃している可能性があります。
これらの要因は互いに関連しており、総合的に育休取得を難しくしていますが、企業は可能な限り、従業員の育児と仕事の両立を支援する環境づくりに努める必要があります。
参考:各種データ|イクメンライブラリー|育てる男が、家族を変える。社会が動く|イクメンプロジェクト
産後パパ育休の申請方法<従業員・企業が行うべき対応について>
産後パパ育休に対応する方法に関して、従業員・企業の両方の視点からご紹介します。
産後パパ育休を取得したい従業員は、「(出生時)育児休業申出書」を会社に提出しなければなりません。この申出書は、原則として休業開始の2週間前までに提出する必要があります。申出書には、休業期間や職場復帰予定日などを記入します。また、産後パパ育休を2回に分けて取得する場合、それぞれの休業期間を申出書に記載することが必要です。
従業員から産後パパ育休の申し出があった場合、事業主は速やかに(おおむね1週間以内に)取扱通知書を作成し、書面で交付する義務があります。
各種書類など社内様式の整備に際しては、厚生労働省により配布されている以下資料をご活用ください。
知らなかったでは済まされない!産後パパ育休の導入前に準備すべきこと
企業が産後パパ育休の制度を初めて導入・運用する際は、事前に社内のルール変更や従業員への周知等が必要になります。具体的には、以下4つの内容について準備・把握しておきましょう。
- 就業規則を改定し、産後パパ育休の内容を明記すること
- 産後パパ育休の制度内容や社内ルールについて、従業員に周知すること
- 育休が取得できる環境の整備・推進を行うこと
- 従業員が1,000人を超える企業では、育休取得状況の公表をすること
それぞれの内容について、詳細を解説していきます。
就業規則を改定し、産後パパ育休の内容を明記すること
産後パパ育休を導入するためには、就業規則の見直しが不可欠です。具体的には以下の内容を明記する必要があります。
- 育児休業を取得できる対象者の範囲
- 育児休業の期間
- 育児休業の申し出と撤回の手続きについて
- 育児休業中の就業について
- 育児休業期間中の賃金の支払いの有無について
- 育児休業期間中に通常とは異なる賃金が支払われる場合、その決定、計算および支払い方法について
就業規則の改定に際しては、絶対的記載事項を必ず含めなければなりません。絶対的記載事項が欠けていると罰金が科されるため、注意が必要です。絶対的記載事項には、始業・終業の時刻、賃金、休日、休暇などが含まれます。
また、産後パパ育休中の就業を認める場合や、入社1年未満の従業員の取得を認めない場合には、労使協定の締結も必要です。
以上の点を踏まえて、就業規則を適切に改定し、従業員が安心して産後パパ育休を取得できる環境を整えましょう。
産後パパ育休の制度内容や社内ルールについて、従業員に周知すること
従業員からの産後パパ育休の申し出がスムーズに行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。複数の措置を併せて講じることが望ましいです。
- 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
- 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
- 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
- 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
本人または配偶者が妊娠・出産を申し出た場合、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項を個別に周知し、休業取得の意向を確認しなければなりません。
- 育児休業・産後パパ育休に関する制度
- 育児休業・産後パパ育休の申出先
- 育児休業給付に関すること
- 労働者が育児休業・産後パパ育休期間中について負担すべき社会保険料の取り扱い
個別周知・意向確認の方法としては、面談、書面交付、FAX、電子メール等が推奨されています。なお、取得を控えさせるような形での周知や意向確認は認められません。
育休が取得できる環境の整備・推進を行うこと
企業は、従業員が育児休業を取得しやすい環境を整備することに積極的に取り組む必要があります。
令和4年4月1日に有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が大幅に緩和されたことを受けて、企業は従来の「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件を撤廃し、「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」という条件のみを適用するよう、就業規則等の制度を変更しなければならなくなりました。
また、企業は、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者に関しては、労使協定の締結により除外可能という例外規定を適切に運用することが求められます。加えて、育児休業給付についても同様の緩和措置を適用する必要があります。
また、職場におけるハラスメント対策も重要です。特に、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント(いわゆるマタハラ・パタハラ)の防止措置を講じることが、育児・介護休業法第25条によって事業主に義務付けられており、企業はこれを遵守する必要があります。
参考:職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!|厚生労働省
参考:令和5年度厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査報告書 (概要版)|厚生労働省
従業員が1,000人を超える企業では、育休取得状況の公表をする
従業員数1,000人を超える大規模企業には、産後パパ育休を含めた育児休業等の利用状況を年に一度公開することが義務づけられています。
