プロジェクトにおける予実管理とは何か?定義や目的を解説予実管理とは、企業・事業・プロジェクトの各予算と実績を管理することです。つまり「プロジェクトにおける予実管理」とは、「プロジェクト単位の各予算(売上や原価、粗利など)と実績を管理すること」を指します。▼プロジェクトの予実管理表イメージ例えば、「時間単価2,000円の従業員が10人日で完了できるタスク」について予実管理を行う場合の流れを見てみましょう。まず原価は2,000円×10日=20,000円かかると予測できるので、その数値をもとに確保したい利益を上乗せした売上金額を設定します。続いてプロジェクトの進行中に実績を管理することで、現状そのタスクにかけている時間、すなわち現時点でかかっている原価を把握します。プロジェクトにおける現時点での原価がわかれば、確保すべき粗利を達成できそうかといった分析を行うことができます。仮に、10日で完了するはずのタスクが8日時点で30%の進捗であれば、そのまま進めていくと当初設定した原価を大きく超えてしまうことがわかるでしょう。上記の例のように収支の「予算(予測値)」と「実績」を管理することから、予実管理は「予算実績管理」と表現されることもあります。予算と実績を比較して分析すれば、「目標通りの利益率を出せているか」「コストがかかりすぎていないか」といった実態を定量的に把握することが可能になります。プロジェクト単位で予実管理を行う目的とはプロジェクトにおける予実管理は、主に以下の目的で行われます。プロジェクトにおける現時点での収支状況を把握するため経費を使いすぎている項目を把握するためプロジェクトの課題を「見える化」し、最終的に赤字にならないよう軌道修正するため上記の内容をまとめると、予実管理を行う目的は「プロジェクトの黒字化を達成させること」とも言えます。予実管理を実施していないと、現在のペースやリソース配分でプロジェクトを進めていいのかがわからず、「なんとなく」で進めることになってしまいます。その結果「プロジェクト完了後にはじめて赤字になっていたことが判明する」という事態が起こりうるのです。プロジェクトの予実管理で管理すべき項目プロジェクトの予実管理においては、専用のツールや管理表などを用いて以下の項目の「予算」と「実績」を定量的に管理します。管理すべき項目内容売上利益算出のために活用する工数事前に予測した工数と、実際にかかっている工数を比較する原価事前に予測した原価と、実際にかかっている原価を比較する(大部分は工数×稼働単価で計算する)外注費事前に予測した外注費と、実際にかかっている外注費を比較する経費事前に予測した経費と、実際にかかっている経費を比較する(経費には、出張費・備品購入費・交際費などが含まれる)利益(粗利)事前に予測した利益と、現時点での利益を比較する(売上から原価・外注費・経費を引いた利益の数値を管理する)上記の項目を管理するためのツールやエクセル(Excel)の使用方法については、「プロジェクト予実管理を効率化するツールとは」で詳細を解説します。プロジェクト予実管理を進めるための具体的な手順を解説プロジェクトの予実管理は、以下の手順で進めます。各予算目標を設定するプロジェクト進行中に適宜、予算と実績の比較を行う課題やリスクを把握・分析し、改善策を決めて実行するPDCAを回すそれぞれの工程について、詳細を解説していきます。1.各予算目標を設定するプロジェクトの予算を設定します。まずはプロジェクトのタスクを細分化して各タスクの工数を見積もった上で、原価の予測を立てましょう。その後外注費や経費を予測し、売上を設定していきます。基本的には過去の実績を参照しながら、以下のポイントに沿って進めていきましょう。プロジェクトをタスクに細分化し、工数をタスクごとに見積もっていく各メンバーの時間単価やリソース状況などを加味して数値を調整するクライアントとの要件定義を密に行い、予算に反映させる売上ベースではなく、営業利益ベースで考える予算目標はあくまでも、「達成可能な目標」を設定することが大切です。メンバーの工夫や努力によって達成できるラインを目標にすることで、モチベーションアップになりプロジェクトの黒字化にもつながります。プロジェクトを赤字化させないためにも、予算目標はコストを加味した「営業利益」の確保を掲げるようにしましょう。2.プロジェクト進行中に適宜、予算と実績の比較を行うプロジェクト開始後は、原価や利益の達成度合いなどを定期的にモニタリングします。