変形労働時間制とは?制度内容や残業の計算方法をわかりやすく解説
著者:チームスピリット編集部
変形労働時間制とは、対象期間の労働日の労働時間を柔軟に設定できる制度のことをいいます。対象期間は1年・1か月・1週間と3種類あり、対象期間によって残業(時間外労働)の数え方が異なります。
変形労働時間制を適切に導入することで、繁忙期には法定労働時間よりも長く働かせることができ、逆に閑散期には労働時間を短くできます。残業代の削減を期待できることから、導入を検討している企業担当者もいらっしゃるでしょう。
しかし、変形労働時間制の導入にはいくつか注意点があり、適切に運用できていなければ労働基準法違反となる危険性もあります。導入するのであれば、変形労働時間制について正しい理解が不可欠です。
本記事では、変形労働時間制の詳しい内容やフレックスタイム制など他の労働時間制度との違い、3種の変形労働時間制ごとの残業の計算方法を紹介します。
変形労働時間制の採用・導入を検討している方や、制度の運用に不安がある方はぜひご覧ください。
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変形労働時間制とは
変形労働時間制とは、一定期間の法定労働時間範囲内において、業務量に応じて従業員の労働時間を柔軟に設定できる制度です。
繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに閑散期の所定労働時間を短くする、といったように、労働時間の配分を工夫ができ、全体として労働時間の短縮・残業(時間外労働)の削減が期待できます。
なお、厚生労働省の「令和5年 就労条件総合調査」によれば、変形労働時間制を採用している企業の割合は59.3%です。企業規模が1,000人以上の企業では77.3%が導入しており、規模が大きい企業ほど変形労働時間制の採用率が高いことが分かります。
▼変形労働時間制を採用している企業の割合
企業規模 |
変形労働時間制を採用している企業の割合 |
---|---|
1,000人以上 |
77.3% |
300~999人 |
68.6% |
100~299人 |
67.9% |
30~ 99人 |
55.3% |
令和5年調査計 |
59.3% |
変形労働時間制の仕組み(図解)
通常、原則として1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えた時間分は「残業(時間外労働)」となります。しかし、変形労働時間制では、実労働時間が事前に定めた所定労働時間の枠内かつ一定期間の法定労働時間の範囲内であれば、1日10時間働いたとしても残業となりません。
以下の画像は、通常の場合と変形労働時間制(1か月単位)の違いを図解にしたものです。
通常であれば、週の法定労働時間(40時間)を超えた分が残業となるため、1週目と2週目はそれぞれ10時間が残業となります。
しかし1か月単位の変形労働時間制では、事前に定めた所定労働時間以内で働き、かつ1か月の実労働時間が法定労働時間内に収まっていれば良いため、「残業(時間外労働)はない」という扱いになります。
月初や月末など1か月の特定の時期が忙しい企業の場合、1か月単位の変形労働時間制を用いると、上図のような運用が可能となり、残業代の削減が期待できます。
変形労働時間制には3種類ある
変形労働時間制には、一定期間を1年・1か月・1週間単位とする3パターンがあります。
名称 |
労働時間 |
適用業種の制限 |
---|---|---|
1年単位の 変形労働時間制 |
1か月超~1年以内の期間、期間内の総労働時間を定め、その枠内で働く |
なし |
1か月単位の 変形労働時間制 |
1か月以内の期間、期間内の総労働時間を定め、その枠内で働く |
なし |
1週間単位の 非定型的変形労働時間制 |
1週40時間以内の範囲で、1日10時間を上限として、その枠内で働く |
有り |
参考:労働時間制度の概要等について第177回労働政策審議会労働条件分科会(資料)|厚生労働省
