法令違反リスクを回避!効率的な賃金台帳の書き方とは
著者:チームスピリット編集部
賃金台帳は労働者名簿、出勤簿と並ぶ法定三帳簿。適切な方法で記録、管理しなければ法令違反とみなされる可能性があります。一方で様式は自由とされていることから、意図せず法令に違反しているのではないかと不安に感じている方も多いのではないでしょうか。また、果たして現在採用している書き方が効率的なのか気になっている方も多いはず。
この記事では、最低限押さえておくべき賃金台帳の適切な書き方を紹介します。また、効率化のポイントや勤怠管理システム導入のメリットについても解説します。法令違反を防ぎ、従業員に対する適切な賃金支払いを実現するためにも、効率的で正しい賃金台帳の書き方を身につけましょう。
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賃金台帳の書き方の基本ルール
賃金台帳は、労働基準法第108条*によって、作成・保存が義務付けられています。同法施行規則において必須記載事項が定められており、基準を満たさない場合には罰則の対象となります。本章では賃金台帳の正しい書き方について詳しく解説します。
*出典:e-Gov法令検索|労働基準法
様式は自由
賃金台帳の様式は定められていません。下記で示す必須記載事項さえ網羅できていれば、会社独自の様式や効率的だと考える様式を採用してかまいません。
記載する必要のある10項目
労働基準法施行規則第54条*により、賃金台帳に以下の10項目を記載することが定められています。書き方の詳細は次章にて解説します。
(1)労働者氏名
(2)性別
(3)賃金の計算期間
(4)労働日数
(5)労働時間数
(6)時間外労働時間数
(7)深夜労働時間数
(8)休日労働時間数
(9)基本給や手当等の種類と額
(10)控除項目と額
▼厚生労働省の様式と10項目の対象箇所を図示した記載方法の一例
出典(PDF資料):様式第20号賃金台帳|厚生労働省
給与明細との違い
賃金台帳と混同されがちなのが給与明細です。給与明細は、従業員が給与の内訳を確認することを目的として作成されるもので、労働基準法ではなく所得税法第231条で交付が義務付けられています。つまり賃金台帳と給与明細とではその目的が異なり、基本的に給与明細だけでは賃金台帳の記載必須項目を満たしていないため、代用や兼用はできません。
【必須10項目別】賃金台帳の書き方
(1)労働者氏名
雇用形態に関わらず、役員を含むすべての従業員が対象です。管理のしやすさを考慮し、従業員番号などを併記することは問題ありません。
(2)性別
男性・女性の区別を明らかにしましょう。
(3)賃金の計算期間
賃金を算出している期間を記載します。例えば、月末締めであれば「2023年6月1日~2023年6月30日」と記載します。
(4)労働日数
賃金計算期間内の労働日数を記載します。出勤簿の労働日数と一致するのが基本です。賃金台帳と出勤簿の間で労働日数の記録が一貫していないと、賃金の計算ミスや不正が発生していると疑われる可能性もあります。
(5)労働時間数
賃金計算期間内の労働時間数を記載します。こちらも出勤簿と整合が取れることが重要です。
(6)早出残業時間数
(5)で記載した労働時間数のうち、時間外に労働した全ての時間を抽出して記載します。
(7)深夜労働時間数
(6)で記載した時間外労働時間のうち、22時から翌5時まで労働した時間を抽出して記載します。
(8)休日労働時間数
法定休日、所定休日に労働した時間を記載します。
(9)基本給や手当等の種類と額
基本給と各手当のそれぞれの額がわかるように記載します。
(10)控除項目と額
年金や保険料などの控除額を項目とともに記載します。
賃金台帳は、従業員が働いた時間に対して、適切な賃金を支払っていることを示すための記録です。適切な勤怠管理が徹底されていなければ、正しい賃金を支払うこともできません。タイムカードや勤怠管理システムを用いて、客観的な記録での勤怠管理を徹底しましょう。
賃金台帳の作成を効率化する方法
手書きもしくはExcel(エクセル)で作成する場合、以下のポイントを取り入れて作成すると効率化が望めます。
- テンプレートを活用する
様式が決められていない分、世の中には便利なテンプレートも数多く出回っています。自社の従業員数や雇用体系、データの出力形式に合わせて、より手数の少ないテンプレートを見つけることが、ミスなく効率的な賃金台帳作成の第一歩です。「以前から使っているから」という固定観念を捨てて、最適なテンプレートを取り入れてみましょう。
