36協定違反はどんなケース?事例・罰則・対象者・対策までわかりやすく解説
著者:チームスピリット編集部
「36協定違反と見なされてしまうのはどのようなケースがあるのだろう?」
「36協定違反の罰則で企業名を公表されてしまうのは避けたい」
法定労働時間を超えた労働をさせるには36協定の締結が必要ですが、締結していたとしても、さまざまなケースで「36協定違反」となることがあります。
違反をして企業名が公表されてしまえば、社会的な信用を失うなど、ビジネスに多大な影響を与えてしまいます。
しかし「どういう場合に36協定違反になってしまうのかわからない」「従業員が36協定を守ってくれない」などの悩みを抱えている企業担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、36協定違反になってしまう9つのケースを具体的な事例付きで紹介します。さらに「どのような経緯で36協定違反が発覚してしまうのか」「罰則の内容」「発覚した場合に取るべき対応」まで詳しく説明します。
36協定違反にならないために企業がすべきことも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
【労働基準監督署もすんなり受理】
時間外労働にまつわるルールをわかりやすく解説
36協定の正しい理解は、労働法令違反のリスク軽減や、労務トラブル回避、適切な労働管理の把握につながり、従業員の勤怠管理を正しく推進することにつながります。
チームスピリットでは、36協定を始めとした勤怠管理に必要な知識をわかりやすくまとめた「36協定の基礎知識」を無料でお届けしています。従業員の勤怠管理を担うご担当者さまは、ぜひ参考にしてみてください。
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36協定違反となる9つのケース・事例
36協定違反となるケースには、以下の9つのパターンがあります。36協定を結ぶ前にも結んだ後にも違反になるケースがあるので注意しましょう。
36協定違反となる9つのケース
- 36協定の締結・届出をしていないのに残業させた
- 36協定の締結・届出で設定した時間を超えて働かせた
- 36協定を締結・届出をしていないのに法定休日に労働させた
- 特別条項を定めていないのに限度時間を超える残業をさせた
- 臨時的で特別な事情がないのに限度時間を超える残業をさせた
- 特別条項の上限(年720時間)を超える残業をさせた
- 1カ月の残業+休日労働の合計時間が100時間以上となった
- 残業・休日労働の合計時間が2~6カ月平均で月80時間を超えた
- 残業などに対して適切な割増賃金を支払わなかった
なお、36協定自体の根拠は労働基準法第36条にありますが、36条の第1項~第5項・第8項・第11項は同法第32条(労働時間)に基づいています。そのため「36協定違反」といわれるほとんどのケースは厳密には「32条違反」となります。
9つのケースについて具体的な事例も併せて解説していきます。
①36協定の締結・届出をしていないのに残業させた
36協定の締結・届出をしていないのに残業させた場合、第36条第1項(基は第32条)の規定に違反することになります。
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
※引用:e-Gov|労働基準法
労働基準法で定められている法定労働時間は、1日に8時間、1週間に40時間です。これを超える労働(=時間外労働)はさせてはいけません。
時間外労働をさせるためには36協定の締結・届出が必要となります。
監督指導が入った事例
36協定の締結・届出を行わないまま、時間外労働をさせていたことが認められたもの。最も長い者で月に約175時間の違法な時間外労働をさせていた。
②36協定の締結・届出で設定した時間を超えて働かせた
締結・届出した36協定の「設定した時間(労使で合意した時間)」を超えて残業もしくは休日労働をさせた場合には、第36条第1項(基は第32条)の規定に違反することになります。
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
※引用:e-Gov|労働基準法
例えば、36協定の「1カ月の法定労働時間を超える時間数」の欄は、月45時間以内の範囲で企業が時間数を指定できます。ここを「月30時間」としたならば、月30時間を超えたら36協定違反となります。
③36協定の締結・届出をしていないのに法定休日に労働させた
36協定の締結・届出が済んでいないのに法定休日に労働させた場合、第36条第1項(基は第35条)の規定に違反することになります。
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
※引用:e-Gov|労働基準法
「法定休日」とは労働者に対して必ず与えなければならないと法律で決められている休日です。
