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基礎知識

中抜けとは?勤怠管理での扱い方・就業規則の書き方を解説

著者:チームスピリット編集部

「中抜け」とは、勤務時間内に一時的に業務から離れることをいいます。しかしながら、以下のような悩みを考えている企業担当者は多いのではないでしょうか。

「テレワーク中の社員が中抜けしているか把握できなくて困る」

「中抜けのルールが決まっていなくて、無法地帯になってしまっている」

「勤務中に中抜けした場合の管理方法をちゃんとルール化したい」

本記事では、「会社都合での中抜け」や「私用による中抜け」の他、フレックスタイム制の場合、裁量労働制の場合まで、中抜けの取り扱い方法について詳しく解説していきます。

会社都合で中抜けが発生する場合の扱い

①休憩として扱う

②1日2回出勤として扱う

私用で中抜けを取った場合の扱い

③休憩として扱い終業時間を繰り下げる

④年次有給休暇(半休・時間単位)を活用する

フレックスタイム制の中抜けの扱い

⑤自清算期間内で労働時間を調整する

裁量労働制の中抜けの扱い

⑥自由に中抜けが可能なので特別な処理はしない

中抜けの管理方法についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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中抜けとは

中抜けとは、勤務時間内に一時的に業務から離れることをいいます。

「①会社都合による中抜け」と「②私用による中抜け」の2つがありますが、どちらも「中抜けしている時間は業務をしていないこと」が共通しています。

ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、中抜け時間に対する賃金支払い義務はありません。

①会社都合による中抜け

会社都合による中抜けは、1日の中で「業務が集中する時間」と「暇な時間」がはっきりしている業種(飲食業・観光業・医療業界など)で良く見られます。

例えば、ランチタイム(12時~13時)とディナータイム(18時以降)は忙しく、13時~18時が暇である場合に、中抜けシフトを組んで、昼過ぎから夜までの間を中抜けにすることがあります。

②私用による中抜け

私用による中抜けは、従業員がプライベートな理由で業務を離れなければならない場合に発生します。

例えば、保育園や幼稚園に子どもを迎えに行く、自分の通院のために病院に行く、家族の手続きのために役所に行く、プライベートの買い物に行くために離席する、などがあります。

こうした従業員のプライベートな理由による「中抜け」については、どのように取り扱うか、ルールをしっかり決める必要があります。

特に最近ではテレワーク勤務を認める企業が増えてきた影響で、「従業員が中抜けしていても分かりづらい」という状況があります。

中抜けのあいだは賃金が発生しない

会社都合によるものでも私用によるものであっても、「中抜け時間」には賃金は発生しません。

中抜けの間は「業務をしていない」ため、「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されるからです。

「ノーワーク・ノーペイの原則」とは、働いていない時間については給与を支払わなくて良いという考え方です。

労働基準法第24条(賃金の支払)により、使用者(=企業)は「労働の対価」として従業員に賃金を支払うこととなっています。逆に言えば、「従業員が労働を行っていない時間」に対しては、賃金を払う義務がないということになります。

※「業務に必要な備品を会社の指示で買いに行った」のような場合は、「中抜け」ではなく「業務」を行っているため、労働時間としてカウントされ、賃金支払い義務も発生します。

勤怠管理での中抜けの取り扱い方法6パターン

ここからは、勤怠管理での中抜けの取り扱い方法を6パターンに分けて解説していきます。

会社都合で中抜けが発生する場合の扱い

①休憩として扱う

②1日2回出勤として扱う

私用で中抜けを取った場合の扱い

③休憩として扱い終業時間を繰り下げる

④年次有給休暇(半休・時間単位)を活用する

フレックスタイム制の中抜けの扱い

⑤自清算期間内で労働時間を調整する

裁量労働制の中抜けの扱い

⑥自由に中抜けが可能なので特別な処理はしない

会社都合での中抜け:①休憩時間として扱う

飲食店や医療業界などでは、拘束時間の途中で一旦お店が閉まり、中抜け時間が発生することがあります。この場合、中抜け時間を「休憩時間」として扱う方法があります。

例えばクリニックの場合、午前診療と午後診療のあいだ(12時~15時など)に数時間の「中抜け」が発生することがあります。

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この場合、中抜け時間(上記の例では12時~15時)を「休憩時間」として扱います。