1年単位の変形労働時間制は、1か月超~1年以内の期間を設定できますが、1年間で設定されるのが一般的です。同様に、1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の期間の設定が可能ですが、1か月で設定されることがほとんどです。
3種のうち、1週間単位の変形労働時間制のみ適用できる企業(事業所)が、下記の全てにあてはまるものに限定されています。
1週間単位の変形労働時間制が適用できる事業所要件
- 小売業、旅館、料理店および飲食店の事業
- 従業員規模が30人未満
詳しくは後述しますが、上記3つのパターンは、制度ごとに残業時間の算出方法が異なります。
なお、変形労働時間制と似たフレックスタイム制も変形労働時間制のひとつであり、フレックスタイムと上記3つの変形労働時間制は併用できません。
変形労働時間制と他の労働時間制度との比較
ここからは、変形労働時間制と他の労働時間制度を比較することで、さらに深く理解を進めていきましょう。
3種類の変形労働時間制と、その他の代表的な労働時間制度(フレックスタイム、裁量労働制、事業場外みなし)の違いをまとめた表が以下です。
1か月単位の変形労働時間制 |
1年単位の変形労働時間制 |
1週間単位の変形労働時間制 |
フレックスタイム |
裁量労働制 |
事業場外みなし |
|
---|---|---|---|---|---|---|
労働時間の考え方 |
一定期間の総労働時間の枠内で働く |
一定期間の総労働時間の枠内で働く |
1週40時間以内の範囲で、1日10時間を上限とした枠内で働く |
一定期間の総労働時間の枠内で働く |
労使協定・労使委員会で定めた時間を労働時間とみなす |
原則、所定労働時間を労働時間とみなす |
残業の考え方 |
1日・1週・対象期間の所定労働時間または法定労働時間を超えた時間 |
1日・1週・対象期間の所定労働時間または法定労働時間を超えた時間 |
1日の所定労働時間もしくは1週40時間を超えた時間 |
枠の総労働時間を超えた時間 |
法定労働時間を超える労働時間を定めた場合に必要 |
法定労働時間を超える労働時間を定めた場合に必要 |
適用職種等の制限 |
なし |
なし |
有り |
なし |
有り |
有り |
休日・深夜割増賃金 |
有り |
有り |
有り |
有り |
有り |
有り |
導入に必要な手続き |
・就業規則または労使協定(※1) |
・労使協定(※1) |
・労使協定※ |
・労使協定(※2) ・就業規則(※1) |
・専門業務型は労使協定(※1) ・企画業務型は労使委員会の決議(※1) ・本人の同意 |
・みなし労働時間が1日8時間を超える場合は労使協定必要(※1) |
(※1)労働基準監督署への届出が必要 (※2)一定期間(清算期間)が1か月を超えて設定される場合は労働基準監督署へ届出が必要
参考:労働時間制度の概要等について第177回労働政策審議会労働条件分科会(資料)|厚生労働省
表の「残業の考え方」に注目してみると、変形労働時間制は所定労働時間もしくは法定労働時間を超えた時間分が残業となります。他の労働時間制度は、基本的に法定労働時間を超えた部分が残業になります。
つまり、変形労働時間制は労働時間の裁量が企業にあり、企業が業務量にあわせて柔軟に労働時間を設定することができる一方で、その設定した労働時間(所定労働時間)を超えると残業時間となるというのが特徴です。
業務の実態などに応じて「どの労働時間制が向いているか」を簡易的に判断するチャートを作成したのでぜひ参考にしてみてください。なお、破線で囲んだ労働時間制度は、適用できる職種・業務範囲が制限されているので注意してください。
他の制度についても内容を確認したいという方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
・裁量労働制とは?適用できる職種・デメリット・最新の法改正の内容も解説
変形労働時間制とフレックスタイム制の違い
変形労働時間制と特に混同されがちな労働時間制度が「フレックスタイム制」です。以下の表から両制度の違いを確認しましょう。
