労務管理の仕事内容は?労務管理士試験など最新情報を解説
著者:チームスピリット編集部
労務管理は業種・職種・規模を問わず、企業にとって欠かせない業務です。しかし、労務管理の仕事内容は、総務や人事と重複していると思われることも多く、具体的な業務範囲がわかりにくいと感じることもあるのではないでしょうか。
今回は労務管理の仕事内容について、労務管理士試験など最新情報にも触れつつ紹介します。
企業に欠かせない労務管理
まずは、労務管理の概要を紹介します。
労務管理の目的
労務管理とは「従業員にかかわる職場環境を管理する業務」のことを指します。具体的な仕事内容は、求人・採用・配置・異動・人材育成・人事評価・賃金及び労働時間の管理などがあげられます。
近年は、従業員の健康管理やハラスメント予防施策等の労務管理も増加しており、今後さらに業務範囲は拡大していくと予想されています。企業ごとに、業務内容が細分化されているケースも多く、カバー範囲が広いことが特徴です。
企業活動の成果は人材の量・質に大きく影響します。そのため、労働環境を適切な状態に維持し続ける労務管理は、企業内でも優先度の高い仕事といえるのです。
時代やライフスタイルの変化に応じた労務管理へ
時代の変化に伴い、労務管理に求められる役割は少しずつ変化しています。現代はテレワーク・フレックスタイム制度・サテライトオフィス勤務・モバイルワークなど、多彩な働き方が促進されています。同時に、自社に適したルールづくりや正確な勤怠管理も求められるようになりました。
また、健康経営や独自の福利厚生の導入に踏み切る企業も多くなっています。一方、少子高齢化に伴い企業は労働人口不足や社会情勢の変化などの影響を受けやすく、労務管理が難しくなっていると感じるかもしれません。
業務効率化・時間外労働へのより細やかな対応など、労務管理自体の効率化も欠かせません。
労務管理の実務範囲
ここでは労務管理の実務範囲を紹介します。労務管理では法定三帳簿と呼ばれる「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」を扱うことが多いです。
勤怠管理
勤怠管理とは、従業員の出勤時間・退勤時間・欠勤・遅刻・早退・時間外労働や深夜労働・有給休暇の取得状況を把握する業務です。従業員の就業状況を正確に把握するための実務であり、労務管理の根幹として語られることが多いです。
なお、勤怠管理は労働基準法で定められた企業の義務であり、いずれの業種であっても省くことはできません。
また、正確な勤怠管理をするだけでなく、時間外労働の抑制や有給休暇の取得促進など自社における働き方の改善を求められることもあります。
給与計算
前項の勤怠管理に基づき、正確な給与計算を行います。時間給の計算はもちろん、時間外労働・深夜労働・各種手当の支給及び変動・インセンティブの付与を行い、支払い期日に合わせて実行するのがポイントです。
近年は、勤怠管理に基づいた給与計算をするだけでなく、働きに応じて給与額が決定される動きが広がっています。ジョブ型雇用・裁量労働制・年俸制など多様な給与制度が浸透しつつあるので、いずれの場合でも正確に計算できるような対策が求められます。
また、賞与支払いや最新の料率を反映した社会保険料の控除なども必要です。
保険手続き
健康保険・厚生年金保険に関する算定もしくは月額変更届(月変)を行い、等級に見合った控除額を算定します。保険そのものへの加入・喪失手続きや扶養家族に関する申請なども、労務管理に任される業務のひとつです。
そのほか、従業員からは直接保険料を徴収しない労災保険の管理・申請なども業務範囲に含まれます。新入社員の入社に応じた手続きや、退職のタイミングに合わせて資格喪失証明書や離職票を発行する必要もあります。
産休・育休周りの手続きや、再就職手当金に関する書類作成も担当業務の一部です。多くの従業員を抱える企業であれば、従業員ごとの事情や状況に合わせてさまざまな 対応を行うことが求められます。
福利厚生・安全衛生管理
自社の福利厚生に関する管理・申請をするのも労務管理の仕事です。福利厚生には、各種社会保険を含む最低限の福利厚生と呼ばれる「法定福利」と、自社オリジナルで導入を決定する「法定外福利」があります。
法定外福利は企業の社内規程により変動するため、企業ごとに内容はさまざまです。社宅の提供・育児支援・特別休暇の付与など、まずは自社の福利厚生を把握することが大切です。
また、従業員数が50名以上の事業所においては衛生管理者を設置する義務があります。衛生管理者は従業員の働く環境を整備するために「作業環境の管理」「労働者の健康管理」「労働衛生教育の実施」「健康保持増進措置」を担う存在です。労務管理担当者が兼任しているケースも少なくありません。
50人以下の事業所でも、労働安全衛生に関する対策は労務管理担当者に任せられることが多いです。
労務管理業務のシステム化のメリット
一部の労務管理業務は、ルーティンを把握することでシステム化できます。業務の一部でもシステム化できれば、新たな施策にチャレンジできる人的リソースの確保につながります。ここでは、労務管理業務をシステム化するメリットについて紹介します。
勤怠管理のシステム化のメリット
勤怠管理は労務管理の根幹を担う重要な業務です。勤怠管理をシステム化すると、従業員の勤怠実績を一目で確認できるようになります。従来の管理方法であったタイムカードやExcelと異なり、オンライン上でも打刻できるなど、多様な働き方が求められる現代に合った機能が利用できます。
また、規程を超える時間外労働や深夜労働の実態に気付きやすく、現場の職場環境が本部に伝わりやすくなるという効果も期待できます。
勤怠管理システムを導入することで、テレワーク・フレックスタイム制度・サテライトオフィス勤務・モバイルワーク・時短勤務など、さまざまな働き方を実現しやすくなるのもメリットです。働き方の多様化は、優秀な人材を安定して確保し続ける要因にもつながります。
給与計算のシステム化メリット
給与計算のシステム化は、労務管理部門の工数削減につながります。勤怠管理と給与計算を紐づけておけば、実労働時間に合った給与を算出しやすく、担当者のチェックは最低限で完了します。
近年は、法改正や税改正の頻度が多く、これらの変化に対応しながら給与計算を行うことは決して容易ではありません。手計算によるヒューマンエラーが起こると、労使間の信頼関係が悪化するおそれも考えられます。
そこで給与計算システムの活用がおすすめです。システムによっては社会保険料率の変更や、関連法案の改正に自動で対応してくれるタイプもあります。情報収集の手間を省きつつ、ミスを防げるという面でもメリットがあるといえます。
社員情報管理のシステム化メリット
社員情報管理をシステム化できれば、適材適所な人材配置が実現します。社員の基本情報だけでなく、保有資格・過去の異動歴・賞罰歴・趣味趣向・モチベーション・エンゲージメントなどを可視化できるので、異動案の作成時などに役立ちます。
また、自社に必要な人材を経営戦略と照らし合わせながら判断できるため、人事部門と連携しやすくなります。タレントマネジメントなどの考え方を導入したいときは、検討することをおすすめします。
まとめ
労務管理は、企業にとって欠かせない業務ですが、企業によって管理手法が異なるのも事実です。時代の流れとともに、労務管理に求められる役割も変化しつつあります。まずは自社の現状を正しく把握し、課題や問題点があれば改善を図ることが大切です。
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