会社都合での中抜け:②1日2回出勤として扱う

朝と夜に勤務するような勤務体系の場合には、「1日2回出勤」として扱う方法があります。

例えば、リゾート地のホテルで働く場合など、朝のチェックアウトの時間と夕方~夜のチェックアウトの時間だけ働くような働き方があります。

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この場合、1回目の出勤では朝6時~10時まで、2回目の出勤では17時~22時まで働くというスタイルになります。

私用による中抜け:③休憩として扱い、終業時刻を繰り下げる

始業時刻と終業時刻が決まっている「固定労働時間制」で、従業員が私用で中抜けを取る場合には、中抜け時間を「休憩時間」として扱い、終業時刻を繰り下げる方法があります。

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例えば、勤務時間が9時~18時、休憩時間が12~13時の場合で、13時~14時ltsに私用で中抜けした場合には、終業時間を18時から19時に繰り下げます。もしくは、始業時間を9時から8時に繰り上げます。

ただし、始業時刻や終業時刻の変更が行われることがある場合には、その旨を就業規則に記載しておかなければなりません。

また、この運用方法を採用した場合に、終業時刻を繰り下げた結果(または始業時刻を繰り上げた結果)、深夜労働(夜22時~朝5痔)が発生してしまうことがあります。この場合には、25%以上の割増賃金が発生するので注意が必要です。

私用による中抜け:④時間単位年休や半休を活用する

従業員が私用で中抜けを取る場合に、中抜け時間に「時間単位年休」や「半休」を取得してもらう方法もあります。

時間単位年休とは、1時間単位で有給休暇を取得できる制度のことです。半休は、半日単位で有給休暇を取得できる制度です。

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例えば、勤務時間が9時~18時(休憩時間12時~13時)で、13時~14時に私用で中抜けした場合に、中抜け時間に「時間単位年休」を取得してもらいます。

中抜けの時間が長い場合には、「半休」を取得してもらう方法もあります。

時間単位年休や半休を活用すれば、始業時刻の繰り上げや終業時刻の繰り下げを行う必要がないメリットがあります。

ただし、時間単位年休を導入するためには、労使協定の締結・周知と就業規則への記載・周知が必要となります。詳しくは「時間単位の有給休暇(年休)とは?制度の始め方・メリット・デメリットも解説」の導入ステップもぜひ参考にしてください。

フレックスタイム制の場合:⑤清算期間内で労働時間を調整する

フレックスタイム制(始業時刻や終業時刻、毎日の労働時間を自由に決められる働き方)の場合は、フレキシブルタイムの間であれば自由に中抜けが可能です。

中抜けしても、あらかじめ決めた総労働時間を守れば問題ありません。

ただし、必ず出勤しなければならないコアタイムに中抜けしてしまうと、賃金が控除されてしまう可能性があるので注意しましょう。

フレックスタイム制については、「フレックスタイム制導入前に押さえたい制度概要と注意点」の記事もぜひ参考にしてください。

裁量労働制の場合:⑥自由に中抜けが可能なので特別な処理はしない

裁量労働制とは、実際の労働時間にかかわらず、事前に定めた時間働いたものとみなす働き方です。従業員が始業時間・終業時間・休憩時間を自分で決められることができるため、自分のペースで仕事を進められます。

参考:「裁量労働制とは?メリット・デメリットから、残業代が発生するケースまで制度を解説

裁量労働制では、実際に働いた時間ではなく事前に定めた時間分の賃金が支払われるため、中抜けがあったとしても特別な処理はおこないません。ただし、深夜労働や休日労働をおこなうとその分の割増賃金は支払う必要があります。また、長時間労働を防ぐために裁量労働制の従業員についても労働時間を適切に把握しておかなければなりません。

