法定休日とは?ルールや法定外休日との違い【社労士監修】
著者:チームスピリット編集部
「自社が休日の管理を適切にできているか不安である」「法律に触れないため、正確な情報を参考にして適切に対応する必要がある」といった悩みや課題を抱えていませんか?
法定休日とは、労働基準法で既定されている、どの企業も最低限付与しなければいけない日数のことを指します。本記事では、法定休日の基礎知識・ルールや法定外休日との違い、出勤時の割増率などを解説します。ぜひ参考にしてください。
【社労士監修】
有給休暇管理のマニュアルとしてご活用ください
- 残業管理のルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
- 勤怠管理を行う上で、有給休暇の基本ルール・仕組みを知っておきたい
- 有給休暇に関する法令など、適切な勤怠管理における自社の課題を把握しておきたい
本資料では、人事労務担当者なら知っておきたい基礎や複雑な法令の解説などを分かりやすくまとめております。適切な有給休暇管理を運用するために、ぜひ本資料をお役立てください。
「勤怠管理の教科書 ー有給休暇編ー」を無料ダウンロードする目次
法定休日の定義
「法定休日」とは、労働基準法で定められた休日です。労働基準法では、1週間に少なくとも1回(例外として4週間を通じて4日以上)の休日を付与することが義務づけられており、それに該当する休日が法定休日となります。
>>使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
【出典】厚生労働省「労働時間・休日に関する主な制度」
法定外休日(所定休日)との違い
「法定外休日(所定休日)」とは、法定休日以外の企業側が定めた休日です。例えば、完全週休2日制の会社であれば、1日は法定休日、もう1日は法定外休日になります。
この法定外休日に労働をさせても、休日労働としての割増賃金は発生しません。ただし、時間外労働をさせた場合には割増賃金率25%以上の割増賃金の支払いが適用されます。
▼まとめ
種類 |
概要 |
休日労働の割増賃金 |
---|---|---|
法定休日 |
法律で定められた最低限与えられるべき休日のこと |
法定休日に労働をさせた場合、割増賃金の支払いの対象(割増賃金率35%以上)となる |
法定外休日 (所定休日) |
法定休日以外に企業側が定めた休日(週休完全2日制なら、1日は法定休日、もう1日が法定外休日) |
法定外休日に労働をさせても、休日労働としての割増賃金は発生しない |
法定休日に関する6つのルール
年間の法定休日日数や36協定との関わり、シフト制勤務の適用ルールなどを解説します。
法定休日の労働は割増賃金の対象になる
法定休日の労働は労働基準法上の「(法定)休日労働」に該当するため、休日労働に対する割増賃金の支払いの対象となり、35%以上の割増率で賃金を支払う必要があります。
割増賃金=1時間あたりの賃金×1.35以上×労働時間
例:1,500円×1.35(休日出勤)×月4時間=8,100円
割増賃金の詳細は後述します。
年間の法定休日日数は52日だが、実質的には105日必要
月4回の休日を12ヶ月間取得させると52日となるため、年間の法定休日日数は52日です。ただし、労働基準法を加味すると休日は105日の付与が必要になります。
先述の通り、労働基準法の第35条では「毎週少なくとも1回、または4週間に4回の法定休日を与えなければならない」と定められています。また、労働基準法32条では、「労働時間の上限を1日8時間、週40時間」までとも定めています。
上記2つの法令を適用すると、週40時間の労働を年間52週行う場合には、以下の計算によって最低105日以上の休日が必要となるのです。
※引用:「労働基準法」|厚生労働省
なお、次のような点には注意しましょう。
注意点1 |
法定休日労働に該当しなくとも、週40時間を超える労働は残業になる(割増賃金の支払いが必要)。 例:1日7時間×6日間=週42時間だと2時間分は残業割増必要 |
---|---|
注意点2 |
1日の所定労働時間が短くなると計算上年間休日数が減る。 例:1日7時間だと、「2,080÷7≒297日」が年間労働日数になり、「365-297=68日」が年間休日数になる |
注意点3 |
1年単位の変形労働時間制を採用している場合、最低でも85日の休日が必要。 |
法定休日の出勤は36協定の締結が必要である
