セキュリティ強化・勤怠管理において重要な「入退館管理」
著者:チームスピリット編集部
2005年4月に施行された個人情報保護法の安全管理措置の項目の1つに「物理的安全管理措置」が挙げられています。企業は契約情報や顧客情報、従業員の個人情報など、機密性の高い情報を多く保有しており、それらが外部に漏洩することは絶対に許されません。そのため、企業においてはエントランスのセキュリティ対策が必須であり、防犯目的以外にも入退館をする従業員の管理ができれば就業状況の正確な把握につながることが期待できます。
企業では適切で安全な入退館管理の実施によって外的要因から従業員や情報を守り、適正な勤怠管理を行う必要があります。つまり、セキュリティ強化・勤怠管理の両方の側面において、企業の入退館管理は不可欠な要素なのです。今回は入退館管理の役割や必要性、入退館管理を効率化する方法を紹介します。
入退館管理が担う主な役割とは
近年、多くの企業ではカードキーなどによる入退館管理が導入されています。その目的としては「セキュリティ強化」が挙げられます。部外者の侵入を防ぎ、従業員の安全確保や機密情報の漏洩防止に努めることは企業の責任とも言えるでしょう。その他には「従業員の勤怠管理」においても効力を発揮します。入退館管理を行うことで就業状況の正確な把握も期待できるでしょう。
役割1:部外者の侵入防止
企業のオフィス内には従業員はもちろんのこと、訪問者やメンテナンス業者、清掃スタッフなど外部の人間も多く出入りします。そのため、入退館管理が行われていないと関係者と部外者を区別することが難しく、危険人物の侵入や情報漏洩のリスクが高まると言えます。特に情報漏洩は、企業に大きな損害を与えることにつながりかねません。部外者の侵入を許すと、以下のようにちょっとした隙を見せることで機密情報が流出する恐れがあります。
情報漏洩が起こるシチュエーション
- PCモニターに表示された個人情報の盗み見・隠し撮り
- デスクに置いてある書類や記録媒体、ノートPCなどの持ち去り
- 宅配業者に委託した荷物に含まれている個人情報、書類の持ち去りなど
入退館管理を行えば、第三者のオフィスへの立ち入りが制限できます。部外者のオフィス内への侵入の危険性を絶つことで、機密情報の漏洩や盗難などの幅広いリスクを未然に回避できるでしょう。
役割2:入退館している人の把握
漏洩のリスクは外部の人間だけではなく、社内の内通者によって起こる危険性もあります。内部の人間による犯罪や不正行為は、外部に比べて被害が大きくなりやすい傾向にあるため、従業員のセキュリティ管理が不可欠です。立ち入りできる場所の制限や必要以上にオフィスに滞在させないなど、管理徹底をする必要があるでしょう。
入退館管理は従業員の社内の出入りを把握できるほか、入退館の記録も行えます。その記録を保管・管理することで特定エリアの入退室状況を詳細に把握することも可能です。つまり、不正を発見しやすくなり、企業内部におけるセキュリティ強化につながるのです。
役割3:情報セキュリティの認証取得のための取組
入退館管理の実施によって、機密情報を保管しているエリアの入退室記録やキャビネットの開錠記録など、従業員の細かな動きまで把握できます。これにより、「入退室管理録」や「機密情報持ち出し管理表」といった情報セキュリティ対策規定が作成しやすくなり、近年求められているISMSやPマークの取得、機密情報管理対策の実践につながります。
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)とは、自社のセキュリティレベルに対しプラン作成や資源配分を行い、システム運用をする制度です。ISMSは国際規格に準拠していることから、認証を取得している企業は信頼性の向上や他社との差別化といったメリットが得られます。また、個人情報保護に関しては日本産業規格が定めるプライバシーマーク(Pマーク)制度があります。適切な保護措置を実施している証しとして企業に対してPマークが付与されるので、取得には大きな意義があると言えるでしょう。
ISMS | Pマーク |
---|---|
国際標準規格 ISO/IEC27001:2013 日本工業規格 JISQ27001:2014 |
日本工業規格 JISQ15001:2006 |
役割4:従業員の勤怠管理
入退館管理は従業員の出入りの流れを記録するため、勤怠管理にも役立ちます。従業員の出退勤の時刻を正確に把握でき、タイムカードのように他者に打刻を依頼するなどの不正の心配もありません。また、事前に許可を得ていない残業やオフィス滞在時間などの勤務実態も可視化されるため、より正確な労務管理が可能になります。
正確な勤怠打刻の必要性
2019年4月より順次施行されている働き方改革関連法では、労働時間に関連する事項で改正が多々ありました。特に「時間外労働の上限規則」「年次有給休暇5日取得義務」については、違反した場合の罰則が設けられています。従業員の勤怠状況を正確かつ厳密に管理することは、個々人の働き方に寄り添うことはもちろん、企業として罰則回避を目指す側面もあります。
勤怠管理を正確に行うべき理由1:長時間労働の是正
法改正によって「時間外労働の上限規則」「年次有給休暇5日取得義務」の違反に罰則が設けられた背景には、長時間労働を是正するという大目的があります。長時間労働がはびこっている企業では、従業員の心身両面の健康を害す危険性があるだけでなく、法令遵守ができない体制の見直しも急務と言えます。社会からの信頼を失わないためにも、企業として長時間労働の是正に取り組むべきでしょう。