事前に設定した数値と照らし合わせ、予算と実績の比較をしましょう。以下の点を意識することで、プロジェクトの赤字回避に役立つ予実比較を行えるようになります。月次だけではなく、週次や日次などの細かい単位で定期的にチェックする日々の実績(工数や経費など)をリアルタイムで入力する予算と実績の比較は、あくまでもプロジェクトの進行中に行うことが重要です。プロジェクトの進行中に行うことで、軌道修正が必要な場合にスピーディーに対応でき、最終的な赤字を回避できる可能性が高くなります。3.課題やリスクを把握・分析し、改善策を決めて実行する予算と実績の比較を行ったら以下のポイントをもとに課題の分析を行い、改善策実施の方針を立てます。工数が想定を上回っていないか工数が想定を上回っている場合、どの工程に問題があったのか赤字リスクがあるとしたら、どんな科目に経費がかかりすぎているのか課題のうち、優先的に対策すべきものはどれか課題の分析においては、細かい数字を突き詰めること以上に、現状の把握と改善策のスピーディーな策定が重要です。数字にとらわれすぎず、課題の優先度を見極めて効率を重視していきましょう。4.PDCAを回す実績の入力予実の比較分析と改善改善策の効果を評価上記のサイクルをプロジェクト完了まで繰り返し、予算目標達成への精度を高めていきましょう。またプロジェクト完了後も結果を分析してPDCAを回すことで、次のプロジェクトにつながる予実管理になるでしょう。プロジェクトの予実管理で気をつけるべき失敗例プロジェクトの予実管理を行う際は、以下のような失敗に気をつけましょう。工数が不正確で原価を正しく計算できないリアルタイムで管理していない実績入力までで満足してしまい、分析に活かしていない上記のような事態に陥らないように管理、運用することで、予実管理をプロジェクトの進行に活かせる確率が上がります。それぞれ詳細を見ていきます。1.工数が不正確で原価を正しく計算できない労務費がコストの大部分を占めるプロジェクト型ビジネスの予実管理では、工数(どのくらいの時間をかけてどれだけの業務を進めているか)の管理が必要不可欠です。工数に関して以下のような課題を抱えている場合、予実管理の実績が正確に把握できないおそれがあります。勤怠と工数を別々のシステムで入力しており、勤怠と工数が整合しない勤怠と工数の整合性をチェックしていない、または手作業でチェックしていて効率が悪い従業員が工数入力を面倒に感じており、月末などにまとめて入力している工数入力が正しく行われているかどうか、チェックする仕組みやルールがないプロジェクトの進捗がよくない場合、虚偽入力のおそれも出てきます。上記のような事態に陥らないためには、工数を正確に取得できる仕組みや機能を備えたシステムを使うとよいでしょう。例えばプロジェクト型ビジネスの工数管理に特化したツール「TeamSpirit 工数」には、正確な工数入力をサポートする以下の機能があります。1つのシステムで勤怠と工数を入力でき、リアルタイムで勤怠と工数の整合性を確認できる登録した勤務時間をもとに、割合を指定して工数を按分できる勤怠と工数が整合していない場合は申請できないように設定できる直感的なUIで、従業員が日々の工数を入力しやすい▼「TeamSpirit 工数」の工数入力画面2.リアルタイムで管理していない予実管理はリアルタイムで行う必要があります。「気づいたときにはもう赤字になっていた」「せっかく予実差異を比較したのに、実は最新データではなかった」などとならないように、複数プロジェクトの原価をリアルタイムで分析できる環境を整えましょう。以下のような運用を行っていると、予実管理をリアルタイムで行えていない可能性が高くなります。エクセルなど、分析機能が充実していないツールを利用している予実管理表のフォーマットが部門ごとに異なる予実管理に関して全社で統一したルールがない実績入力をあとでまとめて行っている予実管理を適切に行うには、「日々の実績入力を習慣化すること」が重要です。そのためには予算進捗や工数を入力する際の負担が少ないツールを使うことも検討しましょう。またツール導入時には、使用する従業員全員に入力方法やルールを周知することも重要です。3.実績入力までで満足してしまい、分析に活かしていないせっかく予算を設定して実績の入力を進めても、分析頻度が低かったりプロジェクト完了後の分析しか行っていなかったりする場合は、予実管理の効果が減少してしまいます。