公開すべき情報は、男性社員における「育児休業等の取得率」か、もしくは「育児休業等と育児目的休暇を合わせた取得率」のいずれかです。この取得率の計算対象期間は、公開を行う年度の前年度となります。
情報の公開方法としては、一般の方々がアクセスしやすいインターネット等を活用することが望ましいです。企業の公式Webサイトでの掲載はもちろん、厚生労働省が提供するWebサイト「両立支援のひろば」を利用することも推奨されています。
産後パパ育休の取得を推進させる方法3つ
最後に産後パパ育休の取得を推進させていく方法を3つご紹介するので、自社での取得率向上を図る上で参考にしてください。
その1:管理職の理解を深める取り組みを行う
企業や組織として産後パパ育休制度を拡充させたとしても、管理職の理解がなければ部署やチーム内で育児休業を取得することを申し出にくくなってしまうでしょう。そこで管理職に対して理解を深めてもらうための取り組みを行うことも重要です。
管理職によっては「人手不足に拍車がかかる」「現場の業務が回らなくなる」といった意見が出てくることもあるでしょう。しかし、厚生労働省が紹介している「イクボスの取組事例」の中では、会議のムダ取りや標準化・マニュアル化、労働時間の適切な管理など、業務効率化のためのヒントが挙げられているため、説明会や研修などで活用しながら理解を深めることが求められます。
なおイクボスとは、「育児や産育休を積極的に支援する上司」を指す造語であり、厚生労働省が推進する男性の育児参加に関する取り組み(イクメンプロジェクト)のひとつです。
その2:働き方の見直しを進める
日常的に長時間労働が続いている現場や、有給休暇の取得が進んでいない環境では、育児休業も取得しにくい傾向があります。そこでテレワークや時短勤務制度の導入、フレックスタイム制の導入などを実現できれば、労働環境も良い方向に変化していくと予想されます。
従来のワークフローや業務の進め方・手順のままでは、仕事が回らなくなる可能性もあるでしょう。まずは業務の棚卸しをしたうえで、何がボトルネックとなって業務改善が進められないのかを見極め、不要な業務があれば見直し、システムによって効率化できる部分があればシステムの導入も含めて検討してみる必要があります。
その3:勤怠管理システムを使う
産後パパ育休制度の導入を進めるために働き方の見直しを進める際には、勤怠管理システムの活用がおすすめです。勤怠管理システムとは、出退勤時にブラウザやアプリから打刻することで労働者の勤務状況を記録し、従業員の残業や休暇の取得状況などの勤怠データを自動集計・出力できるシステムです。
※システムによって細やかな機能は大きく異なります。
▼打刻された情報が自動で記録・計算される機能のイメージ
残業や休暇の申請・承認・管理もシステム上で行えるため、申請書類作成や確認の手間を無くし、オンライン上で完結できます。また、有給休暇やフレックスタイム、代休などの休暇を管理する機能もあり、休暇の付与や残日数の把握が可能です。
▼勤怠申請の承認状況をシステム上で確認する機能のイメージ
▼休暇の管理画面の例
勤怠管理システムの機能は各社様々ですが、多様な働き方に対応したシステムであれば、複雑かつ高負荷になりがちな多様な働き方の管理も手軽かつ正確に行えるようになります。
例えば、クラウド型勤怠管理システム「チムスピ勤怠」では、変形労働制や裁量労働制、みなし労働制、管理監督者など多様な勤務体系に対応しており、打刻方法の種類も豊富に取り揃えているため、どんな企業でも柔軟な勤怠管理が可能です。
カスタマイズ性の高さも強みであり、企業ごとに存在する100以上の勤務パターンに対応した実績があります。こうした同システムの機能を用いれば、テレワークや有給休暇、時間単位休、特別休暇の取得を促進可能です。
一例として、チムスピ勤怠を用いた勤怠管理によってテレワーク・時間有休の取得を推進できたジェイエスピー株式会社の事例をご紹介します。同社は、かつて有休申請も勤怠管理もExcelとメールに頼っており、連絡ミスや内容の不備が多発していました。そこでチムスピ勤怠(旧TeamSpirit)を導入したところ、環境が一変。
無駄な時間がかかっていた収集・集計業務の時間が大幅に削減でき、7営業日かかっていたところをわずか3営業日で完了できるようになったのです。それだけでなく、効率化が実現すると余裕が生まれるようになり、テレワークや有給休暇、時間単位休、特別休暇の取得推進をスムーズに行えるようになりました。
このように、勤怠管理システムを用いることで多様な働き方や休暇取得の推進を進めることができます。育休取得の推進にも役立てることができるでしょう。
事例の詳細について、詳しくは以下のページをご覧ください。
「健康経営」を掲げ、勤怠管理業務の効率化と働き方の「見える化」を実現。時間単位の年次有給休暇や新たな特別休暇などの新制度も無理なく導入。|株式会社ジェイエスピー
まとめ:社員が働きやすい環境を整えて、生産性の向上や優秀な人材の確保を実現しよう
産後パパ育休は、企業と従業員の双方に大きな影響を与える制度です。
企業側には人材確保や企業イメージの向上といったメリットがある一方で、業務調整や代替要員の確保などの課題もあります。従業員にとっては、育児参加の機会が増え、家族との絆を深められるというメリットがありますが、労働環境によっては取得が難しいケースも少なくありません。
産後パパ育休の推進には、管理職の理解を深める取り組みや働き方の見直し、効率的な勤怠管理システムの導入が効果的です。特に勤怠管理システムは、育休取得の推進を円滑にする上で重要な役割を果たします。
勤怠管理システムの選び方や各システムの特徴の比較が気になる方は、以下記事もご覧ください。
自社に最適な勤怠管理システムをお探しの方へ
- 既存システムでは機能や柔軟性が不足しており、その課題を解決したい
- 就業規則の変更や法改正に都度対応できるシステムを利用したい
- 自社に合わせたシステム運用を提案・サポートしてもらいたい
このような企業には、100以上の勤務パターンへの対応実績があり、会社独自の細かいルールや法改正にも柔軟に対応できる勤怠管理システム「チムスピ勤怠」が最適かもしれません。
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