計画年休とは?有給との違いや効果・デメリットをわかりやすく解説
著者:チームスピリット編集部
計画年休という言葉を聞いたことがありますか?
計画年休とは、企業と従業員間で労使協定を結ぶことで有給を計画的に取得する制度のことです。
計画年休は年次有給休暇の計画的付与制度ともいい、活用することで有給取得率の向上や有給5日取得義務を効率的に果たすことができます。
従業員にとって強制力のある制度ですので導入には、就業規則への規定と労使協定の締結が求められます。また、有給休暇の管理もより注意しておこなう必要があります。
本記事では、計画年休とはどのような制度なのか、通常の有給取得とどう違うのか、メリット・デメリット、計画年休の導入がおすすめな企業などについて解説します。
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計画年休とは?
計画年休とは、有給休暇を企業が計画的に取得日を割り振る制度のことをいいます。年次有給休暇の計画的付与制度ともいいます。
有給休暇は従業員自身が取得する日を決めるのが原則ですが、付与された有給休暇のうち5日を超える日数については労使協定を締結後、企業が取得日を割り振ることができます。
例えば、年に14日の有給休暇が付与される従業員については、下記のように最大9日について計画年休を利用して取得日を企業が指定できます。
取得日の決め方 |
企業が日を指定(計画年休) |
従業員が日を指定 |
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有給日数 |
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計画年休の対象になる日数
計画年休は何日付与できるのかというと、有給休暇の全日数から5を引いた日数分付与することができます。
▼例
- 有給休暇が12日付与された場合...計画年休は7日付与できる
- 有給休暇が6日付与された場合...計画年休は1日付与できる
- 有給休暇が20日付与された場合...計画年休は15日付与できる
計画年休は労使協定の締結により強制力がありますので、5日間は従業員が自由に取得できるよう残しておく必要があります。
また、計画年休は労使協定で時間単位の取得について定めておくことで、時間単位で割り振ることもできます。ただし、時間単位の計画年休については後述する年5日取得義務に含めません。
有給休暇が付与される人と日数を確認
計画年休は、有給休暇日数の5日を超える日数分について計画的に付与するものとなります。したがって、基本的には6日以上の有給休暇が付与される人が対象となってきます。
なお、有給休暇が6日以上付与される条件をまとめます。
▼対象者
- 正社員(フルタイムで働く方)で勤続年数が半年以上の方
- 週所定労働日数が4日で勤続年数が半年以上の方
- 週所定労働日数が3日で勤続年数が1.5年以上の方
- 週所定労働日数が2日で勤続年数が4.5年以上の方
▼付与要件
出勤率が8割以上
これらに該当する従業員は有給休暇が6日以上付与されますので、企業が適切に手続きをおこなうことで計画年休を利用することができます。
有給休暇の付与日数や付与する日など、有給休暇の詳細について知りたい方は「有給休暇とは?付与日数やタイミングを労働基準法をもとに解説 | 基礎知識」もご覧ください。
有給休暇の付与日数が少ない方についても計画年休制度を利用することができますが、その場合は下記いずれかの対応が必要になります。
- 計画年休日について有給の特別休暇(会社が独自に定めた休暇)とする
- 計画年休日について休業手当として平均賃金の60%以上を支払う
有給の特別休暇とした場合には、有給休暇と同様に、労働の義務を免除して通常勤務した場合と同じ時間分の給与を支給します。休業手当の計算が不要で手間の少ない対応ですが、他の従業員との間に不公平感が生じないよう注意しなければなりません。
計画年休の設定方式
計画年休の設定方式は以下の3種類があります。
- 一斉付与方式
- 交代制付与方式
- 個人別付与方式
方式 |
有給休暇の付与方法 |
備考 |
---|---|---|
一斉付与方式 |
全従業員に対して同一の日に付与 |
操業や営業を止めて全従業員を休ませることのできる職場に適している |
交代制付与方式 |
班・グループ別に交替で付与 |