法律上では「法定休日は休ませなければならない」「休日労働をさせてはいけない」というのが原則です。しかしながら、36協定を締結して労働基準監督署に届け出ることで、36協定の範囲内で、休日労働や時間外労働させることが可能となります。
逆にいえば、36協定が締結されていないのに休日労働や時間外労働をさせることは違法となります。
派遣従業員・アルバイト・パートも法定休日が必要である
法定休日の法律では、事業者は従業員の雇用形態にかかわらず、休日の付与が必要です。そのため、正規雇用の正従業員だけでなく、非正規雇用の派遣従業員・契約従業員・アルバイト・パートについても、法定休日の付与が必要です。
シフト制勤務の法定休日は、4週間のうち4日間が法定休日となる
シフト制勤務の場合、月の初日を起点として、4週間のうちに最低でも4日間の法定休日が確保できる範囲で勤務日を決めます。
なお、シフト制のひとつである「4週8休制」では、4週間の中で決めた休日において、最後の4日間の休日が法定休日とされます。2月は8日以上、それ以外の月は各月9日以上の休日を取得する必要があります。
法定休日をいつに設定するのかは就業規則で定めるのが望ましい
就業規則で「休日は週2日とする」「土曜日、日曜日を休日とする」というように、休日や法定休日がいつになるのかを就業規則で特定せずとも違法にはなりません。しかし運用の都合上、法定休日がいつになるのかを定めておくのが好ましいです。法定休日が不定の場合、「休日労働時に、賃金計算を正確にできない」などの問題が発生する恐れがあります。
なお、労働基準法第89条に基づき、従業員数10人以上の会社では、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇などを就業規則として定め、行政官庁に届ける必要があります。
法定休日の規定を破った場合の罰則
法定休日の規定を破り、週に1回(または4週に4回)以上の休日を与えなかった場合には罰則があります。労働基準法第119条において、「労働基準法第35条の規定に違反した者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処す」と規定されているためです。
就業規則に休日の記載がない場合の罰則
就業規則に休日の項目の記載がない場合、労働基準法第89条違反となり、30万円以下の罰金が科されます。
労働基準法では、就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」が決められており、休日はこれに該当します。
法定休日と法定外休日を区別する方法
法定休日と法定外休日では、休日出勤した際の賃金の計算方法(割増率)が異なります。そのため、法定休日と法定外休日は区別して取り扱わなければなりません。ここでは以下の2パターンについて解説します。
- 労働契約・就業規則がある場合
- 労働契約・就業規則の定めがない場合
労働契約・就業規則がある場合は、それに従う
労働契約・就業規則で法定休日に関する定めがある場合は、その定めに従います。
例えば、「休日は日曜日・月曜日で、法定休日は日曜日とする。」といった具合に、就業規則に定められている場合、法定休日と法定外休日はそれぞれ以下のとおりです。
- 法定休日:日曜日
- 法定外休日:月曜日
労働契約・就業規則の定めがない場合の区別方法
労働契約・就業規則の定めがない場合の法定休日は、以下のとおりです。
- 週1日を法定休日とする場合:1週間の最終日が法定休日
- 4週間で4日を法定休日とする場合:最後尾に位置する4日間の休日が法定休日
休日の種類と出勤時の割増賃金
休日の種類は「法定内休日」「法定外休日」の2つだけではなく、以下のような休日もあります。
- 振替休日
- 代休
- 祝日
- 有給休暇
法律では最低付与日数や割増率といったルールが定められており、それらの理解も不可欠です。それぞれの休日について、詳細を解説します。
▼各休日の定義と割増賃金のまとめ
休日の種類 |
概要 |
休日労働の割増賃金 |
---|---|---|
法定休日 |
法律で定められた最低限与えられるべき休日のこと |
法定休日に労働をさせた場合、割増賃金の支払いの対象(割増賃金率35%以上)となる |
法定外休日 (所定休日) |
法定休日以外に企業側が定めた休日(完全週休2日制なら、1日は法定休日、もう1日が法定外休日) |
法定外休日に労働をさせても、休日労働としての割増賃金は発生しない※ |
振替休日 |