「中抜け」の管理が難しい理由

会社で「中抜け」が問題になるのは、「従業員の私用による中抜け」の管理が難しいからです。それではなぜ「中抜けの管理が難しいのか」というと、以下のような理由が考えられます。

  • 勤怠管理での中抜けの取り扱い方法が決まっていないから
  • テレワーク中は「無断での中抜け」が起こりやすいから
  • そもそも「中抜け」とは何か従業員が分かっていないから

それぞれ解説していきます。

勤怠管理での中抜けの取り扱い方法が決まっていないから

中抜けの管理が難しい理由として、従業員が私用で中抜けした場合の勤務管理上の処理方法が定まっていないことがあります。

中抜けを休憩扱いにして終業時間を繰り下げるのか、時間単位年休または半休を使ってもらうのか、中抜けがあった場合のルールをしっかり決める必要があります。

テレワーク中は「無断での中抜け」が起こりやすいから

テレワーク勤務の場合、無断での中抜け(会社が把握していない中抜け)が起こりやすいのも、管理が難しい原因のひとつといえるでしょう。

従業員が中抜けをする場合には、会社に申告した上で業務から離れる必要があります。しかし、テレワークでは周りの目がないため、勝手に中抜けしてプライベートなことをしていても分かりにくいのが実情です。

従業員が「そもそも中抜けとは何か」を理解していなければ、故意ではなく無意識に「無断での中抜け」をしてしまう可能性もあります。

無断での中抜けを防ぐためには、中抜けの定義と勤怠管理上の処理ルールをあらかじめ定めて周知する必要があります。

そもそも「中抜け」とは何か従業員が分かっていないから

「そもそも中抜けとは何か」を従業員が分かっていない場合、正しい管理はできません。

「無断で中抜けをしてはいけない」ことに加えて、「中抜けと勤務の違い」も明示する必要があります。

例えば、上司に命じられて業務に必要な備品を買いに外に出た場合は、中抜け時間ではなく「勤務時間」となります。また、私用で中抜けした場合であっても、その途中に業務の電話がかかって来て対応した場合には「勤務時間」となります。

中抜けとは、「勤務時間中に業務から離れること」「中抜けをする際には会社に許可を得ること」などのルールをしっかりと決めて周知することが必要です。

中抜けのルールを作成する時のポイント・就業規則の記載例

前章で「中抜けの定義やルールを決めることが大切」と説明しましたが、ここからはルールを作成するときのポイントを4つ解説していきます。

  • ポイント1:中抜けには承認・報告が必要というルールを定める
  • ポイント2:中抜けの時間は賃金が発生しないことを明記する
  • ポイント3:中抜けした場合の勤怠管理の方法を定める
  • ポイント4:始業・終業時刻の変更を行う場合には別途就業規則への記載が必要

なお、労働基準法では「中抜け」に関する規定はありません。だからこそ、企業が就業規則などでルールを定めて周知することが大切です。

ポイント1:中抜けには承認・報告が必要というルールを定める

中抜けが発生する場合には、必ず上長などに承認を得る(または報告を行う)ようにルールを定めましょう。

特に、テレワーク中や外出中は他の社員の目が届かないため、無断での中抜けが横行しがちです。中抜けには承認・報告が必要ということを従業員に周知させることが大切です。

就業規則の記載例1

勤務時間内に私的な用件で一定時間業務から離れる場合には、事前に所属長に許可を申し出て、承認を得なければならない。

就業規則の記載例2

在宅勤務者は、勤務時間中に所定休憩時間以外に労働から離れる場合は、その中抜け時間について、終業時にメールで所属長に報告を行うこと。

ポイント2:中抜けの時間は賃金が発生しないことを明記する

勤務時間中に業務を抜け出す「中抜け時間」には、賃金は発生しません。中抜け時間が賃金計算の対象外になることも、従業員に広く周知する必要があるでしょう。

※ただし、中抜け時間を有給休暇として処理する場合には、賃金は発生します。

就業規則の記載例3

勤務時間内に私的な用件で一定時間業務から離れた際には、その時間を休憩時間として取扱い賃金は発生しないものとする。ただし、半日単位もしくは時間単位の有給休暇とした場合は賃金を支払うこととする。