使用者は労働者に対して、週1回以上(あるいは4週間を通じて4日以上)の休日を付与しなくてはなりません。法定休日に労働させる必要がある場合には、36協定の締結と届出が必要です。
④特別条項を定めていないのに限度時間を超える残業をさせた
特別条項を定めていないのに限度時間を超える残業をさせた場合、第36条第4項(基は第32条)の規定に違反することとなります。
第三十六条
④ 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
※引用:e-Gov|労働基準法
36協定を締結していても、特別条項を定めていなければ限度時間(月45時間・年360時間)までの時間外労働しか認められていません。
それ以上働かせるためには、特別条項を定めるとともに、事前に定めた「臨時的で特別な事情」であることが必要となります。
⑤臨時的で特別な事情がないのに限度時間を超える残業をさせた
臨時的で特別な事情がないのに限度時間(月45時間・年360時間)を超える残業をさせた場合、第36条第4項(基は第32条)の規定に違反することとなります。
第三十六条
④ 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
※引用:e-Gov|労働基準法
36協定で特別条項を定めれば限度時間(月45時間・年360時間)を超えた時間外労働が可能ですが、その業務は「臨時的で特別な事情」によるものである必要があります。
例えば、大規模トラブルの復旧作業などの予見できない事情が該当します。
「臨時的で特別な事情」が無いのに恒常的に長時間労働をさせてしまうと、36協定違反だけでなく安全配慮義務違反にも該当して、多額の損害賠償請求につながることもあります。
長時間労働の結果、急性心不全により死亡したケースの裁判事例(損害賠償請求事件)
労働者Hさんは、4月に入社し、同年7月までの間、特段の繁忙期でないにもかかわらず、4カ月にわたって毎月80時間を超える(月100時間を超えるあるいはそれに近い)時間外労働(最大約140時間)を行った。その結果、同年8月に、急性心不全により死亡した。
【判決要旨】
労働者Hさんの急性心不全による死亡は、恒常的な長時間労働に起因し、被告会社の安全配慮義務違反との間に相当因果関係がある。
被告会社は、80時間の時間外労働を基本給に組み込んだ給与体系や勤務体系を取り、36協定においても100時間の時間外労働を許容するなど、労働者の生命・健康を損なわないような体制を構築していなかった。
そのため、全社的・恒常的に存在していた社員の長時間労働についてこれを抑制する措置が取られていなかったことにつき、会社法429条1項(役員等の第三者に対する損害賠償責任)に基づく責任を認める。
会社と会社役員が、遺族に対し、損害賠償として多額の賠償金を支払うことを命じた。
⑥特別条項の上限(年720時間)を超える残業をさせた
特別条項の上限(年720時間)を超える残業をさせた場合、第36条第5項(基は第32条)の規定に違反することとなります。
第三十六条
⑤ 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。
※引用:e-Gov|労働基準法
特別条項付きの36協定を締結していて、臨時的で特別な事情があったとしても、時間外労働は年720時間以内でなければなりません。
⑦1カ月の残業+休日労働の合計時間が100時間以上となった
1カ月の残業+休日労働の合計時間が100時間以上となった場合、第36条第6項の規定に違反することとなります。
第三十六条
⑥ 使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
一 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、一日について労働時間を延長して労働させた時間 二時間を超えないこと。
二 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
三 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。
※引用:e-Gov|労働基準法
特別条項付きの36協定を締結していて、臨時的で特別な事情があったとしても、1カ月の残業+休日労働の合計時間は100時間未満でなければなりません。
監督指導が入った事例
道路貨物運送業を営む事業場に対して立入調査を実施したところ、労働者7名について、1カ月100時間を超える時間外・休日労働(最長は200時間超過)が認められた。
労働基準監督署の対応
①36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働をさせたことについて是正勧告(労働基準法第32条違反)