- 関係帳簿も同時に作成する
多くの企業では、源泉徴収簿や給与明細など、似たような帳簿を作成しなければなりません。互いに代用できないとはいえ、共通項目が多いのも実情です。個別に作成して転記を繰り返すよりも、同時に作成した方がミスも時間のロスも回避できます。
【手書き】手書き部分は最低限にとどめる
賃金台帳の手書きは、PC操作に不慣れな従業員でも対応できるので、引継ぎや教育の時間を削減できる点がメリットとして挙げられます。しかし、手書きする項目や枚数が多ければ多いほど以下のようなデメリットもあります。
- 記入と管理が煩雑になり集計の負担が大きい
- 手書きの数に比例して、ヒューマンエラーが発生する確率が上がる
- データ活用のための統計、分析作業に転用しづらい
- 保管場所の確保と物理的なセキュリティ管理が必要
こうしたリスクを考慮し、手書きを選択する場合には、手書きする箇所を最低限にとどめましょう。例えば、従業員の名前、雇用形態、基本給、時間給、その他の手当てなど、変動のない項目があらかじめ含まれたテンプレートを使用することで効率化を図ることができます。また、複写式で源泉徴収簿とセットになった様式を活用するのも有効手段です。
【Excel(エクセル)】機能を存分に活用しよう
エクセルにあらかじめ関数を入れておけば、それぞれの日数や時間数の合計数を入力するだけで自動計算がされるため、効率的かつヒューマンエラーを回避できるのが最大のメリットです。合計、平均、残業代、税引後の給与など、必要な数値を自動的に算出してくれます。また、条件付き書式設定を利用し、時間外労働時間が一定以上の場合にセルの色を変えるなど、視覚的に情報を把握しやすくすることができるので、時短につながります。
例えば、法定時間外労働の中でも、月60時間を超えるか否かで賃金割増係数が異なります。月60時間を超える場合に色を変える設定を導入すれば、該当箇所が一目瞭然なので、見逃しや計算ミスを防いで業務効率化につながります。さらにマクロを活用すれば、新しい月の賃金台帳作成や、各従業員の給与明細を作成・印刷することが可能です。
ただし、手書きに比べてエラーのリスクは低いものの、人の手で入力する以上は入力ミスが起きる可能性があることを忘れてはいけません。また、PCやエクセル操作に不安がある場合は、慣れるまでの時間と育成コストがかかることを念頭に置き、教育体制を整えるなどのフォローが必要です。
参考記事:【2023年からの変更点も解説】残業代計算の基本ルールから具体的な計算方法まで
賃金台帳の作成には勤怠管理システムも有効
手書き・エクセルで発生するヒューマンエラーを回避しつつ、関係台帳との整合をとるには、勤怠管理システムの導入が有効的です。
勤怠管理システムとは、賃金の算出要素である従業員の出勤・退勤・休憩時間・休暇などの勤怠状況を管理できるシステムです。労務上の管理はもちろん、給与情報を連携させることで賃金台帳の記入・集計作業の自動化も可能です。
手書きやエクセルへの手入力の場合、集計作業と並行して、抜け漏れや記載ミスのチェックが欠かせません。一方で勤怠管理システムでは抜け漏れやエラーがあった際に、自動でアラートが送信されるため、集計ミスのリスクが格段に低くなります。データで管理できるため、統計や分析作業がしやすく、物理的な収納場所や紛失の心配も必要ありません。
ただし、勤怠管理システムの導入には当然コストがかかります。初期導入費や運用費といった金銭的な面だけでなく、マニュアルの作成や従業員への教育、質問対応といった人的・時間的コストもかかってしまいます。
勤怠管理システムの機能・費用の種類は多くあるため、まずは自社の解決したい課題を洗い出し、優先順位をつけることから始めましょう。その上で、導入コストとのバランスを見極め、自社に合った勤怠管理システムを選ぶことが大切です。
まとめ
この記事では、賃金台帳の適切な書き方や効率化のポイント、勤怠管理システム導入のメリットについて解説しました。
賃金台帳の正しい書き方を身につけ、適切な記録・管理を行うことは、法令を遵守するだけでなく、従業員に対する適切な賃金支払いにもつながります。いま一度賃金台帳の書き方を振り返るとともに、自社にとって最適な作成・管理方法を見つけてみませんか。
勤怠管理の基本を改めてチェックしてみませんか?
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- 勤怠管理の目的など基本的なことを知りたい
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