変形労働時間制 |
フレックスタイム制 |
|
---|---|---|
導入目的 |
・繁忙期・閑散期の業務量に応じた、合理的な働き方の実現 ・残業代の削減 |
ワークライフバランスの向上 |
労働時間 |
企業が所定労働時間を定める |
労働者自身が決められる |
対象期間 |
1週・1か月以内・1か月超1年以内で設定する |
3カ月以内で設定する |
どちらも対象期間中の1日の労働時間に変動があるのが共通点ではありますが、一番の違いは「労働時間を誰が定めるか」という点です。
変形労働時間制は、企業が対象期間について所定労働時間を定めて事前に労働者へ通知します。業務量に応じて合理的な時間・人員配分をおこなうことで残業代の削減が期待できます。
これに対してフレックスタイム制は、労働者自身が対象期間の労働時間枠内で1日の労働時間を自由に決めることができます。これにより、従業員のワークライフバランスの向上が期待できます。
変形労働時間制が良いのかフレックスタイム制が良いのかは、繁閑の差がどの程度あるのかや導入目的を十分に検討した上で、慎重に判断していきましょう。
変形労働時間制のメリット・デメリット・向いている企業
ここからは、変形労働時間制のメリット・デメリットを解説していきます。導入するかどうか検討するにあたり、デメリットもあらかじめ確認しておきましょう。
変形労働時間制のメリット
変形労働時間制の導入によるメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 人員配置の最適化ができる
- 残業代の削減が期待できる
- 【労働者側】スケジュールが立てやすい
業務の繁閑に応じて適切な時間・人員配分をおこなえるため、全体としての労働時間削減や残業代の削減が期待できます。また、労働者にとっても一定期間の業務スケジュールを企業が決めるため予定を立てやすいというメリットがあります。
変形労働時間制のデメリット
変形労働時間制の導入によるデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 正確なスケジュール把握・調整が必要になる
- 勤怠管理が煩雑になる
- 【労働者側】残業代が減る可能性がある
変形労働時間制では、あらかじめ一定期間の所定労働時間を企業が決めなくてはならないため、正確な業務量の算定やスケジュール調整が必須となります。勤怠管理も煩雑になるので、変形労働時間制に対応している勤怠管理システムなどを利用しないと勤怠担当者の作業量は非常に多くなります。
また、労働者にとっては残業代が減る可能性もあるため、制度導入の際には「なぜ変形労働時間の導入がなぜ必要なのか」目的や意義をしっかり伝えることが重要です。
向いているのは繁閑差があり忙しい期間を特定できる職場
変形労働時間制が適しているのは、繁忙期と閑散期の差が大きく、かつ忙しい期間を特定できる職場です。
月初・月末・特定の週など、1か月の中で繁閑差がある場合には、1か月単位の変形労働時間制が適しています。一方、夏季など特定の季節や特定の月が忙しい場合は、1年単位の変形労働時間制が向いています。
変形労働時間制かフレックスタイム制かで迷われている場合は、繁閑の差がある場合は変形労働時間制、リモートワークで働く従業員がいる場合はフレックスタイム制を検討すると良いでしょう。
リモートワークとフレックスタイム制を組み合わせることで、従業員が生活と仕事の両立をしやすくなります。ただし、フレックスタイム制の場合には始業・終業時刻を労働者自身が決められるため、業務に対して自主的に取り組む姿勢が求められます。
繁閑差が大きい事業所では、変形労働時間制を適用することで全体の労働時間削減が期待できますが、デメリットにあげたように勤怠管理が煩雑になります。勤怠管理を効率的におこなえる勤怠管理システムも併せて検討しておくとよいでしょう。
変形労働時間制の労働時間と残業時間の計算方法
変形労働時間制を導入する場合には、労働時間と残業時間の計算方法を正しく理解しておく必要があります。