ポイント3:中抜けした場合の勤怠管理の方法を定める

中抜けした場合にどのように勤怠管理の処理をするかを決めて、従業員に周知します。一般的には、私用による中抜けがあった場合、以下のどちらかの方法で勤怠管理する会社が多いでしょう。

  • ①休憩として扱い終業時間を繰り下げる
  • ②年次有給休暇(半休・時間単位)を活用する

就業規則の記載例4

中抜け時間については、休憩時間として取扱い、その時間分終業時刻を繰り下げること。

ポイント4:始業・終業時刻の変更を行う場合には別途就業規則への記載が必要

中抜けした時間を休憩時間として扱い、始業・終業時刻が変更になる場合には、その旨を就業規則に記載しなければなりません。

就業規則の記載例5

  1. 在宅勤務時の労働時間については、原則、就業規則第〇条の定めるところによる。
  2. 前項にかかわらず、会社の承認を受けて始業時刻、終業時刻及び休憩時間の変更をすることができる。

中抜けに関する注意点

最後に、中抜けに関する注意点について解説します。

  • 中抜けと勤務の境界をしっかり線引きしよう
  • 無断での中抜けは職務専念義務違反になる
  • 中抜けの処理は管理が煩雑になるので注意

中抜けと勤務の境界をしっかり線引きしよう

中抜け時間は「勤務に当たっていない時間」であり賃金が支払われません。企業側としても線引きを明確にして、中抜け時間に業務を割り振らないよう徹底しましょう。

  • 中抜け時間に業務指示を出してはいけない
  • 使用者の明示または黙示の指示によって指揮命令下に置かれている時間は労働時間となる
  • 移動時間であっても業務を行っていれば、中抜け時間ではなく勤務時間にカウントする

例えば、従業員が私用で中抜けして銀行に行った場合でも、その道中で、業務の電話対応をしたりメールなどでの業務指示への対応を求められた場合には、勤務時間と見なされます。

中抜け時間にはできるだけ業務を振らないよう徹底しましょう。

無断での中抜けは職務専念義務違反になる

私用による中抜けが認められている場合でも、管理者に許可や報告をせず「無断での中抜け」を行った場合には、職務専念義務違反と見なされることがあります。

業務に当たるべき勤務時間内に長時間無断で中抜けしてしまったら、問題になるのは当然のことです。

中抜けをする従業員は、必ず会社に許可をもらった上で中抜けするようにしましょう。

中抜けの処理は管理が煩雑になるので注意

中抜けを処理する方法について解説しましたが、どの方法で処理する場合にも管理が煩雑になりがちなので注意しましょう。

例えば、中抜けを時間単位の年次有給休暇として扱う場合には、年間上限日数(5日)を超えないように管理する必要があります。

「気付いた時には超えてしまっていた」とならないためには、有給休暇を詳細に管理できる勤怠管理システムを導入するなどして、適切に管理できる体制を整えるのがおすすめです。

また、1日2回出勤にする場合や、フレックスタイム制・裁量労働制の勤怠管理を行う場合にも、変則的な勤務形態に対応した勤怠管理システムがあれば管理を大幅に効率化できます。

まとめ|中抜けの適切な管理はシステムが便利

私用で中抜けする場合の勤怠管理での取り扱い方法は、

  • 休憩として扱い終業時間を繰り下げる
  • 年次有給休暇(半休・時間単位)を活用する

どちらかが一般的です。

特にテレワーク勤務では、中抜けを適切に管理することが難しいケースが多くあります。そのため、まずは中抜けのルールを作って広く周知することが大切です。

それと同時に、勤怠管理システムや申請するためのワークフローシステムを整備して、中抜けを管理しやすい体制を作ることも進めていきましょう。

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