特に時間外労働の上限規則においては従業員の勤務時間の正確な把握が不可欠なだけに、正確な勤怠打刻は必須となります。打刻管理が適正であれば誰が、何時間働いているのかが可視化できるため、万が一残業が常態化している場合も早めに対策を講じることができます。
勤怠管理を正確に行うべき理由2:勤務実態の不正を防止
企業や部署によっては、時間外労働の上限を超えないよう記録につかない不正残業(サービス残業)を強要するケースもあります。不正残業は明確な法律違反であり、刑事罰も定められています。しかし、「断りたくても断れない」「みんなやってるから」などの理由から、不正残業に応じてしまうケースも少なくありません。
勤怠打刻が適正に行われれば、従業員の就業時間はもちろん、オフィスに滞在した時間を明確に記録できます。勤務実態の把握は不正残業を防止するうえでの管理体制のファーストステップだと言えるでしょう。
勤怠管理を正確に行うべき理由3:不正打刻の防止
手作業で打刻管理を行っている企業では、ヒューマンエラーや不正打刻が起こるリスクが高くなります。たとえば、タイムカードで勤怠管理を行っている場合、タイムレコーダーの時刻を変えて打刻したり、他の人に代理で打刻してもらったりするなど不正が行われることも懸念されます。
不正打刻を未然に防ぐためには、クリーンな職場環境の構築も大切ですが、抜本的な改善施策としてはデジタル技術を活用した入退館システムの導入が効果的です。入退館など勤怠記録がリアルタイムで更新され、さらに変更には申請が必要なシステムであれば、不正のリスクを低減させることができるでしょう。
企業のセキュリティやリスクを回避するために
企業のセキュリティ強化や情報漏洩のリスクを効率的に回避するためには、入退館システムの導入が不可欠です。法令遵守やコンプライアンス強化が求められる時代において、まずは企業のエントランスでの管理体制の強化が急がれます。また、入退館システムが勤怠管理の機能を備えていれば、就業状況の把握も同時に行えます。
その1:入退館システムの導入
入退館システムとは、入館証やIC カードなどの認証によって入退館情報を記録・保存できる仕組みです。入退館システムでは、ICカードによる認証システムや複数人の認証を行う共連れ検出機能などがあり、社内に出入りするすべての人を監視・管理することが可能です。そのため、自社の機密情報を確実に保護できるほか、漏洩予防や部外者の侵入防止といったセキュリティ対策にも有効です。
その2:入退館システムと連携できる勤怠管理システムの導入
入退館システムの中には、勤怠管理システムと連携できるものもあります。入退館管理の役割には「従業員の勤怠管理」も含まれるため、勤怠管理システムと連携できれば、社員証などのICカードを使って入退館と勤怠の両方を記録・管理することが可能です。これにより、入退館のタイミングで勤務の開始と終了が記録できるようになり、不正残業や不正打刻の予防にもつながります。また、1つのシステムで勤怠管理と入退館管理が行えるため、業務の効率化も期待できます。
さまざまな入館管理システムと連携ができる「チームスピリット」
勤怠管理システム「チームスピリット」には、さまざまな外部サービスと連携できる「TS Connect」というプログラムが用意されています。これにより、勤怠管理システムと入退館システムの連携が可能となり、リスク軽減と業務の効率化が可能になります。
たとえば、「ALLIGATE for チームスピリット」は、チームスピリットと株式会社アートが運営するアクセスコントロール専用プラットフォーム「ALLIGATE」を連携させた勤怠打刻サービスです。 ALLIGATE Lock(扉の鍵)やALLIGATE Logger(勤怠時間打刻装置)で取得した入退室情報が、チームスピリットの勤怠打刻データとして利用できます。スマートフォンや社員証で簡単に打刻できるため、今まで煩雑になりやすかった勤怠管理をスマートかつ正確に管理できるようになるのです。
勤怠管理と入退館管理を連携させる具体的なメリット~Retty株式会社の事例~
勤怠管理システムと入退館システムの連携のメリットについて、チームスピリットの導入企業である「Retty 株式会社」の事例をもとに勤怠管理システムと入退館システムを連携させるメリットを説明します。
Retty株式会社は、チームスピリットとアクセスコントロール専用プラットフォーム「ALLIGATE」が連携した「ALLIGATE for チームスピリット」を導入し、リスク軽減と業務の効率化を実現しました。Retty株式会社では、チームスピリット導入前から入退室ログと出退勤データを連携させていましたが、残業などで従業員が自分で勤怠打刻をする場合に「どうしても忖度してしまう恐れがある」という懸念がありました。そのため、入退室のログと勤怠管理システムの打刻情報をリアルタイムに連携させ、確認できる仕組みの導入が必要でした。
「ALLIGATE for チームスピリット」を導入したことで、入退室ログと出退勤データのリアルタイム連携に成功。さらに、従業員の働き方をリアルタイムに可視化できるレポート・ダッシュボード機能や、残業時間が一定値を超えるとアラートするアラート機能により、長時間労働の是正やコンプライアンス遵守に素早く対応できるようになりました。
勤怠管理システムと入退館システムを連携させるメリット
- 入退室のログを勤怠打刻データに利用できる
- 勤怠データを正確かつスマートに管理できる
- 従業員の勤怠状況をリアルタイムで確認できる
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