3種類の変形労働時間制について、それぞれの労働時間と残業時間の設定・計算方法を確認していきましょう。
1か月単位の変形労働時間制:労働時間の設定方法
1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の一定期間を平均して、1週間当たりの労働時間を40時間以内(※)となるように労働時間を調整できる制度です。
※特例措置対象事業場(常時労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、 接客娯楽業)の場合は、1週間あたりの労働時間は44時間以内
例えば、閑散期の1・2週目の労働時間を6時間、繁忙期の3・4週目の労働時間を10時間に調整するといった運用が可能です。1か月の間に繁忙期と閑散期がはっきり分かれている企業に向いています。
なお、対象期間における所定労働時間は、下記の通り「上限時間」が決まっています。
1か月単位の変形労働時間制:残業時間の計算方法
1か月単位の変形労働時間制では、1か月以内の対象期間と対象期間中の各日・各週の所定労働時間を定めます。残業(時間外労働)の発生は、1日単位・1週間単位・1か月単位の3段階で所定労働時間もしくは法定労働時間に基づいて判定します。
【①1日単位】
- 所定労働時間が8時間超の日:定めた所定労働時間を超えた時間分が残業代
- 所定労働時間が8時間以下の日:8時間を超えた時間分が残業代
例:1日の所定労働時間が10時間の職場で12時間働いた場合、2時間分の残業代が発生する
【②1週間単位】
- 所定労働時間が40時間を超える週:定めた所定労働時間を超えた時間分が残業代
- 所定労働時間が40時間以下の週:40時間を超えた時間分が残業代
※①で算出された残業時間は除く
例:1週間の所定労働時間が40時間で、労働時間が50時間の場合、10時間分の残業代が発生する
【③1ヵ月単位】
- 1ヵ月全体の労働時間のうち、月ごとに定められる法定労働時間を超える時間分が残業代
※①・②で算出された残業時間は除く
例:1ヵ月の法定労働時間が171.4時間の月(1ヵ月が30日間の月)の場合、171.4時間を超えた時間分の残業代が発生する
なお、変形労働時間制の残業時間計算については「勤怠計算を正確に行うには?勤務時間や残業時間の集計方法も解説」の記事内でも紹介しています。時間計算の基礎から知りたい方はこちらもご覧ください。
1年単位の変形労働時間制:労働時間の設定方法
1年単位の変形労働時間制では、1か月を超えて1年以内の対象期間と対象期間中の労働日・労働日の所定労働時間を定めます。1年を対象期間とした場合は、1年間の労働日と休日のほか、各労働日の所定労働時間を定める必要があるため年間の業務量を正確に把握しておく必要があります。
また、1年単位の変形労働時間制は下記のとおり労働時間・労働日数に上限が設けられています。
- 1日の労働時間上限:10時間
- 1週間の労働時間上限:52時間
- 1年の所定労働日数:280日
これらのルールを守れば、繁忙期の12月~2月は労働時間を1日9時間、閑散期の6月~8月の労働時間は1日7時間というように業務量に応じて所定労働時間を設定することができます。
▼1年単位の変形労働時間制イメージ
また、1年単位の変形労働時間制を適用する対象期間は、1年以内であれば、3ヵ月、6ヵ月などの期間を対象にすることも可能です。その場合、期間の所定労働時間の総枠(範囲)の上限は次の表のとおりです。
対象期間 |
所定労働時間総枠の上限 |
---|---|
1年(365日の場合) |
2085.71時間 |
6ヵ月(183日の場合) |
1045.71時間 |
4ヵ月(122日の場合) |
697.14時間 |
3ヵ月(92日の場合) |
525.71時間 |
参考(PDF):1年単位の変形労働時間制導入の手引|厚生労働省
1年単位の変形労働時間制:残業時間の計算方法
1年単位の変形労働時間制では、対象期間と対象期間中の労働日・労働日の所定労働時間を定めます。残業(時間外労働)の発生は、1日単位・1週間単位・対象期間単位の3段階で所定労働時間もしくは法定労働時間に基づいて判定します。