②時間外・休日労働を月80時間以内とするための具体的な方策を検討・実施するよう指導
⑧残業・休日労働の合計時間が2~6カ月平均で月80時間を超えた
残業・休日労働の合計時間が2~6カ月平均で月80時間を超えた場合、第36条第6項の規定に違反することとなります。
第三十六条
⑥ 使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
一 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、一日について労働時間を延長して労働させた時間 二時間を超えないこと。
二 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
三 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。
※引用:e-Gov|労働基準法
特別条項付きの36協定を締結していて、臨時的で特別な事情があったとしても、残業・休日労働の合計時間は2~6カ月平均で月80時間を超えてはなりません。
例えば、以下の画像のようなケースでは、3カ月平均で80時間を超えるため法律違反となります。
2~6カ月平均で月80時間を超えないように時間外労働時間を改ざんするのももちろん法律違反です。
監督指導が入った事例
建設業の会社は労働時間を社内システムにより管理しており、実績を確認したところ、月当たりの時間外労働は36協定の上限である約80時間にほぼ統一されていた。不自然に感じた労働基準監督官がこの点を追及したところ、会社は改ざんを認め、別途作成している作業日報の存在を認めた。これにより、上限時間を大幅に上回る労働時間の実績が確認され、最も長い者で月約280時間の時間外労働が行われていたことが判明した。
労働基準監督署の対応
①労働基準法第32条(労働時間)違反を是正勧告
②長時間労働の抑制、労働時間の適正把握について指導
③過重労働による健康障害防止について専用指導文書により指導
さらに、時間外労働に対する割増賃金の支払いを抑えるため、労働時間を改ざんしていたことについて
①労働基準法第37条(割増賃金)違反を是正勧告
②不払いとなっている割増賃金の支払いを指導
⑨残業などに対して適切な割増賃金を支払わなかった
時間外労働・深夜労働・休日労働をさせたのに適切な割増賃金を支払わなかった場合、第37条(割増賃金)違反となります。
(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
※引用:e-Gov|労働基準法
これは厳密に言えば36協定違反ではありませんが、36協定に関連して起きやすい違反なので併せてここで紹介しておきます。
監督指導が入った事例
旅館業を営む事業者は、雇用契約書において残業代として月当たり45時間分の時間外労働時間に係る割増賃金を支払うこととしているが、タイムカード等の労働関係書類を確認したところ、45時間を超過する時間外労働時間に応じた割増賃金が全く支払われていなかった。また、これらの労働者について、労働時間数を把握していなかった。
労働基準監督署の対応
①労働基準法第37条(割増賃金)違反を是正勧告
②不払いとなっている割増賃金の支払いを指導
③労働時間の適正把握について指導
36協定違反はどのようにして発覚するのか
前述したような36協定違反があっても「発覚しなければ表沙汰にならないから問題ないだろう」「どのような場合に発覚し違反と捉えられるのだろうか」と考える方もいるかもしれません。
ここからは、36協定違反がどのようにして発覚するのか、3つのパターンを解説します。
- 従業員からの相談・通報で発覚するケース
- 臨検監督で発覚するケース
- 労働災害をきっかけに発覚するケース
①従業員からの相談・通報で発覚するケース
36協定違反が発覚するルートとしては、36協定違反に気づいた従業員が労働基準監督署へ相談・通報するケースがあります。
労働基準監督署への相談・通報は匿名で行うことができ、誰が通報したか外部に知らされることはありません。
従業員の告発を受けた労働基準監督署は「本当に36協定違反があったのか」を調査するために事業所の調査を実施します(「申告監督」といいます)。
申告監督では、法律に則った労働条件が守られているかを厳しく調査されます。
②臨検監督で発覚するケース
臨検監督で発覚するケースもあります。
臨検監督とは、労働基準監督官が企業を訪問して、労働基準法や労働安全衛生法などが遵守されているかを調べる調査を指します。
臨検監督には2種類あり、前述した「申告監督」と、定期的に実施される「定期監督」があります。
申告監督 |
従業員からの相談・通報を受けて臨時的に行われる調査 |
---|---|
定期監督 |
監督計画に基づいて定期的に行われる調査 |
従業員からの相談・通報がなくても、定期監督の対象となった事業所は調査されるので注意しましょう。
③労働災害をきっかけに発覚するケース