従業員があらかじめ定められた休日に出勤する代わりに、前もって別の労働日を休日に振り替えること |
休日と労働日を振り替えているだけなので、法定休日に働いたとしても休日労働としての割増賃金は発生しない※ |
代休 |
休日出勤が行われたあとに、代わりに別の労働日を休日とすること |
休日出勤した日が法定休日であれば、休日労働と同じように割増賃金の支払いの対象(割増賃金率35%以上)となる |
祝日 |
国民の祝日法により定められた日 |
祝日が法定休日ならば、割増賃金の支払いの対象(割増賃金率35%以上)となる/法定休日でなければ、休日労働としての割増賃金は発生しない(※) |
有給休暇 |
給与が発生する休暇 |
有給は通常の労働日であって休日ではないので、休日労働としての割増賃金は発生しない |
※1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えた部分については、時間外割増賃金(割増賃金率25%以上)の支払いが必要
法定休日
労働基準法においては原則、週に1日は必ず付与しなければならない法定休日に出勤させた際の割増賃金率は35%以上です。法定休日における割増賃金は、以下の計算式で算出します。
計算式=1時間あたりの賃金×1.35以上×労働時間
法定休日の出勤で時間外労働、深夜労働が発生した場合の割増率は以下の通りです。
区分 |
割増率 |
---|---|
法定休日に出勤+8時間を超えて働いた場合 |
35%以上※ |
法定休日に出勤+深夜労働した場合 |
60%以上(35%+25%) |
※法定休日には時間外労働の概念はないので、法定休日に8時間を超えて労働しても時間外労働の割増率(25%)は加算されません。
▼計算例
- 法定休日に出勤した場合の割増賃金
1時間あたりの賃金: 1,000円
法定休日の労働時間: 8時間
計算式: 1,000円 × 1.35 × 8時間
割増賃金: 10,800円
- 法定休日に出勤し、8時間を超えて働いた場合の割増賃金
1時間あたりの賃金: 1,000円
法定休日の労働時間: 10時間
計算式: (1,000円 × 1.35 × 10時間)
割増賃金: 13,500円
- 法定休日に出勤し、深夜労働した場合の割増賃金
1時間あたりの賃金: 1,000円
法定休日の労働時間: 10時間(うち深夜労働2時間)
計算式: (1,000円 × 1.35 × 8時間) + (1,000円 × 1.60 × 2時間)
割増賃金: 14,000円
法定外休日(所定休日)
法定外休日(所定休日)とは、法定休日以外の企業側が定めた休日です。例えば、完全週休2日制の会社であれば、8日〜9日間の休みのうち、4〜5日は法定休日、残りは法定外休日になります。
この法定外休日に労働をさせても、休日労働としての割増賃金は発生しません。ただし、時間外労働をさせた場合には、割増賃金率25%以上の割増賃金の支払いが適用されます。
▼計算例
法定外休日に時間外労働した場合の割増賃金
1時間あたりの賃金: 1,000円
法定外休日の労働時間: 8時間
週の総労働時間: 48時間(法定労働時間40時間 + 時間外労働8時間)
計算式: 1,000円 × 1.25 × 8時間
割増賃金: 10,000円
振替休日
振替休日とは、従業員があらかじめ定められた休日に出勤する代わりに、前もって別の労働日を休日に振り替えることです。
例えば土日休みの企業で、従業員が土曜日に出勤する代わりに、その前の金曜日を休日とすることを振替休日といいます。振替休日を取得すれば他の労働日が休日となるため、もともと法定休日であった日に出勤した場合も休日出勤には該当せず、休日労働の割増賃金も発生しません。
ただし、時間外労働をさせた場合には割増賃金率25%以上の割増賃金の支払いが適用されます。
代休
休日出勤をしたあとで別の労働日を休日とする代休は、法定休日における勤務であれば休日労働に対する割増賃金率35%以上が適用されます。例えば、法定休日を土曜日に設定している場合、土曜日に出勤させると割増賃金の支払いが必要です。
法定外休日における勤務の代休である場合も、労働時間が1日8時間以上、週40時間以上の場合、割増賃金率は25%以上となります。
なお、代休は振替休日と似ていますが、振替休日は事前に休日を変更すること、代休は休日出勤後に別の日に休みを取ることです。
祝日
祝日とは国民の祝日法(正式名称:国民の祝日に関する法律)により定められた、「国民こぞって祝い、感謝し、または記念する日」です。