【①:1日単位】
- 所定労働時間が8時間超の日:定めた所定労働時間を超えた時間分が残業代
- 所定労働時間が8時間以下の日:8時間を超えた時間分が残業代
例:1日の所定労働時間が9時間の職場で10時間働いた場合、1時間分の残業代が発生する
【②:1週間単位】
- 所定労働時間を40時間超と定めた週:定めた所定労働時間を超えた時間分が残業代
- 所定労働時間を40時間以下に定めた週:40時間を超えた時間分が残業代
※①で算出された残業時間は除く
例:1週間の所定労働時間が40時間で、労働時間が55時間の場合、15時間分の残業代が発生する
【③:設定全体の期間単位】
- 設定期間が1年間であれば、365日ある年は2085.7時間、うるう年は2091.4時間を超えた労働時間分が残業代
※①・②で算出された残業時間は除く
例:うるう年以外の年で労働時間が2,200時間だった場合、114.3時間分の残業代が発生する
1週間単位の変形労働時間制:労働時間の設定方法
1週間単位の変形労働時間制は、規模が30人未満かつ小売業や旅館、飲食店の事業に限り適用できます。1週間単位の変形労働時間制では、下記2つの条件のもと、週単位で1日の所定労働時間を設定できます。
- 1日の労働時間が10時間以内
- 1週40時間以内
例えば、飲食店で金曜日が忙しいと予想される場合、金曜日の所定労働時間を10時間とし、前日の木曜日を6時間として1週の総労働時間を40時間以内に収めることで、残業(時間外労働)代が発生しない運用が可能となります。
▼1年単位の変形労働時間制イメージ
なお、1週間単位の変形労働時間制は、遅くともその1週間が始まる前に労働者へ各日の労働時間を通知しなければなりません。
1週間単位の変形労働時間制:残業時間の計算方法
1週間単位の変形労働時間制では、1週間の労働日と各労働日の所定労働時間を定めます。残業(時間外労働)の発生は、1日単位・1週間単位の2段階で所定労働時間もしくは法定労働時間に基づいて判定します。
【①1日単位】
- 所定労働時間が8時間超の日:定めた所定労働時間を超えた時間分が残業代
- 所定労働時間が8時間以下の日:8時間を超えた時間分が残業代
例:所定労働時間が9時間の日に10時間働いたとすると、1時間分の残業代が発生する
【②1週間】
- 1週間で40時間を超えて労働した時間分が残業代
※①で算出された残業時間は除く
例:1週間に45時間働いた場合、5時間分の残業代が発生する
変形労働時間制を導入する場合の手続き
変形労働時間制を導入する場合の手続きは、基本的に次の3ステップになります。
変形労働時間制を導入する場合の手続き
- 労使協定を締結する
- 労働基準監督署へ届出を行う
- 従業員に周知する
手順1:労使協定を締結する
まずは労使協定を締結しますが、3種類の制度ごとに労使協定に定める事項が異なるので注意しましょう。まとめると次の表のようになります。
1か月単位の変形労働時間制 |
1年単位の変形労働時間制 |
1週間単位の変形労働時間制 |
---|---|---|
● 対象労働者の範囲 ● 対象期間および起算日 ● 労働日と労働日ごとの労働時間 ● 労使協定の有効期間 |
● 対象労働者の範囲 ● 対象期間および起算日 ● 特定期間 ● 労働日と労働日ごとの労働時間 ● 労使協定の有効期間 |
● 1週間の所定労働時間を40時間以内(特例適用事業も週40時間以内)とすること ● 1日の所定労働時間は10 時間を上限とすること ● 1週間の開始前に各日の労働時間を書面通知すること ● 採用する1週間の起算日とその期間 ● 通知の時期、特別な事由があるときの変更手続き |
※1か月単位の変形労働時間制は、就業規則への記載でも可
1年単位の変形労働時間制で定める「特定期間」とは、対象期間のうち特に業務が繁忙な時期のことをいいます。対象期間と同期間にすることはできません。特定期間では最長12日間勤務させることができます。