人数が多く一斉付与が難しい/定休日を増やすことが難しい職場に適している |
個人別付与方式 |
個人別に付与 |
年次有給休暇付与計画表を作成して個人の有給休暇を指定する |
一斉付与方式は計画の手間が個人別付与方式と比べて少ないですが、有給休暇の付与日数が少ない従業員へ対応する必要があります。対応策については「計画年休の導入手順」で紹介します。
計画年休と有給休暇との違い
計画年休と通常の有給休暇の違いは、取得日の決定方法にあります。
計画年休 |
労使協定を締結し、企業が取得日を割り振る |
---|---|
有給休暇 |
従業員自身が取得日を決める |
一見すると、計画年休は企業が優位に見えて違法ではないのか不安に思う方もいるかもしれません。しかし適切な手続きによって実施する計画年休には強制力があります。
- 従業員のメリット:有給を取りづらい雰囲気の職場でも、会社が決めた制度なので有給を取りやすい
- 企業のメリット:閑散期などに有給取得を促進できる
計画年休制度を利用するには労使協定を締結する必要があります。労使協定とは従業員の代表と企業との間で結ぶルールのことです。労使協定が正しく締結されていれば、従業員は計画年休を拒否することができません。
計画年休のメリット
計画年休のメリットを2点紹介します。
- 有給休暇の年5日取得義務に貢献する
- 企業の有給取得率の向上
有給休暇の年5日取得義務に貢献する
有給休暇が10日以上付与された従業員には、付与した日から1年以内に少なくとも5日を取得させなければいけません。義務の5日には、計画年休によって取得させた日数も含みます。
そのため、有給休暇が10日以上付与された従業員については、計画年休制度を利用して有給休暇を5日割り振っておくことで年5日取得のルールを遵守することができます。
ただし、時間単位の計画年休は義務の5日に含めることはできない点に注意しましょう。
有給休暇の年5日取得義務の詳細なルールや罰則については「年次有給休暇の年5日取得義務とは?罰則や取得させるための方法も解説」も併せてご覧ください。
企業の有給取得率の向上
企業の有給取得率を高めることは、従業員のリフレッシュとなり、企業への愛着や帰属意識を持たせエンゲージメントの向上が期待できます。
計画年休を導入している企業は、導入していない企業よりも有給取得率が8.6%高いという調査報告もあり、計画年休は有給取得率の向上に有効であると考えられます。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、企業全体の有給取得率は62.1%でした。「自社は有給休暇をとりにくい雰囲気がある」「有給取得率の低さに悩んでいる」場合は計画年休を導入して取得促進に取り組むことをおすすめします。
有給取得率の計算方法や計画年休をはじめとした有給取得率を向上させる取り組みについて詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
有給取得率の平均は?自社が低い場合の原因や問題、高める方法を解説 | 基礎知識 | チムスピコラム | 勤怠管理・工数管理・経費精算ならチームスピリット
参考(PDF):令和5年就労条件総合調査の概況|厚生労働省
参考:年次有給休暇の計画的付与制度とは | 働き方・休み方改善ポータルサイト
計画年休のデメリット
次に、計画年休制度を利用する際のデメリットを2点紹介します。
- 労使協定を締結する必要がある
- 有給休暇の管理が煩雑になる
労使協定を締結する必要がある
計画年休は、従業員が自由に取得日を決められるという原則ではなく、企業が取得日を割り振るという強制力のある制度です。そのため制度を利用する際には事前に就業規則による規定と、企業と従業員間で労使協定を締結しておく必要があります。
計画年休は強力な制度ですが、就業規則改定と労使協定締結の手間がデメリットといえます。特に労使協定には定めておく事項も多いため、制度利用を考えたときは前もって準備しておくようにしましょう。
労使協定と就業規則との違いや他の主要な労使協定など、労使協定について詳しく知りたい方は「労使協定とは?主な種類と内容・届出の手順・違反の罰則など解説 | 基礎知識 | チムスピコラム | 勤怠管理・工数管理・経費精算ならチームスピリット」もご覧ください。
有給休暇の管理が煩雑になる