「祝日は休日」というイメージがあるかもしれませんが、企業が祝日を休日と定めない場合には、祝日は休日に該当しません。したがって、祝日に業務が発生したとしても時間外労働が発生しない限り、企業は割増賃金を支払わなくてもよいとされています。
有給休暇
有給休暇とは、従業員の疲労回復などを目的とした、賃金が支払われる休暇のことです。年次有給休暇ともいい、労働基準法第39条で付与条件や日数などが定められています。
有給は通常の労働日であって休日ではないので、割増賃金は発生しません。通常の労働日と同じ計算式となり、他の休日と同じく、時間外労働が発生すればその内容に応じて割増率が適応されます。
なお、10日以上の有給休暇が付与された従業員に対しては、「基準日から1年以内に有給休暇を5日取得させる」義務があります。
「休日出勤」と「休日労働」の言葉の意味は異なる
「休日出勤」と「休日労働」の言葉の違い、使い方には注意が必要です。
休日出勤 |
企業が休日と定めた日に労働させること(①②両方を含む) ①法定休日の労働(35%以上の割増賃金) ②法定外休日の労働(休日労働の割増賃金はなし) |
---|---|
休日労働 |
法定休日(法で休日と定められた日)に労働させること(上記①の意味) |
「休日出勤」という言葉は、従業員からすると「通常なら休みの日に出勤すること」という広い意味で使われます。
その文脈では法定休日(例えば日曜日)も、法定外休日(例えば土曜日や祝日)も両方とも「休日出勤」に該当してしまうため、理解が難しくなります。労働者からすれば、土曜も日曜も祝日も、休みであることに違いがないからです。
一方、「休日労働」というのは、労働基準法において、法定休日に労働させることをいいます。
本記事では、「休日労働=法定休日に勤務を命じられて働くこと=35%以上の割増賃金が発生する労働のこと」として、理解しやすいよう説明しました。
煩雑な休日の管理・計算はシステム化がおすすめ
ここまで法定休日や各種休日の既定に関して解説してきましたが、企業の現場では、以下のような事柄が問題になりやすいです。
- 法定休日を管理しきれておらず、法律違反の恐れがある
- 休日出勤や時間外労働、深夜労働をさせた際に割増率を加味した給与になっていない
- エクセル(Excel)や紙の台帳を使って人力で計算しているため、ミスや不備が目立つ
- 有給休暇を法律で規定された日数付与していない など
上記を一つずつ人力・手作業で管理するのは骨の折れる作業となり、多忙な中ではミスや対応漏れが生じやすくなるでしょう。
そこでおすすめなのが「勤怠管理システム」です。勤怠管理システムでは、取得した休日の種類などの勤怠情報を細かくシステム上で管理でき、給与計算システムと連動させて計算を自動化させることも可能です。
▼各従業員の法定休日出勤数や残業時間が確認できるイメージ1
▼各従業員の法定休日出勤数や残業時間が確認できるイメージ2
▼年次有給休暇の管理ができるイメージ
システムが従業員一人ひとりの勤怠状況を自動で集計してくれるため、法定休日をはじめとした各種休日の管理や割増率の計算が、正確かつ効率的に行えるようになります。
まとめ:システムで休日の管理・給与計算をして、法律に触れないようにしよう
企業は1週間に少なくとも1回(例外として4週間を通じて4日以上)の法定休日を付与することが義務づけられているため、全従業員に対して確実に付与するようにしましょう。
法定休日の付与以外にも、有給の付与・消化や残業時間、休日出勤の管理・計算などを厳格に管理しなければなりません。人力で行うのは大変でミスが起きやすいですが、勤怠管理システムを使えば正確かつ負担なく行えるようになるでしょう。勤怠管理システムの選び方が分からない方は、以下の記事も参考にしてみてください。
勤怠管理システムの選び方と比較表|種類や機能も徹底解説
勤怠管理の基本を改めてチェックしてみませんか?
- 勤怠管理の基本的なルールの理解や実務の知識が乏しく、不安がある
- 勤怠管理の目的など基本的なことを知りたい
- 勤怠管理を適切に実行する上で、自社の課題も把握しておきたい
このような人事労務担当者に向けて、「ゼロから始める勤怠管理」の資料を無料で配布しています。
人事労務担当者なら知っておきたい、適切な勤怠管理の必要性や労働時間の基本ルールについて解説していますので、これから適切な勤怠管理を導入・運用しようと考えている方は、ぜひ本資料をお役立てください。
「ゼロから始める勤怠管理」を無料ダウンロードする関連する記事