労働災害が起こったことをきっかけに36協定違反が発覚するケースもあります。
例えば、恒常的に長時間労働を強いられていた従業員がうつ病で自死してしまい、それをきっかけに36協定違反が発覚するケースなどです。
死亡事故が起こった場合は、単なる36協定違反では済まず、民事訴訟が提起されて多額の賠償金の支払いが命じられることもあります。
36協定違反があった場合の罰則(ペナルティ)
ここからは、36協定違反があった場合の罰則(ペナルティ)について解説します。
6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金
今回紹介した、第32条(労働時間)、第35条(休日)、第36条第6項、第37条(割増賃金)に違反した場合の罰則は、共通して6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
第十三章 罰則
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、第三十九条(第七項を除く。)、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
※引用:e-Gov|労働基準法
罰則の対象者は「管理していた責任者」
36協定違反の罰則の対象となるのは、会社と、従業員を管理していた責任者です。例えば「会社の社長」「工場長」「現場の労務管理担当者」「直属の上司」などが該当します。
違反していた本人(従業員)ではなく、あくまで「会社と従業員を働かせる立場にある人」が対象になります。
36協定違反がもたらす悪影響
ひとたび36協定違反が起きてしまうと、どのような悪影響があるでしょうか。
ここでは、以下の3つの悪影響について解説します。
- 悪質な場合は企業名が公表されてしまう
- 労働災害を起こした場合は多額の賠償金が発生する
- 取引先や顧客からの信用を失う
①悪質な場合は企業名が公表されてしまう
36協定に関する違反があった場合の罰則は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」ですが、内容が悪質と判断された場合には書類送検され、企業名や所在地などが公表されます。
②労働災害を起こした場合は多額の賠償金が発生する
さらに、36協定違反に関連して過労死や自死などの労働災害が起これば、民事訴訟が提起されて多額の賠償金の支払いが命じられることもあります。
このようなケースでは、ニュースなどで劣悪な労働環境について報じられてしまう可能性があります。
③取引先や顧客からの信用を失う
企業名公表や労災事故の報道などで取引先や顧客に労働環境の悪さが知れ渡ってしまうと、信用を失うことにつながりかねません。
取引の解消、売上の低下などさまざまな悪影響が考えられます。
36協定違反が発覚した場合の正しい対処法
36協定違反があっても、労働基準監督署への報告義務はありません。しかし、労働基準監督署から指導・是正勧告が合った場合は、それらに従いましょう。
それぞれ説明します。
①社内で発覚した場合:速やかに是正する
労働基準監督署の臨検監督が入る前に社内で36協定違反が発覚した場合には、速やかに適切な措置を講じて是正しましょう。
36協定違反が見つかった場合に、違反があったことを労働基準監督署へ報告する義務はありません。違反状態を迅速に改善して必要な対処をすることで、社内の問題として解決することができます。
社内で発覚した場合の対処法
①36協定を結んでいないのに残業させた
②36協定を結んでいないのに法定休日に労働させた
➡ただちに36協定を締結し、労働基準監督署にも届出を行う
③特別条項を定めていないのに限度時間を超える残業をさせた
➡ただちに36協定の特別条項を定めて、労働基準監督署にも届出を行う
④臨時的で特別な事情がないのに限度時間を超える残業をさせた
⑤特別条項の上限(年720時間)を超える残業をさせた
⑥1カ月の残業+休日労働の合計時間が100時間以上となった
⑦残業・休日労働の合計時間が2~6カ月平均で月80時間を超えた
➡ただちに上限を守るように徹底し、未払いがあった場合には支払いを済ませる
⑧残業などに対して適切な割増賃金を支払わなかった
➡ただちに適切な割増賃金の支払いを済ませる
②従業員に通報された場合:労働基準監督署の指導・是正勧告に従う
従業員から労働基準監督署に36協定違反の相談・通報があった場合には、労働基準監督署による申告監督(立ち入り調査)が行われます。
この場合には、労働基準監督署からの指導や是正勧告に従いましょう。
具体的には、36協定の適正な運用や長時間労働の抑制などに関する指導および是正勧告が行われます。
36協定に違反しないために企業がすべきこと
36協定に違反しないために、今一度企業が見直すべきことについて解説します。
①締結・届出している36協定や特別条項の内容をしっかり確認する