計画年休によって割り振った有給休暇の日数は従業員に通知し、企業側も正しく把握しておく必要があります。もし、全ての有給休暇日数から計画年休日数を差し引いた日数以上の有給休暇取得を従業員が申請してきた場合、使える有給休暇が残っていないことを伝えなければいけません。
例:有給休暇付与日数が7日の従業員について2日を計画年休としたが、6日間の有給休暇申請をしてきた
→2日間を計画年休としているため自由に取得できるのは5日間であることを伝える
もし、計画年休で割り振った日より前に有給休暇を使い切ってしまった場合はどうなるでしょうか。計画年休を通知しておいても勝手に6日以上使ってしまい有給休暇がない人が想定できます。このようなケースに対しては以下のいずれかで対応するとよいでしょう。
- 計画年休日を特別休暇とする
- 休業手当として平均賃金の60%以上を支払う
ただし個別な取扱いにより不公平感が生じるおそれもあるので、そもそも計画年休とした日より前に有給休暇を使い切る従業員がでないようにしましょう。このように、計画年休を導入した場合、有給休暇に関してより注意して管理する必要があります。
計画年休の導入がおすすめな企業
以下の特徴に該当する企業は計画年休の制度導入がおすすめです。
- 有給休暇の年5日取得義務を果たすのが難しい企業
- 夏季休暇や年末年始休暇がまだ無い企業
有給休暇の年5日取得義務を果たすのが難しい企業
「計画年休のメリット」でも述べたとおり、計画年休によって割り振った日数は取得義務の5日に含めることができます。そのため、年5日の取得義務に悩んでいる企業には計画年休の導入をおすすめします。
ただし、時間単位の計画年休は取得義務の5日に含めることができないので注意しましょう。
夏季休暇や年末年始休暇がまだ無い企業
夏季休暇や年末年始休暇など、一般的な休暇制度がまだ無い企業は計画年休制度を利用して、夏季休暇や年末年始休暇を設けることができます。
既に夏季休暇や年末年始休暇がある場合、これらは「特別休暇」であり有給休暇とは別物となります。特別休暇を有給休暇とする場合は、従業員にとって不利益な労働条件の変更となるため安易に変えられません。
まだ夏季休暇や年末年始休暇を設けていない企業で、これらの休暇制度を設ける場合には計画年休を利用することで年5日取得義務も果たすことが期待できます。
計画年休の導入をおすすめしない企業
既に有給取得率が高い企業では計画年休を導入しないほうがよいでしょう。計画年休では自由に取得できる有給休暇日数が減ってしまいます。
従業員にとっては自由に使える有給休暇が減り、強制力のある計画年休で有給休暇を消化することで会社に対して不満がたまる要因となります。
計画年休の活用例
計画年休の活用例として2つ紹介します。
- 大型連休
- ブリッジホリデー
大型連休
計画年休を用いて連続した有給休暇を取得させることで大型連休を設けます。これは「計画年休の導入がおすすめな企業」でも紹介したように、夏季休暇・年末年始休暇が無い企業に特におすすめです。
ブリッジホリデー
暦の関係で休日が飛び石となっているところに計画年休を活用し連休にする、つまり休日の橋(ブリッジ)にする方法です。ゴールデンウィークなど、祝日の多い期間にブリッジホリデーを設けることで長期休暇とする企業も多いです。
計画年休の導入手順
計画年休の導入手順は以下の3ステップになります。
- 就業規則への規定と労使協定の締結を行う
- 付与方式を決定する
- 労使協定を締結する
手順1.就業規則への規定と労使協定の締結を行う
計画年休の導入には、就業規則への規定と労使協定の締結が必要です。就業規則では、年次有給休暇について定めた条文に、計画年休の項を追記します。
※引用:計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き|働き方・休み方改善ポータルサイト
手順2.付与方式を決定する
計画年休の付与方式は3種類あります。
- 一斉付与方式
- 交代制付与方式
- 個人別付与方式
方式 |
有給休暇の付与方法 |
備考 |
---|---|---|
一斉付与方式 |
全従業員に対して同一の日に付与 |
操業や営業を止めて全従業員を休ませることのできる職場に適している |
交代制付与方式 |
班・グループ別に交替で付与 |
人数が多く一斉付与が難しい/定休日を増やすことが難しい職場に適している |
個人別付与方式 |
個人別に付与 |