それぞれの労使協定届の様式は、厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)」にあるので、ダウンロードして活用しましょう。
手順2:労働基準監督署へ届出を行う
労使協定を締結したら、忘れずに労働基準監督署への届出も行いましょう。常時10人以上の労働者がいる事業場では、就業規則の記載および労働基準監督署への提出も必要となります。
1年単位の変形労働時間制の場合は、1年間の勤務カレンダーも作成して労使協定と一緒に提出します。残業(時間外労働)や休日出勤がある場合には、36協定も提出するのを忘れずに行いましょう。
手順3:従業員に周知する
変形労働時間制を導入すると、労働者(従業員)にとっては残業代が減る可能性が高いため、制度の必要性や目的をはじめ労使協定の内容をよく説明しておきましょう。
導入後は、対象期間や労働日・労働日ごとの労働時間を定め、対象期間が始まる前までに通知することが必要です。
変形労働時間制を運用する場合の注意点
最後に、変形労働時間制を運用する際の注意点を3つ紹介します。
変形労働時間制を運用する場合の注意点
- 注意点1:所定労働時間設定後は労働時間の変更ができない
- 注意点2:対象期間の所定労働時間を明確にする
- 注意点3:休日手当・深夜手当は通常通り支払う必要がある
注意点1:所定労働時間設定後は労働時間の変更ができない
原則、労働日や所定労働時間を定めたあとはこれらの変更ができません。企業側が任意に変更できてしまうと、労働者にとって不利になることが多いためです。
業務上やむを得ない事情があり、限定的かつ例外的措置として変更が認められたケースもありますが、基本的には変更できないものとして運用をおこないましょう。
注意点2:対象期間の所定労働時間を明確にする
対象期間・労働日の所定労働時間は、明確にして分かるようにしておきましょう。
例えば、1日6時間労働と10時間労働の日があったとして、どの日が6時間労働であるかをあやふやにして10時間労働が当たり前になると、残業代を故意的に支払わない違法な運用と見なされかねません。
変形労働時間制の違法な運用は残業代の未払いに繋がり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。対象期間の所定労働時間は必ず明確にして、対象期間が始まる前に労働者へ通知をおこないましょう。
注意点3:休日手当・深夜手当は通常通り支払う必要がある
変形労働時間制を適用している場合でも、休日労働や深夜労働に該当した場合、割増賃金の支払が必要です。1時間あたりの賃金(給与)について深夜労働は25%以上、休日労働は35%以上の割増率を乗じなければなりません。
深夜労働は22:00から翌日5:00の間におこなった労働が該当します。休日労働は法定休日に労働した時間すべてが該当します。
法定休日とは法律上与えなければならない休日のことで、これに対して法定外休日というものもあります。違いを詳しく知りたい方は「法定休日とは?ルールや法定外休日との違い【社労士監修】」の記事も併せてご覧ください。
まとめ|変形労働時間制の複雑な勤怠管理を効率的におこなうには
変形労働時間制は、労働時間を業務量に応じて設定できる労働時間制度の一つです。繁忙期・閑散期の差が大きい企業にとって有効な制度と言えます。
繁忙期には労働時間を長めに、閑散期には労働時間を短く設定することで、会社全体の労働時間・残業代の削減効果も期待できます。また、従業員にとってもメリハリのある働き方を実現することができます。
一方で、変形労働時間制を導入すると通常の労働時間制度より、どうしても勤怠管理が煩雑になってしまいます。勤怠管理のミスを防ぐためにも、変形労働時間制を導入する場合には、勤怠管理システムの導入も同時に検討することをおすすめします。
勤怠管理システムでは、勤務時間や残業時間が自動集計されるほか、従業員や部署ごとの労働時間や残業時間等の確認を簡単におこなえます。
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