予実管理はプロジェクトの最中に行うことで真価を発揮するため、こまめな分析が必要不可欠です。以下に当てはまる場合は、改善の余地があるでしょう。複数のエクセル表で管理しており、データを可視化できない集計に手間がかかるデータの所在地が部門ごとに異なるこれらの状況を改善するには、様々な切り口で予実の分析が行えるツールを使うことが有効です。分析の方法や抽出できる条件、レポート表示のUIはツールごとに異なるので、無料トライアルやデモなどを活用して選ぶとよいでしょう。プロジェクト予実管理を効率化するツールとはプロジェクトの予実管理には数値の集計や分析が不可欠なので、数値を正確に管理できるデジタルツールを使用するのが基本です。以下のいずれかのツールを使って予実管理を行いましょう。予実管理システムエクセルそれぞれのツールのメリットとデメリットは以下の通りです。メリットデメリット予実管理システム・リアルタイムで必要な情報を細かく分析できる・操作性がよく入力しやすい・過去実績を参照しやすい・導入に時間がかかる・月額費用が生じる・従業員への周知や操作を勉強する期間が必要エクセル・無料、または安価で利用できる・導入に時間がかからない・多くの人にとって馴染みがあるので操作に慣れやすい・複数人で同時に操作するのに向いていない・過去データを探しにくい・メンテナンスを自社で行う必要がある・入力ミスや集計ミスのおそれがある※製品によっても異なります。それぞれの具体的な使い方や機能について詳細を解説します。予実管理システム予実管理に特化した専用システムや、予実管理が行えるERP(企業の幅広い業務を一元管理できる基幹業務システム)を指します。予実管理システムには、予算やプロジェクト進捗の管理・分析、業績予測レポートの出力、労務費管理(工数・リソース管理)などの機能が搭載されているケースが多いです。例えば「TeamSpirit 工数」の場合、勤怠管理機能やプロジェクト原価管理機能(アドオン)を利用することで、以下のような管理を行えます。稼働単価×工数を自動計算して原価を算出し、リアルタイムで予実管理を行える経費機能を組み合わせることで、外注費や経費の情報も含めたプロジェクト原価管理が行える見やすく多角的な切り口で情報を分析できる、ダッシュボード機能がある勤怠と工数が整合しない場合は申請できない設定ができるなど、正確な工数管理をサポートするなお「TeamSpirit シリーズ」は、ITやコンサルティングなど「プロジェクト型ビジネス」の企業様にて、多数の導入実績を持った製品です。▼「TeamSpirit 工数+プロジェクト原価管理(アドオン)」の画面例予実管理システムは、製品によって力を入れている機能が異なります。自社の課題に合うシステムを選びましょう。エクセル※参考:業務効率と品質を追求した予実管理表エクセルテンプレートを無料配布|経理プラス上記のような予実管理表を作成し、エクセルで管理する方法です。基本的には、表の縦軸に「売上」「原価」などの予算管理項目を入力し、表の横軸に月次の「予算」「実績」「予実差異」を配置して作成します。上記のようなテンプレートをダウンロードし、プロジェクトに必要な項目を調整して使用するのもおすすめです。売上や原価の数値を入力するだけのシンプルな表なので、個人ビジネスや小規模なプロジェクトの予実管理をする場合はエクセルでの管理を検討してみてもよいでしょう。複数プロジェクトが同時進行している場合などは複雑な労務費の計算が必要になるため、別途工数管理の専用ツールなどを活用することをおすすめします。まとめ|プロジェクト予実管理には適切な工数管理が不可欠!正しい進め方でプロジェクトの成功に役立てようプロジェクトの予実管理は以下の流れで行うことで、プロジェクトの黒字化につなげられる可能性が高くなります。適切な原価予測を立て、予算目標を設定するリアルタイムで予実差異を確認する課題が見つかった場合は、スピーディーに改善策を実行する結果を次回のプロジェクトに活かすまた予実管理を正確に行う上で最も重要なのは、プロジェクト原価の大部分を占める「労務費」をリアルタイムで把握することです。そのためには勤怠と整合性の取れた正しい工数管理が必要不可欠になります。予実管理をプロジェクトの収支改善に活かしたいと考えているなら、まずは「工数管理」の運用から見直しを進めるとよいでしょう。正確かつ簡単に工数を把握できる専用ツールの導入も検討し、利益目標の達成につながる予実管理の実現を目指しましょう。