年次有給休暇付与計画表を作成して個人の有給休暇を指定する |
自社に適した付与方式を決定しましょう。一斉付与方式は付与日数が少ない従業員への対応が必要となりますが、管理が最も容易な方式です。
手順3.労使協定を締結する
労使協定では、以下の項目について定める必要があります。
- 計画年休の対象者
- 対象となる有給休暇の日数
- 計画年休の具体的な方法
- 有給休暇の付与日数が少ない従業員への扱い
- 計画年休の変更手続き
それぞれの項目について説明します。
計画年休の対象者
計画年休日に育児休業や産前産後休業にある方、退職予定の方については対象から外しておきます。
対象となる有給休暇の日数
自由に取得できる5日分を残して、計画年休として割り振る日数を定めます。
計画年休の具体的な方法
付与方式によって記載内容は次のように異なります。
方式 |
計画年休の具体的な方法の記載内容 |
---|---|
一斉付与方式 |
具体的な計画年休日を割り振る日を定めます |
交代制付与方式 |
班・グループ毎の具体的な計画年休を割り振る日を定めます |
個人別付与方式 |
年次有給休暇付与計画表を作成する時季とその方法等について定めます |
【一斉付与方式の場合】有給休暇の付与日数が少ない従業員への扱い
新規採用者やアルバイト・パートなどで有給休暇の付与日数が5日以内の従業員に対して次のうちどちらかの対応をとることを定めます。
- 一斉の計画年休日について、有給の特別休暇とする
- 一斉の計画年休日について、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う
【計画年休日の変更がある場合】計画年休の変更手続き
計画年休日を変更する可能性がある場合には、計画年休日を変更する際の手続きについて定めます。労使協定でこの定めがない場合は、計画年休日の変更ができませんので注意しましょう。
計画年休の適切な運用には勤怠管理システムがおすすめ
計画年休は、年5日取得義務に悩む企業や有給取得率が低い企業にはおすすめの制度です。しかしながら、「計画年休で割り振った有給休暇の管理」が煩雑なため、制度導入をためらうこともあるかもしれません。
計画年休の適切な運用に勤怠管理システムを用いることで、管理の煩雑さが低減できます。多くの勤怠管理システムにある有給休暇の取得申請機能があれば、計画年休日前に有給休暇を使い切ってしまったというケースを防ぐことが期待できます。
また、特に管理が難しい個人別付与方式の場合でも、事前に労働日を有給休暇と設定しておき、スケジュールを従業員とリアルタイムで共有し、計画年休日に誤って出社、という事態を防ぐことができます。
▼勤怠管理システムの休暇付与状況画面
ほかにも、勤怠管理システムには次のようなメリットがあります。
- 従業員の労働時間を正確に把握できる
- リアルタイムで把握できるため法律を遵守できる
- 法改正にもいち早く対応できる
- 集計や管理にかかっていたコストを大幅に削減できる
- 給与計算や申請など他の業務も効率化できる
- 不正打刻・隠れ残業・打刻ミスを防止できる
- リモートワークなどの働き方に対応できる
勤怠管理システムとはどういうものなのか、選び方などを以下の記事で詳しく解説しています。興味のあるかたはこちらもぜひご覧ください。
勤怠管理システムとは?メリットや解決できる課題・必要性を解説
まとめ|計画年休を効果的に導入して有給取得率を高めよう
計画年休は「年次有給休暇の計画的付与制度」といい、有給休暇を企業が計画的に取得日を割り振る制度のことをいいます。計画年休の制度を利用すれば、有給休暇日数のうち5日を超える日数について取得日を企業が指定することができます。
計画年休には強制力があり、計画年休日が定められた従業員はその日は休暇をとる必要があります。このように強制力のある制度ですので、導入には「就業規則への規定」と「労使協定の締結」が必要です。
有給取得率が低い企業やまだ夏季休暇・年末年始休暇が無い企業にはおすすめの制度です。
計画年休の付与方式は3種類あり、特に個別に計画年休日を定める個別付与方式は有給休暇の管理が煩雑になります。計画年休の運用には勤怠管理システムの利用がおすすめです。
有給休暇の取得に関して悩んでいる企業は計画年休の導入を検討してみてください。
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