まずは、自社が締結している36協定や特別条項の内容や、届出を怠っていないかをしっかり確認しましょう。
「36協定を結ぶと何時間までの時間外労働が可能になるのか」「特別条項でさらに上限が何時間になるか」などをきちんと把握できていない場合には、しっかりとルールを頭に入れましょう。
36協定の詳細については、以下の記事をご覧ください。
36協定とは?残業のルールや上限規制・義務をわかりやすく解説
また、36協定の更新を忘れて「期限切れ」になっていたことで、違法に残業させてしまうケースもあります。
36協定の有効期間を管理して、期限切れにならないよう確実に更新することを徹底しましょう。
②従業員にも36協定の内容を周知する
36協定違反を防ぐには、従業員にも36協定の内容を周知し、働くことができる時間のルールを把握してもらうことが大切です。
もともと36協定は、労働基準法第106条の規定により、従業員の目に触れやすい場所などに掲示したり書面を交付したりして周知することが義務付けられています。
「36協定による限度時間(月45時間・年360時間)」「特別条項を定めた場合の上限(年720時間など)」など複雑ですが、できるだけわかりやすく理解しやすい形で周知する工夫をしましょう。
③残業・長時間労働を減らす仕組みを作る
36協定に違反しないためには、残業・長時間労働を減らす仕組みづくりも大切です。
具体的には、以下のような残業ルールを作って管理する方法があります。
- 月1回の「ノー残業デー」を作る
- 残業をする際は事前に管理者に申請し、承認を必要とする(残業申請制)
- 21時以降の業務を原則禁止にし、朝型勤務にシフトする
これ以外にも「従業員を増やす」「繁忙期のみスポットで人材を確保する」「業務を効率化する」などの方法が考えられます。
残業管理方法については、「残業管理とは?適切に行う方法や目的、他社事例を紹介」の記事をご覧ください。
④労働時間・残業時間を正しく管理する
36協定違反を防ぐためには、労働時間や残業時間を正しく管理することも、とても大切なポイントとなります。
労働時間を正しく管理できていなければ、時間外労働や休日労働の時間も管理できないからです。
労働時間の正確な管理には、リアルタイムで労働時間を自動集計でき、時間外労働や休日労働の時間が多くなってきたらアラートで知らせてくれる勤怠管理システムの活用がおすすめです。
▼残業時間のアラート通知の例
36協定に違反しないためには、気をつけなければならない上限がいくつもあります。
例えば、特別条項付き36協定を締結・届出している企業の場合は以下のような上限があります。
- 時間外労働は年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計は月100時間以内
- 残業・休日労働の合計時間は2~6カ月平均で月80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えられるのは年6カ月まで
これら全てを担当者が目視で超えていないか確認するのは至難の業です。
アラート機能がある勤怠管理システムならば、上限に近づいてきたときには本人や上司に自動で通知できます。
また、一定の残業時間を超過している従業員を一覧で確認する機能などを使えば、該当する従業員をケアすることも可能です。
▼月間残業60時間超過者のレポート画面例(チムスピ勤怠)
担当者が目視でチェックするだけではミスが発生しがちな作業をシステムで効率化することで、36協定違反を防ぐことができるでしょう。
まとめ|36協定違反を防ぐには労働時間の適切な管理が大切
本記事では36協定違反について詳しく解説しました。
36協定違反となる9つのケースは以下の通りです。
①36協定を結んでいないのに残業させた
②36協定の締結・届出で設定した時間を超えて働かせた
③36協定を結んでいないのに法定休日に労働させた
④特別条項を定めていないのに限度時間を超える残業をさせた
⑤臨時的で特別な事情がないのに限度時間を超える残業をさせた
⑥特別条項の上限(年720時間)を超える残業をさせた
⑦1カ月の残業+休日労働の合計時間が100時間以上となった
⑧残業・休日労働の合計時間が2~6カ月平均で月80時間を超えた
⑨残業などに対して適切な割増賃金を支払わなかった
36協定違反とならないためには、以下の2点をしっかり管理する必要があります。
- 時間外労働時間が決められた時間を超えていないか
- 超えそうな従業員がいないか
そのためには、正確な勤怠管理を行い、リアルタイムで上限に達しそうな従業員をチェックすることが大切です。
▼勤務表から、従業員の残業時間を確認する
担当者が目視で行うのは大変なので、自動で上限を常にチェックできる勤怠管理システムを活用して、36協定違反を防ぎましょう。
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